──なァ、いま。ひとつ答えが生まれたよ

　俺は……お前のためになにか願いたい。


[それが可能かどうかなんて、どうでも良かった。ただ、生まれた思いがあったんだ。こんな場所で──生まれるものが、あるんだな。]

慢心しているつもりはありませんでしたが。
アルバリ愛しさに盲目になっていたのでしょうか。
よくありませんね。
自分に呆れてしまいます。


……あの時。

体と同じように傷だらけの彼の心に、そっと……鈍色の罪を流し込み、更に囁きました。

ここで一緒にいましょうと。
変わらなくていい、キミはキミのままでいい。
地上での生という"苦痛"に戻る必要はないと。


それで私は、一旦満足してしまったのです。

……アルバリはほんの少し前まで、決して上地上を見てはいませんでした。
それは確かだと思うのですが。


何がきっかけでしょうか……
同じく戦士の道を歩みながら、立場も目的も全く違うファルーサからの刺激でしょうか。
しかしそれであんなに劇的に変わるものですか？>>99>>100>>101>>102


自らの弱さを認め、偽りの強さを捨て、自分の目指す「強さ」を見据えた、あのアルバリには、ただただ、驚くばかりで。
その変化を見届けられなかった自分ももどかしく。


――しかし、そうであるならば。
アルバリ。

「キミに言わなくてはいけないことがありますね……」

小さく謡うように、つぶやきます。

　

　「、……へー」

うすうす気づいてたけどこいつ、
俺みたいに生死の境で遊ぶようなやつではないんだよな。
フツーに死んじまったんだ。
弱者らしく一度きりの生を大事に抱えてな。

　

"嫌い"だと言われて俺は笑った。
あまりにも言われ慣れていた単語だから。

　「俺は強い。復讐するのは俺の意志だ。
　　俺の人生は俺が決める！
　　お前になんと言われても止めねえ。ほざいてろ」

>>113続き



・あなたが戦いを好むのは、自分が強いということを周囲に知らしめるためだ。
・それを証明する為には他者の尊厳などどうでもいい。
・地上に戻り、自分を殺した相手に復讐したい。
・シャフリヤールの一歩引いた態度がどこか鼻につく。少しちょっかいをかけてみるか。

>>114続き



良い歳したその男のこぼした涙は妖刀に溶ける。
この妖刀は一体どれだけの悲しみを吸ってきたのだろう。

風呂で天使に言われた言葉がよぎる。
闘技場にやってきて、俺の前に立った者どもの中には
おまえみてえなやつがいたのかもしれねえ。

殴り倒して殴り倒して殴り倒して
その後一切、思い出すことさえなかった者どもの。

>>115続き

だがいまや俺はお前しか見ていなかった。
一顧するに値する命が、今目の前で生まれようとしていた。

　　

「はっ。この腰抜けが。
　随分言うようになったじゃねえかよ………！
　
　そうだ。お前の人生を決めて良いのはお前だけ」

生きようとする確かな意志へ、
同じく生きようとするものとして言葉を贈る。

「俺みてえな"嫌い"な野郎に
　せいぜい殺されねえように────強くなれ！」

>>116続き

男泣きするアルバリと、言葉で命を交わす。
拳とか剣とかじゃなくても語れることが、
俺らにはあったんだな。


─────さて。

　「……おい、あんま握りしめてっとカップ割れるぞ。
　　マッサージの設定も切っとくからな」

注意はするものの、アルバリの耳に入ったがどうか。
…………泣き止むまで時間かかりそうだ。

だが、涙を流すのは人間である証だ。
────俺ももうしばらくは
ただ人間として、おまえのそばにいてやるか。

[酒の精気と香の烟けむりに胡乱な景色。
向かいには妖刀と携えた若者]

『アンタは生者の世界に未練なんてなさそうだね。』

[この者もか、何か俺に近しい者のような眼差しを向けてくる……]

未練などという言葉もあったな……そういえば。
貴様にはあるのか？

[戯れに返す。
鎖から伝わるこの者にあるのは、己のみ。
ただ生きることに生きてきた。妖刀の力のままに。
己の生のみ。

ただ、己の器の中に満たすものは―――]

未練がないなら貴様は煉獄で永遠に戯べ。
何もない貴様には生も死も無用だ……。

未練があると言うなら、示せばいい、天使共に、貴様の無様な生とやらを。

[煽る。
俺の関心は、妖刀が何故男を主とし、男を何者とするかであった]