人狼物語 三日月国


149 【R18身内村】LOVE OR ALIVE

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【人】 雨宮 瀬里

 

 恋人だった人との記憶はないけれど
 私が確かに変わった、という事実だけは、
 私の中に薄ぼんやりと残っている

 以前のような洋服を着なくなったこと
 母親とはそれでも良好な関係を築いていること
 家を出て、陶芸の道に私が進んだこと

 それは蓮司≠ニ関係ない部分だから
 記憶の混乱が起きていないのだろうか

 それでもその変化≠キるきっかけは思い出せないから
 それをくれたのは、まぎれもない、その人なのだろう。 *


 
(48) 2022/05/28(Sat) 11:33:57

【人】 宮々 蓮司

彼女の答えは会いたい≠セった。
そして自分はそれを聞いてもまだ迷っていた。

雨宮瀬里。
名前を聞いても、恋人だったと聞いても顔も思い出せない。
2度目のお見合いで出会ったらしい彼女。
わからない。


何も覚えていない元恋人に会ってどうするのか。

それでも。
祖父が伝えてきた言葉が背を押した。
「彼女に会わせてほしい」
それが恋矢を抜く前の自分が頼んだことらしい。

(49) 2022/05/28(Sat) 12:54:53

【人】 宮々 蓮司

朝の時間が過ぎて、昼よりも前の頃。
外の温度はたいぶ上がって汗ばむほどになってきていた。

瀬里が案内されたのは敷地内の広い庭。
そこには男がひとり佇んでいる。

風景には馴染まない洋装で。
短めに切り揃えられた髪。
男が瀬里の方を向くと、左右で色が違う瞳が彼女を捉えた。*
(50) 2022/05/28(Sat) 12:55:25

【人】 雨宮 瀬里

 

 昼よりも前のころ、
 空には高く陽が昇り、木々の緑を美しく照らす
 案内された庭には洋装の男性がひとり佇んでいる

 私は白のブラウスと赤紫のスカートを纏って
 その人のほうへ近寄っていく

     それはいつ手に入れたものなのか
     私は、憶えていない。
     そこにも貴方との記憶があるのだろう


 その人の背中を後ろから見たとき、
 会うのが怖い、と思ってしまった

     怖い、という感情が、
     いつかの感情に重なった気がしたけれど
     それはいつのことだったのかわからない


 
(51) 2022/05/28(Sat) 13:43:51

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ………こんにちは、蓮司さん? 」


 名前を口にして、
 どこか違和感があったのは何故だろうか
 
     もしかしたら蓮司さん≠ネどと
     私は、呼んでいなかったのかもしれない


 
(52) 2022/05/28(Sat) 13:44:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 その人がこちらを振り向く。
 二色の瞳がとてもきれいで、だけど、私は、


 「 ……?? 」


 何かが、とても違和感で。


 「 目、大丈夫、なんですか 」


 
陽の光の下
、美しく煌めく二色の瞳に、
 何が大丈夫じゃない≠アとがあるというのか
 それもわからないまま、私は本能的に、
 そんな言葉を、口にしていた。 *

 
(53) 2022/05/28(Sat) 13:44:53

【人】 宮々 蓮司

その子は現れた。
白いブラウスに赤紫のスカート。
モノトーンの自分とは違うその姿に、何故か少し違和感があって、だけどとても似合っているように思えた。



 「 雨宮瀬里 」


口にしたその響きにどこか懐かしさにも似た感じがある。
記憶にはなくとも初めてではないからか。


 「 瀬里……
   あ、瀬里≠ナいいか? 」


そう、一度呼び方を確かめた。
(54) 2022/05/28(Sat) 14:40:15

【人】 宮々 蓮司

目のこと。
もしかしたら彼女は自分のことを覚えているのだろうか。
今はもうこの左眼に痛みも何もない。
右目と同じように見えるし、光を強く感じることもない。



 「 ああ、大丈夫だ。
   左右で色が違うだけだ。
   ……少し格好いいだろ? 」


そんなことを少し戯けてみせる。
(55) 2022/05/28(Sat) 14:40:29

【人】 宮々 蓮司

 
 「 何か、……不思議だな。」


こうして面と向かっても湧き上がる感情はない。
恋矢がなくなったことに加え記憶が曖昧になっているせいか。


 「 はじめまして、ではないんだよな。」


確かに初めて会った、それとは違う。
でもその顔もその声も、記憶のどこにも見当たらない。
ましてや恋心なんてものはどこにも。


あの日、あのお見合い。
そもそもその記憶自体が曖昧でよく思い出せないでいた。*
(56) 2022/05/28(Sat) 14:40:47

【人】 雨宮 瀬里

 

 きっと私はその人に瀬里≠ニ呼ばれていたのだろう
 その呼び方はどこかしっくりときて私は縦に首を振る

 それと同時になにかデジャブのような違和感を感じて
 心の奥底がほんのわずかに軋む



 「 ……そうですね、かっこいいですよ 」


 ほらまただ。
 少し戯けて掛けられた言葉、
 何も文脈としておかしくはないのに、
 なにか、なにかが、ひっかかる。


 
(57) 2022/05/28(Sat) 16:01:41

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 うん。初めましてでは、ないみたい
   でも、憶えてないんです 」


 貴方もですよね、って確認するように。
 
 貴方の声も、顔も、憶えてはいないけれど
 それでも、どこか、穏やかな気持ちで話せたのは。
 やっぱり絆があったから、ということなのだろうか。


 その人に翼はない。
 だけど、手紙の中には「恋矢」が、と書いてあった
 同種であることを前提に、私は話をする。
 これで相手が恋天使じゃなかったら…ふと不安になって
 私は背中の羽を揺らしてみせて、貴方の視線の先を確かめた。

 …羽根が見えていなさそうなら、
 ほんの少し、不安な顔は見せただろう。

 
(58) 2022/05/28(Sat) 16:02:12

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 あの 」


 そうして私は貴方にあの封筒を差し出す。
 恐らく貴方の文字で、瀬里へと書かれた一通の封筒。


 「 貴方に返すのも、なんか違うと思うんですけど
   でも。貴方にも、読んでもらいたくて 」


 封筒には一度開けた跡があるから、
 私が読んだものだということはすぐに分かるだろう
 
 それから、もうすこしだけ、貴方に近づいて
 声を落として、小さくつぶやく

 
(59) 2022/05/28(Sat) 16:02:26

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 あのお爺さんが、
   手違いで、恋矢が刺さって、
   恋矢を抜いたのだと言っていました。

   ……でもここにはお見合い、ってあるし
   何より、これを書いた人の言葉が、
   手違いで恋矢が刺さってた人のものだって
   私、思えないんです。

  たぶん。蓮司さんの字、だと思うんですけど
  ……読んでみて、ください。 」


 手紙を読んでくれるのならば、その傍で。
 言いたいこと、ってなんだったんでしょうね、って
 私は困ったように笑いながら呟いた。 *

 
(60) 2022/05/28(Sat) 16:02:38

【人】 宮々 蓮司

覚えていないこと、貴方もですよねと問われて小さく頷いた。

雨宮瀬里のことを思い出そうとしても、例えば昨日のことを思い出そうとしても靄がかかったように、記憶の輪郭が定らず手を伸ばしても霧散してしまう。
そこにあるようで、ないような不思議な感じ。


視界に揺れた彼女の背中の翼。
薄紫のきれいな羽根。
視線がそれを掠める。

それを見た記憶もない。
ただ、なぜだろう、その羽根に手を伸ばしてしまいたくなるのは、昨日までの自分がそこに何かの感情を抱いていたからだろうか。
(61) 2022/05/28(Sat) 17:10:23

【人】 宮々 蓮司

 
 「 手紙……? 」


差し出されたのは一通の手紙。
封はすでに開けられている。
読もうか読むまいか悩んでいると、彼女が少し距離を詰めてきた。

その言葉は意外なものだった。
祖父が彼女に言ったというそのことば。
手違い≠サんなこと自分には言っていなかったのに。


それは、自分が彼女へと書いたらしい手紙を読む動機として十分だった。
(62) 2022/05/28(Sat) 17:10:40

【人】 宮々 蓮司

 
 「 随分と、……貴方≠愛していたらしい。」


読み終わって口をついた感想はそれだった。
まさに今この状況を憂い、それでも彼女≠愛し、必ず彼女の元へ戻るのだと、そんな手紙の内容。
でも、それはすでに失われた愛情なのだ。



 「 ……さあ?
   これは俺≠ェ書いたものじゃないから。」


そう。
同一人物ではあるが、今の自分とは別物。
どれだけその愛情が深くても、いや深かったがために、今その愛が失われたことが確かな事実なのだと判ってしまう。
昨日までのその心がその感情が真に恋や愛なのかはわからないけど、少なくとも今はそうではない、それだけが確かなこと。
(63) 2022/05/28(Sat) 17:10:56

【人】 宮々 蓮司

 
 「 瀬里、
   ……俺のことが好きか? 」


彼女の様子を見るに、きっと自分と同じなのだろう。
だから、この問いの答えは否≠ナあるはずだ。


 「 結局、
   昨日までの俺たちはどこにもなくて、
   今はもう昨日とは違う俺たちがいるってわけだな。」


俺≠ゥら彼女≠ノ宛てた手紙。
それを読んでなぜか申し訳ない気持ちになるが、それこそ昨日まで抱いていたらしい感情が他人事である証。
(64) 2022/05/28(Sat) 17:11:18

【人】 宮々 蓮司

手紙を彼女へと返す。
きっと、これは彼女≠ノ宛てたものであっても、今この目の前にいる彼女に宛てたものじゃないだろう。
だから返されてもきっと困るだろうけど。


 「 ……駅まで送るよ。」


昨日までとは違う自分はと彼女。
それは、昨日までの二人の関係が終わってしまったことを意味しているのだから。

答えはとうに出ている。*
(65) 2022/05/28(Sat) 17:11:50

【人】 雨宮 瀬里

 

 これは俺≠ェ書いたものじゃない。
 その言葉にどこか落胆の気持ちを抱いてしまったのは
 別に恋心を取り戻したい、とかいう動機じゃない。

 じゃあ私を動かすものはなんだろう?って
 ふと考えたとき、一番に心に浮かんだのは

  私の中に知らない私がいること

 それが、どうしてももやもやするのだと気づいた。

 
(66) 2022/05/28(Sat) 18:21:36

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 いえ。
   恋心を抱いていたらしい、のは
   ここにいる私、ではないので。 」


 好きか?と聞かれて即答した。
 好き嫌い、という感情はどこにもない。

 昨日までの私たちはどこにもいない。
 貴方と過ごしたらしい日々の様々な瞬間が
 私の中からすっぽりと抜け落ちたまま、
 私は、いつかの私の続きを歩いている。

 
(67) 2022/05/28(Sat) 18:21:49

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ありがとうございます。
   ……助かります。 」

 
 ここは一体どこなんだろう、とスマホを見る。
 位置情報から、大体の場所が分かるはずだ。
 ロックを外せば、私と貴方が並ぶ待ち受け画面が見えた。

 
(68) 2022/05/28(Sat) 18:22:01

【人】 雨宮 瀬里

 

 見覚えのない車。
 見たことのあるような車。

 躊躇することなく私の足は助手席へ向かい、
 慣れた手つきでその扉を開く。


 「 あの。
   何か、思い出したら。
   ううん、何も思い出さなくても。
   また、連絡してもいいですか。 」


 そう切り出したのは車が発進した後だったか。
 スマホには、ご丁寧に貴方の連絡先も、
 直前までのやり取りも、残っているようだった。

 
(69) 2022/05/28(Sat) 18:22:20

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 恋心があるとか、ないとか、じゃなくて
   ……記憶。ないのが。嫌だなって。 」


 貴方との記憶、じゃない。
 私自身の記憶がないことが、嫌だなって思ったんだって
 私は、貴方に伝えるだろう。


 「 ……自分のこと、
   なんでも自分で決めたいんです。
   だから、昨日までの私が分からないのがすごく嫌。

   おかしいな。
   昔私そういう人じゃなかった筈なんですけど。 」


 昔の私は、自分の意思を持たずに、
 家族に、他人に、自分の評価も意思も委ねていた。
 今の私は、すっかりそうでないと嫌だ、なんて

 …それが、変わった記憶はどこにもないのに。 *

 
(70) 2022/05/28(Sat) 18:23:12

【人】 宮々 蓮司

つられるようにスマホを開けば、彼女と同じ写真が全面に写っていた。
瀬里は撮り慣れているのか綺麗な顔を見せていたけど、その隣の自分らしき男は少しぎこちない。
でも、二人ともいい笑顔だった。



 「 ああ、構わない。」



恋心は置いておくとしても、記憶がないのは確かに不安というか気持ちの悪さがある。それが極限定的であっても。記憶とは自分自身の歴史なのだから、それもそのはずだ。


 「 きっと、昨日までの蓮司≠煌ぶだろう。」


そんな皮肉を口にした。
実際、その蓮司≠ェいないのだから、こうなっているというのに。
(71) 2022/05/28(Sat) 19:07:24

【人】 宮々 蓮司

いっその事、もう一度恋矢で結ばれるのはどうか。
それを考えなかったわけじゃない。
だけだ、それでは結局また恋熱病に冒されてしまうかもしれない。
ゆえにその選択肢は取れない。


手紙にあった通り、もう一度瀬里≠ノ恋をしたのなら、もしかすると記憶も何もかも戻ったりはするだろうか。
だけど、それはあり得ない。

恋天使は恋をしてはならない。

だからこそ恋天使はお見合いをするのだ。
自然の恋愛ができないから。

結局のところ、昨日までの二人がどれほど互いを大事に想っていても、二人が結ばれる可能性は皆無なのだ。
それを昨日の自分はりかいできていたのだろうか。
(72) 2022/05/28(Sat) 19:07:45

【人】 宮々 蓮司

車の窓の外を景色が流れていく。
車内には自動的にスマホと接続したナビが音楽を流していた。

どこかで聴いた歌。
スマホに入れているだから当たり前なのだけど。


 「 これ、知ってる?
   clarity≠チて歌手なんだけど。」


歌手、というか歌い手≠ニいうのだったか。
今ではフェスなんかにも参加したりして、最近話題を耳にすることも増えてきた。


 「 彼女の歌、好きなんだよ。」


それはいつからだったか。
いつから彼女の歌を聴き始めたのだろう。
いつ彼女のことを知ったのだろう。
その切っ掛けが思い出せない。*
(73) 2022/05/28(Sat) 19:08:29

【人】 雨宮 瀬里

 

 貴方の皮肉には素直に頷いた。
 きっと、昨日までの瀬里≠セって、喜ぶはずだから。

 恋をしたらどうなのか、と私は考えたりはしなかった
 知らない貴方に恋をするつもりもなかった。

 けれど、どうしてだろうか。

 恋をしてはいけない≠フだと、

 そんな気持ちが無くなっていることに、
 私は気づいてはいなかった。
 それは、ほんの少し貴方の状態とは違っていたのかも。


 
(74) 2022/05/28(Sat) 19:38:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 clarity?知ってる、というか、」


 そう。私は確かにclarityを知っている。
 知っているどころか、…と言葉を紡ごうとして
 その先に続く言葉が見当たらないのに気付く。
 多分私はスマホの履歴に「灯歌」という名前を見ても
 それが誰だかあまり思い出せなくなっているのだろう


 
(75) 2022/05/28(Sat) 19:38:37

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……ううん、なんでもない。
   知っている、はず、なんだけど、
   あんまり思い出せないの。
   これも、貴方との記憶が関係しているのかな 」  


 透明な歌声が車の中に響く。
 不安な人を励ますような、優しい歌声。
 大丈夫だよ、って背中を押してくれるような声。

 私は、その声を、確かに、どこかで、

 記憶を呼び起こそうとしても、靄がかかっている
 だけど、記憶を探るように、探すように、
 ぼんやりとした瞳で、私は貴方のことを見た。

     貴方は、どうしてこのひとを知っているの?
     そんなことを問いかけるように。 *

 
(76) 2022/05/28(Sat) 19:38:51

【人】 宮々 蓮司

どうしてだろう。
どこで聴いたかもわからないのに、俺はこの歌い手を知っている。
とても、とても大事な思い出だったはずなのに。

その歌を聴くとひとつのシルエットが浮かぶ。

淡いブロンド、紫の瞳に紫の羽根。
黒のゴシックワンピースにヒールを履いた女の子。
顔には靄がかかってわからない。
(77) 2022/05/28(Sat) 19:53:05
 




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