>>37
>>38
>>40
「祭礼の期間、腕輪付きはみな一蓮托生。
　正しくその通りです。
　毎年数が合わぬのは悩ましい事ですが………」

今宵の神託はどうなるものか。

「五十鈴さまは底知れぬ迫力がありますからね」

飄々としているようで、本当に神狼を喰らってしまいそうな。
左方の舞は、そういった気配を滲ませている。

>>39五十鈴

「薬師ですから、作っていないと暇で暇で、
　裏口も、腕輪を付けた後では無意味な物だよ」

“裏口”自体は存在する。
入り江の端の影の中、島外に逃げだすために使える程度の物が一通りは揃ったものが。
しかし今外に出るとどうなるのか、それを良く知っているからこそ無用の長物と化していた。

「祭りをやめる、ね。
　できたらどんなに気が楽になる事か……」

>>43　リェン

「そっか、リェンは真面目だもんね。
ね、何があっても正気でいられる……気付け薬は作れる？」

五十鈴は相変わらず、含みのありそうなニヤニヤ顔をしている。

「……あの鬼元気だなあ。
自分が供物だったらどうするのさ？」

「アザミさまは豪胆でいらっしゃいますね……」

酒や甘味を祠で楽しむ者は彼女くらいではないだろうか。

「さて、間もなく刻が過ぎる」

学徒は静かに一枚捲る。

「各々、そろそろ肝を据える所でしょう。
　祭事と言えど、程度は単純。一度印をつけられれば灯蛾の如く、燃えるのみ」

「────かくも、命の堕落他ならず。はないちもんめと不毛に遊びたいならそれでもいいでしょう」

憂いを帯びた吐息を吐き出し、学徒は頭を振った。

「小生としては、折角の祭事。面白きに越した事は無い。
　……故にそう、事をお約束しましょう」

学徒の口角は静かに、釣り上がる。

「それでは皆様、また明日────。」

ぱたん、学徒は静かに本を閉じた。