人狼物語 三日月国


81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】

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【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク

共犯者にだけ話したことがある。
ニエカワを救助まで生かしたいなら、
全員分の食糧を掻き集めなければならないと。

薬だけで病は治らない。
それには体力が必要で、その体力を維持させるには食糧が必要だ。

「……言わせんですか、それを」

言わなければ。
肯定しなければ。

「…………そう、ですよ」


絞り出すような声で、漸く、一言呟いた。

天秤が傾いた方を優先した。
ただ、それだけ。
技師が亡き今、自分が一番年嵩だ。
たとえ大人と呼べる歳だろうと、
貴方だって男からすれば子供である。
あの少年一人の未来と命は。
貴方達全員の未来と命より、ずっと軽かった。
(-84) wazakideath 2021/07/09(Fri) 11:26:02

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「あンな死に方選んだ訳を聞いてンだが――
 ……。…………、――
ぇ、?


 初め、囁かれたそれこそが答えだとは思わなかった。
 だから変わらぬ調子で言葉を紡いで、不意に途切れて。
 沈黙の末、小さな声が口から洩れた。

 半ば呆然とした様体で、死んだ男の顔を見る。
 左の耳朶、光る飾りは妙に浮いていて。

 ――死人ってのは、
 死んだときの恰好で現れる決まりなんだろか。
 そんな場違いな事を片隅で考え乍ら、
 よく回る筈の口は、短く。問い掛けの形に動いていた。
      
こと

「……そンな理由で?」
(-87) 榛 2021/07/09(Fri) 14:26:51

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「はい。
 無駄な、足掻きでしたね、思いついた頃には。
 誰かが誰かのために望む死が他にあるのならば、
 あなたは残る可能性がありました。
 今となっては、わかりませんが。
 私は、生きるよりも大切なことはあると学びましたから。
 あなたが望んだことどおりに運ぶ可能性もありました。

 私は、あなたが望んだ通り、
 子供たちのために死ぬ大人ができたと思っています。
 取引通り、食事と一緒に。
 他の荷物は渡せませんでしたから、遠くへやりました。
 まだ、疑問がありますか。
 生前からいっていたとおりです」

問いかけを繰り返している自覚がある。
死因に関しては、自分は一切関わっていなかったから、……それを気にしているのだろうか?

「首を切り落とされていたことに関してですか?

 ……、……。

 あれは、痛いのも、苦しむのも嫌でしたから」

本当は、理由はたくさんある。
あえて告げていないものもある。
それを生きている目の前の青年に言うべきかを迷い、呟いた。
二度と会えないはずだったのだから。どうせならば。

(-89) toumi_ 2021/07/09(Fri) 15:03:17

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「死にたく、ありませんでした。
 一人で、……自分の意思で死ぬのが怖くなりました。

 このままでは取引ができなくなると思い、
 死に方を教わって、手伝ってもらいました。

 私の飢えは空腹ではありませんでしたから。
 このままでは約束を違えて、生かそうとしたでしょう。
 だから、殺されました、殺してもらいました。

 最後にほしかったものも、あなたから貰えましたから。
 後悔は、ありません」
(-90) toumi_ 2021/07/09(Fri) 15:05:07

【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ

「……そうかい」

 突き飛ばす様に胸元から手を離す。
 沈黙の長さ、答える語調。
 何より雄弁なそれらを前にして、虚しさが胸に広がる。

 
これは、余談だけれども。
女の医者――技師と、話をした時のこと。
男は、薬が足りてンなら大丈夫だなァ、と思った。
食う人数を減らすことをとうに決めて、行動に移していたから。
それで足りると、愚かにも信じていた。
その間違いは正されず、今もまだ、信じた儘でいる。


 ダラリと手を下ろして、独り言ちる。
 熱を失ったあの子との会話。尽きぬ悔恨。

「……おれァ、あの子に。
 自分の分まで生きてくれなんて、言われたくなかった。
 自分のこと、……ッ、“食料”なんて、
 そンなひでェこと、……言わせたかなかった」▼
(-95) 榛 2021/07/09(Fri) 18:08:55

【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ

 ベッドの上、シーツに包まれた死人を見下ろす。

 眼前の医者を詰る言葉は――
 そっくりその儘、この男自身にだって言える事だった。
 手酷いエゴだ。
 己が望んだ男の死体を前にして、
 その死を弔うより先に、喪われた別の生を悼んでいる。

「――“仕方なかった”だってよ、お医者サン」

 目を逸らす様に、雨戸の閉まった窓を見る。
 雨の音が、ひどく煩い。

「仕方なかったンだと。長くはねェのわかってて、
 どうせ死ぬなら、みんなが助かる方がいいってさ」

 誰の言葉とも明言せず、そう告げた。
 あの子は恨んじゃいない、なんて真っ直ぐには。
 恨み言を吐き散らした口では到底、伝えられなかった。
(-96) 榛 2021/07/09(Fri) 18:15:09

【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク

その言葉に顔を歪め、強く首を振った。
まるで死者から直接聞いたかのような言葉が、心の傷口を開けていく。

「──……ぁあ、五月蝿い
五月蝿い!!


 作り話なら結構だ!さっさと出て行け!!」

肯定されるのが何よりも苦しい。
自分が殺した人々が、最初から存在しなかったように思えてしまう。

否定され、人でなしと罵られる方が何倍も良かった。
男はずっとそう言われながら、これまで生きてきたのだから。
(-99) wazakideath 2021/07/09(Fri) 18:50:52

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 目を逸らしていたそれを正面から突き付けられて。
 指の先から心の臓まで、余さず冷え切っていく心地がした。

 ――そりゃァそうだろう。   、、、
 好き好んで死ぬ程――文字通り、死ぬ程――
 怖い思いをしたい人間なんて、そうそう居はしまい。

「……なンで、そこまでして」

 なのに眼前の男は、それでも死んだと言う。
 死ぬ事より反故にする事の方が重かったとでもいうのか。
 あんなの所詮はただの口約束で、
 舌先三寸、幾らでもカンタンに破れたろうに。

 ――おれが死ぬとこ見たくねェって、
 死んでほしくねェって、なんでそんなこと言うんだろ。

 ぐるぐると糖の足りない頭の中で渦巻いて、巡らして、
 考えるからクラリと眩暈がする。▼
(-106) 榛 2021/07/09(Fri) 20:36:57

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「――だれに、手伝ってもらったんだ?
 あの医者ではなさそうだったけども。

 そンで空腹じゃねェ飢えって、なんのことかねェ。
 ……生かそうとしたって、だれのことを?
 “だから”って、なにがどう、“だから”なんだ?

 そンで。まるで見当がつかねェんだけども、
 ――お前サンのほしかったものって、なんだろ」

 “あれナニこれナニどうなってンの”と
 五月蝿い子どもみたいに、尽きない問いを幾つも重ねた。
(-107) 榛 2021/07/09(Fri) 20:37:33

【人】 遊惰 ロク

>>4
「オハヨウ、お嬢サン」

 ポツンと佇む少女の背後から声を掛ける。
 これまでと変わらぬ笑い顔、軽快な調子で。

 
一つ深く息を吐いた事、それが震えていた事。
笑い顔をシッカリ作ってから声を発した事。
それらは全て、少女の視界の外での出来事だ。
(6) 榛 2021/07/09(Fri) 21:01:27

【人】 遊惰 ロク

>>7 フジノ
 見てねェなァ、と答え乍ら、釣られた様に辺りを見回す。
 
少なくとも、生きている人間の姿は周囲に無いだろう。


「……散歩がてら探しに行くとするかねェ」

 距離を掴み損ねている様子で、
 提案とも独り言ともつかぬ言葉を吐いた。

 少女と面と向かうのは、商人の遺体を前にして以来だ。
 あの時は会話どころでは無かったから、
 もう一つ遡れば無暗に怖がらせてしまって
>>2:104
以来。

 どことなく、気後れしていた。
(8) 榛 2021/07/09(Fri) 22:57:21

【秘】 遊惰 ロク → 諦念 セナハラ

「……だよなァ」

 チラリとそちらへ視線を向けて、それから又逸らす。
 そのまま、淡々と語りかける。

「作りバナシじゃねェって言っても聞かねェんだろ。
 お前サン、耳塞いじまってスグには無理なンだろうよ」

 知った口を効きながら、右手は無意識のうちに耳を擦る。
 過去、幾つも声を聞いた。
それらに耳を塞いできた。


 死人は優しいことばかりを口にする。
 男はそれを知っている。
 
だからずっと只の幻覚だと言い聞かせてきた。
愈々それじゃ片付けられなくなったのは、あの子と話をしたからだ。


「あの子、お前サンのこと嫌いじゃねェってよ。
 そんくらいは覚えててやンな。
 ……そうじゃねェと、浮かばれねェや」

 踵を返す間際、一度だけベッドの上へ目を遣って。
 そンじゃこれにて。ヒラリと手を振り部屋を出て行った。
(-111) 榛 2021/07/09(Fri) 23:32:44

【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク

そうして部屋に静けさが戻る。
肩で息をする男が、一人残された。

「……嫌いじゃないってねえ、言われても」

「好かれる様に笑ってるんだから、当然でしょうよ……」


吐き捨てる様に呟き、作業を再開する。
遺体をシーツで包み終えれば、毛布でさらに覆った。
火葬もできない今、腐敗臭をなるべく広めないようにするしかない。
出来る事と言えば、これくらいだ。

「結局誰に殺して貰ったんですか、貴方」

骸にひとつ問うた後、男も部屋を後にした。
(-118) wazakideath 2021/07/10(Sat) 6:33:42

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「あなたが、いったんじゃないですか。
 大人は、子供を守るべきだって」
 
きれいに見える言葉を並べて、対面を繕って相手の気持ちに寄り添うのが商人の世渡り。
いくら無愛想でも面白い人間には寄ってくる、主人はそういった。あなたはそう言ってくれましたが、私はいつまで立ってもつまらない人間でしたよ。

「誰に。タマオさんに。
 ものが触れるらしかったので、そのまま頼みました。

 何のこと。
 話せる相手がほしかったんですよ、それだけです。

 誰のこと。
 約束の子どもたち以外に、あなたを考えました。
 限界とはわかりつつ、です。

 なにが。
 だから、子供を害しそうな私は死んでしまったほうが、
 彼らのためになると思いました。

 欲しかったものは……、

 私だけのものですよ」

一つ一つ丁寧に答えた。
あなたが納得しないのをわかりながらそれでも、答えた。
(-119) toumi_ 2021/07/10(Sat) 6:51:58

【人】 遊惰 ロク

>>9 フジノ
 言われた儘、少女のことを待って。
 返ってきた上着を受け取り、袖に腕を通す。

「おれこそこんくらいしか役に立てねェで。
 ……なにかしようなンざ、思わねェでいいンだよ」

 それに、と付け加え乍ら、
 自然な仕草で少女の頭にポンと手を置く。

「お前サン、なんにもしてねェこたねェよ。
 ホラ、はじめにあのひと見つけてやっただろ」
(10) 榛 2021/07/10(Sat) 10:41:08

【人】 遊惰 ロク

>>11 フジノ
 つい置いてしまった手と、跳ねる少女の薄い肩。
 その反応が反射的なものだと察すれば、
 浮かしかけた手でそっと一度、緩く撫でた。

 それから手を離し、上着のポケットに突っ込み。
 漂う匂いの方向へ顔を向ける。

「……お医者サンかねェ。
 ゴショウバンにあずかろォか、お嬢サン」

 そう言ってフラリと歩き出す。
 
――そんなことを言い乍ら、
この男はここに来てから殆どものを食べていない。
(12) 榛 2021/07/10(Sat) 11:55:30

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 一つ一つ、キッチリ返された答えを聞いて。
 尚も納得とは程遠くに居る。
近づく必要が、あるんだろうか。


 商人の頭の左っかし。白く光るそれを見遣り乍ら、
 己の右の耳介をトンと指で叩く。 

「そいつのことかい。
 ……ンな大層なモンやったつもりは、なかったんだが」

 叩いた指の、爪の間。
 黒く澱んだ赤色が僅かに残っている。

「おれが、言ったからって。
 それ律儀に守って死ねるモンなのか。
 商人ってのは、……ちげェよな、損が勝ちすぎてら」

 堂々巡り、千日手。
 ……それよかちっとはマシだと思うが。
 あと幾つ重ねれば足りるのか、サッパリ分からない。

「……お前サン、どうして死んでくれたンだろ」
(-121) 榛 2021/07/10(Sat) 12:07:46

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「…………答えることが変わりません。
 誰かから聞いてきますかね?
 私の言葉は正しくないかもしれませんから」

手元の黒い毛玉を離すと、猫は廊下をかけてふっと消えてしまう。

「他に話したいことは、してほしいことはありませんか?

 私先程確認しましたが、あなたの死は取引に入れてません。

 あなたがそういうのでしたら、同じです。
 それこそあなたも死ぬ必要なんてないんですよ。
 律儀に食べないなんて、損な生き方をしていますね」
(-123) toumi_ 2021/07/10(Sat) 12:25:16

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「『取引だから』『約束したから』、
 それがそンなに大事なことかねェ」

 駆けてった猫を目で追って、
 消えた辺りを見つめ乍らポツリポツリと言葉を吐く。

「……産みの親は顔も名前も分からねェ。
 上のきょうだいはいたらしいが覚えちゃいねェ。
       
 とこ

 クソみてェな孤児院で何遍も盗みはたらいて、
 隠すのばっかりハンパに上手になっちまったから
 養子にとられてあいつらおいてく羽目になって。

 銭盗って逃げても、女子ひとり迎えにいけやしねェ。
 ――そンで逃げ込んだ先でガキも守れず、
 手ェ汚さずに人様死なせた。

 こんなロクデナシ、生きてく必要もなかろうよ」

 
いつかの問いのやり直し。
あの子らが生き延びて満たされて、おれも生きてる未来の話。
夢物語だと思ったから、簡単に答えられた。
男の出した本当の答えは、『そんな未来はやってこない』。


 ふっと顔ごと視線を動かし、琥珀を見つめる。
 紫に黒を僅かに落とした様な、暗い色した瞳で問う。

「なァ、商人サン。『取引』すりゃァ、おれのこと。
 お前サンが死なせてくれんのかなァ」
(-138) 榛 2021/07/10(Sat) 14:53:32

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「ミロクとしての生き方に、それしか有りませんから」

"ミロク"は"商人としてもらった名前"だ。

「あなたが"目的"と"言い値の金銭"を払ってくれるのならば。
 取引は出来ますよ?
 私を、納得させられる目的ならば、ですが。

 それがあなたに必要なことならば、
 私は叶えてあげたいですね。
 目的に、倫理を問いはしますが、
 取引に信頼と倫理は関係ありませんから」

どうしてそう思ったのか、あなたに訪ねるでしょう。
隠し事をさせず出来る限り納得するまで問うでしょう。
その結果与えるものが凶器でも、罪でも、死でも。
取引として渡せる物ならば、私は、与えるのでしょう。
(-139) toumi_ 2021/07/10(Sat) 15:23:53

【人】 遊惰 ロク

>>15 【調理室】
 少年の口振りに疑問を覚え、
 何とはなしに出入り口の辺りを見る。

「……お医者サンはいねェのか」

 それから、皿に置かれた肉、少年の仕草を見て。
 ニカリと笑みを浮かべてこたえた。

「そうだなァ、腹ァへっちまった。
 おれもひと切れ、もらっていいか?」

 
……それが“何”の肉であるか、少年がした事。知っている。
全てでは無く、憶測も多分に含むけれども。
(16) 榛 2021/07/10(Sat) 15:55:16

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「生き方、生き方ねェ。
 それ言うなら、おれァロクでもねェ生き方しか知らねェや」

 上着のポケットに手を突っ込む。
 体を揺すって、弾みをつけて口を開く。

「一緒に育った子らがいんだけども。
 あいつら、死んでたんだ。おれがあそこを出てスグに、
 火事でみィんな死んじまったんだと。

 ……おれァそのこと知りもせず、他人と手紙で話してた。
 二十歳になったら会いに行くって、
 ハハ、そんな約束、する相手ももういなかったってのに」

 空笑って、ポケットの中、見えぬそこで手を握って。
 あと一年もなかったのになァ、と呟いた。▼
(-146) 榛 2021/07/10(Sat) 17:15:54

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「たまにあいつらのことは見えてた。
 おれのこと見て、心配そうな顔してんだ。
 寂しくってマボロシ見てンだなァって思った。

 ――あいつらが死んでたの知った日からかなァ、
 これまで静かだった癖、口きく様になっちまって」

 右の耳介を一度なぞる。
 捨てようとした銭の代わりに色取り取りの石を選んだ理由。
 “死人に強請られたから”なんて言える筈も無かろう。

「おれの頭がオカシイからだと思ってた。
 ……今もちっとはそう思ってるけども」

 商人の頬の辺りに伸ばした手が、空を切る。
 触れられないのは本当の本当にそこに居ないからで、
 全て妄想でしかない可能性だって大いにあるのだけど。▼
(-147) 榛 2021/07/10(Sat) 17:17:16

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「でもお前サン、おれの頭ン中から
 出てきたにしてはややこしいんだよなァ」

 指の先、透けた耳飾りを見てヘラリと笑う。
 まさかこんなものをつけて死んでいるとも、
 つけた儘出てくるとも思わなかった。

「このとおり、おれには後も先もねェんだけども。
 納得してくれるかねェ、お前サン」
(-148) 榛 2021/07/10(Sat) 17:18:11

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「……触れたいのなら触れますか?」

男は青年の空を切ったあとの手を掴んだ。
体温も何も感じられない。ただの手。
確かに実在し、今だけは強く握り返された。

「気狂いと言われるぐらいの思考をしていますが、
 この社会に暮らして問題のない教養はつけました。
 だから、信じてくださいね。世迷言ではないと。

 私は死んでいて、あなたは生きています。
 今までのものが幻覚だとしても、今だけは本物です。
 そして、今、
一人分の命の重さ
だけで、ここにいます。
 わかりませんよね。
 私も、こうなるまで知りませんでした。

 今の私は、
 
 誰か一人を死の世界に誘うために存在しています。
 同時に、連れていけばもう、口を利く事はないのでしょう」


「私が差し出せる最後の価値です、もらっていきますか?」
(-153) toumi_ 2021/07/10(Sat) 17:56:32

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 突然掴まれた手に、ビクリと肩を震わせる。
 熱を失った、冷たい手。
 ジッと見つめて、確かめる様に緩く握り返す。

「……お前サンきっと、
 頼んだらこの手で殺してくれんだろな」

 そうしてその“最後の価値”とやらを差し出して、
 跡形も無く消えてしまうのだろう。

「――もらわねェよ。ちいせェガキじゃねェんだ、
 手ェ引いて連れてってもらう必要はねェや」

 握られた手から力を抜いて、笑いかける。
 いつものカラリとした笑い顔――
 ――を作ろうとして、眉の下がってしまった様な顔。
 下手くそに笑った顔の儘、質問を一つ投げかける。

「……ひとつ、言ってもらいてェことがあったんだが。
 “誘う”ってのに、そいつは数えられちまうのかなァ」

 
殺してくれと死なせてくれは、似ている様でまるで違う。
――欲しいのは、望むのは。
少年一人分で欠けて、広がった。理由を埋めてくれる事。
(-156) 榛 2021/07/10(Sat) 19:19:58

【人】 遊惰 ロク

>>17 >>18 >>19 【調理室】
 少年の言葉に、僅かに笑みを濁らせる。
 この状況だ。言っている意味は直ぐに分かった。

「そうかい。せっかく焼いてくれたんだ、
 “会いに”いくのはこれ食ってからにしようかねェ」

 イタダキマス、と皿の上に手を合わせてから。
 薄い肉を一切れ、口に放り込んで咀嚼する。

 
――嚥下しづらいのは、込み上げる嘔吐感は。
久しぶりの食事に体が驚いたからかもしれないし、
肉の正体を思って心が拒絶していたからかもしれない。
……どちらでも良いと思った。


 この場で男が口にしたのはきっと、その一切れだけだ。
 空腹を満たすための食事では無いから。
(20) 榛 2021/07/10(Sat) 19:38:48

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「……意地悪をしました。
 ロクさんがそう言ってくれると思ったので。
 死んでほしくなくて。……伝わればいいと思いました」

今までよりも言葉に感情がこもってしまう。
取引に納得ができなくても、男は応じてきた。
だけどもしかしたら、やめてくれるかと思って魂を売った。
結果は……願ったとおりだった。
あなたが悲しそうな顔をしていなければ。


「数えませんよ。
 ……私、その力がなくともあなたを殺せますから」


拗ねたように告げる言葉はあまりに物騒で。
きっと本当のことなのだろうと予測できた。
先程よりよっぽどわかりやすくあなたからそっぽを向いて、
聞きたくない言葉が訪れるのを恐れている。


もう隠す必要はない、ほしい言葉はもらってしまった。
一度でも、この問いに断られた事実が何よりも嬉しかった。
だから、彼が望むままに取引ができて、叶えられるのなら。
それはきっと自分にとって尊い想い出になると思った。
(-158) toumi_ 2021/07/10(Sat) 19:48:51

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「……、ハ、」

 端の吊りあがった口から、
 笑いとも溜め息ともつかぬ吐息が洩れる。 
 クロスグリの瞳がグシャリと歪む。

「……、自分の分まで生きてくれってさァ、言われんだ。
 恨んじゃいねェって、そればっかし、」

 胸が塞がって、喉が詰まる心地がする。
 らしくも無く訥々と、途切れがちに言葉を紡ぐ。

「――おれはもう、終いにしてェのに。
 これ以上、生きてたって。しかたねェってのに」

 死人の言葉は呪いだ。それを捻じ伏せるに足る理由も、
 生きている人間が一人減る毎、薄まって――
 いつの間にやら、消えてしまった。

 最早これは、誰かの為の死では無くなってしまった。
 ……男が死なずとも、残った子どもは生きていける。▼
(-161) 榛 2021/07/10(Sat) 22:27:38

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 昔々に死んだ子どもらも、ここで死んだ少年も。
 優しい事ばかりを口にして、
 誰一人として言ってくれはしなかった。

『死んじまえ』
って、言ってくれ。
 ……頼むから、
おれのせいで死んだクセ、

 “死んでほしくない”なんて、
 そんな、……ッ、訳のわからねェこと、言わねェで」

 たった一言で良いんだ、     
楽になれる

 そうすりゃ全部を振り払って、漸く死ねる。

「……もう、痛いのも、苦しいのも、……いやだ……」


 俯いて、左手で目元を覆う様にして。
 草臥れ切った大人の様な、怯え切った子どもの様な。
 消え入りそうな声で幽かに呟いた。
(-162) 榛 2021/07/10(Sat) 22:28:33
 




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新○秘○昼置夜返

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ニエカワ(3d)
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