人狼物語 三日月国


29 【2IDソロル+ペア混合】交換日記【完全RP村】

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【人】 軍医 ルーク

 ―― 
明け方の見張り台
 ――

[ 通信機の解析は、順調に進んでいたようだった。
 途中までは。
 あの重みの大半は外殻である箱のものだった。
 内部が破壊されないよう頑丈に作られていたためだろう。
 中から現れた部品は、驚くほどに小さく精巧だった。
 内部に記録の痕跡を発見し、
 色めき立った技術班の解析が止まったのは、
 その通信が暗号化されていたからだ。

 機械の解析はいつの間にやら数学の時間と化し
 (何故言語学ではなくて数学なのかは、
 専門外の自分には朧げに想像するのみだ)、
 役目を終えた自分は解放されて日々の業務に戻り、
 あの見張り台を漸く訪れることが出来たのは、
 箱が発見された翌々日の明け方のこと。

 慣れた道のりを、ぺんぎんと共に歩く。
 階段を上ってゆく。 
 前回は帰りがけに引き出しを開けたけれど、
 今回は最初から見張り台の机に向かった。
 見張りが離れているのを確認し、
 引き出しの中から赤い袋を取り出す。

 机の横にぺたんと腰を下ろして、
 タブレットを取り出しロックを開く。
 指の動きは最初は躊躇いがちに、
 動き始めてからは、逸るように早かった。]
(11) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:45:09

【人】 軍医 ルーク

[ ノートのページはまた増えていた。
 いつものように、日付から始まる日記。
 一語一句目で追いながら、
 呼吸すら忘れるように真剣に読む。
 ぺんぎんは、画面を覗きこむことはしなかったけれど、
 羽根の一枚も動かすまいとでもいうように、
 口の前で羽をバツにして、しーっと静かにしていた。

 いくつかの箇所で、表情が動いた。
 気付いたことがいくつもある。
 それはまだひどくあやふやで、
 指を伸ばせば煙のように散ってしまいそうな、
 そんなとりとめもない感覚だ。

 例えば、そう、
 この日記の主は『通信機』という言葉を避けている。
 その暫く後で『通信をする』という言葉を使っている以上、
 『何か』と書かれた箇所に入る言葉は、
 文脈からしても、別のものであること自然だ。

 けれど、それが何を意味するのか、
 今は触れることなく、一度、タブレットから視線を上げる。]
(12) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:46:45

【人】 軍医 ルーク

[ ゆっくりと、片手を伸ばす。
 いつも、大穴に向けてそうしているように。
 目を眇め、その先にある何かを見る。
 朝の光が差し込み始めた見張り台、
 淡く室内を照らす光の筋。
 舞い上がった小さな埃が、光に照らされて、
 ゆるやかに白く光る。
 
 さらに、その向こうを見る。
 誰かの後姿が見えるような気がした。
 凍えるような寒さの中、
 何処までも続く白い景色を、
 たった一人歩いてゆく人影だ。]


  ……、


[ 言葉から思い描くことしかできない、その景色が、
 『どの場所』のものであるのか。
 自分はきっと、気づきかけている。
 その白い景色に足を踏み入れたとしても、
 この足は、きっとまともに動かない。

 ――… けれど、
 
 伸ばした手を握り込み、下ろす。]
(13) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:48:35

【人】 軍医 ルーク

[ 傍らのぺんぎんに向けて、首を傾げた。]


  息まで止めてるような、顔してる。
  窒息するぞ?

  
[ ぺんぎんはそう言われて目をくりくりさせて、
 ぷはー、と深呼吸した。
 そういえば、此奴らは基本的には寒冷地仕様で、
 この世界のどこでも活動できるように、
 幅広く適応可能な造りになっているようだ。
 
 きっと、いくつものことに、自分は気付き始めている。
 何かの前で立ち竦んでいる。
 けれど、このタブレットを閉じて、
 何もかも見なかったことにして立ち去るのは、
 最早選択肢すら思いつかないことだった。

 ノートのページを改め、指を滑らせて行く。]*
(14) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:50:09

【妖】 軍医 ルーク

[ 気付くことは多かった。
 夢の中の“誰か”が兵士であろうということは、
 二度目の日記で確信していた。
 抑々この見張り台に置いてあるという時点で、
 その可能性は高かったけれど、
 二度目の日記には『日々の仕事や訓練』とあったのだ。
 
 夢の中、そのひとは“左手”で白い何かに触れた。
 左利きなのだろうか、あるいは、右手に何かを持っていた?
 それとも、もっと何か他の理由。

 持っていた“何か”を口元に当て、
 誰かに報告をしたみたいだと言いながら、
 その暫く後に、遠くの誰かと『通信』をしていたり、と
 自ら書いている。
 通信をしていると知りながら、日記には“何か”と記していた。

 自分が本当に優しい人かは分からない、と語る。
 自分のことは自分では分からないものだ――
 という意味にも見える。
 けれど、“人”。
 どこか、自身を遠くに見ているような、
 まるで、もう一人の誰かを見ているかのような言い回し。]
($0) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:51:32

【妖】 軍医 ルーク

[ そして、自分自身の話をしようとしても
 “話せることがなにもない”と。
 人に話せるような出来事がなかったと解釈するには、
 何処か、違和のある言い回し。
 
 ――…
 相手が誰かを探ろうと考えているわけではなくて、
 ただ、一語一句逃さず読もうと思えば、
 自然と目に入ってしまうことだ。
 そう、そして]


  “残した記録を誰かが見てくれるのなら”……


[ やはりこのひとは、自分の残した記録を、
 あとでゆっくりと見直すような心持で
 日記を書いているのではない。
 そのように、直感する。
 胸に手を当てる。
 騒めきが、どうしようもないほどに膨れ上がって、
 その正体も、やり過ごし方も分からない。
 血が出るほどに強く、唇を噛みしめた。]
($1) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:52:35

【妖】 軍医 ルーク

あなたへ

 夢の話を聞かせてくれて、ありがとうございます。
 白い大地の話、何かの結晶の話。
 聞いたこともない、景色の話。
 人が住めなくなった土地を調査して歩いている――
 聞かせてくれたお話からは、そのような光景に思えました。

 その白いものはなんだろうと、考えてみて。
 以前お話ししたあの本では、
 『ほし』のある場所から落ちてくる
 『あめ』というものがあるのを思い出しました。
 食べる方の、ではなくて。
 水の雫なのだと言います。

 その夢の中では、『以前の記録よりも極寒』と
 報告されていたようですので、
 もしかしたら、落ちてくる水が、
 寒い土地では氷に近い形になるのではと。
 あまり根拠はない想像ですが。

 氷を削ると、白い小さな欠片になる。 >>0:9
 そうだ、氷菓子を思い出してみるといいかもしれません。
 細かく削った氷に、シロップをかけて食べるお菓子。
 以前見たときには白くてふわふわしていました。
 手に乗せれば、きっと溶けるでしょう。
 あれと似ては、いないでしょうか?

 (結局お菓子の話になってしまったようです、
  ごめんなさい)]
($2) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:54:35

【妖】 軍医 ルーク

 氷の話よりも、もっとお話ししたいことがあったのに、
 直ぐに書き出す勇気が持てなくて、
 とりとめがなくなってしまいました。
 
 あなたの聞かせてくれた景色を、
 わたしなりに想像しています。
 もう誰も生きてはいない、酷く寒くてどこまでも白い、
 そんな景色の中を、歩いている自分を想像しました。

 きっとわたしは、一緒に歩くとしたら、
 ひどく足手纏いになって、迷惑をかけてしまいます。
 それでも、どうしても、
 そんな景色の中をひとりで行かせるのは、嫌です。

 残された日記を、ただ読み返しながら、
 ひとりで、ここにいるのも。
 
 だから、わたしが居ればきっと先に進む勇気が出ると、
 そう言ってくれて、わたしは嬉しかった。
 不思議な夢を見て、不安もあると思うのに、
 ごめんなさい、そんな風に、思ってしまいました。
($3) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:56:19

【妖】 軍医 ルーク

 わたしの話も聞きたいと言ってくれて、ありがとう。
 けれど、わたしも、
 お話しできることは多くないかもしれません。
 どれも、楽しくなるような話ではないと思うから。

 でも一つだけ、お言葉に甘えて、伝えさせてください。
 わたしは以前事故に遭い、情緒面と感覚に異常があるようで、
 よく人を不快にさせてしまいます。
 元々の性格も、決して褒められたものではないのですが。
 (もし何か気に障ることをしてしまっていたら、
  ごめんなさい)
 それでも、本当に不思議なのですが、
 こうして文字を使ってお話ししていると、
 まるで昔のように、
 色々な感情を自覚できるような気がしています。
 
 あなたは、自分のことを
 優しい人かどうか分からないというけれど、
 わたしには、あなたの言葉は、やっぱり優しく聞こえます。
 話せることがなく、釣り合う話も出来そうにないと、
 そう言うけれど、
 もう、いくつも、貰っているものがあります。
($4) zelkova 2020/05/21(Thu) 19:58:02

【人】 軍医 ルーク

[ それは、ばらばらに砕け散った窓硝子を、
 目隠ししたままかき集めて、
 形を探ってゆくパズルのようなものだ。
 少しずつ、必死で、
 自身の中にある何かを探して結い合わせてゆく。

 ――… 時折、指が鍵盤に触れて、音を鳴らす。
 そうして、自身が感じていることを理解する。
 
 恐怖? 不安?
 けれど、違う、決してそれだけじゃない。
 しいて言うなら、これは、そう。
 “望み”。

 綴り終えた指は、少し震えて。
 タブレットを袋に戻し、大切に引き出しにしまう。
 日記の主は、このタブレットを大事にしてくれると、
 そう言っていた。
 自分も、そうしたい。
 これは、今はそのひとの物で、
 書き記した大切な記録だから。]*
(15) zelkova 2020/05/21(Thu) 20:01:39
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a3) zelkova 2020/05/21(Thu) 20:21:24

【独】 軍医 ルーク

/*
灰を書く余裕もなくわあわあ転がりまわっていた数日であった。
こう、一挙手一投足から日記の一文一文まで!
心配に! なるよね!!
もうこのうさぎさんどうしてくれよう(もふりたい(大好き

ルークの方も序盤ちょっとどのくらいの描写なのか安定しなかったけど、段々把握できて来たぞ。
こっちの日記に内容が割と中身COレベルなので、気づくかどうかはお任せしつつ…!

あと、シュゼットのロルいつもほんっと好きなんだけど、日記の所の文体とかめちゃくちゃ綺麗。すごい。
(-9) zelkova 2020/05/21(Thu) 20:47:48

【独】 軍医 ルーク

/*
鳩から見るとき、紫窓の色がきれいだなあ…
(-10) zelkova 2020/05/21(Thu) 20:48:48

【独】 軍医 ルーク

/*
進行速度的にそろそろ過去の出来事を落としたほうがいいのだけれど、目の前のロルのお返事に投球するうちに先延ばしになりつつある。
よし、ちょっと書いてから仮眠だ。
(-11) zelkova 2020/05/21(Thu) 20:49:41

【独】 軍医 ルーク

/*
というかそうだよ、折角のもふ設定なのに!
まだもふもふ出来てない!(するような奴じゃない)
それどころか結ぶとか言ってる。
そしてこっちはまだ耳尻尾すら出していない。
(-12) zelkova 2020/05/21(Thu) 20:50:43

【人】 軍医 ルーク

 ―― 
医務室
 ――

[ 叩きつけられた机の上から、
 器具が床に落ちてがしゃりと音を立てる。
 椅子を巻き込んで転び、身を起こすのに少し時間がかかった。

 頬の痣の上、広く貼られた湿布の端に、
 刃渡りの広いナイフが突きつけられる。
 刃先が白い湿布を無造作にはぎ取れば、
 下にある青黒い痣の上に、 滑った刃が薄く傷を重ね、
 一筋開いた傷口から、少し間をおいて、
 ぷっくりと赤い血が球になって流れた。]


 『なあ、状況が分かってんのか?
  いいか、もう一度聞くぞ、
  “あのときあったことを、話せ”』


[ 怒りに我を忘れる寸前といった男の声は、どこか酷く冷えて、
 返答によっては何が起こるか分からない。
 けれども、まだだ。
 ひとはそうそう“思い切れる”わけでもないし、
 最後の一線を越えたなら、どのような処分を受けるのかを
 考える理性も残っているのだろう。
 突きつけられた刃先がぴくりとも揺らがないのは、
 やはり兵士だ。]
(16) zelkova 2020/05/21(Thu) 21:29:58

【人】 軍医 ルーク

 
   前にも言っただろう?
   好きに想像すればいいって。
   君にも分かりやすく説明すると、だ、
   この基地には機密レベルというものがあり、
   皆、それに応じて、
   目やら耳やら口やらを
   上手いこと動かしているものだ。
   君は手が滑りやすいようだから、
   耳と目くらいは言うことを聞かせておけ。


[ 間をおかずに返って来たのは、
 躊躇なく振るわれ、腹にめり込んだ拳の一撃。
 重い衝撃に視界が明滅し、痛みが遅れてやって来る。
 床に崩れて身体を折り、けほ、と咳き込む。
 腹の底からせりあがる吐き気をこらえきれず、
 けれど、また暫く飲み食いを忘れていた胃からは、
 何も吐き戻すものがなかった。
 身体が痙攣するように震え、起き上がれない。

 成程、以前は腹を殴るのを教えてやろうと思ったけれど、
 少しは考える頭があったのかどうか――、
 思考だけがそんな風に冷静で、身を折って蹲る。]
(17) zelkova 2020/05/21(Thu) 21:31:30

【人】 軍医 ルーク

[ 次に衝撃があったのは、頭。
 ざり、と固い感触と衝撃。
 床に打ち付けられた頭がぐらりと揺れて痛み、
 踏みつけられたのだと知る。
 視界の片隅、横合いから飛び出してきたぺんぎんが、
 必死に男の足にしがみ付こうとする。]


  『何だ!?
   おい、邪魔するなって!』


[ 男は驚いた様子で足を振り、振りほどこうとするが、
 頑として離れない。
 ぺんぎんを蹴り飛ばすのには躊躇いを覚えるようだった。
 自分相手なら兎も角、何もしていないぺんぎんに
 暴力をふるうような、そういう性質の人間ではない――
 そういうことなのだろう、おそらく。

 それでも、逆上した相手が何をするか分からず、
 手を伸ばし、ぺんぎんを鷲掴みにして引き剥がし、
 戸口の方へ転がす。
 声は出せなかったが、
 にげろ、と、口の形だけではっきり告げた。]
(19) zelkova 2020/05/21(Thu) 21:33:20

【人】 軍医 ルーク


  『――ったく、
   いいか、これ以上手間を取らせるなら、
   こっちにも考えがある。
   最後にもう一度だけ聞くぞ、
   あのときあったことを、話せ』


[ 突き付けられた刃先が、今度は首筋に傷を作る。
 先ほどよりは明確に、意志を持って。
 何も答えず、視線だけで男を睨み上げる。

 男が刃先に再び力を籠めようとした、そのとき。
 遠くから聞こえてきた『足音』に、
 男の犬耳がぴくりと動き、
 忌々し気な舌打ちの音がした。]
(20) zelkova 2020/05/21(Thu) 21:34:16

【人】 軍医 ルーク


   『いいか、警告はこれが本当に最後だ。
    次はない』


[ 男は足早に、医務室を出てゆく。
 戸口のところに、ぺんぎんの姿はなくて。
 ああ、ちゃんと逃げられたのかな――と安堵する。
 もしかしたら仲間の端末経由で、
 何処かに通報しようとでもしたのだろうか。
 ぺんぎんはいつも医務室にいるが、
 他の連中と没交流ということもなく、
 廊下で他の連中とジェスチャーを交わしている様子も、
 稀に見ることもある。

 足音は、此方に向かってくる。
 腕に力を籠め、起き上がろうとするが、
 どうしても体に力が入らない。
 急患なら対応が必要だが、戦闘があったわけでもなし、
 可能性は低いか――と、そのまま力を抜いた。

 急を要さない要件なら、驚いて逃げ出すか、
 指差して笑って立ち去るかどちらかだろう、多分。]*
(22) zelkova 2020/05/21(Thu) 21:35:30

【人】 軍医 ルーク

  ―― 
着任の日の記憶
 ――

[ 窓の向こうから聞こえてくる喧騒は、遠く規律正しい。
 総司令の後ろ姿に失礼します、と声をかけ、
 所属と名を名乗り挨拶をする。
 黒豹の耳と黒眼鏡の背の高い男が、ゆるりと振り返る。
 人好きのする笑みを浮かべ、
 やあ、待っていたよと目を細めた。]


 『長旅ご苦労、疲れただろう。
  君の経歴は聞いている、
  今日から早速医務室と研究班の両方に
  配属になってもらうよ。
  詳しいことは、
  それぞれの部署で聞いてくれたまえ。』


[ 男は木の椅子にかける。
 華美なところ等一切ない、機能一辺倒の司令室。
 誰が飾ったか、まさか自分で摘んできたのか、
 水飲みグラスに、そのあたりで生えていそうな花が一輪、
 飾ってあった。]
(38) zelkova 2020/05/21(Thu) 23:15:23

【人】 軍医 ルーク


 『軍事基地の勤務経験はなし、か。
  確かにねえ、一昔前の開拓時代なら兎も角、
  この数十年、世界は実に平和なものだった。
  此処は最前線にして、唯一の戦場と言える』


[ 表情も変えず、押し黙って司令の話を聞く。
 フードを脱いで露にした耳も、ぴくりとも動くことはない。
 窓からまた飛び込んでくる遠い喧騒を、耳が捕らえた。
 訓練中の兵士たちの声だろう。]


 『我々が相手取るのは未知の脅威だ。
  けれど、此処の兵士たちの士気は
  中々のものだよ。
  いや実際、私は“人材に恵まれている”。
  出来るなら兵を失うことは極力抑えたい、
  そのためにも、君には期待しているよ』


[ 何処か読み切れないその笑みは、
 “それだけのものではない”。
 この基地で戦う兵士たちを誇りに思い、
 失いたくないという言葉通りの感情も、
 確かにそこに表れてはいるのだ。]
(39) zelkova 2020/05/21(Thu) 23:16:46

【人】 軍医 ルーク


 『いやあ、ところで君の武勇伝も中々のものだ。
  実際、いい読み物だった。
  壁面をよじ登って新種の鳥の巣を観察に行ったり、
  開けたら顔面から頭までピンクに染まる染料爆弾を
  学問所の教師に仕掛けたり――
  ああ、そいつ、
  所属学生にしていた陰湿な嫌がらせが発覚して、
  今は懲戒処分になったのだっけかなあ。
  
  けれど、君なら引手数多だったろうに、
  最前線に勤務することになったというのは――
  “色々と言われることもあるかもしれないけれど”
  其処は事を荒立てずにいてほしいな』


[ 男は靴音を響かせ、近づいてくる。
 黒眼鏡の奥の眼差しが、すっと冷える。]
(40) zelkova 2020/05/21(Thu) 23:17:57

【人】 軍医 ルーク




 『 まだ、皆に知らせる段階ではない。
   あの大穴の向こうに
“何”
がいるのか。
   君がいた研究所にいたのが
“誰”
なのか――…

   我々を殺そうとしている者たちの、正体を。

   物事にはタイミングというものがある。
   今はまだ、早い  』
(41) zelkova 2020/05/21(Thu) 23:18:59

【人】 軍医 ルーク

 『けれど、探りたがる手合いも多いだろうから――
  そうだなあ、彼らには、
  適当な“解答”を用意してやれば、
  一先ずは気が済むだろう。 』


[ 荒唐無稽な噂の向こうに、
 森に紛れた木のような、もう一つの噂を。
 必ずしも事実無根ではない、真実を織り交ぜたものを。
 調べれば確かな情報として、分かることだろう。
 着任した軍医は、研究所で機獣絡みの極秘任務に携わり、
 その研究所で爆発事故が起きた後に、
 最前線に送られたのだと。]


  『ああ、とはいえ、
   困ったことがあったらいつでも相談してほしいなあ。
   何せ私も、若い頃は君の父君には世話になった。
   これも縁だ』


[ 頷き、すべて受け入れる。
 そう、噂の森の向こう、見えるように隠される木は、
 そこまで的外れな代物でもないだろう。
 もし自分に何かが出来ていたなら、
 結末は、変わっていたかもしれないのだから。]*
(42) zelkova 2020/05/21(Thu) 23:21:13
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a5) zelkova 2020/05/21(Thu) 23:29:28

軍医 ルークは、メモを貼った。
(a6) zelkova 2020/05/21(Thu) 23:31:59

【人】 軍医 ルーク

[ 箱を回収してから数日と経たぬうち、
 言い渡された直近の勤務表に眉を顰めた。
 残骸の研究に携わる夜の時間が、大幅に増えている。
 それ自体は、通信機の回収の一件を考えれば
 そこまで不自然なことではない。
 けれど、その分削られていた箇所は何処かというと、
 あのうさぎの『検査』だ。
 自分が一人で検査にあたる時間はおろか、
 複数人で行う検査に参加する機会すらない。

 医療班の班長に何か間違いはないかと聞いてみても、
 研究班の方で急な人出が必要になっているらしい、
 という答えくらいしか得られない。
 それもあながち出任せではないようだったけれど、
 どうしても気になることはあった。
 生憎歯に着せる衣はもっていない性質だ。
 ずばりと、聞いてみた。]
(124) zelkova 2020/05/22(Fri) 21:41:04

【人】 軍医 ルーク

  治療の方針が合わないわたしは
  外したほうが良いということでしょうか。
  あなたも医者なら、
  これはおかしいと分かっているはずだ。


[ 問いただされた軍医はたじろぐこともなく、
 それもある、と頷いた。
 向けられた表情は、形容しづらい複雑なものだった。
 聞き分けのない子供に向ける苛立ち、僅かに滲む呵責。
 けれど、彼は何も肝心なことは口にせず、

 『君の勤務状況も見直しが必要だったからね、
  医者の不養生も程々にしておきなさい。
  行き届かない自己管理は怠慢と変わらない』

 そんな風に、口を噤んだ。
 せめて投薬の方針を――と言い募っても、
 それは参考にさせて貰うよ、と、
 明らかに口先と分かる返答を返されるばかり。]
(125) zelkova 2020/05/22(Fri) 21:41:53

【人】 軍医 ルーク

[ 検査記録を見ることは妨げられなかったため、
 日々の記録を追いながら、
 治療の建前すらかなぐり捨てたような実験めいた処置に、
 後から目を通すことしかできない。
 誰に訴えたところで、軍の方針に行きつく。

 自分には知らされていないところに理由があって、
 その理由は、最初の襲撃の顛末だけではない、
 あのうさぎ自身に関わりがあることだと、
 この頃には、もう確信し始めていた。

 “副作用ではない頭痛は、兆候。
  その前後の様子はよく見ておくように”
   
 記録されていた指示に、
 鳩尾を掴まれたような感覚を覚える。
 通信機を回収に向かった夜、
 箱を見つけたときのことを思い出す。
 頭痛の直後、まるで別人のような様子で、
 『機獣の構造を知らなければ』見つけようもなかった
 通信機を見つけ出した。]
(126) zelkova 2020/05/22(Fri) 21:45:16

【人】 軍医 ルーク

[ 本当なら、報告しなければいけないことだ。
 うさぎの記憶にまつわる手掛かりは、
 どのような細かいことでも申告するようにと
 言い渡されている。

 それなのに、口を噤んでいるのは、
 頭の中の何処かで強く鳴り響く警戒音があるからだ。
 言ってはいけない、口火を切ってはいけない。
 そうしたら、きっと、何かが始まってしまう――
 そんな、予感だ。

 出来ることが、何もない。
 手が届くようで届かないところで行われていることを、
 何もできずにただ見ているしかない。
 そんなどうしようもないもどかしさ、焦燥が、
 自身に対する怒りと自責を連れて、
 空洞の中で煮えている。

 そのような感覚は、
 そこまで時間をかけずに自覚することが出来た。
 この感覚の元になっているものが、
 あのうさぎへの『心配』だと、もう、知っていたからだ。]
(127) zelkova 2020/05/22(Fri) 21:46:43

【人】 軍医 ルーク

 
  ……しかも、
来ない



[ 昼時の医務室、椅子にかけている。
 音を立てて開いた扉にぱっと視線を向ければ、
 ひえっとすくみ上った鹿耳の若い兵士が、
 『部屋を間違えましたー!!』
 と、まっしぐらに逃げ出していった。

 ああ、いつものあれか――と、
 ぷいと顔を逸らした自分が、
 どれほど不機嫌な顔をしていたかを知っているのは、
 いかにもタイミングが悪かったその兵士と、
 机の上で溜め息をついているぺんぎんのみだろう。

 分かっている、向こうも暇じゃない。
 部隊長としての仕事や訓練に加え、検査がある。
 まともな空き時間なんてあるわけもないのだ。

 ―― 無事に、過ごせていられる状態だろうか。]
(128) zelkova 2020/05/22(Fri) 21:48:16

【人】 軍医 ルーク

[ 机の上で、ぎり、と拳を握りながら。
 顔を上げて、ぺんぎんに問う。]


  わたしは、『怒ってる』ように見える?


[ ぺんぎんは、それはもう、とばかりに頷いた。
 “また近いうちに”>>1:362
 その言葉を覚えていたぺんぎんは、
 仲間の伝手を辿って、『いいもの』を調達したようだった。
 とうもろこしから作ったお茶。
 珈琲や紅茶とは違い、苦みも渋みもない。
 戸棚のシロップの瓶の横にそっとしまい込まれたそれが、
 誰のために調達してきたものであるかは、聞くまでもない。

 やっぱりあいつが現れたら、
 最初は苦い物の一つも飲ませてやろう、そうしよう。
 決意を込めて頷けば、ぺんぎんは、
 おてやわらかに……とでもいうように、
 首を竦めたものだった。]*
(129) zelkova 2020/05/22(Fri) 21:49:23
 




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