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【赤】 諦念 セナハラ金属音に一瞬手を止めるが──、直ぐに再開する。 作業が残っていれば、無理にでも手伝おうとするだろう。 そう考えて後の作業を急いだ。 「……慣れちゃだめですからね、こんなものに」 皮を剥ぐ。骨を外す。脂を削ぐ。 「今の気持ちを忘れないでください。 でもこの景色は忘れるように、努めてください」 白衣は袖口を中心に、真っ赤に染まっている。 なるべく何も考えないように、無心で手を動かした。 (*7) 2021/07/05(Mon) 23:03:42 |
【赤】 諦念 セナハラ粗方終えてしまうと、大きなブリキのバケツを取り出した。 蓋を開けて、骨や内臓を中に入れていく。 「…………ごめんなさい、」 生首の耳元で、小さく呟いた。 それを白いシーツでそっと包み、 名残惜しそうに、バケツの中へゆっくりと置く。 蓋をしてしまえば、贄川涼という子供だと判断できる物はもう見えなくなってしまった。 ……残す作業は、 隠蔽 掃除ぐらいだろう。 (*8) 2021/07/05(Mon) 23:06:26 |
フジノは、扉を二度開けた。風の吹き込む音が、二度した。 (a3) 2021/07/05(Mon) 23:52:53 |
【赤】 被虐 メイジ「……っ…… くそ…… 」メイジは何かを振り払うように、一度大きく息を吐く。 青白い顔をぶんぶんと振って、立ち上がると 自分で落とした器具や、床を片付け始めた。 こんな悪夢のような光景、忘れられそうもないと思った。 「セナさんは……馴れちゃったの……?」 生首がシーツで包まれていくのを、 名残惜しそうなその横顔を、ただ無表情で見つめる。 前の誰かも、こうして隠されているのだろうか。 (*9) 2021/07/06(Tue) 0:04:56 |
【赤】 諦念 セナハラ「馴れたというよりは、馴らしたというか。 その為に医者を目指しました」 それはあの客人に問われたものの、答えられなかった“理由”だ。 簡素な戸棚、その一番下を開ける。 同じような作りのバケツが、もうひとつあった。 「僕は忘れられなかったので、 この光景を日常にしようと思ったんです。 そうすれば、悪夢ではなくなるでしょうから」 眠る赤子を起こしてしまわないように。 そんな手付きで、優しく、隣に新たなバケツを置いた。 ゆっくりと戸を閉めれば、手術台の血や脂を丁寧に拭き取っていく。 「……今日の所はこれくらいにしましょう。 ここから先は先日もやりましたから、 見なくてもわかるでしょうし。切って糸を通すだけです」 (*10) 2021/07/06(Tue) 0:28:22 |
タマオは、彼を見送った。「いってらっしゃい」 (t14) 2021/07/06(Tue) 2:08:00 |
タマオは、それはそれとして雨漏りがないことを確認した。 (t15) 2021/07/06(Tue) 2:08:38 |
タマオは、麻酔を持ち出した。 (t16) 2021/07/06(Tue) 4:36:04 |
タマオは、縫合道具を持ち出した。 (t17) 2021/07/06(Tue) 4:36:20 |
タマオは、斧を持ち出した。 (t18) 2021/07/06(Tue) 4:36:34 |
セナハラは、手術道具の在庫を確認した。 (a4) 2021/07/06(Tue) 10:37:30 |
セナハラは、麻酔と縫合道具が見当たらないことに気付いた。 (a5) 2021/07/06(Tue) 10:38:04 |
セナハラは、もう人を せない。 (a6) 2021/07/06(Tue) 10:40:34 |
【赤】 被虐 メイジ「うん、わかった」 淡々と頷く。──メイジは、逃げ出したかった。 逃げ出したかったけれど、足は動かなかった。 ──死んでしまったほうが楽なのではないか。 ニエカワが死ぬのを見て、過った。 彼は嘘つきの自分を恨んでるだろうか。 けれど本能は──赤く脈打つ鼓動は生きたいと叫んでいる。 辛いことばかりだというのに まだ生きたいと思う自分がわからなかった。 (*11) 2021/07/06(Tue) 12:03:29 |
【赤】 被虐 メイジ「……、……ありがとう、セナさん」 あなたが医者になった理由を聞いた。 何かを言いかけた口をつぐんだ。 メイジはふいに、少し眉を下げて笑う。 「忘れられなくて医者になったのに こんなことになったのに…… オレたちのこと、助けてくれようとしてくれて」 メイジは、ひそかに拳を握る。 「こんな状況で言うのはおかしいかもしれない。 でも……オレさ、嬉しかったよ。優しくしてくれて」 (*12) 2021/07/06(Tue) 12:05:45 |
【赤】 諦念 セナハラ「……、……感謝されるような事ではないですよ。 何て物を食わせたんだ、と怒る人もいるでしょう」 吊るされていた干し肉を下ろし、糸を外していく。 先日作った彼女の肉が、白い皿に盛られていった。 そして新たな肉を薄く切り、糸を通し、塩と胡椒を塗し、吊るしていく。 「優しい大人はこんな事を──……いや、」 自分に生きる術を教えた父は、優しかった。 優しい大人だと、今でも思っている。 (*14) 2021/07/06(Tue) 14:11:32 |
【赤】 諦念 セナハラ「……うん。ありがとう、ございます」 貴方がそんなつもりで言ったのではないとわかっているが、 それでも、自身の父親を認められたような気がした。 「メイジくん。きみはきっと、優しい父親になれます」 「宿直室に、手紙を置いておきます。 ……封は開けちゃだめですよ。 それをここから出たとき、外の大人に渡してください」 手術台の照明を消した。 赤黒い肉が乗る皿を持ち、扉へ向かう。 (*15) 2021/07/06(Tue) 14:11:59 |
【赤】 被虐 メイジ「……いいよ。周りにどんな目で見られても オレは絶対、セナさんが優しいって言い続けるから」 あなたが死んでもメイジに賛同し続けると言ってくれたように。 人を殺し、今日も肉を切り刻んだ、全て自分の為にやった。 責められるのも、恨まれるのも、蔑まれるのも慣れてる。 「あはは……オレが父親か。なれたらいいね」 そんな、来るかもわからない遠い未来の話に すこしだけ思いを馳せた。まだなにも見えない。 (*16) 2021/07/06(Tue) 17:19:45 |
【赤】 被虐 メイジ「手紙? ……うん、わかった」 なんの手紙だろう。少しひっかかるが 言及することはせず、素直に頷いた。 あなたの背を見送る。 (*17) 2021/07/06(Tue) 17:27:35 |
【人】 商人 ミロク>>13 フジノ あなたが戻ってくれば、静かに座ってどこかを眺めて居た。 やってくると気づいて、濡れている服に首をかしげる。 一度席を外して、タオルを持ってくれば、 丁寧に髪や顔を拭き始めるだろう。 「お話は、そうですね。 あなたがこの村でどう過ごしていたかなど聞きたいですが。 不都合があれば私の話でもいいですよ。 あまり面白みがないかもしれませんけれど。 少しだけ、贅沢な。運だけがよかった男のお話です」 瞳を見返す姿はまたやけに温かみを帯びていて、 いつか肉の香りが漂う近くまで話はされた。 取引でも、なんでもないただの会話。 あなたがどう答えようと男は語っただろう。 (22) 2021/07/06(Tue) 21:08:58 |
【人】 商人 ミロク>>13 >>22 フジノ 男は両親の顔を知りません。 赤子の頃、少し裕福な商人の主人に運良く拾われ育てられることになりました。 世渡りと、ほんのすこしの芸を身につけて金を稼ぐ幼少期を過ごして。 大きくなれば、商人としての知識を学び、 ようやく"客を見る"役目として表で活躍が出来るようになったのです。 色々な客と関わるうちに、一つの夢ができました。 つい、今日まで商いの生活で忘れかけていたが、やはりずっと胸の中には残り続けていました。 「教師になりたかったんです。 しかしまともに学徒として勉学を嗜んでいませんから…。 ほぼ難しいといわれ、諦めていました。 実際、人より少しだけ多く本を読んだ程度です。 このご時世、仕事は選べるものではありませんが、 夢を持っていたことは忘れたく有りませんね」 (23) 2021/07/06(Tue) 21:10:15 |
【赤】 被虐 メイジメイジは、誰もいなくなった手術室で 大きなため息を吐き、どさりと椅子に座り込んだ。 吐いたせいで体力を消耗したのか、立っているのも怠かった。 ふと、懐から取り出したのは、お茶の缶のようなモノ。 "どんな痛み"でも"一時的"に取ってくれる薬。 「…………オレは、まだ大丈夫」 メイジはすぐにそれをしまった。 (*18) 2021/07/06(Tue) 21:10:40 |
メイジは、"猿肉"の味を知った。 (a7) 2021/07/06(Tue) 21:42:08 |
【人】 商人 ミロク>>セナハラ しばらくして肉の香りがまだ漂っているだろうか。 人がまばらになった頃、商人は、医療従事者の男に声をかけた 「すみません、お時間いいですか? ニエカワさんのことです。 先程"お話し"したのですが伝言があります。 ここで、聞きますか? それとも、」 別室がいいですか。 何となしに訪ねる声が、病院内に静かに響いた。 (27) 2021/07/06(Tue) 21:51:20 |
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