人狼物語 三日月国


149 【R18身内村】LOVE OR ALIVE

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【人】 雨宮 瀬里

 

 世界に色がついた不思議な感覚だった。
 といっても、劇的に何かが変わったわけではない
 
 ただ、私はこのマニキュアを当然思い出せるし
 貴方と過ごした日々を当然のように思い出せる。
 clarityだって当然知ってるし、灯歌のことも憶えてる
 
 思い出そうとして思い出せなかったいろいろが
 思い出そうとして思い出せるように、なっただけ

 恋矢は抜かれたはずなのに、
 貴方への恋心は、忘れたあの日と変わらないまま

 
 「 ……… ただ、いま?? 」


 状況が呑み込めずに、私は貴方の両の目を見る

 そう、違っているのはたったのふたつ。
 私の指に赤い色が灯っていることと
 貴方があの日から、眼帯をしていなかったこと。

 
(0) 2022/05/31(Tue) 11:15:32

【人】 雨宮 瀬里

 


 …………ん?「おかえり」??


 
(1) 2022/05/31(Tue) 11:15:46

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……蓮司、憶えてた、の?
   え?いつから……??? 」


 記憶が戻ったなんて知らないから。
 おかえりという言葉に違和感しかなくて
 怪訝そうに貴方のことを見つめてみる

 
   だけどそこには大好きな貴方の顔があって
   怪訝そうに見つめたはずの私の顔も
   数秒もたずに緩んでいくんだろう

   そう、多分
   私たちは上手くいった≠だ。 *


 
(2) 2022/05/31(Tue) 11:16:18

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 次の日!? 」


 怪訝そうな顔は緩む前に一度驚いた顔を見せる
 きっとそれはよく知る私の表情のひとつ。

 なんだ言ってくれたらよかったのに、とか
 なんで私のほうが遅かったんだろう、とか
 ぶつぶつ文句を言うのは、もうちょっと先のこと。

 だって、それよりも先に、
 私たちには幸せな時間が、訪れたから。

 
(5) 2022/05/31(Tue) 14:34:32

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……! うん。
   私も、蓮司と一緒に暮らしたい。
   これから先、…ずっと、ずっと。 」


 貴方の顔が間近にあって、
 私はいつもの幸せな笑顔を見せる。

 腕を伸ばして貴方に抱きつこうとして
 一瞬塗りたての小指と薬指を気にしたけれど
 そんなことよりも、貴方に触れるほうが大切だった。
 だから小指のネイルはほんの少し剥がれた


 
(6) 2022/05/31(Tue) 14:35:34

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 蓮司、大好き 」


 たとえ恋をうしなったとしても、
 またお互いに、
をする。

 私が貴方に恋をするのは、運命?必然?
 そんな畏まった言葉で表さなくたっていい

 
(7) 2022/05/31(Tue) 14:35:55

【人】 雨宮 瀬里

 


  だって、それは当たり前≠セったもの。 *


 
(8) 2022/05/31(Tue) 14:36:10

【人】 雨宮 瀬里

 

 ……ところで。

 綺麗な薬指と、剥げた小指のネイルはどうしたかって?
 きっと、翌朝出かける前にリムーバーで取り除いたの。


 「 紅い爪に似合う指輪を選んでも意味がないもの 」


 ずっと大切にする宝物だから
 いつもの私に似合うものがいい。


 
(10) 2022/05/31(Tue) 21:08:43

【人】 雨宮 瀬里

 

 私にとっては二度目の初恋。
 私と蓮司の、二度目の初週末デートの日。

 貴方を好きだと再認識した
 大好きな友の歌声や、背中を押してくれる音が無くても
 私は自然に貴方を好きになっていた。

 記憶を取り戻す前も、取り戻した後も
 貴方を好きなことに変わりはないけれど、
 
 ……ほんの少し、浮かれていたのは
 これから先の未来を、誓ったあとだから?
 それとも、大好きな貴方のすべてを思い出した後だから?


 
(11) 2022/05/31(Tue) 21:09:04

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 そういえば、目。
   本当に平気になったんだね 」


 指輪選びが滞りなく終われば
 私が住んでいる街よりか、随分華やかな街の一角で
 私はそんなことを蓮司に尋ねる。

 眼帯をしていない蓮司だけが
 記憶を取り戻した今も、何か不思議な感じのままで。

 天使の羽根はどうなったんだろう。
 どうして目が治ったんだろう。
 ……これはね、ちょっとした興味本位。

 そんな興味本位もしっかり口に出して、
 私は貴方の目を覗き込んでいた。 *

 
(12) 2022/05/31(Tue) 21:09:19

【人】 雨宮 瀬里

 

 天使の羽根は、まだそこに存在していた。
 紅い瞳の奥に浮かぶ、白い羽。
 どうやら蓮司の力が強くなったせいで、
 恋熱病とやらにかかってしまったらしい。

 恋熱病… 私ももしかしたら罹ったことがあるのだろうか
 きっとあったとしてもただの風邪、で
 済ませてしまっていたんだろう。


 
(15) 2022/06/01(Wed) 10:58:27

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 会社を? 」


 そんな蓮司から飛び出したのは
 私にとっては意外な言葉だった。
 
 恋天使には縁を結ぶ手助けをしている人も多いと聞く

 縁結びの神社の巫女だったり、結婚相談所だったり
 占い師だったり、白羽トラベルのような業界だったり。
 
当然恋が叶うカクテルを出すバーテンダーも然り。


 自分の力を持て余している私にとっては
 恋の手助けをするという夢を持った蓮司が、
 素直に輝いてさえ見えた。

 
(16) 2022/06/01(Wed) 10:59:23

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 素敵ね。いいと思うの。
   恋天使にしかできないことを
   うまく生かして仕事にできたら最高ね 」


 ビジネスをどう成り立たせるかは
 きっとこれからなのかもしれないけれど。
 それでも恥ずかしそうに話してくれた蓮司に
 私はにこりと微笑んだの。


 「 私も、何か蓮司を支えられたらいいけど…
   半人前の陶芸家の出番は…ないかな?
   何か私にできること、してもらいたいこと、
   あったら、何でも言ってね 」


 そんなふうに、笑って。

 
(17) 2022/06/01(Wed) 10:59:37

【人】 雨宮 瀬里

 

 きっと蓮司のビジネスにかかわることでは
 役に立てないと思うけど。
 
 私ではあの人の役に立てないから
 ── 恋をする前、かつての私はそう言った


 だけど本当は何か、貴方の役に立ちたい
 話を聞いてあげることくらいは、
 きっと、私でもできるから。

 ううん、きっと、
 私にしかできないことが今はあるから。

 だから。何でも言ってね、って。 *

 
(18) 2022/06/01(Wed) 11:00:22

【人】 雨宮 瀬里

 

 ただそばに居てほしい。
 そんな言葉に、私は「えー、それだけ?」なんて
 口を尖らせてみせるけれど、
 だけど、本当はその言葉が一番うれしかった

 ありのままの私でいい。
 私が選んだ、私でいい。

 ありのままの私でも、貴方が喜んでくれるなら。


 「 そうね、じゃあ素敵なカフェでも行きましょうか
   ねえ、王子さま? 」


 従者のように見えるのかも、なんて
 貴方はまた考えるのかもしれないけれど
 私にとっては、唯一無二の、王子さまだから。

 
(21) 2022/06/01(Wed) 18:22:38

【人】 雨宮 瀬里

 

   * * *

 それからふたりで一緒に暮らし始めるまで、
 あまり時間はかからなかったのかもしれない。

 私は都会までは出られなかったから
 貴方の仕事の都合がつけば、
 家はほんのすこしだけ陶房寄りの場所を選んだ。

 週末デートはなくなったけど、そのかわり、
 朝起きれば貴方の顔が傍にあって、
 眠るときも貴方とずっと一緒だった

 家の中には貴方のものと私のものが半分ずつ。
 お揃いの歯ブラシ、お揃いのマグカップ。
 なにげない当たり前が増えていく日常が、
 こんなにも、幸せに思えるなんて。

 
(22) 2022/06/01(Wed) 18:22:56

【人】 雨宮 瀬里

 

 ──── 結婚式は、盛大には行わなかったの。

      だけど私は
を語る。

 
(24) 2022/06/02(Thu) 9:13:45

【人】 雨宮 瀬里

 

 恋の叶うBARを貸し切りにして、
 あの時の恋天使仲間をみんな呼んで同窓会をしたいな。
 BARがふたつある?集まりやすいほうでいいけれど
 バーテンダーがふたりいるから、
 いろんな味のお酒が楽しめそうじゃない?

 お願いしたら歌姫には歌ってもらえるかな。
 ほら、私たちなんかよりも早く結婚したふたりもいるから
 みんなを祝福するような恋の歌を。

 美味しいお野菜は農家の彼に任せよう。
 その時には私、自分で作った大皿、持っていくね。
 トマトととうもろこし、それからきゅうりも忘れずに。

 あとは手先が器用なふたりには
 私からこっそりお願いをするの。

 ひとつは手作りのリングケース
 もしできるならあの子に作ってもらいたいなって
 
 そしてもうひとつは、お揃いのアクセサリー
 これは婚約指輪のお返しに。
 私と貴方でお揃いの何かを作るなら
 やっぱりあの子にお願いしたいな、って。

 私の夢が、どこまで叶ったのかは………どうかな。

 
(25) 2022/06/02(Thu) 9:14:59

【人】 宮々 瀬里

 

 そして、これは

 貴方が
売り
にしてた珍しい苗字≠ェ
 私に冠されてから、またしばらく経ったころの話。

 
(26) 2022/06/02(Thu) 9:15:41

【人】 宮々 瀬里

 

 天使が降りてきたかのような美しいステンドグラス
 いつもは観光客でにぎわうその場所も
 その日は数時間だけ私と貴方の貸し切り。

 厳かな雰囲気の中、
 ウェディングドレスに身を包んだ私と
 タキシードに身を包んだ貴方は
 あの日と同じ、大聖堂の入り口に立っている

 あの日と違うのは、
 あの日は黒、今日は白。
 私を包む色くらいだったかも。


 
(27) 2022/06/02(Thu) 9:17:03

【人】 宮々 瀬里

 

 結婚式を挙げない夫婦や
 結婚したい恋人同士のための、
 花の都での、記念撮影。

 ……それを企画したのはもしかしたら
 恋を後押ししたい≠ニ願った
 どこかの新規事業だったかもしれないけれど


 
(28) 2022/06/02(Thu) 9:17:26

【人】 宮々 瀬里

 


 「 入口から舞台まで手を繋いで入場して、
   この場所で愛を誓ったカップルは、
   生涯ともに在るそうよ? 」


 あの日は知らなかった大聖堂のジンクス
 今日はばっちり知っている。

 そんなジンクス、きっと私たちには必要ないけど
 だけど私は、貴方としっかり手を繋ぐ。
 指を絡めて、決して離れないように。


 
(29) 2022/06/02(Thu) 9:17:51

【人】 宮々 瀬里

 


    あの日、貴方に今までで一番幸せかって
    そう聞いたら、貴方は首を横に振ったね


    『 一番幸せだと思えるその日まで
      私と、一緒にいてくれますか 』



    …これはいつかの声。

    あの日から、何度、私たちに
    一番幸せだと思える日が訪れたかわからない

    だけど、私と貴方はこれからも
    ずっとふたり、離れずにいるの


 
(30) 2022/06/02(Thu) 9:18:44

【人】 宮々 瀬里

 

 ……なんて考え事をしていたら、
 カメラマンさんに舞台のほうまで歩くようにと
 促されたから、私は貴方を見上げて微笑む。

 貸し切りといえど、
 ちゃんと私たちを切り取ってくれる誰かは居たから
 いつまでも浸っているわけにもいかなくて。


 「 蓮司、行こっか 」


 大聖堂、舞台のほうに足を進めようかって
 私は、蓮司を促した。

 もちろん、数多くの恋人同士のように、
 手はきちんと繋がれたままで。 *

 
(31) 2022/06/02(Thu) 9:19:02

【人】 宮々 瀬里

 

 微笑み合って、手をつないで。
 色とりどりのステンドグラスで彩られた舞台へ
 一歩ずつ、一歩ずつ、ゆっくり歩いていく

 
   きっとね
   明日からの毎日も、
   今までで一番幸せだって言えると思う
   だって、貴方と一緒だから


   
 シャッター音が私たちの一瞬を切り取って
 それが少し面白くて蓮司に向かって微笑んで
 ほら目が合ったこの一瞬だって、
 カシャリ、と後ろから音がした。


   私たちが選んだ道。
   あの時離れなくて本当に良かった。

   ううん、離れていたとしても
   記憶が戻ったら、また
   貴方を探し求めていたかもしれないけれど


 
(37) 2022/06/02(Thu) 19:15:55

【人】 宮々 瀬里

 

 神父さんがいるわけでもない舞台だけど
 神様を特別信じていない私たちには
 これくらいがちょうどいいのかもしれない。

 私たちは向かい合う
 その一瞬でさえ手が離れるのが惜しくて
 指先はゆっくりと離れた

 そんな表情も、貴方に向かい合って照れた顔も
 眩しそうに見上げる表情も。
 全部、全部、カメラに収められていく。

 
 「 誓います、とか言えばいい? 」


 こういう時なんていうのが正しいんだろう。
 結婚式ではないから、言葉に困って微笑んだ。
 微笑んだのは…それだけじゃないけど。
   
  
私の花婿さんが、世界で一番素敵だったから


 
(38) 2022/06/02(Thu) 19:17:10

【人】 宮々 瀬里

 


    それから ───



 
(40) 2022/06/02(Thu) 21:12:13

【人】 宮々 瀬里

 

 朝、テーブルにはふたつのマグカップが並ぶ

 ひとつには、ブラックのままの珈琲
 ひとつには、お砂糖とミルクをたっぷり入れて。

 棚の上には大聖堂での写真と、
 どこかのBARで集まったときの写真。
 それから新婚旅行で現地の民族衣装に身を包んだ
 私たちが微笑む写真が飾られている。

 互いに忙しいから
 お昼は離れ離れかもしれないね。

 今年の冬、個展を開けることになったの
 そんな嬉しい報告から暫くは、
 私もアトリエに籠りきりになったりしたけれど
 それでも夕飯は必ず貴方と食べるのだって決めていた

 
(41) 2022/06/02(Thu) 21:13:16

【人】 宮々 瀬里

 

 ほんの少し離れているだけでも、
 いつだって貴方に会いたい、そう思う気持ちは
 週末デートのころと、なんにもかわらない。

 そうね。いつだって、毎日同じ感情を繰り返す。
 だけどそれが、たまらなくうれしくて、
おしい。

 
(42) 2022/06/02(Thu) 21:13:41

【人】 宮々 瀬里

 

 私は、毎日貴方に恋をしている。


 
「 会いたかった 」



 貴方に会えて、第一声はいつだって同じ。
 私の両の瞳は、貴方のふたつの綺麗な瞳を映して。
 その距離が、一歩、近づいたなら ────── 、

 
(43) 2022/06/02(Thu) 21:14:11
 




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