麻弓は知り合いの簡易弓道場で少し弓を触った後、すぐに肝試しに赴いた。内緒のことだったから、着替えも忘れて。

持ち物としては、ブルーのタオルに懐中電灯。襷に制汗剤にスポーツドリンク。それらをやや小さめのスポーツバッグに入れて、自転車の籠に突っ込んだ。

弓道衣のままこっそり出かけたから、後で祖父や知り合いに怒られちゃうかもしれないなと思いながら。

あの時思い描いた物語は。

もう少し前の段階で、自分は死んでいる結末だった。
殺されて。事故みたいに。そうして風化していく。

たった一人に、その生の意味を全部押し付けて。
でも、上手くいかなかった。自分は想像を超えなかった。

歯車は壊れて。おかしいよね。おかしいよなあ。
あの彼なら、その結末をフィクサーみたいな顔で笑うはずだけど。

もう、そんな彼はどこにもいないらしい。

だったら、始めて見ようか、なんて。
悪魔の証明とやら。

音楽室で堂々と休憩中。
少女が入ってから、音楽室はやけに静かだった。
そりゃそう。