ここは、シャフリヤールのハレム選抜会場。
このオーディションに合格した者だけが、しゃっふのハレム入りできる。

高鳴る胸をおさえ、私は審査員数名とシャフリヤールの前に出ました。


「受験番号(4666)^1d10000！
　サーリフです！
　よろしくお願いします！」

シャフリヤールのハレムを下見して、ばっちり娼婦の格好をしてきました。
男娼だろって？
甘いですね。
これは、しゃっふにそっちの趣味がなかった時用対策ですよ。


シャフリヤールがけだるげに口を開きました。

「特技を聞こうか……」
「はい！　場所ランダで温泉を出すことです！」
「……他には」
「片方ですが一応翼がありますので、羽根プレイには対応できます！」
「羽根プレイ？」
「ええ！　[　　　]ﾋﾟ―――や[　　　]バキュ―――ンを[　　　]あれとかそれとかしたり、他にも……」
「待て待て待てそれ以上喋るな」

他の審査員が口を開きました。

「えー、では最後にシャフリヤールさんへの意気込みをお聞かせください」
「シャフリヤールへの気持ちなら誰にも負けません！
　秘密開示シーンを意味なく温泉にして脱がしたり！
　秘話でねちねち殴ったりしています！

　シャフリヤールさん大好きです！
　靴を履くとき必ず左足から履くところや
　シーシャでチルったら上斜め45度を向くところ
　昨日歩いた歩数が4145歩で少々運動不足が心配なところ
　他にも今日の下着の色は」

シャフリヤールは言いました。



5分後、私はストーカー罪でお縄についていました。
煉獄にも警察っているんですね。
初めて知りました。

『もし出来るんならさ。
　俺に叶えてくれた"無敗"の願い、取り消してくれ。』

意外と言えば、意外だった。
一度叶えた願いを取り消したい、という『願い』自体は
そう珍しいわけではないのだが、
ファルーサがそれを願うとは思っていなかったからだ。

「……別に構わんが、本当にいいのか？」

ファルーサと仔虎ファルーサを交互に見遣る。
ファルーサは確かに強いが、
『願い』の加護を失って“無敗”は保てないだろう。

なんだかんだ、負ける賭けには乗らない人間だと
思っていたが、そうでもないのだろうか。

「“３つの不可能”にあたる願いでもないし
問題ないぞ。
──その願い、我が手に承る。」

傍らで、仔虎ファルーサがまた一回り成長する。

「さぁ、これで明日の試合は『負けるかも知れない』。
見に行ってやるから無様に負けるなよ。

……恐れているようだが、
我がお前の精気を吸って殺すなどと
いうようなことは無い。
人間の精気を吸うのは……。」

こんなふうに『人間に恐れられる』のも
そう珍しいことではなかったが、
ファルーサが、と思うと少々の落胆はあった。
見込み違いだったのだろうか。

「……死ぬなよ。」

ぽそ、と呟く。
もしも試合に手を加えたりしたら
きっと怒るだろうなと思うと
明日は心の休まらない一日になりそうだった。