「あちらが調理室。
　料理の腕に覚えがあるグレイは是非ご活用を！
　といっても朝食を作れたようですし、
　問題は、おそらく無いように思えますが」

　ゲーム内ですら食事の概念がないのか、
　席に着かずそのあたりを彷徨くAI。

「昨夜は急な招集もあって、
　自己紹介が済んでない子もいるようですね。

　とりあえず、丁度この時間は空いてるので、
　しておくのが吉でしょう！」

「ありますよ〜お部屋。
　欲しいものがあったらお申し付けくださいね。
　あんまり突飛なものじゃなければ用意させます、ハイ」

「外に出る際にはお気をつけて！
　それほど危険なことはないと思いますが、
　どこかぶつけたら痛いもんは痛いですからね！」

「サポートAIは、サポートAIであるが故、
　食事も掃除も部屋も必要ありません！
　ただそこに居るだけの存在なれば！
　何かのお手伝いも難しいかも知れません！」

とのこと。期待はできなさそうである。

監察官の方はといえば、またもや資料と向き合って難しい顔。積極的に皆の手伝いを、という風には見えない。

「塔に行く際には監察官が共に、というのが原則です。
　とはいえ、お忙しかったり、相性もあったり、
　グレイだけで登るのが禁止されてるわけではありませんよ」

ね！監察官！と声を掛ければ、
返ってくるのは『ああ』という簡素な声だけ。

「留守番はお任せくださいね！
　皆様のゲームのサポート以外でも、
　摘み食いをコラッと叱ることはできますです、ハイ」

監察官の人形の傍らに立って何やら満足げ。
当の監察官は、もそもそグラタンパンを食べている。
ひと口が小さい。猫舌なのかもしれない。

お〜と通信機を見ている。
高性能AIなので、ちょちょいのちょいとすれば、
顔も映し出せる感じにできそうだ。

＊風景が見えたほうがよさそうですからね＊