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人狼物語 三日月国


176 【R18】実波シークレットパラダイス外伝【身内】

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榑林 由希子! 今日がお前の命日だ!

/*
ランダムで初日からやられるところだったんですけど?許せなくないですか。

/*
元気に味方の背中を撃ちかけて草ァ!!!

【見】 開発部 加賀山 紗矢

 
「や〜……やー…。………
あ、わっ!」


こちらもこちらでうっかり足をぶつけた上に、丁度中身が少なかったコーヒーカップを盛大に落とし、
ガシャン!!ガラガラ……
と少し騒々しい音を立てた。

画面に目が釘付けで、口元に拳をやってひえ…とばかりにその様子を見つめている。
少しだけ調子が違うとすれば、色々沸き立つというよりはむしろ逆で。

「……んんー……これはちょっと……
……大丈夫かな……」


と、痴態への興奮よりも先に浮かぶのは別の色。
血の気が引くまではいかなくても、少し気分のすぐれない顔で椅子に座り直して、カップを戻した。
(@4) 2022/09/25(Sun) 23:22:34
「……」

次の日のアロマの香りはまた別のものに。今日は一度換気をして風通しをよくしてからラベンダーの香りを用意した。

しかし、当の本人の顔色がものすごく悪い。
体調不良でもなさそうだが、様々なことがよくなさそうなそんな雰囲気だ。

「死にたい……」

これはもしかして。
彼が言っていた、死にたいと思うほどのこと性癖暴露がその身に起きたにちがいない。


「ただいま戻りました〜!!」


「いやあ、いざ秘密を白日の下に……という段階になって
 どうすれば緑郷の仕業とバレないかを考えていなかった時は
 それはもうどうなる事かと思いましたが……
 社長に手伝って頂けばいいというのは盲点でした!」

朝食の場で、社長を除けば初の開示例が出た後の事。
恐らく一番このゲームに乗り気であろう狼は今日も楽しげだ。

口振りから察するに、どうも記念すべき最初の襲撃は
とっても行き当たりばったりな犯行計画だったらしい。
それでも案外なんとかなるものだ。


「………ご愁傷さまです?」


部屋に入って昨日と同じに席に着けば、
アロマの香りが変わっている事と、鹿籠の様子に気が付いて。
何らかを察して心の中で合掌した。
心なしか昨日より色褪せてすら見えるような。気のせいです。

「来るんじゃなかった、
あぁあああ


性癖を暴く陣営に宛がわれた部屋で奇声を発しながら悶える引きこもりを見られるのはここだけ。

「なっ、は、え?緑郷聞いてくれますか。この僕に何が起きたか聞いてくれますか、それと救っていただけませんか?
介錯をして下さい。」


「………?????……??……………???ええと……」

「まずはお話を伺ってみないことには……」


事の次第によっては介錯するのか?

「お話?何を話せと」


聞いてほしいと言っておいてこの様だ、相当パニックになっている。

「……まだ、この会社の中では僕たちは若いので皆さんを先輩や上司と括らせていただくのですが……。
たった一日で二人に僕の性癖がバレてるんですよどういうことですか?

社長の差し金ですか、僕の管理能力が悪いんですか?
ばっ、……はぁ!?

今朝みたいなバレ方の方がどれだけよかったか!
こっちは現場押さえられてるんですよ殺してください――――
榑林さんで例えれば猫耳尻尾つけてポーズ決めてるところを見られたんです、耐えられません死にます」

「死にたいってそういう意味じゃないですからね。楽にするために社長に差し出すなんてそんなこと本当にやめてください、後生ですから運悪く舞台に上がるだけで許してください。
本当に僕はっ、
真面目に仕事をしているけどエロいことよく考えてるぐらいなんですって!それぐらいこの会社の社員は全員してるんですよ!」


暴 言。


「やっぱり女性陣の性癖を暴くのは正解でしたね。
 こんな醜い悲鳴を聞かせられるわけありませんから」

コンコンコンッ。ノックしてからなんかいい感じの部屋に。
……部屋に来たけど。どういう状況だろう。

部屋の外にも声が響いてそうなくらいの凄い声が。

「……………凄いですね」

思わずそのまま口に出して。
最早全員にバレた勢いで叫んでいる鹿籠に何とも言えない視線を向けた。


「あっもうかなり乱心していらっしゃる……」


むしろ誰にも知られたくない性癖の動かぬ証拠を
一日に二度も誰かに抑えられて平静で居られる方が少数派だ。
そりゃそう。しかし緑郷はお気持ちお察し申し上げられない。

そして急に落ち着きましたね。

 まあ、鹿籠さんがここで死んでしまったら
 その性癖を知ってしまった方々が野放しになるわけですから…
 
口止めをしてからでも遅くはないのでは?


死んだ後の事なんては死人に関係のない事、とはいえど
与り知らない所であれこれと尾鰭を付けられかねないのもな。
とはいえそこは知られてしまったのが誰かにもよるだろうけど。
生きる理由がそんなのでいいのか?


「あっ、雲野先輩もいらっしゃったんですね。
 鹿籠さんは色々大変だったみたいですけど……
 雲野先輩は大丈夫でしたか?」

魂の叫びじみた鹿籠の爆弾発言に何とも言えない返しをしつつ。
やって来た雲野の方に小さく片手を振った。

「…………あのひとたちはいいません、よ」

「言いませんよ、言ったら道連れで一緒に会社やめてもらいます」


そう静かに告げて片手で目を押さえながら深呼吸する、辺りを見る。ここが防音じゃなければ死んでいた。防音だから耐えられた。

「……いらっしゃい聞いてくれてありがとう。
 もう二度と聞かないことを祈っていてください」


すでに取り繕えない年上の威厳を纏いながら弱々しい声で呟いた。


「なるほど仲良死というやつですね!」


辞めるだけなので違います。ともあれ、
鹿籠は一時的に羞恥心に致命傷を負うだけで済んだらしい。
ここから追撃を受けてとどめを刺されない事を祈ろう。

「とはいえ緑郷は皆さん揃っておいでの方が嬉しいので、
 そうならない事を切に願っていますが!
 鹿籠さんがそう仰るならきっと大丈夫でしょう!」

人に知られたくない性癖を知られてしまった先が、
少なからず言わないだろう、と言い切れる相手だったのは
何はともあれ不幸中の幸いだったのだろうし。

一先ずはそれで一件落着としたのかお茶を淹れ始めた。自由。

「緑郷、こんにちは。
うちは平気ですよ。…えぇ、今のところ」

緑郷へと手を振り返し、席につく。
因みにその手には屋台で購入した【任意の食べ物】が。

それをテーブルの上に置いて、「好きに食べてください」の一声。
アロマの香りもあるので、あまり匂いの強いものだといい。


続いてもう一度鹿籠に視線を向け。

「……性癖の話はともかく、他のことならいくらでも聞けるので。
不満も愚痴も、胸の内がすっきりするなら気にせず言ってください」

人の話を聞くのはそれなりに好きだ。
故にCSという仕事を希望したわけで。

お茶をいれる緑郷に「うちも一杯いただいていいですか?」と声をかけて、持ってきた食べ物とは別に購入した飴を口の中に放り込んだ。

「……そういえば次にくじを引くの、うちでしたね」

テーブルの上にあるであろう箱に手を伸ばし、引き寄せる。
それを軽く揺らしつつ、引いても問題ないか?と2人に視線を向けた。

こういうのは先に決めておく方がいいのだろう。多分。


「でしたらよかったです!
 差し入れもありがとうございます、
 お言葉に甘えてさっそく頂いちゃいますね!」

だんだん呼び捨てにも慣れて来て貰えたような気がして、
敢えて言葉にしたりはしないけれど、内心嬉しくなりつつ。

声を掛けられればどうぞどうぞ、と雲野にもお茶を注いで
雲野が持ち寄った屋台の様々からチュロスを一本頂いた。
お味はシンプルなシュガーバター。

「あっ、そうでしたそうでした!
 では雲野先輩、次のくじ引きお願いしますね!」

例によって何処からかホワイトボードを出しつつ、
くじ引きは雲野に託して見守る構えだ。
きっと富武の分のくじは既に抜かれていることだろう。多分。

呼び捨てに慣れてきたのはきっと貴方の思う通り。
心の中でのさん付けは雲野のみ知るが。

「ありがとうございます」

注がれたお茶に手を伸ばし、うちに寄せる。
口内で飴を転がしながら緑郷の言葉に頷いて。

「それでは、引きますね。…誰が出るやろか」

選ばれたのは──<<牧野瀬 幸>>whoだ。

「牧野瀬さん、ですね」

引いた紙をホワイトボードに貼り付けに行く。
昨日同室だった彼が選ばれたようで。

「……問題なさそうなら、彼で」

と、2人に小首を傾げて視線を送った。

「…………んぁ。
 すみません持ってきて頂いた実波チキンが美味しくて」

「話等気を使ってくださり有難う御座います。
 そうですね……あの、この、旅行が終わっても少しでも忘れないでいただければ……仕事をやめるのが濃厚になっていますので、ええ。連絡先消さないでください」

切実な声と共にご馳走さまでした、と唇と指をウェットティッシュで拭い。
なんの話だったか。

「次は確か広報の彼ですか、問題ないですよ。
 気が利いていて優しい人ですよね。
 ほとんど触れあえていない部署の方なんで気になってはいたんです」

少し離席をしてからまた戻ってくる。
誰がいるかわからないが、せっかくなのでデザートでも冷蔵庫に入れておいた。実波アイス。

「……今日ここで寝たらダメですか……。
 猫耳猫尻尾つけてる営業さんと、……………係長ですよ?
 何をしてもエロい目で見るに決まってるじゃないですか」

「このままじゃ猫になってくれませんかって口走ったことによるセクシャルハラスメントで捕まる――――富武さんは何で興奮するんですかって聞きそうになってしまう。ロボ太、僕を助けてください……」

今日はがりごり氷を噛めるオレンジフィズを持ち込んでいる。

どうやらかなり取り乱していた鹿籠も落ち着いたらしい。
実波チキンを食べる様子に静かに息を吐き出した。

「いえ、美味しいなら良かったです。
……それから、うちは2人を忘れることは無いです」

そこは問題無し。連絡先は……元々知らない?
とはいえ何も言わずに頷いておくことにした。

「ん、ありがとうございます。
あとは緑郷が問題なければ彼にします」

気になっていた、というのはなんというか。
この企画においていい事なのか悪いことなのか。

優しい人だからこそ性癖、そっとしておく方が。
とは思うけど、そんなことも言っていられないのが現状。

鹿籠が離席している間も、雲野はここに居た。
アイスを冷蔵庫に入れる様子を見てお礼をひとつ。

「………うちは緑郷と同室なんで、問題はないんですけど。
えっと、そうですね。……寝てもええんやないかと、思います」

それが社長的に許されるのなら。存分にここを使って欲しい。
あまりにもあまりな部屋割なのでいいと思う。本当に。

……緑郷と同じ部屋で良かった


あまりにも素直に話すことを辞められなくなった鹿籠に胸中で何かを思いながら、もういっそうちらの部屋に来て
うっかり
眠ってしまえばいいのでは?という気持ちになったとか。


「緑郷も鹿籠さんの事も雲野先輩の事も忘れませんよ!
 まだそうと決まったわけじゃないですけど……
 もしお仕事を辞める事になっても、ならなくても
 皆さんがよろしければまた遊びに行きましょう!」

性癖暴露大会の本会場はもはや送別会のような雰囲気に。
これが本当に送別会になったとしてもそうでなくとも、
この旅行の後もまた三人で集まるというのも楽しいだろうな。

「それから、はい!
 本日は牧野瀬さんですね!緑郷も少し気になっていたので、
 またまたちょうどいい感じです!くじも空気読みますねえ」

それはそれとして、次の標的には二つ返事で了承を返した。
身も蓋もない話、この狼は全員気になると言えばそうだけれども
敢えて彼にも言う辺り榑林とはまた違う理由らしい。

「? はい、緑郷も雲野先輩と同じ部屋で嬉しいです!
 鹿籠さんとも同じ部屋だったらよかったんですが……
 三人でここにお泊りしたら流石に怪しいですよね〜」

人事課の事務員は地獄耳。
ぽつりと零した雲野の呟きに笑顔で賛同しつつ、
既に部屋割りが男女混合である事の違和感はログアウト済み。

お互いに忘れずにいよう。折角出来た縁だから。
派遣はいずれこの会社を去るだろうけど、その事は口にせずに「また遊びに行きましょう」に頷いて微笑む。

ここで終わってしまうよりも、ここから始めるのもいいだろう。
この3人が集まったきっかけはともかくとして。

ところで、3人で集まる場合は何をするのだろうか。
無難に食事?そんなものでも楽しいだろうなと想像して笑みを深めた。

「緑郷も大丈夫そうなら、牧野瀬さんで決定ですね。
……正直、気にならなくもないです」

乗り気ではなかったこのゲームだが、気になるものは気になる。
素直に口にして、すっかり溶けてしまった飴の味を消すようにお茶を口に運んだ。

それから、「聞こえてたんや……」と口にして。
こちらも男女混合の違和感なんて無かったものになりながら。

「…まぁ、3人でここでは怪しすぎるんでうちらは部屋で寝ましょう。
短い間やけど、同室よろしくお願いしますね。緑郷」

と、今度は普通の声量で緑郷に告げて部屋移動の荷物整理のことを頭の隅で考えていた。


「牧野瀬さんには社長を恨んで頂くとして……
 明日の朝が楽しみですね!」

事実諸悪の根源はと言えば全面的に、
唐突にあんな事を言い出した社長ではあるけども。
最早隠す気ゼロでワクワクしてる皇狼の人間性は社長寄りだし。
後でアイリスアウトするはめになっても文句は言えないですよ。

「はい!よろしくお願いします、雲野先輩!
 部屋の移動はちょっと大変ですけど……そうだ!
 移動する時、もし大変だったらお手伝いしましょうか?
 緑郷、こう見えて結構力持ちなんです!」

そのうち鹿籠さんとも同じ部屋になれるといいなあ、と
続けて零しつつ、またお茶のおかわりを注いだ。
いつかプライベートでも今と同じように集まれたら、
その時もきっと、同じように楽しいだろうな。

明日の朝、個人的には憂鬱である。
緑郷はともかくとして、雲野と鹿籠はどうなるか。

社長を恨む準備だけはしておこうと心に決めて。
にこにこ楽しげな緑郷に曖昧に笑ってみせたとか。

「…いいんですか?助かります。
多分、望月さんがうちらと2人を分けてくれそうなんで」

大変過ぎる程荷物があるかと言えば、まだ少し抑え気味。
とはいえ一度でいけるかは別だ。頼む方がいいだろう。

「後で手伝ってください。……ありがとうございます、緑郷」

同じく鹿籠と……は流石に思わなかった。
男女混合を望むのは何か違うなと感じたので。

勿論男女混合に今更ツッコミはしないが。

そういえばプライベートの連絡先は渡していなかったかもしれない、もう社員でも会議にたまに使われるメッセージアプリのIDを名刺に書き入れて二人に渡しておいた。
開発部の引きこもりである彼の名刺は、ほんの少しだけ珍しい。
相対すればもらえるので価値は安いものなのだが、ポップ時間が限られているのだ。

「……お二人に対して同室であることを羨ましいと言うのは如何せんおかしな意味合いを持つのでしょうが……、しばらく友人同士の縁を訳あってたっているので懐かしくなりました。
 
もとから少ないんですけど。

 さらに大学で減りましたから、もう、もう。

 派遣もそういった点では友人ができたりなれてきた頃に離れるのは寂しそうです。
 
が、
ここに就職するよりはたまに来る程度が絶対マシですからいつでも気軽に声をかけてください」

「……女性社員だらけのパジャマパーティーもいいですよね」


いつのまにか始まっている趣味の暴露大会は唐突であるし、その辺りは遠慮は一切消えていた鹿籠がそこにいた。

 


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雲野 とばり
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