>>71>>72>>73　アルバリへのお返事

[突いていた頬杖を外して、あたしはアルバリを見つめた。
柔らかなウードの音が、あたしたちの間に優しく流れていく]


そうね…導くにも、あんたのことを知らないといけないもの。
辛かろうと罪に向き合わさせるのは、天使の──あたしの、役目よ。


[アルバリの目が、不安定に揺れていた。
そうしてるとあんたって、本当に迷子みたいね。
つい最近“生まれた”ばかりのあたしよりずっと年上なのに、あたしより子供みたい。
でもきっと…あんたに必要なのは導き決めつけじゃないんだわ]


今から勝手な事、言うわよ。


[そっと、両手でアルバリの手を取った。

いつも“相棒”フォーマルハウトを握っている方の手を]

いいの。答えなんて、すぐに出せないわ。
すぐに出せるなら、あんたはきっとここに居ないもの。


………あたしが、伝えたいのはね。

アルバリに地上に戻ってやり直して欲しい、ってこと。
迷ったままで良い。手探りのままで良いから。

あんたに生きていてあんたであって欲しい。


もし、このまま立ち止まってたら…。
あんたは答えを出す機会すら、失ってしまう。
輪廻転生の輪に迎え入れられたら…アルバリは、消えちゃうわ。


そんなの、かなしいじゃない。

[祈るように目を伏せ、ただ優しく、傷だらけの彼の手を包む]




あんたが生きる意味を、あんたの人生を。
今度こそ、この手に掴んで。

あんたなら出来る。
あたしは、信じてるわ。

>>81　ファルーサ　


　──思わない。


[うねうねと、硬い触手が波打ちながら、手にはべっとりとして白く濁った、喉に張りつく甘さのナニカ。

この状態を『天国』というなら、行きたいとは微塵も思わない。けれど今の返答はそういう意味じゃない。]



　俺は……ただ生きたい。
　……オマエみたいに目的地は、無いけど。　

　ただ生きたい。生きたなって、実感が欲しい。


[人殺しに明け暮れた。それは生きる為に。
似たような場所にいたハズのオマエは、死んでも尚"生きて"いる。]
　

　俺は、強さの番付けに興味は無い。
　目的の為に、人を人とも思わないオマエのやり方、
　…………嫌い。

　殺した相手に復讐なんて、ンな事考えたことも無かった……


[逃げるのに精一杯だったから。明日の敵から、昨日の弱い己から。フォーマルハウトと、一緒に。]

　

・生きるために逃げ惑い、生きるために必要だから強くなった。地上での人生は自分で選んだ道ではなかった。
・もう一度地上へ戻り、生をやり直せるのならば、今度こそ自分の人生を得られるだろうか。
・一見自由そうに見えるナディルだが、何かに縛られているように感じられ、何故か気になる。


　

　　

[あの片翼に告げられたこの己の罪。このカップを握り潰したい衝動に駆られるが、この中味が手を汚すのは御免だった。結果的にナイスチョイスじゃねぇか。ムカつくな。]



　──俺は強くなりたい。

　誰にも何も言わせない……何言われても、　　
　堂々と立っていられる、強さが、欲しい。

　でもオマエみたいに、誰かを蔑ろにもしたくない。
　俺は、俺以外だって、強くしていく……
　そんな風に、強くなりてぇよ……！


[怒りなのか哀しみなのか、理解できない熱さが眼から零れて。愛してたその透明に、吸い込まれていく。間違えてるとしたら、全部だ。やり直せるっていうなら、俺のままで、俺が、正す──"俺"で正したい。]


　
　
[*]

博打狂いの野郎どもと喧嘩したあとの酒はうめえ。
度数の低いやつ限定ね。明日も試合なんだ。

………、
そう、その試合のことで、気になることがひとつ。
隣で気持よく度数の高そうなやつ飲んでる精霊に聞く。

「ナディルは俺の願い叶えてくれたよな。
　あれから試合で勝ちまくりなのは良いんだけどさ
　なんか、足りないなって思い始めた」

一呼吸、おいて。

　「ナディルは俺に勝っててほしい？
　　強いままで在ってほしい？
　　俺、まだそういうの聞いてなかったから」

願いを叶えたあの時から、
ナディルは俺の何を見てきたか。何か変化はあったのか。
そんな初歩的な確認を今さら。