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人狼物語 三日月国


175 【ペアソロRP】爽秋の候 【R18G】

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【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

―――回想:飛鳥井村にて1―――


[ 小さな頃のことは、実をいうとあまり思い出したくない。 ]

 
 
(D0) yuno 2022/09/20(Tue) 16:11:58

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ わたしの故郷は、『飛鳥井村』という
 この街から遠く、それこそ県を幾つも跨いだ先の、
 とある山奥に嘗て存在した小さな村。


 今はもうないその村に、わたしたち渡守の一族は
 ひっそりと隠れるようにして暮らしていた。
 厳密に言えば、渡守の一族のなかでも特に結界術と
 戦う術に長けていた一部の者たちが、だけど。


 『本家』と呼ばれる人たちがいることは
 わたしも知っているけれど、彼等に会ったことは
 これまで一度もない。


 …たぶん、だけど。
 これからも、彼らと会う機会はないんじゃないかな。
 本家の人たちは、彼を…あの子のことを忌み嫌ってると
 そう、先生から聞いているから。 ]
(D1) yuno 2022/09/20(Tue) 16:15:17

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ ―――あの村で、わたしたちの一族が何をしていたのか
 まだ小さかったわたしには、よくわからなかった。

 わたしの記憶の中の飛鳥井村の景色は、
 それこそ他の人が思い浮かべるような、
 穏やかな田園風景そのもの。

 ―――四方を、山に囲まれていた。
 夏には深く緑を茂らせる山に囲まれていた。

 ―――田んぼや畑があった。
 春には道端に蓮華の花、夏には向日葵や蒼い緑の田圃の景色。
 秋は黄金色の野原のよう、冬は薄墨の空から降る牡丹雪。

 ―――家々は、古い家ばかりではなかったと思う。
 紺や朱色の屋根をした古くて大きな母屋や、
 庭に建てられた蔵の白い壁。
 庭に植えられた樹々や草花の彩。

 思い出そうと思えば、今も鮮やかに浮かぶその記憶は
 ―――今はもう、この世界の何処にも存在しない景色。 ]
(D2) yuno 2022/09/20(Tue) 16:17:24

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ 小さい頃、父や母や祖父母、周りの大人たちが
 わたしを見る目は、決して善いモノではなかった。

 わたしには兄が三人いたけれど、皆それぞれに優秀で
 退魔の術に長けていた。
 よく、父や母が周りの大人たちに、
 「本家の連中に引けを取らない」「自慢の息子たち」と 
 話していたのを覚えてる。
 …同時に、わたしのことは「絞りカス」だと話していた。

 どれだけしごいてもまともに退魔の術を身につけられない、
 優秀な兄たちの後に生まれてきた出涸らしで搾りカスだって。

 …傷つかないわけじゃないけど、でも
 術師としてのわたしが出来の悪い子だっていうのは
 それはどうしようもない事実だったから。
 ―――仕方ないって、諦めていたんだ。あの頃は。 ]
(D3) yuno 2022/09/20(Tue) 16:19:08

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ せめて、それ以外のことはできるようになろうって
 勉強も、運動もがんばった。…そのつもり。

 でも、それでも兄さんたちには敵わなくて。
 父母やあの村の大人たちにとっても、
 同じように術師の家系に生まれた同年代の子供たちにとっても。

 ――どこまでいっても、どれだけがんばったとしても。
 わたしは皆の中でどうしようもなく落ちこぼれだった。 ]
(D4) yuno 2022/09/20(Tue) 16:21:34

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ あれは、ちょうど夏の終わり。
 日に日に涼しくなり、秋の色合いへと移り変わってきた頃。


 …切欠は、なんてことのないちょっとした喧嘩だった。
 わたしが鈍臭いと怒りだした兄の一人が、
 近くにあった湯呑を手に
 わたしの顔へ投げつけてきた。

 幸い、中身は入っていなかったし、
 直接湯呑が顔にあたることはなかったけれど。
 ガチャン!と、近くにあった棚に当たって砕けて。
 その破片が、額を掠めた。

 最初に感じたのは、痛みより熱さだった。
 それが急に冷えたと思った途端。
 つぅ、と
赤色
が額から鼻先へと伝った。]
(D5) yuno 2022/09/20(Tue) 16:25:53

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ その赤を見た途端急に痛みを感じて、
 泣き出しそうになったわたしに、
 物音を聞いて駆け付けた母は言った。]


 「何をやってるの!
 本当にどうしようもない子ね、お前が間抜けなせいで
 兄さんが怪我をしたらどうするのよ!」

 「……ああもう!
 お前を見てると本当にいらいらするわ。
 さっさと片付けなさい。
 怪我を増やしたり、床を汚したら承知しませんからね」


[ 違うと、そう言いかけたわたしの言葉をぴしゃりと弾いて
 母は兄を連れてその場を離れてしまった。 ]
(D6) yuno 2022/09/20(Tue) 16:27:04

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ ―――悲しかった。

 もう、腹を立てる気もしなかった。
 湯呑を投げた兄に対しても、此方の言い分も聞かず
 一方的に悪者扱いした母も。
 ただただ悲しくて、どうしようもなく胸が苦しくて。


 ……そうして気がついたとき、
 わたしは割れた湯呑を片付けることもせず、
 額から流れる血を拭うことも忘れて、
 泣きながら家を飛び出していた。 ]
(D7) yuno 2022/09/20(Tue) 16:28:25

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ すでに陽は西に深く傾いていた。

 頭上に広がる空は半分以上、濃藍色の闇に染まっている。
 反対側、西の向こうに陽の光が薄らと、
 茜の残照を残して消えかかっているのが見える、
 そんな時間帯。

 そんな黄昏時の田舎道を、ただひたすらに駆けていた。
 それなりに長く道を走っていたはずだけど、
 不思議と村の誰ともすれ違うことはなかった。

 どこへ向かおうか、
 あてなんてどこにもありはしなかった。
 ただ、あの家にいることに小さなわたしは耐えられなかった。

 つい数時間前まで通っていた小学校の前を駆け抜けて、
 なにかあったとき村の人たちが集まる集会所を通り過ぎて
 そうして、気がつけばわたしは山のほうへと向かっていた。]
(D8) yuno 2022/09/20(Tue) 16:29:38

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ 初詣や夏祭りでいったことのある山の上の神社ではなく、
 その裏側の、殆ど人も通らないはずの森の中へ。

 どうしてそこへ向かおうと思ったのか、
 今でもよくわからない。

 いつだったか、
 「森の中に小屋があったからそこを秘密基地にした」と
 同級生の男子たちが話していたのを
 なんとなく、思い出していたからかもしれない。
 知ったところでどうということはないし、
 何より、今となっては確かめようもないことではあるけれど]
(D9) yuno 2022/09/20(Tue) 16:33:10

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ やがて道の舗装も街灯も途切れて、
 森の中に入ったときは、ほぼほぼ真っ暗だったはずなのに。

 不思議と、怖いとか恐ろしいと
 そういう気持ちにならなかったのは
 季節外れの蛍がゆらりゆらりと周囲を舞って
 あたりを照らしていたからかもしれない。

 あるいは、息を整えようと立ち止まったところで
 先程切った額の痛みが急に戻って来たからか。>>D5

 痛みが戻ってくるのと同時に、
 先程の悲しみもまた戻ってきて。
 堪らず、その場に蹲ると大きな声を上げて泣いた。
 誰もいないと思ったから、
 いつもより大きな声で思い切り泣いた。 ]
(D10) yuno 2022/09/20(Tue) 16:34:47

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音


   
[ ―――リィン、と。

 小さく、鈴の音がしたのはそのとき。 ]

  
  
(D11) yuno 2022/09/20(Tue) 16:35:28

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音




 ……っ、……だぁれ?



[ しゃくりあげながら、涙にぬれた目元と頬を拭って
 聞こえてきた鈴の音へと首を巡らす。

 妖や獣の類だとは思わなかった。
 だって、この村と山々は村の長老や偉い大人たちが
 厳重に結界を張って守っているのだから。
 人間にとって危険な獣は勿論、並みの妖だって
 そうやすやすと、村の領域に入り込むことはできないと
 大人たちは村の子供たちにそう何度も話していたのだから。


 それになにより――今考えれば不思議なほどに――このとき、
 わたしはその鈴の音を怖いとは思わなかった。
 遠く森の奥から聞こえてくる鈴の音も、
 わたしの優しく照らす蛍たちのことも。 ]
(D12) yuno 2022/09/20(Tue) 16:36:59

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 …。


[ ポケットに入れていたハンカチで涙と、
 それから額の血を拭ってから、
 意を決して森の奥へと歩を進めた。


 そうして辿り着いた先にあったのは洞窟だった。


 只の洞窟ではなくて、
 ものすごく大きな岩を削り出して作ったような其処に
 重そうな黒鉄の扉と何重もの注連縄で封された
 如何にもな様子の洞窟だった。 ]



 ―――……。


[ 怖い気持ちが、ないわけじゃなかった。
 それでも、意を決して其処へ向かおうと思ったのは。

 鈴の音のように聞こえていた其れが、
 …どこか、嗚咽に似ていると気づいてしまったから。]
(D13) yuno 2022/09/20(Tue) 16:37:49

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

 

 ……だれか、いるの?


[ 黒鉄の扉の前に近づけば、
 鈴のような嗚咽はよりいっそう近くなる。

 そうして一言声をかけたところで
 ―――ぴたりと、それまであたりに聞こえていた音が止む。
 同時に、周囲の空気が変わったのも伝わって。 ]


 だれか、いるんだよね?


[ 問いかけに返答はなかった。
 それでも、きっとここには誰かがいると
 そんな確信めいた想いと共に、そっと扉に手をかける。

 ギィィ、と。重く、頑丈そうなそれは
 此方が拍子抜けするほどあっさりと開かれた。 ]
(D14) yuno 2022/09/20(Tue) 16:39:00

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 ……。


[ おそるおそる扉の向こう、洞窟の奥を覗きこむ。
 ―――そこにはただ、真っ暗な闇があった。 ]


 …ねえ、だれも


[ ―――いないの、と。
 そう、言いかけたとき。

 覗き込む体勢を崩しかけて、咄嗟に一歩
 洞窟の中に足を踏み出した。
 それと同時に、固い岩場だったはずのそこは
 砂のように脆く崩れて。

 悲鳴をあげる間もなく、わたしは洞窟の中へと
 転がり落ちていった。]
(D15) yuno 2022/09/20(Tue) 16:39:59

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 ……あいたた……。


[ 尻餅をついたまま、小さく呻く。
 洞窟の中はひんやりとして、ただひたすらに真っ暗で。
 まるで月のない夜みたいだ、なんて
 そんなことを思っていれば ]
(D16) yuno 2022/09/20(Tue) 16:40:51

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ ぼそ、と暗闇に声が聞こえるのと同時。


 周囲の闇に、
い眼が浮かび上がる。
 それもひとつふたつではなくて。


 ―――…
二十
五十
、と
 わたしの四方を取り囲むようにして
 無数の
い眼が、爛々と輝いて此方を見つめていた。


 ―――それが、わたしと彼…辰沙との出会いだった。 ]
(D18) yuno 2022/09/20(Tue) 16:46:11

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 …なんか、ものすごくはぐらかされちゃった気がするね?


[ 上手く、言葉にできないけれど。
 同じように頭を撫でられた辰沙も
 なんだかとても、複雑そうな顔をしてる>>D24 ]
(D25) yuno 2022/09/20(Tue) 22:29:16

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 …ほら。難しい顔しない。
 今日はこれから楽しい一日にしないと。ね?


[ 彼の頬に再度、今度は包み込むように柔らかく触れる。 ]
(D26) yuno 2022/09/20(Tue) 22:29:35

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 よーし。それじゃあ最初は映画に行こう。


[ 今からバス停までダッシュすれば、
 ちょうど駅前行きのバスに乗れるはずだから。
 そこから駅前のシアターに行って、映画をみよう。 ]


 ほら、辰沙もダッシュ!
 せっかくだから一緒に競争ね!


[ 言い終わるより前に、
 勢いよく飛び出してバス停まで駆けていく。

 人間のわたしと__の辰沙では
 勝負にならないなんてわかりきっているけど、
 そんなことはどうでもよくて。
 

 
ただ、小さくても色んな思い出を、彼と一緒に作りたいんだ。
]*
(D27) yuno 2022/09/20(Tue) 22:30:19

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ わたしと辰沙の競争の行方はまぁさておき。
 駅前行きのバスにはどうにか滑り込みで乗り込むことに成功した。
 ついでにこれまた運が良いことに座席に座ることもできたので
 二人で座って、これから見る予定の映画について簡単に話す。

 それから、お昼ご飯に何を食べようかとか、
 その後駅前の大きな書店に行ってみようかとか、
 書店併設のカフェの人気メニューがどうだとか、
 それとも駅からちょっと歩くけれど、
 最近リニューアルしたという水族館にいこうかとか。

 そんなことを話していれば、あっという間に
 バスは駅前のロータリーに。 ]
(D28) yuno 2022/09/20(Tue) 23:31:51

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 こっちだよ、辰沙。


[ 彼の手を引いて駅前のシアターへ。
 わたしより頭一つかそれ以上に背の高い彼が
 おとなしく手を引かれる様子はなんだか微笑ましい。
 

 うん、わかる。
 この街に来て半年だけれど、わたしだって
 実質学校と寮を往復するだけの毎日で、
 なんなら夏休みだって返上しないといけなかったのだから。
 いやまぁそれはそれで楽しかったけれど。
 生まれて初めての海とか。]
(D29) yuno 2022/09/20(Tue) 23:32:54

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音


[ 閑話休題。
 何が言いたいって、わたしも辰沙も 
 この街の見るもの全てが初めて尽くしで。
 とても、楽しい。
 その証拠に、わたしに手を引かれながら、
 きょろきょろと落ち着きなく視線を彷徨わせている。
 そんな辰沙がなんだか新鮮で、
 ああ、学校を抜け出して正解だったなと思う。 


 そうして辿り着いたシアターで、チケット二枚と
 ポップコーンとドリンクをそれぞれ二つずつ購入する。

 パンフレットやグッズも気になったけれど、
 まずは映画を観てからにしようと意見が一致した。 ]
(D30) yuno 2022/09/20(Tue) 23:33:38

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

[ そうして、鑑賞後。 ]


 ……ぐすっ。


[ さっき辰沙と話した駅前の書店の併設カフェ。
 地図アプリで確認したら意外と近かったので
 映画が終わったらそこで遅めのランチにしようと、
 バス移動の時点で二人で決めていたのだけど。

 正直、映画が終わってからも
 涙が止まらないというのは予想外だった。
 いや、正確にはシアターを出る前に一度止まったけれど
 そのあとふとしたタイミングで思い出し涙が出てしまう。 ]
(D31) yuno 2022/09/20(Tue) 23:34:37

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 ……うん。ごめんね。


[ 彼が差し出してくれた水を飲んで>>D32
 それから深呼吸してどうにか気持ちを落ち着かせる。
 そんなに悲しい映画だったのかと言われれば
 それは少し違っていて。

 この国が誇る有名な監督が製作した、
 半世紀もの歴史を持つ大人気特撮ヒーロー映画。

 結末自体は、ハッピーエンド…なのかしら?
 少なくとも、彼は自分が守りたいものを命を賭して守って
 そして、彼の仲間たちの許へ帰ってこれたのだから。

 それでも、涙が止まらないのは。 ]
(D33) yuno 2022/09/20(Tue) 23:40:04

【雲】 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音



 あのひとが……映画のなかの主人公が、
 辰沙に重なってみえたんだ。


[ 感情表現が下手で、少しどころじゃなく人間離れしていて
 でも、とても優しくて純粋な、人ではない主人公。

 そんな主人公が、物語の終盤。
 地球を救うためにその身を賭してラスボスを倒しにいって
 そして発生したブラックホールに吸い込まれて――… ]
(D34) yuno 2022/09/20(Tue) 23:40:54

【秘】 妖もどき 辰沙 → 落ちこぼれ退魔師 渡守 理音

 
 
[ ―――…だって、君は。
 僕に『あたたかさ』を与えてくれた人だから。 ]
 
 
(-7) yuno02 2022/09/20(Tue) 23:48:56
 




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