[ただならぬ熱気に、求婚の文だけ残して御主人は踵を返すことでしょう
半壊した都を前に復興の手配を進める中届いた文の返事には「姫と結婚したいと望むなら決して燃えないという火鼠の皮衣をご用意ください」と記されていました]

…爺、火鼠の皮衣とは実在するのか？
書物の中では見かけたことがあるが…
これは遠回しに求婚を断られておるのではないのか？
としても先の熱風騒ぎのこともある、実在するなら防災の備えとして役立つか

急ぎ国中、唐、天竺と探させるとしよう

[御主人が結成させた捜索隊は皮衣を求めて散っていくことでしょう]

[方々へ火鼠の皮衣捜索隊を派遣していた御主人の元へは次々と報告があがっていたようです]

電気鼠の皮衣…？黄色くふかふかしておるがこれは違うだろう！
千匹皮の外套に灰被り姫を助けた鼠の皮…？いやこちらも珍品ではあるだろうが…

やはり火鼠の皮衣とは生半に手に入るものではなかろう
幸い捜索隊の持ち帰った情報から難燃繊維の開発を進めることが出来た

爺、姫にはこちらを贈ろうではないか
[かぐや姫とご家族の元へ美しいつづらに詰められた防災備えが贈られることでしょう
御主人は求婚と言う当初の目的をすっかり忘れてしまったようです]

ん？爺、どうして泣いておる？
目に塵でも入ったか？
[御主人がまたも婚期を逃した気配に爺は悲しみに暮れましたとさ…]