『ひとまず安心ですね。
　私、もう結果を見てびっくりしちゃいましたよ』

安堵がにじみ出たボイスメッセージ。

『ありがとう、ございます』

　同じく、ボイスメッセージで。
　まだすこし何か言いたげな、けれど議論中なので短い声。

テキストメッセージの着信。

『今後くじで票を決めるなら』

ややあって続き。

『ナツメさんが出たら私にしてください』

それだけ。

『後でお話ししましょうか。
　議論を経てお互い考えた事もあるかもしれません』

『それにナツメさんはあまり発言していません。
　少し、その。心配で』

昨日の候補。
もうひとりはあまり発言していなかったから。

『候補から外せってタダで言ってる訳じゃないですもん。
　嫌そうな顔しないでください！』

『この回からですか？』

簡潔に返信をする。

『その通り！……と言いたいんですが、もう表で堂々とナツメさんって言ってしまいましたし私が目立ちすぎるのも……どうなんだろう……』

迷って言う様子でした、が。

『ナツメさんがあぁ言ってますし、次回からでお願いします！』

明日にどうなっているか分かりませんが。

『心配してくれて、ありがとうございます。』

『はい。話したいです。
　ハナサキさんがよかったら…』

　今度の返事は、テキストで送られた。
　

『わかりました！じゃあ合議が終わった後に集まりましょう！
　どこか行きたい場所はありますか？』

すっかり常連になっているカフェでも構わないし、自室や広場、新しい場所だって作り出せるのです。
とにかくあなたが話しやすい場所が良いと思いました。

　話し合いの合間、たっぷりの時間を開けつつ返信。
　ぺこり。恐縮するうさぎのスタンプとテキスト。

『時間とか場所は、合わせます。
　もし特になければ、カフェか図書館でどうですか？』

『じゃあカフェ──』

はダメです。大変なことになったらしい。

『ではなく。図書館に行きましょう！
　合議が終わったらすぐで！』

──そういう運びで今に至ります。
ここは図書館。
ハナサキが訪れるのは初めてした。

「お疲れ様ですナツメさん！
　お元気ですか？」

　OK！スタンプのうさぎが元気に跳ねて、図書館。

「――お疲れさまです。えっと、はい」

　こくりと頷く少女は一度、訪れたことがある。
　読書や調べ物ではなく、人と会って話すためだったけれど。

「ハナサキさんはどうですか？」

　話しながら、閲覧スペースへと促して。
　ソファとテーブル席のどっちか、迷うそぶりを見せた。

「私の方はナツメさんが心配だったのと、まだ選べなくて困っているくらいですね！
　最初からほとんど変わっていません。
　今日からはずっとあんな風にランダムに選ばれて決まるのでしょうか……ちょっともやもやします」

初めてでないらしいあなたに促されるまま、迷う視線の先を見て

「ソファに座りましょうか！」

持ち物もある訳では無い。
あなたの傍で落ち着いて話が出来る方が良かった。

「もやもやはするんですけど……」

　うまく言えないまま、けど、の続きはなく。
　ぽすん。少女はソファに腰を下ろして、ぽつり。

「……カミクズさんに、入れなかったんですね」
　

「……けど？」

今日は色々聞こうと思ってここに来ました。
ハナサキはあなたの左隣りに座ります。

「ダメでしたか？」

「ダメとかは、よく分からないんですけど。
　……でも……あの。」

　体の左側、ソファの中心に重心が寄った。
　あなたの方を向いて、話をする。

「怖く、ないんですか？
　……死ぬかも、しれないの」

「怖いですよ。
　私だって死にたく無いと思っています」

ソファを沈みこませてあなたに体を向けます。

「でもそんな自分の気持ちと同じくらい、自分だけ生き残ればいいとは思いたくないって気持ちもあります。
　結局私が決めかねているのは其処かもしれません」