人狼物語 三日月国


145 【R18G】星仰ぎのギムナジウム2【身内】

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視点:


【独】 雷鳴 バット

/*
あっなるほどねえ〜〜〜〜〜!!!
(-0) redhaguki 2022/05/04(Wed) 21:00:55

【墓】 雷鳴 バット

青年はその日の朝、いつかのように食堂に現れた。
未だジャステシア、彼女の姿がないのなら小等部の整列には貢献したが、
それでもやはりあまり多くは、小さな子どもたちには触れ合わなかっただろう。

その日は食事を選ぶ列にはあまり長く並ばず、少しの食事だけを取り。
誰のものでもない一人部屋へと、誰にも告げずにそっと身を隠した。
(+0) redhaguki 2022/05/04(Wed) 21:06:25

【独】 雷鳴 バット

/*
恋窓賑やかになったね よかったね 急に四人になったのかなこれ?
(-3) redhaguki 2022/05/04(Wed) 21:13:09

【墓】 雷鳴 バット

>>4:+1 イシュカ
食堂からの去り際、普段と様子の違う貴方を見かけて。
青年は少しだけその傍で立ち止まったかもしれない。
けれども結局掛ける言葉は見つからず、固い靴が歩き去る音だけが残った。
(+2) redhaguki 2022/05/04(Wed) 21:17:13
バットは、誰かに教えられた誰のものでもない部屋で、一人で食事をする。
(c0) redhaguki 2022/05/04(Wed) 21:19:23

【独】 雷鳴 バット

貸し与えられた、と彼が言っていた一室の中へと紛れる。
静かな空気はものの通らない喉をすっきりとさせるようで、
不思議と気持ちだけはほっとしてしまった。

机に食事を置く。並ぶのはハムにベーコン、塩漬けの肉。
焼いたタンパク質の羅列に、小さなパンと更に乗せられたトマトが半身。
慣れたように毟り食う肉がきちんと喉を通ることに安堵した。
治療の効果は劇的に自身を良化、或いは悪化させるものではないらしい。

いつもと変わらない食事を食べ進めながら、その最中で両手を膝に置いた。
最後に食べてみようと試みたのはいつだったか、思い出せない。
パンを一口。小さなかけらを口に入れる。
前歯で噛みちぎって、奥歯で小さくまとめて、たったそれだけのことがうまく出来ない。
全く違う食感がほろほろと口の中で崩れるのを、舌はざらつく違和感で受け止めた。
異物を飲んでしまったような落ち着かなさを、えづきそうになりながらこらえて。
たまらず、オレンジジュースで流し込んで息を吐く。
繊維感の無い液体状のそれであれば、胃腸が拒むことはない。

親指の爪ほどのパンを食べるだけで、グラスは半分ほど飲み下してしまった。
とてもではないが完食できそうにはない。
外の小鳥にあげるか、誰かに差し入れれば良いのだろうか、と。
手に余るそれを、困り果てたように見下ろした。
(-8) redhaguki 2022/05/04(Wed) 21:30:37

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット


眠る君の姿が目に入って。

「な――バット君!?」

「この姿はなんなんだ、説明しろ!!!
 こんなんじゃまるで猛獣の扱いじゃないですか」

治療の実態は――知らない。噂だけだ。
それでも大きな事件になっていないのは、
生徒達は無事に戻ってくることが多いからだ。

変化はあれど、その後生活に戻る。
だから、問題ない。もしかしたら、嫌な予感は当たらず
非道な事にも巻き込まれず帰ってくる可能性を考えた。

しかしこの現状だ。噛みつきかけた言葉に、冷静に返される熱の籠もった言葉。
鎮静剤? 暴れたら?

そんなことを彼にされた事なんて、今まで。
(-14) toumi_ 2022/05/04(Wed) 21:53:20

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

「……わかり、ました。
 連れてきて下さりありがとうございます。
 彼の経過観察は引き続き私が行います。
 対処の方も、おっしゃるとおりに」

早くに教師を帰し寝台に沈む君と向き合う。

夜に眠って居る姿を見れたことはない。
前髪をそっと撫でて、必要以上の怪我が無いかを確かめる。
手錠に、口枷、異様な光景が広がっているのにすぐに外す気にはなれなくて。

 "病気のこども"。
 頭によぎったのは、確かにその言葉だった。
 彼は、自覚していて、そして――"病気"ではないそれが治ることがなかった。


「変な期待を持たせた……?
 治らない先のことを、しっかり考えていたかと言えばわからない。
 普通の生活ができるのなら幸せだと思った。
 君の周りは普通の生活をしている人が多いようだから。

 ……、ミゲル、って誰だい。バット君」

手錠は、暴れるのを防ぐためと口枷を外す予防。
外して問題があるのはその口枷だろう。

「暴れる君を見れば、教えてもらえるの……?」

その指先に枷が触れて、僅かに震えたのを自覚しつつ。
眠っている貴方を隣で眺め続けた。
(-16) toumi_ 2022/05/04(Wed) 21:59:07

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

眠る青年に不必要な虐待が行われた形跡はなかった。
庇い傷も躊躇い傷もなく、少し土の匂いがするのは森へ行ったならいつもと変わらないこと。
暴れていつも以上に汚れた様子もなければ、痛めつけられた様子もなく。
普段他に見られることの少ないベッドに横たわる姿は、
むしろいつもよりも剣呑な装いである、そのはずなのに。

朝になるまで、青年は起きることはなかった。
当然自分の力で枷を外すこともなく、寝ながら暴れるわけでもなく。
朝日ののぼる頃には、ゆっくりと目を開けるのだろう。
(-18) redhaguki 2022/05/04(Wed) 22:26:05

【秘】 半分の仮面 リアン → 雷鳴 バット

君の部屋に一枚の手紙。
見ていても見ていなくても構わない。

『翼の生えた悪魔にでも連れていかれたか?』


裏返してみれば

『何があった?』


と、整った文字で書かれている。
(-22) otomizu 2022/05/04(Wed) 22:53:36

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

「……バット、くん?」

眠たげに瞳を擦って、君の様子をうかがうのは
普段なら泥のように眠っているアオツキだ。

やはり、気力でどうにかなったその眠気や体質は正しく夜更かしの影響を受けていて。
おぼつかない仕草と視界のまま、口枷へと手を伸ばし、はずそうとした。

「あ、」

「……お、はよう…ござい、ます」

アオツキの声は、泣いてもいないのに震えていた。
(-30) toumi_ 2022/05/05(Thu) 0:38:10

【秘】 雷鳴 バット → 半分の仮面 リアン

貴方の手紙に気がついたのは、きっと朝食を終えてから。
既に授業の始まっている頃にようやくその手紙を確認したから、
同室者の目にはなんとか留まらずに済んだのだろう。
中身を見て、考えて。
どれだけ、手紙の指す意味を理解したかは定かではなく。

『何も』

と書かれただけの手紙が、返ることとなった。
(-52) redhaguki 2022/05/05(Thu) 3:01:54

【秘】 ライアー イシュカ → 雷鳴 バット

食堂で見かけた際の実習生は同僚に皮肉を返す余裕すらないくらい疲労の色が濃く、貴方の視線や行動に気付く暇がなかった。

とは言え、傷心しようと……いや、しているからこそ足繁く通う場所もある。
当然委員の人間とは出会う事もあるはずだ。貴方がもし飼育小屋に行く機会があれば、相変わらず初日の様な元気さは失われているが、食堂で見た時よりは顔色は改善されていた。

/*
REありがとうございます!なんですがこの男がちっとも気付けなかったため、場所変更でお返事投げさせていただきましたが、もし現在の状況からバットくんが飼育小屋に行かなくなっていた場合は違う出会い方を改めて考えられたらと思いますので、ご連絡いただけると幸いです。
(-59) poru 2022/05/05(Thu) 6:07:01

【秘】 神経質 フィウクス → 雷鳴 バット


先日は姿を見せず、
今朝は以前より早くに食堂を後にして。
姿の見えないあなたを、今度は少しだけ意識して探す。
皮肉な事に、こんな時だけは病的に過敏な神経が役に立つ。


「…………」

何処かの一人部屋に誰かの気配を感じればノックをして。
何処かに見覚えのある人影を見れば、
以前のように、遠巻きな距離のまま、一度だけ名前を呼んで。

何れも返答が無いか、或いは。
どこにも居ないなら、適当なところで切り上げる。
何も一人で居たい所を邪魔したいわけじゃない。
(-82) unforg00 2022/05/05(Thu) 12:48:32

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

ゆっくりと開いた目はまだ薬の効果が残っているのか、
焦点の合わさる先もぼんやりとして曖昧なままだ。
薬を打たれ意識を失ったのはここに連れてこられる前だ。
状況の把握には至っていないのか、まだぼやけた視界のまま。

外された口枷からはだらりと溜まった唾液が落ちた。
その先に見える肌色を視線が追って、
ざり、と。指の先に、赤い舌を這わせた。
(-94) redhaguki 2022/05/05(Thu) 16:52:58

【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ

声を掛けられなかった理由は相手の様子が途方もなく落ち込みきっていること、
自身の事情なども含めて様々にあった。
ただ、それっていうのはそこで諦めきったわけではなく、
その後も頭の端には、知己の人間の異変を記憶しておいてはあったのだろう。

以前よりもぎこちなく飼育小屋の辺りに足を運ぶ。
はじめは遠巻きな様子であったが、その中に貴方を見つけて。

「……大丈夫?」「元気、ないように見える」
「昨日、食堂にいなかったって」「噂されてるの、聞いた」

居なくなったのは同じ。おそらくは互いの様子というのは聞かされていないだろうし。
改めてそうした状況にあったと聞いたのは遅れてから。
声が届くくらいの距離まで、おそるおそるといった様子で近づいてくる。
(-95) redhaguki 2022/05/05(Thu) 17:18:51

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

まだ食堂では互いの心配をするものがあり、
消えたものの安否を確認しあって相談している頃。
朝の授業が始まるまでには、また時間がありそうだ。

青年の姿は貴方が探した内、貴方が彼に教えた一室の中にあった。
食べ物の匂いがする、というには香ばしい香りは薄く。
ある程度食べきった様子ではあるものの、ほとんど無傷のパンやトマトが残っている。
扉の開いた先に顔を向けて、やっぱり隠すように食事の前にさりげなく腕を伸ばした。
入ってきたのが貴方だとわかれば、少しは安堵が混じるけれども。

「……ごめん」「長く、使い過ぎていた?」
「なるべく早く」「片付けるから」
(-99) redhaguki 2022/05/05(Thu) 17:56:45

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

「ぁ……お、おはようございます」

ぞく、と背筋か震える。
いっしゅんの背徳感のようなものが走りつつ、
君の口元を拭えば、もうその声は震えていなかった。

「大変な目に遭いましたね。
 先生たちにおこられでもしていましたか〜。
 こんな風に捕まっちゃって、森にばっか行ってるからですよ」

ベッドに体重をかけ、体を寄せ。
なれない手つきで、もう片方の手で手錠を外しにかかった。
薬が効いていたその姿をみやれば、また小さく深呼吸をして。
人のをはずしてやるのは、なかったな。


「ねぇバット君、……大人のかたがいっていました。
 ミゲルとは君の名前ですか?」
(-106) toumi_ 2022/05/05(Thu) 18:33:34

【秘】 神経質 フィウクス → 雷鳴 バット


ドアノブが回れば遠慮も無く部屋へ立ち入って、
閉じたドアに背を預けるように凭れ掛かった。

余計な気を回す義理はない。
内鍵は掛かっていなかったし、入るなとも言われなかったから。

「別に。少し聞きたい事があっただけだ」

だから椅子を引く必要はない。立ち話で構わない。
謝罪と気兼ねする言葉には素っ気ない返事だけ。

「お前が長く入り浸るほど気に入ったなら、
 この部屋も、あのお節介も浮かばれるだろうな。

 ……こうして隠せている間は良いだろうが、
 医者や他の大人達に嫌になるほど言われた事だろうが。
 いつまでもずっと、隠し通せるものじゃないだろ。」

「……お前は、…」

どうするつもりなんだ、と問い掛けようとして。
あなたはどうにも意思決定が苦手なふしがある事から、
ほんの少し押し黙って、言葉を選ぶような間。

「隠す以外のやり方は見付けられたのか?」
(-109) unforg00 2022/05/05(Thu) 19:27:19

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

声を聞いて、次第に光に目が慣れて。
ここがどこで、目の前にいるのが誰であるかを理解した。
ぱちぱちと目を瞬いて、枷が外れていくのを目で追っている。
まだぼんやりしたままの意識で身を起こし、記憶をたぐるように天井を見た。

「おは」「よう」

大人との対話を終えてから、おそらく部屋へ連れてこられたのだろう。
それ以外にとびきり変わったことというのはないように見える。
腹の音が鳴って思わず手で押さえて、朝なんだなとか考えて。

「……」
「そう」「でも」「みんながバットって呼ぶから」
「それでいいやって」「いうことにしてる」
(-123) redhaguki 2022/05/05(Thu) 21:45:14

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

しばらくは、まるで怒られる前のこどものように顔色を伺っていた。
よくよく腕の後ろに隠されたものを見てみれば、
塊のハムやベーコン、焼いた肉や保存食がほとんど。
おまけのように、一口ちぎっただけのパンと、プレパラートほどの切片を除かれたトマトがあるだけ。
偏食の生まれやすい子供時代と言ったって、程度の問題はあるだろう。
それら、或いは部屋の使い方に関することではないとわかると、
そろそろと腕を下ろして貴方のほうへ身体を向けた。

「……」「フィウクスも誰かに」「ああして、貸してもらった?」
「僕もこの部屋は」「助かってる」「数日だけど」

それから問われたことについて暫し考えた。
相手が何について問い、慮っているのか。
自身のどこに、他者に気を持たせてしまうことがあるのか。
ちら、と食事のほうに目を向けて、相手の求める答えを頭の中で組み立てる。

「人に」「……」「バレたら」
「いやな目で見られるから」「隠したほうがいいって」
「怒られること」「しなくて済むものは」「そのうち、もらえるらしい」

治療の効果は目覚ましいものではないというのは、
大人に連れられていく前と行動が大きく変わったわけではないことからわかること。
それでも、何もされずに放逐されたというわけではないのだろう。
根本的な解決にはなっていない、一時しのぎのものでしかないようだが。
心配いらない、というふうに言いたいような節はあるようだった。
(-126) redhaguki 2022/05/05(Thu) 21:55:59

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

「君の名前じゃないですか、そんなにきれいで」
「……呼ばれたい方で呼びます」

ベッドに腰を掛けて見おろしつつ、一息。
枷が完全に外れた君を見つめ、頭を優しく撫で続ける。

「もう少し、眠っていても良いですよ。
 授業を休んでも今日は文句言わせません。
 ご飯は食べられるだけで……ああ、何か欲しいものはありませんか?
 朝食だけは顔をだしに行きますが、実はおやすみ取ってるんです。
 嫌といっても付き合えますよ」
(-127) toumi_ 2022/05/05(Thu) 22:16:37

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

どことなく、自分の話であるのに、そうでないように。
遠いもののように名前について聞きながら。少し、首を傾げさえした。
青年にとっては、他人が選んで呼んでいた名前だ。
身体を起こして窓の日をまぶしいように見る目は、細く月の色をして。

「……だいじょうぶ」「悪い目にあった、わけじゃない」
「色々検査し直して」「わかったことがあるのだって」

枷を嵌められて身体を窮屈にしていたのだから、少しは身体も固まっている。
撫でる手から離れすぎないようにはしつつ関節を軽く動かして、
どこも痛くないな、なんていうのを確かめた。
優しい声を聞きながら、自分の意識との差異に気づく。
どうしてこんなにも、貴方は痛ましそうな顔をしているのだろう。

「……ツキは」「大人が生徒を連れていくの」
「あまりよいことと、おもってない?」
(-142) redhaguki 2022/05/05(Thu) 23:25:54

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

時間は夕に差し掛かり、授業を終えた子どもたちが寮へ散開する頃。
人によっては己の趣味に没頭したり、最近の変化に対して動きのある頃。
貴方もまた、自身の"やるべきこと"に備えている頃かもしれない。

こんこんと、ノックをしてから部屋の扉に手紙を挟む。
手紙の内容は『大丈夫?』という簡素なもので、宛名も名乗りも無かった。
ただ、世辞にも綺麗と言えない字の綴り方だけで、貴方には誰のものだかわかるかもしれない。

ひょっとしたらすぐに返事は帰ってくるかもしれないし、
或いは貴方がその日の"仕事"を終えたあとになるのかもしれない。
扉の向こうに貴方がいないのだとしても、青年は少し待ったら扉の傍から離れて、
再度貴方からの応答があるまで、どこかしらで待つことだろう。
(-143) redhaguki 2022/05/05(Thu) 23:41:37

【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット

部屋の住人は青年が扉を叩く頃に丁度居合わせていた。
つつがなく仕事を終えたからだろうか。

「?」

ドアに挟まった手紙の内容に目を通す。
といっても、中身はとても簡潔に済まされた文字だけだった。
よく共に勉強をしていたおかげか、
手紙の主が誰かはすぐに気づくことができただろう。

何か書くよりも、扉を開ける方が話が早い。
ドアノブが捻られて、少女が顔を覗かせた。
少なくとも体調が悪そうには見えない。
用件を尋ねるように首を少し傾げる。
(-148) dome 2022/05/06(Fri) 0:20:37

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

「……私は、わかりません。
 連れて行かれたことがないので。
 暗い顔で帰ってくる子も、普段とは違う姿の子も居ました。
 あまり、よいこととは、思っていません。
 ただ、よいことであれと信じています」

沢山の意見を聞いたわけではない、幾つかの偏見。
よかったと笑顔で帰ってきた生徒達を知らないだけ。

「現に今だって、
 君が拘束されていたことのどこが良いことなんですか。
 ない方が良いに、決まって……」

わからない。

「私は、君が過ごしたいように過ごしている姿が一番見たいと思っているんです。
 君には沢山のよかった、と、心地がいいを感じて欲しい。

 私だけいつも気遣って貰って、君の為になることが何一つわからないんです。私に何か出来ることはないんですか……」

やらなくちゃ、いけないことと、
やりたいことが混ざってわからなくなる。

「私になにか、させてください」

不安定なまま、君に縋ってしまう。
一秒一秒、"先生"になりたい時間が延びていく。
(-149) toumi_ 2022/05/06(Fri) 0:25:15

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

扉の前で暫し腕を組んで立ち尽くしている様子は、
けれども変わった人間として捉えられているのだろういつもどおりの青年からすれば、
特別変わったこととは見られなかったはずで。
つまり、目撃するものがあったとしてもそれを別の事項と紐付けられることはなかっただろう。

閉じていた目を開けて、貴方の方を向く。
変わった様子はないようだから、少しほっとしたように体の力が抜けた。
口を開きかけて、しばし。あちこちに目をやって。

「歩こうか?」

行き先は寮の建物よりかは外、特にどこと定めているわけではないけれど。
誰にでも聞かれていい話では、ないだろうから。
(-156) redhaguki 2022/05/06(Fri) 0:59:43

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

朝、姿を見せない子どもたちのことは神隠しであると聞いている。
それだけ口止めは厳重なものであるから、団結した反発もないのだろう。
ただ、そう。青年が口止めをどれだけ受けたのか、
そもそもそれまでの事象と自分のことがどれだけ結びついているかは、疑問だった。
少し困ったような、動揺したような。
わずかに丸くなった目が、貴方を見下ろしている。

「僕は」「……」
「ツキには」「僕が、不幸に見えている?」

きっとかれが自分のことを慮ってくれているのだということは、
十二分に伝わっているのだ。ただ、それがどうしてなのかがわからない。
ぼんやりとした頭の中で、その輪郭がつかめない。

「僕は、困ってる?」「人と違うから?」
「ツキには、僕にはなにか」「足りてないように、見えるのかな」

手を伸ばす。すぐそこにある頭を腕の中に収めてしまった。
どうすれば貴方の抱いている不安を軽減できるのか、わからない。
だから、小等部の子どもたちにそうするように、同じことをなぞった。

「ツキが僕を見て苦しいなら」「それは僕だけのせいじゃないと思う」
「ツキは、何が苦しい?」
(-158) redhaguki 2022/05/06(Fri) 1:15:41

【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット

ここ暫く、前よりも遠巻きに周囲と接しているところを見ていたから、心配する気持ちがあったのは少女も同じで。
久し振りに近くに感じる青年の姿に、安堵する気持ちがあった。
受け取った手紙を自分の言葉代わりに掲げて、『大丈夫?』と同じように尋ねる。

あちこちに視線を巡らせるのを見て、
気を遣ってくれているのだろうなと少し嬉しくなる。
後ろ暗い役目を背負ってしまったものだから。

「!」

提案に頷きを返して、部屋を出る。
いつも持ち運んでいる黒板を肩から提げて、
歩き出す青年にちょこちょことついて外に向かうのだった。
(-159) dome 2022/05/06(Fri) 1:26:52

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

廊下から外へと出でて外を歩く。夜気はほんのりと冷えている。
向かう先は森の方――……ではなく、寮の後ろ側に回ったところの草木の茂み。
森には繋がらず、建物間を仕切るようにある人工林。
少なくとも話し声は緑に吸われて、外へは通らない。

「大丈夫?」「ええと」

じゅうぶんに人の耳からは離れただろうところまで行って改めて問い直す。
けれども少し考えてから、その内容が伝わらないことに気づいた。
どう説明すべきか。それを頭の中でなぞっている内に、
あまり良くない姿を見せた――青年はそう思っている――ことを思い出す。
先導する足が遅れて、少しばかりうつむきがちになった。

「森へ連れてってしまった」「だから、なにか」
「疑いを持たれたりしたんじゃないかなって」
(-161) redhaguki 2022/05/06(Fri) 1:50:53

【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット

『何もありませんでしたよ』

何も、疑われることはなかった。
あなたが庇ってくれたことも理由の一つだし、
森に居ても"不自然ではない"生徒だから。
少なくとも、青年が見かける範囲で少女の扱いが何か悪くなったような兆候は見当たらない筈だ。
同じように、少女の中で青年の扱いが何か変わることもなかった。
それは充分に真実を理解していないからであるかもしれないのだけれど。

『バットくんは』
『バットくんではなかったのですね』

あの森での出来事。
その時に聞いたもう一つの名前のことを指しているらしい。
ただの確認以上の意味は込められていない言葉。

つられて歩みが遅くなる。
風に合わせて、草木の枝葉が微かに揺れるのを眺めた。
(-166) dome 2022/05/06(Fri) 2:50:16

【秘】 神経質 フィウクス → 雷鳴 バット


腕の向こう、随分と偏った食事の品目と。
それから、怖じ怖じと顔色を窺う子どものような様子を。
それぞれを一瞥して、けれどそれだけだった。

食事の内容については大人達の指導すべき事であって、
教育実習生ならまだしも、自分が関与するものではない。
であればやっぱり、自分が口煩く言う義理は無い。

フィウクスはジャステシアや他の高等部の生徒のように、
誰かの面倒を見るだとか、そういった事は殆どしない。
自分はそうされるのは好かないし、それができる人間でもない。

「……アオツキが。
 俺は頼んでもないのに自由に使えと寄越して来た
 正直持て余してるんだ。
 お前が時々使うくらいがちょうどいいんじゃないか」

その後にこの部屋を貸し与えた人物を問われれば、
やはり返答はどこか突き放すような、素っ気ないものだった。
こうして現に有効活用されている事を思えば、
自分は一度くらい件の人物に礼でも言うべきなのだろうが。
(-168) unforg00 2022/05/06(Fri) 3:49:28

【秘】 神経質 フィウクス → 雷鳴 バット


それから。

「……そうか」

あなたの答えへの返事は、ごく短いものだった。
回りくどく、そして根本的な解決には至らない。
そんな治療なのだろうと薄々察してはいた。

こうしてあなたがここに居る時点で、
それは病と直接的に関連するものではないか、或いは。
即座に病状が大きく和らげられるような治療は行われていないか。
答えが概ね二択となるのは明白だった。

「お前は。」

「抱えた傷や病を治して外へ出たいのか、それとも。
 何処であっても、嫌な目で見られる事を、怒られる事を
 しなくて済むならそれで良いのか。」

お前はどうなりたいんだ
?」

わからないのであればわからないでもいい。
この場に於いてはそれも一つの答えだろう。
ふとした問いへの答えを受け取れば、
ドアから背を離し、踵を返して部屋を後にするつもりでいる。
(-169) unforg00 2022/05/06(Fri) 3:50:41

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

『不幸に思えてます 私には』


違う、本当は不幸がわからない。
だけど、ほんの小さな幸福だけを知っている。

「君が」「幸せでないように、見えてる」

――それは俺だけのせいじゃないと思う。
深呼吸をしろ。繕えない、先生でなければいけないのに。


『よかった、だとか 嬉しい、だとか
 欲しい、だとか 未来に願うことを
 君から聞けないことが苦しい』
(-178) toumi_ 2022/05/06(Fri) 7:53:12

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

『普通を与えることが幸せだ』
と教わった」

『普通を経験できないのは幸せじゃない』
、と」

『他人とその普通が違うのなら、
 その人にとっての普通をさせてあげたい』
って思う」

『君の幸せな姿が見たい』


『君が笑っている姿が見たい』


『表情が変わらないとわかりませんよ』


『言葉にしないと伝わりません』


『だから教えて下さい』




――『クロツキがして欲しい事を教えてください』


それは、過去にクロツキという人間が告げられた言葉。
頭から離れない、大切な言葉。

どうして、声も顔も同じように出来ないのだろう。
言葉を真似をしただけで、その人のようになれないのか。
男は信じたくなかった、彼のようになれないことを。
(-179) toumi_ 2022/05/06(Fri) 8:12:51

【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット

「ちがう、うまくやれる。
 聞かなくたって、できる、どうやって?」


『君を幸せに出来ないままで、私は先生になれないですよ』


誰かの言葉を引用して、うわごとのように呟いて。
その胸に納まりながら、ふいに体の力を全て抜きもたれかかる。
しがみついている手が弱くなって、まるで人形になったよう。

先生になれる時間が、切れてしまった。


「苦しい、君を幸せにする方法がわからなくて」

「本当に幸せ、だったときがあった。あおは僕を幸せに出来た」

「あおなら君を助けられた。
 ここにいるのが、ぼくだから私は、君を喜ばせられないのか、と、苦しい。
 私が、僕が? いるから、ごめんなさい。
 先生じゃない、あおじゃない僕は、嫌だ。
 誰も助けられないから、嫌だ。
 早く戻るから、――あおがしてくれたこと、全部、ちゃんとやるから」


そこで震えていたのは小さく聞き取りずらい声を出す、何かを模倣するだけの子。
言われたとおりにだけしか動けない愚かな生徒だった。

ここに居て良いのは僕じゃない。
居るべきだった、彼にならなくちゃ。
生徒を笑顔に出来るのは彼しかいないのだから。
彼が救いたい生徒を傷つけるなど、あってはならないのだ。
(-180) toumi_ 2022/05/06(Fri) 8:28:39

【秘】 ライアー イシュカ → 雷鳴 バット

「…… あるように……いや、……ああ。
 "治療"されて、元気なままのやつなんかいるのか?
 って言うか、お前もいなかったらしいじゃん。
 そんな高待遇で済んだのかね」

やや遠巻きに恐れが滲んで聞こえた声に、
一度だけ振り返ってまた見つめていた兎に視線を戻す。

皮肉めいてるが高待遇を信じている声ではない。
そう言う話も稀に聞いたことがある。
自分がその手のに当たらなかった為全くもって腹立たしいが。

「……お前さあ。……んん、……何て言うかな……
 ……病気が変化した感じ、具体的に何かあるか?」
(-197) poru 2022/05/06(Fri) 13:31:54
雷鳴 バット(匿名)は、メモを貼った。
redhaguki 2022/05/06(Fri) 19:15:57

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

「そうか」

貴方があの場所、あの時の立会人だと知らない青年は、
ただただ貴方になんらかの疑いが及ばなかったことに安堵した。
教員棟から出ることの叶わなかった一日、
それからもう一日を経て周りの変化を目にして、やっと安心したのかもしれない。

「バット、であってる。ただ、そうじゃない呼び方をする人もいる。
 人によって違う、のかな。わからない。家族は、バットって呼んだ」

日の落ちるごとに青年の動きはしっかりとしてきて、言葉も明瞭になる。
まるで陽光に押さえつけられていたかのように、背筋は真っ直ぐに伸びる。
鬱蒼と茂る木々は森ほどではないが、周りの光を遮って。
下生えの長いところまで足を進めると、木の根元に腰掛けた。

「先生の中には、そう呼ぶのを咎める人もいる、みたい」
(-225) redhaguki 2022/05/06(Fri) 19:27:13

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

しんと静まりかえった伽藍堂の部屋の中を見回す。
一人で過ごすのがどうにも寂しく、一人のうちにも何度か見渡した景色。
そこにあるものは決して賑賑しいものではなく、……ただ、そこにある優しさに、
与えたものの名前を聞いて合点がいったようにうなずきもした。

「ここは、落ち着く」「フィウクスの時間を奪ってたら」
「申し訳ない……けど」「僕はひとりでもそうでなくても」
「フィウクスは、僕が黙ってても」「怪訝に思わないから、いい」

文節のつながりのふんわりとした言葉は要するに、
自分がこうして使うことを肯定されるのと同じく、
貴方のまだ見ぬ部屋の使い方がなんであれ、肯定するつもりだという意思表示。
逆はどんな気持ちが抱かれているのだとしても、
青年の方はこうして優しさを橋渡しされることについて悪い気はしていなかった。

「大人は」「ゆっくりこれから」
「おまえに合った解決法を探そう、と」

果たしてここにいる子どもたちがどんな病を抱えているのかはわからない。
大人たちだってその善性の程度は様々で、悪意を隠しきれないものもいる。
ただ、青年は誰かのように、帰ってきてすぐに怯えを抱くこともなく。
自分が子どもたちにどう思われるようになったかを気にする素振りが増えた以外は、
以前と様子が変わったようでは、なかった。

「僕は……」
「フィウクスやみなと一緒に」「ご飯が食べられるような」
「ちゃんとした身体がほしい」

(-228) redhaguki 2022/05/06(Fri) 19:42:42

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

青年は自分がどんな瑕疵を抱えているのか、適切に他者に伝えたことがない。
理由は彼の学力の低さもある。周りに比べると、追いつけていないフシがあった。
周りの助けや努力もあって深刻な落ち込みを見せているわけではないが、
それでも同年代の子供に比べると、"しようのないもの"なのは確かだった。
だからそれというのはいつでも的外れで、貴方の状態をしっかり捉えてないこともあるだろう。

「フィウクスは?」
「フィウクスは、どうなりたい?」

それでもまっすぐ、青年の目は貴方へと向けられる。
貴方がこうして他者に向けた気の回しがきまぐれであったとしても、
与えられたものは、あったのだ。
それを受け止め見上げる人間が、こうして己から返るものを少し意識しただけの。
ほんのささいな、幼い善意や厚意であるのかもしれない、小さな問いかけだ。
(-229) redhaguki 2022/05/06(Fri) 19:42:55

【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ

「……」
「なにか、よくないこと」「されたの?」

青年の目は少しの驚きを湛えていた。光の薄い目が小さく丸められる。
その実、貴方やこの飼育小屋に対して遠巻きにしていたのは別の理由だったから。
おそるおそる、もう一歩、二歩。腕を伸ばせば届く距離。
それに合わせてがたがたと、飼育小屋の中の動物たちがざわめいた。
一匹欠けた兎小屋の獣たちは、手の届かない方へと壁を作るように追いやられた。

「わからない」「ただ、これからは」
「僕にあった解決法を探す、って」
「今までは、そうじゃなかった」「みたいだった」

たとえその扱いは理不尽に見えるものだったとしても、
例えばかつての子どもたちのように苦しめられたりということは、
青年から見ればなかったのかもしれない、ただ。

実習生へは、青年は学力の遅れや社会行動性の未発達、
いわゆる精神遅滞のきらいがあることを伝えられていた。
実際に青年に行われたことが客観的に見て妥当性のあるものかどうかは、
一面的な意見だけでははかれないものだろう。

「……」
「イシュカは?」

口籠る。貴方が自分と同じように感じていないのは、明らかだったから。
(-231) redhaguki 2022/05/06(Fri) 19:49:11

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

「……ツキは……」

頭を撫でる手に手を添え、指を絡めて膝の上へ下ろす。
心の中を吐き出すように訴える貴方に、頷きながら目線を返す。
ぱち、ぱちと呼吸にあわせるように降りる瞼は、耳を傾けていると示すよう。

少しだけ、沈黙だけが挟まる時間があった。
そのうちに腕の中に掛かる重さを受け止めて、髪の硬い感触に頬を寄せた。
ぐったりと弱ったような貴方の背中を見下ろして、青年は考える。

「ツキは」
「可哀想だ」

「誰かがなぞった人間の形をしていないと」
「耐えられないんだ」
「ツキは、普通じゃなかったんだね」
「普通じゃないから、誰かの普通に憧れて」
「自分じゃないものになったんだね」

とつとつと語る。耳に聞こえた言葉への、純朴な感想だ。
それを理性的な形で表すのならば、同情なのだろう。
ひどく脆弱な精神を曝け出す貴方を、悲哀の目で眺め下ろす。

「ツキは幸せに"された"んだ」
「自分が思うものじゃない」
「他人の思う幸せに」
「ツキは本当は」
「僕じゃなくて、誰かを幸せにしたいんだ」
「その代わりを誰かに、やってほしいんだね」
(-236) redhaguki 2022/05/06(Fri) 20:03:27

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

とん、とんと背中に回した手が子供をあやすように叩く。
落ち着かせ、心の安寧を取り戻すことを望むように。
純粋に、無雑に。青年はそこに一変の屈折もなく、貴方の言葉を受け入れた。
貴方が誰かに言われた言葉の正誤を断ずることは青年には出来ない。
そこまでの知性を持ち備えるほど、青年の精神は習熟していないのだ。
大きな成人の身体に、まだ彼よりも年下の子供にも劣り兼ねない柔らかい心だ。
貴方を真に救う方法は、未熟な心は持ち得ていない。

「僕が幸せになって」
「僕が普通になったら」
「ツキは、嬉しい?」
「僕、アオの代わり、やってあげる」
「だからもう、苦しくないよ」

それはまるで、片割れを亡くした母親に、子供が父親の代わりを申し出るように。
家族をなくした生き物に、誰でもないものが無邪気に寄り添うように。
耳元で流し込まれる声は大人のそれであるのに、抱く気持ちはひどく幼い。
だからこそ、そんなことも簡単に言ってしまえるのだ。

「これからは、僕がアオの代わりだよ」
(-237) redhaguki 2022/05/06(Fri) 20:03:38

【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット

『では、私は今まで通りバットくんと呼んで良いのですね』

人によって違う。
そこにどんな意味や目的が隠れているのかはわからない。
でも、今まで接してきた"少女にとっての青年"はバットだから、これからもそのままで良いかなと思った。

『呼び方がいくつかあるのは不思議な気分です』
『なぜ、咎められてしまうのでしょうか』

同じように、適当な木の根元にちょこんと座る。
小さな体躯はすぐに木々や茂みに紛れてしまいそう。
普段より更に低くなった目線で、また頭上の枝葉を眺める。
ぼうっと過ごす時間は嫌いではない。
(-242) dome 2022/05/06(Fri) 20:20:30

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

「わからない。でも、理由はあるんだと思う。
 ……ミゲルって呼ばれたのは、久々だったかも。
 先生たちもたまに、そう呼ぶ人はいるけど」

曖昧に混在している理由は、少なくとも青年はきちんと認知できていないようだった。
どうして自分がそう呼ばれているのか、意味や実情も理解していないのだろう。
だから含みもなく、貴方と同じように首を傾げるだけ。

傍に座った貴方の横に身体を寄せて、じっと見下ろす。
視線の向いた先は自分と同じように、手袋をした手先。
しばらく黙ったまま視線だけが刺すように落ちた。
考えていることを隠すように他愛のないことで間をつなぐ、なんて、
器用なことは青年には出来ないらしかった。
不自然な間があってから、ようやくといったふうに声を出す。

「……ラピスは……
 どうして、手袋をしているの。」
(-244) redhaguki 2022/05/06(Fri) 20:35:11
 




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