人狼物語 三日月国


147 【ペアソロRP】万緑のみぎり【R18G】

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【人】 闇の精霊 アルカード



 …。


[娘の口許に掌を添えると、
白い手袋に覆われたその掌越しに娘に口づけた]
(45) 2022/05/28(Sat) 5:35:35

【人】 闇の精霊 アルカード



 おやすみ、娘よ。


[ちゃんと、あたたかくして寝ろよ、と。
その身体に毛布を掛け直すと、娘の部屋から朧気に姿を消した]**
(46) 2022/05/28(Sat) 5:35:55


 嗚呼、インタリオ様……嬉しい
 貴方だけが、僕の生きた意味だ

[悪魔と魔術師とを繋ぐのは隷属じみた契約関係で、
向いた感情の種や、ズレた互いの愛の概念について語らうことは無い。

それは恐らく必要も無いことだった。
主は育て上げた仔の捕食を、下僕は終焉を望んでいるのだから。

故に私は、最期の願いが容易に受け入れられたことに悦びを感じた。
これで、何一つ成し得なかったと思いながら死ぬことは無いと。

恍惚と彼を呼び、
触れた身体が離れていくことに惜しさすらも覚えて────]



 ……え?

[一瞬でその熱が冷めてしまった。
聴覚に置き去りにされた思考は、一つ一つを掬い取り追いついていく。

主がこの身に飾った、ブローチとネックレス
人間の魂を加工し作品とする、芸術の悪魔


じわじわと湧き上がる悦びではない何かに名前を付ける前に、
悪魔の昔話が、逃避出来ない真実を告げた。]

 
は、……嘘
   なんで、どうしてそんなこと……


[信じられないものを見る目で、誇らしげな笑顔を見つめた。

悪魔に学びを授かる自分を見守っていたものは、
その下僕となり、邪悪な行いを繰り返した魔術師の胸元にあったのは

惑う声は体現した影の花により長くは保たなかった。
突然の出来事への悲鳴すらも、黒に呑み込まれて消える。*]



何で?


[ 気づけば仔は静寂に包まれる黒一色の世界にいる。
  濃すぎる闇の中、己の身体すら視認は出来ない。
  そして指先一つ動かせはしない。

  まるで黒い袋の中にでも囚われたようだ。
  布の感触もまた、当然感じるわけもないのだけど。

  そんな彼の耳に聞き慣れた主の声が届く。
  目前に黄黒の瞳だけが二つ浮かんだ。
  この黒い世界そのものが悪魔の身体であるかのように、
  他の部分はどれ程目を凝らしても見えず、闇に溶けている。]



むしろしない選択があるの?
家族全員を別の形でオレの物にして揃えるなんて
今までしたことも無かったんだよ。いい機会だったろう?

でも、こんなに永く大切に使うことになるとは思わなかった
だから、お前は本当に特別だよ。ゾラ


[ こうしてかつて忌んだ名前を、何度も呼んでやる程に。

  ゲヘナから隔絶される前の言葉を拾い
  悪魔の語る全てに、悪びれた様子や悪意は乗らない。
  細めた両目はじっと愛し仔を見つめる。

  これで最期だから、忘れないことを願われたから。

  どうしようもなく、両者は重ならない。 ]



愛しているよ、オレの大切な仔

特別なお前の願いを叶えてあげる
終わっていく姿を、最期まで見ているからね


[ 笑みの気配が声に乗る。

  どこまでも穏やかに、
  拾い仔への愛を人ならざる者の価値観で、示す。 ]



[ 倒れた瓶からワインが滴り、机を汚している。

  その傍ら、大きな黒い花は今は蕾のように閉じて
  消えた二人の声など書斎には届かないが

  
何かを砕き、へし折るような音だけが断続的に響いている。


  床まで流れた真紅はまるで、血の代役をしているかのようだった。 ]*



[私には最早怒る権利も、そうする気力もありませんでした。

思い出の殆どを失い、
母親を無残な姿に変えられ、父親に裏切られた記憶だけが鮮明な今や
蘇らせる愛情も無いのです。

私に残されたものは彼らではなく、
彼らを天に還さず我が子の側に留めていた悪魔であることに
今尚、変わりはありませんでした。

湧き上がったものはきっと、ただただ純粋な絶望なのでしょう。]



[母親と二人、見渡す限りの緑の中で

それは、生きたまま身を砕かれ喰われていく痛みに襲われる前
最期の正気が思い出させた記憶。

最早音でしかない叫びが口から漏れ続けるのと裏腹、
どこまでも穏やかな光景。

やはり、悪魔の仔と化した私は彼女の声を忘れたままで────*]

【人】 闇に溶ける者 インタリオ



[ 館中の翠の光が、外のものも含め一斉に消えた。

  ゲヘナは闇に包まれる。
  再び、その必要が来る時まで──── ]**
(47) 2022/05/28(Sat) 6:21:54
―― 翌日/学園にて ――

[ それは、いつものように授業を終えて
 図書館へ立ち寄ろうと考えていたときのこと。 ]

『アウローラさん』
『……ちょっと、いいかしら?』


 あ……。


[ 突然話しかけられて、言葉に詰まった。 ]


 ……マティルダ様。



『話があるの。
 貴方たちに関する、大事なことよ。

 一先ず、わたくしと一緒に来て下さらないかしら?
 人払いはすませてあるから、安心して』


 えっと……、…はい。わかりました。
 
 
[ ……いろいろ、思うところはある。

 さっき、彼女は『貴方たち』と言っていた。
 それはつまり…わたしだけではなく、
 彼のことも既に把握しているということだろう。

 嫌な予感はする。
 けれど…とりあえずわたしのほうに選択権はない。
 いつのまにか強く握りしめていた掌を
 緩く開いて息を吐く。
 そうして、彼女に促されるまま、踏み入れたのは。
 学園内にある小さな礼拝堂。 ]

[ 人気のない、だけど手入れの行き届いた礼拝堂の中を
 ステンドグラスから差し込む淡く色づいた光が照らしている。
その中の一席に優雅に腰掛けると、
こちらにも座るようにと、傍らの席を手で指し示す。 ]


『単刀直入にいうわ。
 …貴女、転生者なのでしょう?』

 …っ。


[ 席に座るのとほぼ同時に言われた言葉。
 覚悟はしていたはずなのに、
 反射的に身構えてしまった。
 それが表情にも出ていたのだろう。
 こちらを安心させるようにと
 彼女の表情を柔らかくなるのがわかった。 ]


『そんなに緊張しないでほしいわ。
 何もとって食べようというわけではないもの。
 ……ただ。
 いいえ、寧ろといったほうがいいかもしれないわ』


[ そういうのと同時に、彼女が深々と頭を下げる。
 戸惑うわたしの言葉を遮るようにして、彼女は言葉を続けた。]


 えっと…。

『ごめんなさい』


[ 彼女の艶やかに色づいた唇から発されたのは
 わたしとしては意外な言葉だった。]

『わたくし、貴女も転生者だと思わなかったの』

『だから』

『貴女に、わたくしの代わりになってもらおうと思っていた』

……!

[ ――…そうして、彼女は言葉を続ける。

 自分もわたしと同じ転生者であること。
 何れ、自分が闇の精霊に取り憑かれ
 破滅の道を歩むであろうことを悟った彼女は
 そうならないために攻略対象の不幸な過去を変え、
 彼らの愛と信頼を得た。

 だけど、それだけでは本当に
 運命を書き替えられたかはわからない。

 何れ、わたし…『本来の物語の主人公』が出てくれば
 書き換えた物語は修正されてしまうかもしれない。
 そしてそうなったとき、自身の破滅は
 避けられない運命になってしまうかもしれない。 ]

[ マティルダの…彼女の前世は、
 嘗ての「私」以上にこのゲームに詳しかった。

 『夜明け告げるは星の唄』の、少なくとも本編には
 登場人物全員が救済されるルートは存在しない。
 本来の物語上で、悪役であるマティルダが、救われることはない。

 いつだって、彼女は孤立し自身の心の中に闇を育て、
 そしてラスボスである闇の精霊を此の地に召喚し、
 愛する王子や世界を危機に陥れる。

  ……だから、彼女は。
 主人公わたし物語の悪役マティルダ
 『物語の役割』そのものを入れ替えようとした。
 『攻略対象の彼らを癒し愛される公爵令嬢』と
 『嫉妬心から嫌がらせをし、
  やがて孤立して破滅の道を辿る
  平民出身だけど特別な女の子』へ。
  そう、シナリオを書き換えた。

 最初から全てを作り直すのではなく、
 予め存在した運命の通りに、物語を紡ぎ直す。
 そのほうが万が一があったときに、
 予測と修正がしやすいから。

 ……そんな、理由で。 
 彼女はわたしに
 『悪役としての役割』を押しつけたのだという。]

[ わたしから嫌がらせを受けているように
 攻略対象や周囲の人間たちに見せかけて。

 わたしに関して良くない噂を広めて。
 教師たちにも同じように手を回して、
 そうして、わたしの周囲から人がいなくなるよう仕向けた。

 わたしが、光の魔力を持っていることで 
 他の人たちが迂闊に手を出せなくなることも見越したうえで。

 そうして、わたしが本来の彼女と同じように
 孤独と絶望から世界の破滅を願うよう仕向けたのだと
 そうして、闇の精霊ラスボスごとわたしを倒して、
 ゲームの結末通りの大団円…犠牲を極力少なくした、
 最大多数の幸福を、描こうとした。 ]


 …。


[ 言葉に詰まる。
 それはつまり、この学園でのわたしが経験した全ては 
 彼女によって仕組まれていたということで。 ] 


 …どうして、

[ ―――…今、そんなことをわたしに教えるのか?

 此方の呟きに、彼女は続けた。

 …最初に感じた違和感は、
 星燈祭の後にわたしを見かけたときのこと。

 本来のゲームならあの時点でマティルダは
 闇に取り憑かれて、半ば自我を失い
 ただただ、周囲の人間たちへの嫌悪を深める
 そういう 生き物ニンゲン になっているはずで。
 わたしもきっと同じようになっているはずだと
 彼女は考えていたらしい。

 ……でも、あの夜の後に廊下ですれ違ったわたしは
 それまでと何も変わらないように見えたのだと。

 そうして、彼女は考えた。
 アウローラもまた、自分と同じ転生者なのではないか、
 特別な存在なのではないか、と。
 だから、闇に取り憑かれることもなく、
 正気を保てているのではないか、と。 ]

[ 彼女は……悪役令嬢マティルダはわたしにいう。
 主人公アウローラを物語の犠牲にしようとしたのは
 自分と同じ転生者だと知らなかったから。
 知っていたら、わたしを
 自身の物語の生贄にしようとはしなかった、と。
 だから……『ごめんなさい』と。 ]
 
 
 …。
 
 
[ そう言って涙を零しながら頭を下げる彼女に、
 なんていったら、わからなかったけれど。

 それ以上に、彼女が続けた話には
 更に言葉を失うことになった。 ]

[ 物語の進行は止められない。
 最初にこの物語を書き換えたマティルダにさえも。

 近く、攻略対象たちによる断罪イベントが発生する。
 それによって物語の悪役わたしは裁かれる。
 大切なことは真実ではなく、誰かが悪役として裁かれ、
 そして悪役を皆で滅ぼして大団円。
 そこまでの、道筋なのだと。

 ―――…よって、生贄が出ることは避けられない。
 大団円ハッピーエンドは皆が望むものだから。
 誰にも、止めることはできない。 ]


 『だから、ね。貴女をその生贄から外すことにしたの』

 『筋書きはこう』

『闇の精霊に取り憑かれた平民の女の子を助けるために、
 王子や公爵令嬢たちは皆で協力して闇の精霊を倒しました。
 そして、闇の精霊に囚われていた女の子を助け出し、
 みんなでハッピーエンドをむかえました。
 めでたし、めでたし…ね』


[ 切れ長の瞳に真珠のような涙を煌めかせながら、
 華やかな笑顔で、艶やかな唇で
 彼女が口にした物語は、
 わたしにはとても堪え難いものだった。 ]

 

 …アルカード……!!
 

[ 反射的に礼拝堂を飛び出そうとした
 その手を白い繊手が掴む。
 見た目に反したその力の強さに、
 反射的に其方を振り向けば。 ]

[ ―――…彼女は、微笑っていた。


 悪意なんて欠片もない、純粋に善意に満ちた
 きっと誰もが美しいと形容するだろう笑顔。


 だけど、その笑顔は
 『わたし』を必要としていない笑顔だった。

 わたしの意志も、願いも、選択も、
 なにひとつ、尊重するつもりのない笑顔だった。
 ……それが当たり前であるかのように。 ]


 『どこへいくの?』
 『大丈夫。
 貴女を捕らえている闇の精霊を倒すために
 皆、力を合わせて戦ってくれているはずよ。』

 『貴女も知っているでしょう?
 王子様方もわたくしの義弟も、皆とても強いわ。
 わたくしと一緒にいれば、皆、貴女を守ってくれる。
 貴女を受け入れて、大事にしてくれるわ。大丈夫』

『この戦いが終わったら、学園の人たちにも
 きちんと説明しないといけないわね』

『闇の精霊はわたくしたちが倒しました。
 皆安心して、アウローラさんとも仲良くしてね…って』
 


 ……っ!!?

[ 「肌が粟立つ」という言葉を、
 今、この瞬間ほど感じたことはなかった。 ]


 はなして…ッ
 離してください!!
 わたしは、わたしは……!!

[ 言いながら掴まれた手を振りほどこうとしたときだった。
 ――…パチンッ、と強く何かに弾かれるような感覚と同時に、
 マティルダの手が離れた。

 それを確認するのと同時に、わたしは礼拝堂の扉から
 外へと一目散に駆け出した。 ]


[ 迷う暇なんてない。
 彼は、アルカードは無事だろうか? ]
  

 アルカード……!


[ マティルダは言っていた。
 闇の精霊アルカードを倒すために戦っていると。

 彼が強いことはわたしだって知っている。
 だけど、胸騒ぎがするのを止められない。

 だって、彼がどれほど強くて恐ろしい災厄であったとしても。
 ―――ラスボスは必ず封印されてしまうのだから。

 どうか無事でと、内心で祈りながら
 誰もいない、図書館までの道程を駆け抜ける。 ]*

 




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