人狼物語 三日月国


150 【R18G】偽曲『主よ、人の望みの喜びよ』【身内】

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視点:人


ナオアキ神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。
カナイ神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。
マユミ神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。
ロク神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。
カジヤマ神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。
フカワ神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。
ライカ神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。
コゴマ神の居ぬ間に弓を引こう マユミに投票した。

マユミは村人の手により処刑された。

月が姿を変え、新たな一日が始まった。村人は集まり、互いの姿を確認する。
犠牲者はいないようだ。殺戮の手は及ばなかったのだろうか?

幽界の歪み
突如として空間が歪み、この世とあの世の境界が曖昧になってしまった! 今日に限り、生者も死者の声や姿をハッキリと捉える事が出来るだろう。

現在の生存者は、ナオアキ、カナイ、ロク、ヌイバリ、カジヤマ、フカワ、ライカ、コゴマの8名

カジヤマは、会議室の端末に送信した『あきちやんだめだー』そこからしばらく返信はない。
(a0) 2022/06/06(Mon) 21:35:49

【人】 跼蹐 カナイ


──会議室の扉が、そっと後ろ手に閉められた。

消耗こそすれ神経が昂ぶったような感覚が持続し続けているのは
いよいよおかしくなりつつあるのか最初からおかしかったのか。
一度深く息を吐いて、注意深く気配を探る。

自身に現れた力が特定の個人を探す事に長けたものではなくとも、
不安定に揺れる気配があれば、すぐに気付く事はできる。
それが多少遠くであっても、大まかな方向程度は。

『おねがいします』。

たったそれだけの文章でも、
何が起きたのかということを察するには十分だった。
だから闇雲に探す必要は無いのだと知っていた。

『ただ二つお願いがあるのです。
聞いてもらえるのです?』

『はい、構わないのです。
1つは、この能力が制御できなくなったら 
その時は僕を止めて欲しいのです。
叶様や他の人に害をなしたい訳ではないので』
(0) 2022/06/06(Mon) 22:47:34
カナイは、無事に、という言葉には、きっと何も言わないまま。
(a1) 2022/06/06(Mon) 22:48:59

カナイは、少し眉尻を下げるだけだった。
(a2) 2022/06/06(Mon) 22:49:10

ナオアキは、骨を折った。
(a3) 2022/06/06(Mon) 23:17:12

【人】 跼蹐 カナイ

>>+0 >>+1 弓日向

「…内容、聞いてから考えてもいいですか」

「………わかりました、その時は…」
「…僕ならきっと、できますから」

────見付けた。

あなたと最後に会話をした場所。
会議室からやや遠い地点に位置する仮眠室、その方向。
他にも異様な気配は幾つかあったかもしれないけれど、
その位置から、どこか確信じみたものを感じて。

閉じた瞼をそっと上げて、歩き出す。
(1) 2022/06/06(Mon) 23:27:57

【人】 跼蹐 カナイ

>>+0 >>+1 弓日向

以前二人で歩いた道程を、今は一人で歩いている。

会議室を後にして、空気の良いとは言えない廊下を少し歩いて
一回、二回、角を曲がって、……

────三回目の角を曲がった所に、あなたは居た。

その凄絶な姿を見て、
あなたの代わりに悲鳴を上げるように軋む音を聞いて。
ああ、と。
息を吐くようにやるせなさを吐き出した。

──追想。
……気味が悪くとも、こうして確かに利益を齎しているのなら。
けれど、益にならないなら?……

……そしてあなたのそれは、あなたを何処まで、
どういったものにまで変化させ──変異させてしまうのか。……
(2) 2022/06/06(Mon) 23:28:44

【人】 跼蹐 カナイ

>>+0 >>+1 弓日向

「………弓日向さん…」

自分が協力しなければ、あなたはそうはならなかったのだろうか?
そんな事を今考えたところで、もはや何にもならないだろう。

「もう……戻れませんか?」

だからたった一つだけ、問いを投げ掛けた。
あなたがもう後戻りできないのだとしたら──
このままでは、恐ろしいものに成り果ててしまうのだとしたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
きっとあなたは、その答えを行動で示すしかないのだろうけど。
(3) 2022/06/06(Mon) 23:30:00

【人】 跼蹐 カナイ

>>+2 弓日向

人体には存在し得ないパーツが床へ近付いていく。
悲鳴じみた音を立てて、ゆっくりと。
その様相を見て胸の内に湧いたものは、恐怖ではなくて。

「…ああ……また僕は」

「死で何かを得た分、死で何かを失うんだ…」

ヒトとは異なる形状の骨。
四足歩行の──凡そイヌ科の特徴を呈するそれは。
唯一の慰めであり、拠り所だった、飼い犬あの子を想起するものだった。
あの子も自身が恐怖から解放されたすぐ後に旅立ってしまった。

「……でも、これは」

「きっと、おれにしかできない事だから」

どうせもう引き返せない自分がやるべき事だ。
それに、あなたの状態は、自身の内にある力で対処する事が。
恐らくあまりにも──適切なものだったから。

そして何より、同じ理不尽を受けた被害者のあなただから。
こんな形でも、その願いの一つくらい、
えたくて。

やりたい事・・・・・だ。だから引き返せない、引き返さない。
(4) 2022/06/07(Tue) 1:12:10

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+2 弓日向

だから逃れる為ではなく、向き合う為に。

その四文字を確かに認識したその直後、
また一つばき二つべき、まるであなたの心の軋む音のようなむごい音。
それを聞きながら、叶はやはり逃げなかった。

──恐怖を呼び起こし、研ぎ澄ます。

殆どあなたの理性による制御を外れた意思が、
どのような行動を取ろうとも、それを回避しようともせず。

恐れるものは、あなたではなくて。
これまで、そしてこれからの自身の行いと、その発覚だ。

この力はある程度対象を目視できなければならないようだった。
だから回避などに感けている余裕など無くて、
何れにしてもあなたに正面から向き合うほかなかった。
(5) 2022/06/07(Tue) 1:13:54

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+2 弓日向

──そして、それを向ける先は──叶うのであれば。

檸檬色の結晶でもなく、葡萄色の結晶でもなくて。

────パンッ!!!!

あなたの胸元を覆う、血色をした結晶が、一瞬にして爆ぜ散った。

皮膚を切り裂き、肉を突き刺し、骨と骨の間に潜り込む。

その部位を狙ったのは、元を断つ為に。
その次に、長く苦しませる事の無いように。
とはいえ今のあなたにとって、
それが確かに致命の一撃足り得るかはわからない。

そして、たとえそれが束の間の夢だったとしても、
まだ平穏だった頃の思い出を苦痛に変えたくはなかったから。
(6) 2022/06/07(Tue) 1:14:42
カナイは、この力を使う時の感覚が恐ろしくて。
(a4) 2022/06/07(Tue) 1:17:01

カナイは、それと同時に、どうしようもなく安心する。
(a5) 2022/06/07(Tue) 1:17:16

カナイは、多分、前に力を使った時からあまり時間が経っていない。
(a6) 2022/06/07(Tue) 1:18:24

カジヤマは、
「行くな、行くな、
行くな!!
(a7) 2022/06/07(Tue) 2:47:44

カジヤマは、咽がすり切れて、叫べない。身体が動かすことが出来ない。
(a8) 2022/06/07(Tue) 2:48:01

カジヤマは、篝屋の傷は、"    "
(a9) 2022/06/07(Tue) 2:53:00

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

いつか見た決意を宿した瞳のように、真っ直ぐに、一直線に。
迫り来る勢いに、ほんの少し気圧されて。
それでも確かに視界に入ったものを見逃さなかった。

「…………ッ、…」

一瞬の集中の後、短く鋭く、残響を耳に残す破裂音。
結晶とも血飛沫とも、或いは肉の破片ともつかないような
ただただ赤いものが瞬時に飛散して、
もしかすると、硬い破片が幾らか自分も傷付けたかもしれない。
それはなるべくしてそうなる事だから。


西へ、太陽の沈む方角へ。
陽が傾いて、日向が翳る。
いつかまた陽が昇るその時まで。
(7) 2022/06/07(Tue) 5:03:52

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

そうして刹那に嵐は過ぎ去って。

再びの静寂と、それから徐々に血臭に満たされ始めた廊下。
ゆっくりと広がっていく血溜まりと、横たわる少女を見た。

能力の起源に紐付いた奇妙な安堵は長続きしない。
だから今この胸の内を満たすものは。
その思いを理解できたばかりの少女を失った事によって齎された
喪失感と、悲しみと、それから人を手に掛けた罪悪感だった。

「………弓日向さん」

ほんの少し軽く、けれど脱力しきって重く。
まだ温かい身体をすぐ近くの仮眠室へ運び込んだ。
野晒しは忍びなく、けれど会議室へ連れて行くには憚られた。

「あなたはあの時自分の事を薄汚い人間と言ったけど、
 おれはそうは思いませんでした」

寝台へと寝かせて、瞼や唇が開いたままなら閉じさせて。
その横で殆ど唯一の遺品となるであろう端末に指を滑らせた。
連なる望みと、呪詛と、それから。
そして、あなたの最後の言葉を思い返して目を伏せた。

「おれの方がずっとどうしようもない」

そんな人殺しに感謝するだけでなく、生きろと言うなんて。
いったいこれから何処へ生きて行けと言うのだろう。
(8) 2022/06/07(Tue) 5:05:59

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

「何にしたって。
 あなたが死んで泣く人間の一人くらいは、……
 ……事実として、居るみたいです」

どうせ誰も聞いていないのだから、
随分湿気を帯びた声を取り繕う必要もないだろう。
自分で殺しておいて悲しむなんて、
人殺しには身勝手すぎる気もするな、なんて思いはしたけど。
(9) 2022/06/07(Tue) 5:06:52

【人】 ハリの豺狼 カナイ

>>+3 >>+4 弓日向

だからそんな身勝手はすぐにしまい込んで。
きっとまた少し血に汚れた白衣の裾で目元を乱暴に拭った。

「神様なんて居ないかもしれないけど」

深く息をして、仮眠室を後にするべく立ち上がった。

「居ない方がいいのかもしれない」

だって、もし仮に、そんなものが居たら。

おれはそれを殺さなきゃ気が済まないから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たとえばこれが、誰かの描いた筋書きであるのだとしたら。
自分はその誰かを怨まずにはいられないだろう。
そしてきっと、それを殺さない限り。
自分に本当の意味での平穏が訪れる事は無いんだろう。

でなければ、真に恐ろしいものを取り除けはしないのだから。
(10) 2022/06/07(Tue) 5:07:37
カナイは、静かに電気を消して、仮眠室を後にした。
(a10) 2022/06/07(Tue) 5:08:01

カナイは、また声を聞く。きっと仮眠室を出て少し後の事。
(a11) 2022/06/07(Tue) 5:20:35

フカワは、全てが有耶無耶になってしまえたらと思った。
(a12) 2022/06/07(Tue) 5:45:29

【置】 トラジコメディ フカワ


『そうはならねえから……
 今はただ、明日を願うしかないんだ』

まだ切り出していない鉄パイプの上に、
引き伸ばした剥き出しのハンガーや導線を括り付けて、
コンドームとガムテープで補強し固定する。

己がひた隠しにする他愛もない秘密も、
誰かが背負い続ける痛みと罪、恐れも、
皆が抱える前までは僅かだった歪みも、
その全ては、いつか白日のもとに晒されてしまう。

逃げ続けることは不可能だ。
だから逃げない。消極的で、確かな理由。

安寧が脅かされることを恐れても、
脅かすものに立ち向かうことは、恐れてはいけない。

彼らもきっとそうである、はずだ。
(L0) 2022/06/07(Tue) 6:04:00
公開: 2022/06/07(Tue) 6:00:00

【置】 トラジコメディ フカワ


弱者は、踏み躙られ奪われるだけかもしれない。
どれだけ願っても明日は変わらないかもしれないし、
唐突に奪われる明日を、
取り戻すことすらできないかもしれない。

ただそれでも。与えられた安心を。用意してもらえた安全を。
享受して不安そのものから逃げるばかりでなく、
戦うこと、維持することにちゃんと意識を向けられたら。

価値のない自分の人生に初めて、意義が生まれるような気がした。


『オレの安心できる場所を、守って』


祈りは痛みに。苦しみに。
身体を侵食するソレは与えられた物への対価だ。
(L1) 2022/06/07(Tue) 6:13:28
公開: 2022/06/07(Tue) 6:10:00
フカワは、己の不運を呪って、愛した。
(a13) 2022/06/07(Tue) 6:14:27

トラジコメディ フカワは、メモを貼った。
(a14) 2022/06/07(Tue) 7:16:58

【人】 ハリの豺狼 カナイ


仮眠室を出て、誰かの声を聞いた後。

弾かれたように廊下を駆け出して、
その傍らに気配を探る。読み取ろうとする。不安定な気配を。
今明確に排除すべき恐ろしいもの──奈尾の気配を。
進行方向がわかるのであれば、その背後に回り込むように。

殺さなければきっと殺される。
真に恐ろしいものから逃れるには、殺すしかない。
自分ならきっとできる。自分がやるしかない。


何れにしても脇目も振らず会議室への道を突っ切っていく。
元はドッグトレーナーを目指していたのだ。
犬と共に駆ける為の日々の名残は、まだ身体に残っている。
(11) 2022/06/07(Tue) 7:35:45
カナイは、猟犬じみて廊下を駆けて行く。狩るか狩られるかは、まだわからない。
(a15) 2022/06/07(Tue) 7:36:58

【置】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

あなたは死ななければならない

 奈尾がやって来る方……銃声二発が鳴っていた場所は、
 叶らが彼女と相対した場所から随分遠くからだった。
あなたは死ななければならない

 そこから移動した彼女を迎えに行っていた叶が、
 今いた場所とはほとんど反対の位置で。
          あなたは死ななければならない

 会議室へと向かおうと思えば、
 叶が奈尾の背後に回っている暇などなかっただろう。
あなたは死ななければならない     
  あなたは死ななければならない
──奈尾の道中に誰もいなければ。
あなたは死ななければならない
あなたは死ななければならない

(L2) 2022/06/07(Tue) 8:22:34
公開: 2022/06/07(Tue) 8:25:00

【人】 トラジコメディ フカワ


『弊社の試験薬が』

『貴方様にご迷惑をおかけしてしまったこと』

『深くお詫びしたいところですが──』


 見ないうちに随分と変わり果ててしまったものだ。
 我々に投与された薬とは一体全体何だって言うのか。


「故に少々、お時間をいただけますでしょうか?」

針のような気配に震える瞼を開けて、
引き攣った微笑みを顔に貼り付け、奈尾の前に立ち塞がる。

眉間に皺を寄せてアンテナを握り締めれば、
其処彼処から軽くも不規則な足音が響き始める。
それはまるで行進(/パレード)の始まりを告げるように。
(12) 2022/06/07(Tue) 8:46:21

【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

あなたは死ななければならない         
パァンッ!! 
      あなたは死ななければならない
 開演に水を差す、なんとも無粋な音がした。
 あなたは死ななければならない
            あなたは死ななければならない
「アタシ、会議室に行かなきゃいけないの」
             あなたは死ななければならない
      あなたは死ななければならない
 一も二もない発砲。狙いは深和の足元。
 三半規管も狂ってきているのか、散弾のほとんどは深和を捉えなかった。
次もそうなるとは限らない。
あなたは死ななければならない         
「話は手短にしてくれるとうれしいかしら」
あなたは死ななければならない   
あなたは死ななければならない           
 「ねェ?」
あなたは死ななければならない      
 丈夫に作られていたはずの服は溶け、奈尾の上半身はほとんど露出していた。
 焼けた肉と黒いどろどろの中に、白が見え隠れ。
 斜め掛けにした鞄の肩紐も深く食い込み、骨が支えているようなものだった。
 深和からはあまり見えないが、状態としては背中が一番酷い。
あなたは死ななければならない  
 そんな状態にもかかわらず、これはまだ人の形を保って動いている。
(13) 2022/06/07(Tue) 10:10:08
ナオアキは、銃口を少し上へやり、引き金を引いた。
(a16) 2022/06/07(Tue) 10:10:32

【人】 トラジコメディ フカワ


チッ、と熱い何かがズボンや靴の端を掠めて、
バターでも抉ったみたいな跡をつけたのを感じる。

へへ、だの、ははだの、笑っちまったくらい濃厚な死の気配。

「いえ勿論!……重々、承知です、とも」
『ああああ当たる死ぬ?当たる嫌だ怖い当たる嫌』


実に手強い客だ。ここまで強情なのはいつ振りか。
──そう、あくまでも映画のように劇のように。

無機質な散弾銃、劈く発砲音、異形と化した彼。
それらをひとつでも、確かな現実のものとして受け止めたら、
もうすぐにでも狂ってしまう。出来る限り俯瞰しなければ。
 
銃口が上を向いたのを見れば、及び腰で一歩ほど後退りを。

「申し訳ございません……何から何まで」
『こここ、こい、ここ、に、ここから、音の方』


背後の方から駆けてきた中型の実験動物を、
アンテナの柄でいなし、先ほどの銃声を頼りに飛び掛からせる。
狙いが外れたり逸れたり、それか盾になってくれたらいい。

痛みを増す頭は、寧ろ正気を保たせてくれて有難い。
(14) 2022/06/07(Tue) 10:52:49
フカワは、念の為アンテナを支えに低く屈む。ひぃい、と情けない悲鳴が溢れた。
(a17) 2022/06/07(Tue) 10:53:55

篝屋に来た カジヤマは、メモを貼った。
(a18) 2022/06/07(Tue) 11:59:45

【置】 猶大 ロク

ーーーー顔合わせに数刻遅れて会議室に向かう廊下。
単独行動であることに加えてまともに連絡も取り合っていないロクは、人が減っているだとか、銃声だとか、異変らしき事実にようやっと現実味を覚え始めていた。

ドロドロに溶けた人間だったらしいモノを踏みつけると、不快な粘着質な音を立てて散った。
無意識にシャットアウトした施設に蔓延する臭気も情報を得ようと意識した途端に吐き気を催しそうになる。
濃厚な血と腐敗した肉の絡みあったオブジェが放つそれは探さずとも至る所で目に入る。

「あ〜……メンドクサ。
 こんなトコで死ンだ奴らはさぞかしお可哀想に。まぁでも?人間辞めちゃったら俗世の苦しみから解放されるのかね」

それはまるで神の齎す救済のように。
心から人が望んだ解脱のかたちなのかもしれない。

「アイツ、欲望に忠実だったからなぁ……昨日も会議室に来てなかったし、こうなると死んでる方がまだマシかもな」

もしそうだとしたら。
どうもしないのか。どうにかしたいのか。
考えるのも面倒だった。
(L3) 2022/06/07(Tue) 12:46:41
公開: 2022/06/07(Tue) 12:50:00
無明長夜 ヌイバリは、メモを貼った。
(a19) 2022/06/07(Tue) 12:54:53

【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

 銃弾を浴びながらも飛び掛かっての勢いそのままに近くまで来た一匹には、
 避けながら鞄のペットボトルを一本投げつけてやった。
                     あなたは死ななければならない

 ぱしゃり、水が打ち付けられる、場違いに爽やかな音。
 次いで崩れた肉と露わになった骨が落ちる鈍い音がして。
 最後には溶け残りの蓋の奏でる軽い音が転がった。

             あなたは死ななければならない
「謝るくらいならそこにいないでくれません?」
あなたは死ななければならない

 かくん、頭は痛くて重くて持ち上げる気にならない。
 傾いてそのままにされた。
                  あなたは死ななければならない

 篝屋に使った騙し討ちのような手段は上手くいかないだろう。
 今度は銃を捨てても近くへ寄れそうにない。

   あなたは死ななければならない
(15) 2022/06/07(Tue) 12:56:57
ナオアキは、歩を進める。
(a20) 2022/06/07(Tue) 12:57:06

【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

「…篝屋クン、あっちの方でまだ生きてると思うのよォ」
         あなたは死ななければならない
「酷い状態だから、早く行ってあげた方がいいんじゃない?」
                     あなたは死ななければならない
「アタシ、会議室に行きたいだけなの。頭痛い」
                  あなたは死ななければならない

 だから、何か言うならこの方向だと思った。
 善意や思いやりを取り落としてきているのに、
 他人のそれが存在することを知っているのだ。この男は。
  あなたは死ななければならない

 篝屋が生きているかは知らないが、別にトドメを刺していないのも事実だ。
 生きているのなら、生かす気があるのなら、手当ては早い方がいい。
あなたは死ななければならない
 自分を見逃すのなら攻撃しないとは言わなかった。
 そのつもりではあるが、言った方が今は嘘臭くなる。
 立場が対等でない者とする約束なんて、形だけのものにしかならない。
             あなたは死ななければならない

 信用を取る気はなかった。多少でも思考が逸れればそれで良い。
排除できる。
(16) 2022/06/07(Tue) 12:59:04
ナオアキは、歩を進める。
(a21) 2022/06/07(Tue) 12:59:14

ライカは、走って、走って。足がもつれても。
(a22) 2022/06/07(Tue) 13:07:10

【人】 未だピンボケ ライカ

「あ、れ」

見つけた!と駆け寄った先に、見えるのは。
あの時、確かに標本室で。

「結木、さん…?」


どうして、死んだはずの貴方が。
(17) 2022/06/07(Tue) 13:23:18

【人】 トラジコメディ フカワ


後退りをする。

「ひ、そ、それにつきましてはその」

一匹どっかから此処に誘導するのに、
どれだけ手間掛かってると思ってんだクソッタレ。
そう毒吐いてもとても聞き届けてくれそうにない。

愚痴ったら親身に聞いてくれそうだった彼は、
もうどこを探しても見当たらない。

指示なく異変を嗅ぎつけ、ちょろちょろとやってきていた二匹の小動物を見遣る。
片方は地面の液体を避けようともせず突っ込んでとろけた物体たちの仲間入りを果たし、もう片方は駆けることままならず、のろのろ空を引っ掻くだけ。

それをぽんと脚で蹴り飛ばす。
何かに気を取られてくれればいいのに。

『ひ、あ、後、無さすぎ、だろ……』


どれだけ怯えても、絶対に転んだりとかしないように。
背負ってるのはもう自分一人の安全じゃないんだ。
(18) 2022/06/07(Tue) 13:25:06
フカワは、後退りをする。
(a23) 2022/06/07(Tue) 13:25:13

【人】 トラジコメディ フカワ


篝屋さんを引き合いに出されて、
一瞬、ほんの一瞬だけ硬直した。

何故かといえば、もしかしたら会社の後輩になってくれそうだった相手の安否に関わることだったから。
何故一瞬だったかといえば──

「排除──奇、遇ですねェ、
 オレもそう……オレも頭痛いんですよ」

「その原因。安全を脅かすものを、
 排除すれば解決すると思ってて」

自分は害意だけにはどうしても敏感だったから。
それも“排除”ときた。『彼』と似つつも決定的に違う、
加害者としての、実に傲慢なそれを聞き逃すはずはない。

「な、何もオレが行く必要ありませんし?
 だから、そう……こっちはもう」
(19) 2022/06/07(Tue) 13:30:50

【人】 トラジコメディ フカワ




『後に引く気はねェんだよッ!』



寧ろ自分のごとそっちの頭も割れろ、とばかりに力強く吠える。
鼓膜を介さない、脳を貫き揺さぶる純然たる音の暴力。

施設に蔓延る獣たちに対する呼び声で、
急いで駆けつけようと奔る仲間への導で、
明確な意志でもって攻撃せんとする、初めての害意の形。

血の気がバカみたいに引いていく。
言ってしまったこと以上に、力に身体が侵される感覚。
こんなもん二度三度やれるようなもんじゃないということを、
嫌ってほど思い知らされる。
(20) 2022/06/07(Tue) 13:36:07
フカワは、後退りしようとした一歩で、力強く地面を踏み締める。
(a24) 2022/06/07(Tue) 13:36:42

【置】 ハリの豺狼 カナイ


────居た。

遠く、けれど他人事ではない程度に近く。
轟く銃声がそれを確信じみたものにする。
そして『声』がそれを裏付ける。

ああ、でも、これじゃ迂回なんかしてる余裕は──いや、

動きを止めている・・・・・・・・

最短距離を選びかけた足は即座に迂回路を選ぶ。
それが足を止めたという事がどういう事かはわかっている。
脅威を取り除く為にそれを直視し向き合う臆病者は、
もう嫌になるほど間近に迫った現実を見ている。
(L4) 2022/06/07(Tue) 13:48:10
公開: 2022/06/07(Tue) 13:50:00

【置】 ハリの豺狼 カナイ


叶 西路は狂人だ。

誰だって当たり前に嫌な事が当たり前に嫌で、
当たり前にそれから掻暮に逃れたくて、
けれど手段を選ばないには当たり前に道徳観と理性があってしまって、
普通じゃない自分の欲求の事も当たり前に普通じゃないと思っていて、

それでも誰も助けてはくれなかった。
それは単なる思い込みで、ただ自分が誰も頼なかっただけ。
だから自分が恐ろしいものから逃げる為にはそうするしかなくて、
やりたくないのと同じかそれ以上にやらなければならないんだと思ってしまって
そう思い込んで当たり前の躊躇いを振り切ってしまった。

叶 西路は狂人だ。
きっと誰しもそう思うような事を切っ掛けとして道を踏み外した、
誰もが他人事ではない、当たり前のいびつさを抱えた狂人だ。

だからやりたくない事はやりたくなくて嫌な事は嫌だし、
だから他人とは言えない間柄の人を脅かすものがあれば他人事ではないし、
だから理由はどうあれ自分を庇ってくれた人を見捨てるのは嫌だし、

だから恐ろしいものは
二度とその暗がりから這い出す事の無いように殺さねばならなくて、

だからその為ならどんなに嫌でも意思は一線を踏み越える。
(L5) 2022/06/07(Tue) 13:49:02
公開: 2022/06/07(Tue) 13:50:00
カナイは、逃げない。
(a25) 2022/06/07(Tue) 13:50:17

カナイは、逃さない。
(a26) 2022/06/07(Tue) 13:50:21

【置】 篝屋に来た カジヤマ

『あンの野郎、自分で酸被って殴ってきやがった!!』
『俺ちゃんはまだ死んで――』

小さな声がどこにも届かない。
それは身体から発されていない。

自分が本当に死んでないのかこの暗闇ではわからない。
外の声も聞こえない、稀に己に反応してくれた人間が
生きているか死んでいるかもわからない。

まるで黄泉をさ迷う亡霊のようだ。
いつかは
どちらかに
行ききるのだろう。

ふざけたことばっか頭によぎる。
死んだら家族に会えんのかなーとか。
後輩や大学面子に怒られそうだなとか。
先輩たちは呆れていい気分にはならないだろうなとか。
あの子は敵じゃねぇっていってくれたのに、
あの人を敵のままにしてやりたくないのに。

なんでこの身体は動かねぇのかなとか。

『死んでも声届くならセーフ?』


んなわけないか、無理に笑って闇雲に黒の世界を走った。
(L6) 2022/06/07(Tue) 14:50:07
公開: 2022/06/07(Tue) 14:50:00
ナオアキは、銃を落とした。
(a27) 2022/06/07(Tue) 16:49:35

【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
「い゙っっ、あ゙あ゙ぁぁあ
あああ゙っっ!!?!?

あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 奈尾はここまで、ダメージを負った際に叫ぶことはなかった。
 痛みがないわけではなかったが、半ば麻痺をしているようなものだったから。
 あなたは死ななければならない
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
あなたは罪深い人間だから
あ゙ああああ五月蠅い
死なないと、いきてないとやれないじゃ 
 ない、ほしいのよ、ね゙ェ、罪を犯さなければ、おかした上で 
 罪って何、い゙、結果には原因がつきもの、いたい、殺そうと 
 してくる人にやさしくなんてしナ゙いでしょ、だからそれはア 
 
ナタ
それはアタシ
あ゙ぁぁあああいだいな゙ァっっ゙!!!!
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 ふらつき、頭をおさえて、思考の大部分を
 痛みに支配されながらも、足は止めないで、前へ。
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 銃を拾って撃つよりかは、屈まないぶん水を使った方が早い。
 いや、今の己の状態からすればそれよりも──。
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
(21) 2022/06/07(Tue) 16:50:56
ナオアキは、大きく能力を使い、反動で動きが鈍った深和に引き抜いたナイフを振りかぶった。そして、けれども、
(a28) 2022/06/07(Tue) 16:51:31

ナオアキは、深和を刺すことが出来なかった。それよりも前に────
(a29) 2022/06/07(Tue) 16:51:41

【人】 未だピンボケ ライカ

>>+9 結木、さん

「どうして、は 僕のセリフです」

頭がガンガンする。脳が理解を拒む。
最初に会った時のように話しかけてくる貴方の姿が、どうしたってこの場では異常であることを"知ってしまっている"。

「あなたは、標本室で」
「死んでいたはずで」

傷はそのままで、赤を垂れ流してそこに立っている。
それは、おかしいことだ。
異常だ。

「生きている、なら 先輩も、結木さんも 治療しないと」
「死んでしまう みんなで一緒に帰れない」
(22) 2022/06/07(Tue) 17:08:47

【人】 ハリの豺狼 カナイ


──ひゅ、と風を切る微かな音がして。

────パンッ!!!!


苦痛による、血を吐くような凄絶な絶叫が響いた後。
銃口より発せられる乾いたものとは異なる破裂音。

脇目も振らず廊下を駆け抜けた先でまず視界に入ったのは、
ナイフを振り被る長身痩躯のその背中。
ひどく焼け爛れ崩れた肉とそれが変質したらしき何か、
その間から時折顔を覗かせる白いもの。

惨憺たる有様となった奈尾の背中、その上部。
ともすれば頸にほど近い箇所で、
ともすれば剥き出しの骨に罅が入り、或いは砕けるような。
無防備な背に飛来した何かを避けられなければ、
奈尾はそんな凄まじい衝撃を感じる事になる。
痛みは無くとも。


音と衝撃の出どころは、
叶が咄嗟に奈尾の背に投げた、掌大のガラス片・・・・・・・
それが忽ち膨張するように体積を増し、炸裂したためだった。
(23) 2022/06/07(Tue) 18:07:17
カナイは、その鋭く透明な意思の形は、断ち切る為に。
(a30) 2022/06/07(Tue) 18:07:27

カナイは、きっとどうしようもない人間だけど。
(a31) 2022/06/07(Tue) 18:07:32

カナイは、誰も幸せにならないこの筋書きを断つ事はできる。
(a32) 2022/06/07(Tue) 18:07:39

カナイは、向き合って、終わらせる。自分ではなく、あなたの罪を。
(a33) 2022/06/07(Tue) 18:07:45

【人】 ハリの豺狼 カナイ


直撃すれば、ともすれば脊髄を傷付けたかもしれない。
たとえ仮にあなたが痛みによって怯む事は無くとも、
幾らかその部位を損傷してしまえば、恐らくは。
脳が身体に信号を──意思を伝える事が妨げられる。

それは意図した結果ではなく、
完全に奈尾の自由を奪うには狙いは甘かったかもしれないが。
ただひたすらに、咄嗟に投げ、咄嗟に恐怖を掻き集めた。
そんな無茶な行使と短時間での連続使用、
そして不安定な精神では、反動はこれまでよりも強く。


それぞれの意思が交錯する、そんな一瞬の後。

殆ど蹌踉めくように踏み出し、けれど注意深く様子を窺った。
反動によってぐわんと殴打されたように意識が揺れて、
視界がちかちかと明滅しても、動きがあれば見逃さない。
あと二回。
(24) 2022/06/07(Tue) 18:08:24
ライカは、そんな状態でも、写真を撮った。もう、癖になってしまっていた。
(a34) 2022/06/07(Tue) 18:27:59

ナオアキは、
 
(a35) 2022/06/07(Tue) 20:29:35

【人】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

あなたは死ななければならない
「   」  
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 喉を通った空気は、音にならなかった。
 痛みの大小だけで言うなら、深和に与えられたものの方が痛烈だった、が。
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 脊椎──奈尾が最初に人を殺した時にも狙った部位。
 殺し切れなくても、損傷させれば動けなくなる。
 だから奈尾はそこを殴打した。それが己に返ってきた。
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 「     」
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 世界が白くなって、音も遠ざかったというのに、奈尾の意識はまだそこにある。
 彼はまだ人間の形を保っている。保っていた。
 脳から決まった道を通る電気信号を送って活動する、脊椎動物だ。
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
 ナイフを落として、深和に覆い被さるように倒れ込んで、
 それでもまだ動く。生きようとしている。
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
谺イ縺励>縺ョ繝ィ
あなたは死ななければならないあなたは死ななければならないあなたは死ななければならない
(25) 2022/06/07(Tue) 20:30:19
ナオアキは、なんでだとか、どうしてだとかは言わない。理由は知れているので。
(a36) 2022/06/07(Tue) 20:30:50

ナオアキは、うねり、湧き立ち、形を変え、人間の枠から出ようとしている。
(a37) 2022/06/07(Tue) 20:30:59

【人】 未だピンボケ ライカ

>>+11 結木さん
「いえ、……遠慮、しておきます。
 じゃあ、やっぱり……結木さんは、死んでしまっているんですね……」

どういう原理なのかは分からないが、今は置いておくことにする。あまりに非現実的な光景に脳がマヒしそうだ。
これも、実験の影響なのだろうか。本当に、傍迷惑な事をしてくれたものである。
無駄だとしても、そのうち傷口をふさいでおいた方がいいのだろうか。

「……」

白衣をキャッチして、貴方の靴が溶ける音に眉をひそめる。
そんな強い液体の中に、どうして先輩がいるのだろうか。

(26) 2022/06/07(Tue) 22:07:11

【人】 未だピンボケ ライカ

>>+11 結木さん
「……杖は持ってるんですけど。
 1本だけなので、担架にはなりそうにないですね」

キャッチした白衣を手に緩く巻いて、自分も強酸の海に足を踏み入れる。
写真撮影に影響のある手が無事であれば、他はいい。
今は、先輩を治療しなければ。

「勿論です。
 先輩には、生きていてもらわないといけませんから」
「一緒に無事に帰るんです。絶対に」

そう約束したのだ。
だから、一緒に引き上げますよ。と言って。
貴方と2人で先輩を引き上げてしまうだろうか。
そのまま安全な場所まで運んでいくつもりだ。とはいえ手当の道具を持ってこないといけないから、酸の広がっていない廊下辺りか この近くの部屋になるだろう。

しかし 貴方が先輩とどんな会話をしたかなんて知る由もないけれど。危害を加えない関係であるなら良かった、と思うのだ。
(27) 2022/06/07(Tue) 22:12:47

【人】 ハリの豺狼 カナイ


「────あ、」

だめだ・・・


揺れる意識の中、眩む視界の中。
蠢くそれを見て、思考はただそれだけが鮮明だった。
牽制程度にしかならないかもしれないとは思っていたけれど、
その変容は、その執念は、想定をゆうに超えていた。

これは、自分でなければできない事だ。

あなたが真に恐ろしいものに成り果ててしまう前に。

あなたがこれ以上の罪を重ねる前に。

自分がこれ以上失わない為に。

信じた人を、助けてくれた人を、傍に居るものを。

僅かでも平穏な時を過ごした、安心できる場所を守る為に。


──ここで終わりにしなければ。
(28) 2022/06/07(Tue) 22:40:38

【人】 西へ行く カナイ


それからはあっという間だった。

「この──ッ、 その人から離れろ!!!」


殆ど思考を挟む間も無く、猛犬が喰らい付くように。

深和に覆い被さる異形を尋常ではない力で引き剥がし、
そのままの勢いで殆ど床に叩き付けるように引き倒した。
もはや肉薄する事も反撃を受ける事も厭わず、
ただその動きを止める為に押し倒すように抑え込む。

──果たして。
この場所は以前に刃の雨がぶち撒けられた地点の近くだろうか。
そうであるならその破片が。
そうでないなら、また一つ、すぐ近くの窓が爆ぜ散って。
あと一回。

床に散乱した破片が、ぴしり、めきめきと耳障りな音を立てた。

その直後、その全てが瞬時に成長し────

「────う"、あ っ" 」

無機質に冷たく、鋭く、透明な無数の杭となって、
異形と化しつつある奈尾を自分諸共にずたずたに刺し貫いた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから一拍遅れて熱く鉄臭い塊が喉の奥から込み上げ、
鉄臭さが口の中いっぱいに広がって溢れ出す。
想像を絶する痛みが身体の中を、神経を、脳髄を灼いた。
お仕舞い。
(29) 2022/06/07(Tue) 22:43:28

【人】 西へ行く カナイ


たとえるなら、そう、針の筵。

──無間地獄の刀山剣樹・・・・・・・・・


ねえ、奈尾さん。

自分勝手に、身勝手に、自らの欲求で。

どんな理由があったとしても、確かに人に害を為した。

どこまでも罪深いおれ達に似合いの地獄だと思いませんか。

あなたが悪人かどうかだとか、
どうしてそのような事をするのだとか。
そんな事は論じるにはもう今更な事だ。

どのような理由があれ、あなたは罪を犯した。
どのような理由があれ、自分は罪を犯した。
その罪深さを突きつけられる時が今だった。
おそらくこれはたったそれだけの事だから。
(30) 2022/06/07(Tue) 22:43:53
カナイは、それでもまだ生きていて、奈尾を抑え付けようとする。
(a38) 2022/06/07(Tue) 22:45:01

カナイは、当たり前に、死にたくなんかなかったけれど。
(a39) 2022/06/07(Tue) 22:45:09

カナイは、逃げ場は無くとも、足を止めたくはなかったけれど。
(a40) 2022/06/07(Tue) 22:45:15

カナイは、生きてと、そう望んだ少女を裏切ってしまうのは、嫌で仕方なかったけれど。
(a41) 2022/06/07(Tue) 22:45:22

カナイは、死ぬ覚悟は、もうできた。
(a42) 2022/06/07(Tue) 22:45:28

カナイは、それでも、伝えなければならない事があるから。
(a43) 2022/06/07(Tue) 22:45:34

カナイは、この地獄の中で、もう少しだけ生きている。
(a44) 2022/06/07(Tue) 22:45:40

【人】 トラジコメディ フカワ


──聞き覚えのある絶叫と、破裂音。

「いっ、」

緊張の糸がぷつんと切れて、
アンテナを取り落とし、尻餅をついて。
目の前から倒れ込む異形を認識しては、
心の底から錯乱して、観劇から現実へと引き戻された。

『やった?やってないまだやってない、やらなきゃ
 とりかえし、つかなくなるとるかえすつくように』


嗚咽なのか悲鳴なのかわからない音が喉から漏れ続ける。
わなわなと頭に手を当てて、何事か叫ぼうと思った時には、
(31) 2022/06/07(Tue) 22:48:11

【人】 トラジコメディ フカワ


『叶さん───!!』


それは他愛無い、
無意識のうちの脳の呟きに変換される。

透明な針の山が異形ごと貴方を貫いたのを見れば、
自分の胸まで何かに刺し貫かれたような痛みの錯覚を。

(───どうして?何故?なんで?)

疑問ばかりが頭で膨らんでいくものの、
それは── きっと、全てが終わっても分からないものだ。
仰向けから身を捩らせて、肘を突き、
手を伸ばしてもがいてはみるけれど、
決してどうにもできない目の前の光景を、
(32) 2022/06/07(Tue) 22:59:20

【置】 トラジコメディ フカワ

 
自分がそうなるものとばかり思っていたのが、癪だった。
(L7) 2022/06/07(Tue) 22:59:48
公開: 2022/06/07(Tue) 23:00:00
ナオアキは、他人にとって、理解できない理由なぞどうでもいいことを知っている。
(a45) 2022/06/07(Tue) 23:23:22

ナオアキは、罪の意識は、この期に及んで伊縫に外付けされたものだけだ。
(a46) 2022/06/07(Tue) 23:23:33

ナオアキは、己に地獄は似合いだと思わない。ただ、
(a47) 2022/06/07(Tue) 23:23:44

ナオアキは、己は地獄以外へ至るわけもないと思っている。
(a48) 2022/06/07(Tue) 23:23:47

ナオアキは、頭が痛くなくなった。
(a49) 2022/06/07(Tue) 23:24:01

ナオアキは、動かない。
(a50) 2022/06/07(Tue) 23:24:04

氷肌玉骨を手に ナオアキは、メモを貼った。
(a51) 2022/06/07(Tue) 23:31:20

【人】 未だピンボケ ライカ

>>+12
「ここに来る前からの、知り合いですから」

ただ、それだけを。
だから、貴方のその声色が気になる事はなかった。
どう思われていても、貴方がすることも 自分がするべきことも、変わらない。

前に進むために手を貸してくれるのなら、その手を借りるだけだ。
生きなければならない。生きたい。生かしたい。
こんなところで死んでたまるか。

「麻酔があればよかったんですけど……そうもいきませんから。
 起きた時の痛みは、我慢してもらうしかないですね……」
「布……貴方の荷物にあった、職員の制服も使えますかね。首回り以外は汚れていなかったと思いますし。
 それに伊縫さんもきっとまだ持っているでしょうから。僕が会議室に取りに行ってきますよ」

他に必要なものはありますか、と尋ねながら。
汚れや血を洗うための水もストックから持ってくるべきかと頭を回す。

「……僕だって。
 生きているなら、生きてもらいたいです。生きていたいです。
 そうでなければ、ここに放り込まれた誰もが 報われない」

決して強い人間じゃないけれど、決意だけは。
(33) 2022/06/07(Tue) 23:57:10

【人】 西へ行く カナイ


斯くして人と異形の間と化した者はその動きを止めた。

臆病者はそれを見て取って暫くの後、
漸く殆ど硬直したように掴み掛かったままの手を脱力させ、

────ぱきり、


罅の入るような微かな音がして、
その後に透明な凶器が一斉に砕け、
両者は束の間この現に創られた地獄から解放された。

「い"、ぁ う"ぇ ぇっ、」

砕けた拍子に破片が再び肉や臓腑や神経を傷付けて、
倒れ込んだ事によってそれがまた深くへ潜り込んで、
言葉にならない悲鳴を上げ、血反吐を吐いて嘔吐いた。
これも、あの人にした事が自分に返って来ただけの事。

怖い。
怖い。
怖い。
死ぬのは怖い。
逃げたい。
けれど死からなんて、逃れられるわけがない。
(34) 2022/06/08(Wed) 0:20:03

【人】 西へ行く カナイ


「──、……深和さん…」

焦点が定まらなくて、前がよく見えない。
血がどんどん流れ出ていって、寒気がする。
全身から力が抜けていって、指先一本動かすのも億劫だ。
ああ、怖くて仕方がない。


「ぶじ、ですか そこにいますか……?」

それでも余計な思考を追い出して、
理性を掻き集めて、唯一正常な思考に意識を集中する。
まだ、伝えなければならない事がある。
(35) 2022/06/08(Wed) 0:20:50

【人】 西へ行く カナイ


「…仮眠室、に、……弓日向さんが、います」

迎えに行く・・・・・と行って会議室を後にしたけれど、
その後にこうして駆け付けた叶は少女を伴っていなかった。
そのわけを、自らの罪を、話しておかなければならなかった。
あなた達に無用な不安を与えてしまわないように。

「奈尾さんと、…おなじ、ようになってて」

「どうすることも でき、なくて おれが、やりました」

「……あの子が使ってた端末、
 あの部屋に おきっぱなしに、しちゃって」

抱えていた願望、そして呪詛。
叶わなかった望み。

それを与り知らない所で他者に知られるのは嫌だろうから、
大半のテキストファイルにはロックを掛けたけれど。

それでも、唯一の遺品と呼べるものだから。
生きて行く人に託したかった。
(36) 2022/06/08(Wed) 0:22:00

【人】 西へ行く カナイ


「…あはは……」

「頼まれたこと 全然、できなかっ た」

無事で、と言われたのにこのざまだ。
頼んだと言われたのに、迎えに行った少女の事も救えなかった。
生きてという最後の望みさえ叶えられなかった。

当たり前に頼まれた事を、
当たり前にやってのける事すらできなかった。
ああやっぱり、自分はどうしようもなく不甲斐ない人間だ。

「おこられ、るか なあ……」

それなら、怒られても、仕方ないかな。
(37) 2022/06/08(Wed) 0:23:14
カナイは、罪の重さは自身が計るものではなくて。
(a52) 2022/06/08(Wed) 0:28:47

カナイは、与えられる罰も自身が決めるものではないと思っている。
(a53) 2022/06/08(Wed) 0:28:58

カナイは、それは、罪悪感の有無に関わらず。
(a54) 2022/06/08(Wed) 0:29:19

カナイは、だからこれは、なるべくしてそうなっただけの事。
(a55) 2022/06/08(Wed) 0:30:29

【人】 トラジコメディ フカワ


「叶、さん……」

頭痛と吐き気が身体を苛みつつも、
どうにか貴方を救う手立てを考え続けて。
しかしぽろぽろと涙が流れ落ちるばかりで、
それ以外には何も出てこない。

手遅れだということを認めたくないのに、
悪癖となった諦観が身を包んで離してはくれない。

「なんで……オレで、よかったの、に……
 全部……持って行かないでくれよ……!
 ひ、二人の……二人で抱えるもの、だったでしょうが」

這う這うで近づいて行って、
投げ出された掌を両の手で握ると、
急速に失われていく体温が痛いほどに伝わってきた。
(38) 2022/06/08(Wed) 0:44:30

【人】 トラジコメディ フカワ


「オレは……貴方がいたから、
 立ち向かう勇気を貰えたんです。

 オレが頑張らなければ、
 いつか叶さんがそうなってしまうと、
 ───貴方が貴方を害してしまうことを、知っていた」

それを止めたかったのに。
あるいは、どうしても助からないというのなら、
オレも共に、そこへ連れて行ってほしかった。

何もかもが上手くいかないのは、
己がやはり弱者に過ぎないからなのか、
それとも、罪に対する罰がこの形になったのか。

「貴方の、せいで───
 貴方のせいで、無事になっちゃいました。
 
 許さないです。これから、ずっと」

至らなかった自分と、勝手な貴方を。
許したところで、貴方が助かるわけじゃない。
(39) 2022/06/08(Wed) 0:57:19

【人】 トラジコメディ フカワ


「どうして全部事後報告なんですか……貴方って」

思わず、溜息のようなそれが出た。
そういえば近頃は心中で呟くばかりで、
直接愚痴を吐いたりするようなことを忘れていた。

血の混じった裾で目元を拭えば、
頭がどんどん冷めていく。
リアリティに欠けた感覚が、胸の内を満たしていく。

「そうと知っていたら、
 貴方の力を借りようだなんて思わなかった。

 無理させようとか、そんなの御免ですし、
 ねえ、もっと別の方法を考えられたんです。
 オレ達はマジで、どうして……こうなるんですかね」

言った所で全部無駄なことはわかっている。
そもそも他に方法があったかさえ定かじゃない。

けど今は、ありったけの恨み言を言わなきゃ気が済まない。
(40) 2022/06/08(Wed) 1:05:30

【人】 未だピンボケ ライカ

>>+13 結木さん
「じゃあ、先輩に渡した方が良いですね。
 ただでさえ、すぐに眠ってしまうんですから。無防備な背中は隠れた方がいいでしょう」

願いを素直に聞いて、頷いて。
続いた問いには、少しだけ考えるような素振り。

「……少なくとも、ここにいた人達にはそうあってほしいですよ。例え手が汚れていたとしても。
 手を直接汚した人だけが悪人ではないでしょう」

自分だって。救いの手を伸ばす前に、記録することを優先する人間だ。
それが原因で、救えた命を取りこぼしたことも 非難されたこともある。
だから、社会的な悪を断じる権利もないし。そもそも、決めつけることも決めつけられることも好きではないのだ。
自分がそう思って、行動に変えるだけ。

殆どの行いは、自分のためだ。

そう答えると、急ぎ足で会議室へと向かい 必要な物を取りに行くことだろう。
(41) 2022/06/08(Wed) 1:07:09

【人】 トラジコメディ フカワ


「……頼まれて、あげますよ。
 他でもなく、誰にも頼らなかった貴方が、
 初めて俺に対してくれた、“頼み”ですからね」

本当に、どこまでもどうしようもない似た者同士だ。

「オレだって」

「オレだって、何もできなかったんです。
 だからオレも貴方の頼みを叶えてあげられなかったら、
 ちゃんと怒ってください。じゃないと不公平です」

置かれた環境からしてどうしようもなく絶望的で、
自分の力にしか頼れなくて、何かが狂ってしまった。
そうでもしなきゃ、生きていけなかっただけの。

身に過ぎた物を持たされてしまっただけの、人間だ。
(42) 2022/06/08(Wed) 1:19:08

【人】 トラジコメディ フカワ


『───だからいまは、ゆっくり休んでください。
 私も……もう一仕事してから、そちらに行きますから。

 叶さんは、もうひとりじゃないです』


もう音が届くか分からないから、
頭に直接話しかける。細胞レベルの仲間意識があるのだ、
いっそ音にするよりこっちのほうがよく伝わるだろう。

『ひとりじゃないなら───怖くないですよ』


はやがて西に沈むから。
それが今貴方に与えられる、一番の救いになればいい。
(43) 2022/06/08(Wed) 1:23:23
フカワは、些細な秘密と罪しか、この身に持ち合わせていない。
(a56) 2022/06/08(Wed) 1:26:27

フカワは、貴方と自分が死後行く場所があるとしたら、地獄に他ならないとは思っている。
(a57) 2022/06/08(Wed) 1:27:35

フカワは、それで満足だ。
(a58) 2022/06/08(Wed) 1:27:44

ライカは、暫くすれば戻ってきたのだろう。ペットボトルの水と、首周りの汚れた制服を持って。
(a59) 2022/06/08(Wed) 1:55:06

【人】 西へ行く カナイ


「あは、は」

あったかい手だなあ、なんて思って。
自分の手が冷たいだけだと気付いて、おかしくて。
その後に続いた言葉が、なんだかもっとおかしかった。

「おれが、あなたにとって……恐ろしいものじゃ、ないって
 保証もないん、だから。喜んだっ て、いいのに…」

零れ落ちる涙が少しだけ手を濡らしたような、ないような。

自分が二人の秘密を暴露する可能性だってあっただろう。
自分があなたに危害を加える可能性だってあっただろう。
不確定要素が減るのは、喜ぶべき事だ。

「でも、」

「よかった」

あなたが無事でよかった。
でなければ今こうして正気は保っていられなかっただろう。

許さないでいてくれてよかった。
平気な顔をしていたら、恐ろしいと思っていたかもしれない。
(44) 2022/06/08(Wed) 3:27:52

【人】 西へ行く カナイ


そう言う深和さんだって、
さっきも今も急に呼び付けてばっかりだったくせに。


そんな子どもじみた反論は、
あなたとは逆に、心の内だけのものとなった。
いよいよ力が入らなくなってきて、
息を吸って、声を出す為に腹部に力を入れる事も難しい。

安堵するにつれ、意識が遠退いていく。
それはきっと、この臆病者を最も強く突き動かす意思が
不安や恐怖から成るものだからなのだろう。


曰く、死の間際、最後に残る感覚は聴覚なのだと言う。
そうは言っても限度はあるもので、
そもそも音として聞こえていたとしても
夥しい量の血を失った脳が意味を理解できたかは定かじゃない。
(45) 2022/06/08(Wed) 3:28:20

【人】 西へ行く カナイ


────けれど。

頭の中に直接響くような声に、
心の内にそっと、深く染み込むような安堵に。

能力の行使に必要な触媒は、恐怖の対象。
恐れるものが無ければ、この力は無いのと同じ。



「     」


きっと、ここに来て初めて、やっと。穏やかに笑って。
(46) 2022/06/08(Wed) 3:29:16
カナイは、そっと瞼を下ろした。
(a60) 2022/06/08(Wed) 3:29:24

カナイは、待っている。
(a61) 2022/06/08(Wed) 3:29:30

カナイは、いつか日が昇る事も、いつか日が沈む事も。
(a62) 2022/06/08(Wed) 3:29:36

カナイは、静かに眠ったまま、そのどちらをも、待っている。
(a63) 2022/06/08(Wed) 3:29:41

西へ行く カナイは、メモを貼った。
(a64) 2022/06/08(Wed) 3:30:04

【人】 トラジコメディ フカワ


「───」

一先ず連絡を入れよう。
脅威は既に去って。実験動物は会議室には来ない。
もう、終わったのだと。
(47) 2022/06/08(Wed) 3:59:33
フカワは、端末へ事の顛末を送って。
(a65) 2022/06/08(Wed) 4:00:14

フカワは、しばらく、呆然とその場に座っていた。
(a66) 2022/06/08(Wed) 4:01:11

西へ行く カナイは、メモを貼った。
(a67) 2022/06/08(Wed) 5:45:47

【置】 臆病者 カナイ


叶 西路という人間にとって。

ハリは恐ろしいものを元から断ち、その過ちを突き付けるものだった。
臆病者が、心底恐れるものに立ち向かう為の爪牙だった。
立ち向かって、向き合って、乗り越える為の意思だった。

その振るわれ方がすべてまったく正しいものであったとは言えないだろう。
それは度々その切っ先が自らをも傷付けた事が物語っている。
罪悪感や後ろめたさは初めから抱いていた。見ないふりをしていただけで。


どのような理由があろうとも、罪は罪であり、消えて無くなりはしない。
明確な意思でもって他者に害を為したなら、人を殺したなら。
それは地獄に落ちるに十分な罪科足り得るのだ。

それでも、それ以外の事実だって残り続けて、消えはしない。
結木さん。
弓日向さん。
深和さん。
それだけじゃない、きっと、誰だって。

どれだけ怖くても、やりたくなくても。
あそこで終わらせなければ、
もっと恐ろしい事が起きるのであれば。
きっと、同じようなことをしましたよね。
(L8) 2022/06/08(Wed) 16:10:23
公開: 2022/06/08(Wed) 16:15:00

【置】 西方より日をのぞむ カナイ


斯くして臆病者の爪牙は、
最後にはこの悲劇の筋書きへ向けて振るわれた。

いったい何処から悲劇は始まっていたのだろう。
どうしたらよかったのだろう。
自分達は何処へと進んで行けばよかったのだろう。
ただ必死に逃げ続けた先に何があったというのだろう。

そんな事は、もうどれだけ考えたって手遅れだろうから。
きっと全てはなるべくしてそうなった事だから。

だから今は、残る結果だけが全てなんだろう。

ねえ、まだそこにいますか。
どうしようもない人間でも、誰かを救えましたか。
それでも当たり前に怒られるような事をしたおれの事を、
当たり前に怒ってくれますか。

あの子の引いた弓は、おれの突き立てた爪牙は、みんなの祈り人の望みは。
もしも居るのだとしたら、少しでも神様に届くでしょうか。

そうだとしたら、きっと。
(L9) 2022/06/08(Wed) 16:12:32
公開: 2022/06/08(Wed) 16:15:00
カナイは、それで満足だ。
(a68) 2022/06/08(Wed) 16:12:39

【置】 棕櫚の主日 コゴマ

心配を胸にいだきながらに廊下を駆け戻っていた脚は、
端末に入った連絡への安堵で、僅かにゆるめられた。
けれどもその先に見えた光景は、静か過ぎて。
近づいてきたと気づけないくらいには、遠くの場所で立ち竦む。
誰ともなく声をあげるまで、その光景を見守り続けた。
(L10) 2022/06/08(Wed) 19:00:27
公開: 2022/06/08(Wed) 19:00:00

【人】 未だピンボケ ライカ

2人の元に戻ってきて、篝屋先輩が気を失っている今のうちに 服の上からペットボトルの水をぶちまけるようにかけていく。
痛みを感じるかもしれないが、とにかく酸を流すためにペットボトルを空け続ける。

ちゃんとした応急手当のキットはないから、最低限の治療だけを施して。
上に職員の制服を羽織らせる。

あとは無事に目を覚ましてくれればよいのだけれど。

「……体力も落ちてるでしょうから、無理はさせられないですね」

自分が怪我もなく体力も余っていてよかった。
全員が満身創痍だったら何も出来なくなっていたところだ。
(48) 2022/06/08(Wed) 21:17:32

【人】 未だピンボケ ライカ

>>+15 結木さん
「本当に。
 伊縫さんも怪我をしていたようですし。深和さんたちももしかしたら何かに出くわしている可能性があります。
 元々、体調や精神面も良くなさそうでしたしね……」

自分だって、余裕があるわけではないけれど。
少なくとも身体だけは、他の誰よりも元気で動き回れるはずだ。

「はい」

何だろう、と手をハンカチで拭いつつ。
先輩に向けていた目を貴方の方へ。
続く言葉に、暫し迷ったのち。

「そう、ですね。
 ……僕の、潜在的な興味―――でしょうか」

あまり認めたくはないんですが、と続けながら。

「僕は元々、人物写真が好きでカメラを触っていたんです。
 生きている人たちの生活、日常を切り取る事が好きだったように思います」

「高校生の頃―――交通事故の現場に鉢合わせるまでは」
(49) 2022/06/09(Thu) 19:36:57

【人】 未だピンボケ ライカ

>>+15 結木さん
「女性が倒れていました。血だまりの中に倒れて、傷だらけで。
 まだ事故が起きたばかりでしたから、生きていたかもしれません」
「僕は、無意識のうちにカメラを構えていました。
 証拠写真のつもりだったと思います。

 通報よりも先にカメラを構えた僕を、周りの人は問い詰めました。非難しました。
 自分でも、興味本位で撮った写真ではないと思い込みたかったんです。きっと」

続ける。

「でも、その頃から」
「僕は生きている人よりも、
死んでいる人 死に直面しようとしている人を切り取ること
に興味を覚えました」

気付けば、向かった先には首を吊っている人が揺れていたり。
飛び降りようとしている人が屋上に立っていたり。
そういったことが増えていた。
それが偶然だったのか、自分が追い求めたものだったのか。
今はもう覚えていないけれど。

(50) 2022/06/09(Thu) 19:46:43

【人】 ピントを合わせて ライカ

>>+15 結木さん
「僕は、死に行く人を。死んでしまった人を。死に直面してなお抗う人を。
 
この手で記録したいんです


「ただ、それだけですよ」
(51) 2022/06/09(Thu) 19:49:48
2022/06/09(Thu) 19:52:28

【置】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

 誰もいなくなった会議室。ずるりずるり、粘着質な音がする。

「お留守番アリガト〜、思っていたよりも結構あけちゃった」

「他の人居ないし、さみしかったでしょ。ごめんね」


 弱々しい声をこぼしながら、ソレはなんとか椅子に座り込んだ。床に転がっているよりかは多少見てくれはマシだが、焼け爛れ傷付き、数えきれないほどの穴が開いたソレは、どうにも人とは思えない外見だ。

「……取りに来たはいいケド、これじゃ汚しちゃうのよねェ」


 視線の先には枕があった。あの猫ちゃんカバーの。ふ、と伸ばされた手は途中で止まる。血の赤は何だか分からない黒に塗りつぶされて久しい。どれにしろ、触れることは憚られた。

「ここから動くのも、はァ、しばらく無理そう。テンションで動きすぎ」

「治ったら、そうねェ、汚れ落とすよりも袋持って来た方が早そう」

「置いた場所にあれば、探さなくていいんだケド」

「意識一回飛んじゃってから、静かになったわねェ」

「あんなに五月蠅かったのに」

「どっか行っちゃった? 結局何だったのかしら、アレ」

「アタシ、死なないわ? 死んだかもしれないケド、死ねないの」
(L11) 2022/06/09(Thu) 19:55:20
公開: 2022/06/09(Thu) 20:00:00
ナオアキは、まだやり残したことがある。
(a69) 2022/06/09(Thu) 19:55:32

【置】 氷肌玉骨を手に ナオアキ

「猫チャン猫チャン、ここにいる間、お喋りしましょ?」

「持ち帰るのに、入れ物が欲しくって」

「丁度良かったのよ、アナタ」

「タオルよりも、綿の中の方が壊れなさそうでしょお?」

「あと、」

「作って貰ったモノって、持ち帰ろうとしていいじゃない?」

「こんな非常時でも」


 
「伊縫サン伊縫サン」

「探しに行くからね」

「早く動けるようにならないかしら」

「手だけでも、指だけでも」


「ほしいのよ」

 
(L12) 2022/06/09(Thu) 19:58:06
公開: 2022/06/09(Thu) 20:00:00
ナオアキは、まだ諦めていない。この先も、死んでも。
(a70) 2022/06/09(Thu) 19:59:01

ナオアキは、もう動けない。
(a71) 2022/06/09(Thu) 19:59:17

ナオアキは、猫ちゃんとお喋り。
(a72) 2022/06/09(Thu) 19:59:26

 




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