[交わる前の儀式の様な口付けは、此度はひどくささやかで。
馴れ初めたばかりの男女の様なやり取りも、
照れくさくはあれど、大切なひと時として刻まれる。

和やかだった空気に響いた淫靡な水音も、
艶やかに啼く女の声も、男の背に縋り付く手も、
不純と言えるものなのに、二人にとっては、純粋で尊く。

理恵の様子>>G2からキツそうだとも思ったが、
どうして俺は無理に押し込んでしまったんだろう。

──それはきっと、理恵が、
何だかんだ言いながら、ずっと俺を受け入れてくれたから。
普段はすぐ怒って足ダンしたりするくせ、話を聞いてくれて、理解をしてくれる、大きな器を持った子だから。

今も受け入れられたくて、甘えたんだ……]


　　悪い……


[理恵の言い分ももっともなので謝ったが、
それはかたちだけの謝罪なんだろう。
深呼吸をする彼女を見てなお、緩められる余裕がもうない。
彼女だって待ち侘びただろうが、俺だって焦がれていたんだ。

背に縋られる感触も好きだけれど、深く、強く彼女の最奥を可愛がるには、こっちの方が良い。そんな理由で彼女の手首を掴んだ。
彼女が痛くないかとか苦しくないかとか、
考え過ぎてしまう前に。本能に少し、身を任せる]

[熱く打ち付ける度にもっと熱くなって、
白い乳房が揺れて、ベッドが軋んで、理恵が啼く。
どれもひどく甘く、けれど容赦なく俺を高みへ引っ張り上げる。

手を囚われ、身体を串刺しにされている理恵が、
俺の瞳を捕らえる。>>G3
一瞬も視線を外す事ができないくらいに、
一瞬も理恵以外の事を考えられないくらいに。
囚われ合う二人が溶け合える様に、体温を上げっぱなしにする]

　　── 、


[俺が心を曝け出せば、理恵が懇ろに甘えた。>>G4
可愛いだけじゃない。切に、身も心も捧げる様な声に、瞳に、体温に、気が触れてしまうかと思った。
まだ見た事のない彼女の心に触れた悦びに、
こんな浅ましい顔を見せた己を求められた幸せに、
ずっと離さないでいてくれる甘美な柔襞に、
腰の動きは止まらないまま、
理恵に言葉を降らせ続けた。
持っている言葉が少な過ぎるので「可愛い」と「理恵」を真心で繰り返したが、長くは続かなかっただろう。

理恵の限界には気付けないまま覆い被されば、
細い悲鳴が聴こえて、背中に心地良い体温が回される。
理恵の叫びを耳と身体で受けると、心臓が早鐘となって呼応する。
早く一緒に溶け合いたいと願った。

同じ気持ちで、境界線を取り払って、
もともとひとつだった錯覚に落ちるくらい、
ひとつになって………

理恵を抱え起こして迸らせたのは、追い打ちになった。
けれど、今までにないくらいに乱れてくれる彼女に、
受け入れてくれる彼女に、愛おしさが積もるばかり]

[重ねた言葉に返事が返らずとも>>G5、
何か言おうとした気配は感じられたか。

それだけで満たされ過ぎるくらいに満たされるんだから、
骨の髄まで惚れていると言っていいのかもしれない]


　　


[小さく呼んだのは、かけがえのない人の名前。
余力が許す限り、愛おしく理恵を抱き締めていたが……
それも長くはもたなかった]

[消え入りそうな息が聴こえて、
理恵の身体が寄り掛かる。>>G6
支えてやりたかったけれど、ダウンしてしまった。
理恵が寄り掛からなくても倒れていた気しかしないけど。

こっちは眠らない様に理恵の頭を撫でて手を動かしていたが、理恵は一足先に夢へと旅立ってしまった様だった]


　　……無茶、させたもんな……


[ぱち、と落ちた瞼を上げた後、
理恵の寝顔を見て眉を下げた。
そして安心し切ったその顔に奮い立たされて、
寝落ちない内に衣服やら、寝床やらを整えた。
旅館の従業員が部屋に来てくれた時、
理恵は下手くそな着付けで着せられた浴衣を纏い、
頭からタオルを被せられ、ブランケットでもこもこに埋められながら御簾の中に寝かされていただろう。

ちなみにベッドの上で陰茎を抜いた時、いつもより多く白濁が彼女から溢れ出した。
それを見て、俺だってくたくたでもう無理な筈なのに、
反応する下半身を感じた。
お前元気じゃな……と自分で自分にちょっと引いたりした。
シーツも汚してしまったので必死でティッシュで拭った。
とても頑張ったと思う]