人狼物語 三日月国


81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】

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視点:


【独】 商人 ミロク

/*
役職は大当たりということで。
連れ星の仕様で振り回されたなー、まぁ仕方ねぇ。
殺すしかないかぁ
(-15) toumi_ 2021/07/08(Thu) 1:26:11

【墓】 商人 ミロク

「……、……」



瞳を開けた。双眸は紅に染まっている。
目が醒めたのは外だった。

雨がふりしきっていて、"肩が濡れる"。

此処は、あのとき  の死体を見つけた場所だ。




「死んでも、魂が残るとは言いようだ。
 生者と死者の違いがこんなところにあったなんて。
 体験しないとわかりませんでした、今ならわかります。

 これが、
命の重さ
ですねぇ?」




男は肩を濡らさなくなった。
いつの間にか腕の中で眠っている黒猫を抱え、
一歩病院へと歩き出す。

「さぁ、取引を続けましょう」
(+0) toumi_ 2021/07/08(Thu) 2:32:37
ミロクは、取引を終えていない。
(c0) toumi_ 2021/07/08(Thu) 2:33:20

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

あなたの前を黒猫がよぎった。
誰かを思わせるようなその容姿を見れば前足が折れている。

驚いたか唖然としたか、はたまた。
なにか行動を移す前に音もなくその猫を拾い上げる影があった。

まごう事なくあなたの前に死体を晒した男の姿だった。
いつかあったときと変わらぬ表情で、優しく猫をなでている。
左の耳にあるピアスが妙に浮いていた。

「御機嫌よう。
 見えていますよねぇ、ロクさん」
(-41) toumi_ 2021/07/08(Thu) 15:28:33

【秘】 商人 ミロク → 被虐 メイジ

あなたの歩む先、または部屋に座っていると。
手帳から破られた一枚の紙がおいてあった。
今までなかったものだ、いつの間にかあったのだろう。

『メイジさん。
 *********(どこかの番号と住所が書かれている)
 私の主人の宛先です。
 ミロクの名を出すかこの手紙を見せていただければ、
 なにか仕事の融通をきかせてくれると信じています。
 悪い人では、ありませんから。         未録』

『追伸。
 どうしても命を捨て置きたくなったとき。
 パイプがある部屋で私を呼んでください。

 お手伝い、いたしましょう。
 
私は、まだ、ここにいます
(-47) toumi_ 2021/07/08(Thu) 17:37:43
ミロクは、タマオに、  を渡すように頼んだ。
(c2) toumi_ 2021/07/08(Thu) 17:38:37

【秘】 被虐 メイジ → 商人 ミロク

メイジは、いつのまにか小机に置いてあった手紙を読んだ。
あなたが生前に置いたものだろうかと思っていたが

「……え」

追伸に目を通せば、思わず病室を見回した。
……いるはずはない。

「──化けて出て、呪い殺しでもしてくれんのかな」

メイジは霊的なものを信じてはいなかった。
だから、これはほんの冗談だ。
(-49) DT81 2021/07/08(Thu) 18:47:02

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 己が手を伸ばすより先、猫を拾い上げた腕。
 辿って見れば、動くはずのない姿がそこに居て――
 あまつさえ、話し掛けてきた。

「…………どォも、商人の兄サン」

 沈黙ののち、慣れた笑い顔を浮かべて。
 片手を軽く挙げて死人に応える。

「死んだクセ、当たり前みてェに口ききやがって。
 あの世は休業中かねェ」
(-66) 榛 2021/07/08(Thu) 22:36:04

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「私も視える性質だったのですが、
 ここまで直ぐとは思いませんでした。
 あなたには、会おうか会わないかは悩んでいましたが。

 死んでしまう人に、会っても、何も嬉しくないでしょう?」

ごめんなさい、と呟いて目を伏せた。
たた、やはり見えているのかと、少し満足げに笑った。

「あなたに言われたとおり、
 彼らには食事と未来の足掛かりを配っておきました。
 その上でお聞きしますが、まだ死んでしまうつもりですか?
 飢えて死ぬのを待つのは辛いでしょう、

 私、あなたに死んでほしいと思っていないんです。
 あなたは死んでくれると疑っていませんが。
 取引は、彼らを生かして死ぬことで何も変わりがありませんね?」
(-69) toumi_ 2021/07/08(Thu) 23:00:40

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「お前サン、あとのことまで手ェ配ってくれたのか」

 驚きに目を瞠ったのち、それをひどく嬉し気に細めて。
 無意識のうち、幾分か柔らかな声を出す。

「……そいつはよかった。
 ロクな生活してねェみてェだから
 どうにかならねェかと思ってたンだが。
 おれァあの子ら怖がらせちまうだけだったからさ」

 それから一転。あっけらかんと答える。
 一人分欠けた、
漸く手にした
死ぬ理由。
 埋まりもせず覆りもしない儘、そこにある。

「ハハ、飢えるかその前に首括るか、
 どちらにせよ死ぬのにかわりはねェかなァ。
 
 ――そうだなァ、お前サンに頼んだのはそンだけだ。
 どうしてあンな死に方したんだか、
 是非にも聞きてェとこではあるんだけども」
(-71) 榛 2021/07/09(Fri) 0:09:42

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「理由ですか?」

どういたしまして、と、取引でしたから、と。
淡々と並べてやってきた言葉に優しく囁きかえす。

「あなたが死ぬ姿を見たくありませんでした」

幽霊になって、会話ができるようになるなんて、
生きているときは思いもしませんでしたから。

「でも、やはり、見ることになってしまいそうですね。
 残念です」
(-81) toumi_ 2021/07/09(Fri) 8:55:37

【墓】 商人 ミロク

これは、少し前。
まだ男が命を落とす前。

病院の裏手にスコップを持った男の影が一人。
スコップの影がもう一つ。

深く、深く穴を掘っていました。

少し離れたところにも、もう一つ、穴が掘られました。

一つの穴には小さな骨と薬の入った陶器の壺。

もう一つの穴には黒猫の遺体を入れました。

壺の中には、ニエカワの骨が入っていました。
もう一つ、ニエカワの夢が入っていました。

黒猫はタオルに包まれていましたが、
埋められれば次第に土にかえるでしょう。

どちらも弔う為に、作られた、お墓でした。

技師の墓は、ありませんでした。
知りませんでした、知ろうとしませんでした。
彼女はきっと、どこかに、行ってしまったんでしょう。
(+9) toumi_ 2021/07/09(Fri) 9:01:48

【墓】 商人 ミロク

まだ雨の降りしきる中、濡れない男はその地面を見下ろす。
しゃがみこんで、手を合わせて。
目を細めればどこかに"彼ら"の気配を感じた。

まだ病院のどこかで、誰かを待っているのだろう。


「ああ、結構無事ですね。
 かなり深く掘りましたし、……突然掘り出す人も、
 墓荒らしする不届き者も獣ぐらいで。大丈夫かな」


同時に誰の墓かかも皆にはきっとわからない。>>+9
ここに残る彼らになら知らせてもいいかもしれないが、
今だと外に出てきてしまうかもしれない。
骨があったことが知られてしまうかもしれない。
あの肉が"人"であったことが知られてしまうかもしれない。

……しばらく秘密のお墓としよう。
この病院によくいた猫も一緒に埋めた。
多分、寂しくないだろう。


「もう二度と口を聞けないと思っていたんですけど…。
 せっかくまだいられるのなら、
 最期ぐらい見届けようと思います。

 さて、一体人の魂の寿命はいつまででしょうか?」
(+11) toumi_ 2021/07/09(Fri) 10:40:10

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「あンな死に方選んだ訳を聞いてンだが――
 ……。…………、――
ぇ、?


 初め、囁かれたそれこそが答えだとは思わなかった。
 だから変わらぬ調子で言葉を紡いで、不意に途切れて。
 沈黙の末、小さな声が口から洩れた。

 半ば呆然とした様体で、死んだ男の顔を見る。
 左の耳朶、光る飾りは妙に浮いていて。

 ――死人ってのは、
 死んだときの恰好で現れる決まりなんだろか。
 そんな場違いな事を片隅で考え乍ら、
 よく回る筈の口は、短く。問い掛けの形に動いていた。
      
こと

「……そンな理由で?」
(-87) 榛 2021/07/09(Fri) 14:26:51

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「はい。
 無駄な、足掻きでしたね、思いついた頃には。
 誰かが誰かのために望む死が他にあるのならば、
 あなたは残る可能性がありました。
 今となっては、わかりませんが。
 私は、生きるよりも大切なことはあると学びましたから。
 あなたが望んだことどおりに運ぶ可能性もありました。

 私は、あなたが望んだ通り、
 子供たちのために死ぬ大人ができたと思っています。
 取引通り、食事と一緒に。
 他の荷物は渡せませんでしたから、遠くへやりました。
 まだ、疑問がありますか。
 生前からいっていたとおりです」

問いかけを繰り返している自覚がある。
死因に関しては、自分は一切関わっていなかったから、……それを気にしているのだろうか?

「首を切り落とされていたことに関してですか?

 ……、……。

 あれは、痛いのも、苦しむのも嫌でしたから」

本当は、理由はたくさんある。
あえて告げていないものもある。
それを生きている目の前の青年に言うべきかを迷い、呟いた。
二度と会えないはずだったのだから。どうせならば。

(-89) toumi_ 2021/07/09(Fri) 15:03:17

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「死にたく、ありませんでした。
 一人で、……自分の意思で死ぬのが怖くなりました。

 このままでは取引ができなくなると思い、
 死に方を教わって、手伝ってもらいました。

 私の飢えは空腹ではありませんでしたから。
 このままでは約束を違えて、生かそうとしたでしょう。
 だから、殺されました、殺してもらいました。

 最後にほしかったものも、あなたから貰えましたから。
 後悔は、ありません」
(-90) toumi_ 2021/07/09(Fri) 15:05:07

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 目を逸らしていたそれを正面から突き付けられて。
 指の先から心の臓まで、余さず冷え切っていく心地がした。

 ――そりゃァそうだろう。   、、、
 好き好んで死ぬ程――文字通り、死ぬ程――
 怖い思いをしたい人間なんて、そうそう居はしまい。

「……なンで、そこまでして」

 なのに眼前の男は、それでも死んだと言う。
 死ぬ事より反故にする事の方が重かったとでもいうのか。
 あんなの所詮はただの口約束で、
 舌先三寸、幾らでもカンタンに破れたろうに。

 ――おれが死ぬとこ見たくねェって、
 死んでほしくねェって、なんでそんなこと言うんだろ。

 ぐるぐると糖の足りない頭の中で渦巻いて、巡らして、
 考えるからクラリと眩暈がする。▼
(-106) 榛 2021/07/09(Fri) 20:36:57

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「――だれに、手伝ってもらったんだ?
 あの医者ではなさそうだったけども。

 そンで空腹じゃねェ飢えって、なんのことかねェ。
 ……生かそうとしたって、だれのことを?
 “だから”って、なにがどう、“だから”なんだ?

 そンで。まるで見当がつかねェんだけども、
 ――お前サンのほしかったものって、なんだろ」

 “あれナニこれナニどうなってンの”と
 五月蝿い子どもみたいに、尽きない問いを幾つも重ねた。
(-107) 榛 2021/07/09(Fri) 20:37:33

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「あなたが、いったんじゃないですか。
 大人は、子供を守るべきだって」
 
きれいに見える言葉を並べて、対面を繕って相手の気持ちに寄り添うのが商人の世渡り。
いくら無愛想でも面白い人間には寄ってくる、主人はそういった。あなたはそう言ってくれましたが、私はいつまで立ってもつまらない人間でしたよ。

「誰に。タマオさんに。
 ものが触れるらしかったので、そのまま頼みました。

 何のこと。
 話せる相手がほしかったんですよ、それだけです。

 誰のこと。
 約束の子どもたち以外に、あなたを考えました。
 限界とはわかりつつ、です。

 なにが。
 だから、子供を害しそうな私は死んでしまったほうが、
 彼らのためになると思いました。

 欲しかったものは……、

 私だけのものですよ」

一つ一つ丁寧に答えた。
あなたが納得しないのをわかりながらそれでも、答えた。
(-119) toumi_ 2021/07/10(Sat) 6:51:58

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

/*
やあ墓友オネエ!
アンタの死体、発見された部屋でシーツ(血塗れ)やら毛布で包まれた状態になってるわ。
保管場所が無いので移動させたり、特に手は加えてないわよ!
一応報告しとくわね。
(-120) wazakideath 2021/07/10(Sat) 10:11:43

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 一つ一つ、キッチリ返された答えを聞いて。
 尚も納得とは程遠くに居る。
近づく必要が、あるんだろうか。


 商人の頭の左っかし。白く光るそれを見遣り乍ら、
 己の右の耳介をトンと指で叩く。 

「そいつのことかい。
 ……ンな大層なモンやったつもりは、なかったんだが」

 叩いた指の、爪の間。
 黒く澱んだ赤色が僅かに残っている。

「おれが、言ったからって。
 それ律儀に守って死ねるモンなのか。
 商人ってのは、……ちげェよな、損が勝ちすぎてら」

 堂々巡り、千日手。
 ……それよかちっとはマシだと思うが。
 あと幾つ重ねれば足りるのか、サッパリ分からない。

「……お前サン、どうして死んでくれたンだろ」
(-121) 榛 2021/07/10(Sat) 12:07:46

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「…………答えることが変わりません。
 誰かから聞いてきますかね?
 私の言葉は正しくないかもしれませんから」

手元の黒い毛玉を離すと、猫は廊下をかけてふっと消えてしまう。

「他に話したいことは、してほしいことはありませんか?

 私先程確認しましたが、あなたの死は取引に入れてません。

 あなたがそういうのでしたら、同じです。
 それこそあなたも死ぬ必要なんてないんですよ。
 律儀に食べないなんて、損な生き方をしていますね」
(-123) toumi_ 2021/07/10(Sat) 12:25:16

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

とっとっ、聞き慣れない足音がしてあなたは床を見下ろした。
そこには小さな黒猫がおり、あなたの前を横切った。

この病院には猫がたまに餌にあり付きに来ていました。
看護婦や患者に可愛がられ、ちょっとしたアイドル。
クレイシがよく面倒を見ていたが、
台風の前からめっきり姿を現さなくなっていた。
もちろん今日この日まで病院内では見かけられていない。



猫がこんな台風の中? と思っていると。
後ろから声がする、あなたは、思わず振り返る。

「御機嫌よう。
 ……私のことはわかりますか?」

あなたの前で亡骸を晒した男がそこに立っていた。
(-126) toumi_ 2021/07/10(Sat) 12:49:07

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

「……ええ、わかりますとも。
 霊魂の存在を改めて思い知りましたよ」

じっと貴方の首元を見やる。
あの縫合痕は残っているだろうか。

「ねえ、貴方を殺したのってロクさんじゃないんですか?
 自殺するとは思っていましたが、
 まさか協力者がいるとは考えてませんでしたよ」
(-128) wazakideath 2021/07/10(Sat) 13:03:44

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「ロクさんにやらせる理由がないですね?

 やってくれたのは、タマオさんですよ。
 あの方、何でも触れるんです。
 ニエカワさんを埋めるときの穴掘りも手伝ってもらって。

 でも流石に血が多すぎて驚かせましたね。
 痛みを伴わず楽に死にたかったので、
 あんなふうになりました。縫われたのはよくわかりません」

縫われたのは本当によくわかりません。なんですかね。
見た目は生前の通り首もつながっている。
左耳のピアスがどことなく浮いている。

「遺体を片付けて下さりありがとうございます。
 
 なにか、そうですね、あのときは急いでいましたから。
 話せなかったことが多かったです。
 まだ、いられる気がするので、取引ではないですが。
 お礼に、私の話で良ければ聞きませんか。
 あなたの死んでしまったときの話も、聞きたいのです」

順番、ということで。とゆるく笑って問いかけた。
(-129) toumi_ 2021/07/10(Sat) 13:26:51

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

笑いかけられると、つい笑い返してしまう。
幼い頃、身に付いた癖だった。

「……まあ、時間はありそうですからね。
 僕も、貴方には聞きたい事がありますから」

窓の外に目を向けた。
恐らく自分には、気が遠くなる程の時間がある。
逃げたくても、逃げられやしない。逃げる資格も無い。
貴方の話の中で、タマオやロクの事も少し知れるだろう。
そんな予想の元、耳を傾けた。
(-131) wazakideath 2021/07/10(Sat) 13:39:01

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「少し、調理場で話したのですが。
 ……私はどこで生まれたか、いつ生まれたかが分かりません。
 それ自体は珍しくないと思っています。
 今の主人に拾われ、芸を少々。
 顔が、良かったようなので。上手く稼げました。

 12の頃から商業を学び、違法なものも含め多くを売りました。
 信頼と、倫理観は同じ場所にない。
 ただより高いものはなく、できた信頼は次の
取引
に繋がる。
 そう、実践で学びました。

 金銭を要求しながら、価値を求める。
 相手の悩みや、必要なものを見定め、商品を提供する。


 表情が乏しい私でもできました。
 むしろ心地よかったです、『想像以上に優しかった』
 『こんなにもらっていいのか』『あなたはいい人だ』、
 そうやって言ってもらえるんです。

 
取引
さえできて次につながれば損なんてないんです、
 ただで渡す代わりにその商品を必要な理由を必ず求めます、
 ……寄り添い同情し生き様に感心することが心から好きです。

 誰かは、騙していると、言うのかもしれません。

 ですが、これが私の
商人
としての。
 
ミロクとしての生き方
になりました」

(-133) toumi_ 2021/07/10(Sat) 14:34:22

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「ようやく、ここにきてからの話です。
 私は取引を、"目的"と"言い値"で交換しています。
 商品を渡す代わりに、
 欲しい"理由"と、払おうと思える"金銭"をいただくんです。
 それが、見合う見合わないか、嘘か本当か
 犯罪に手を染めようと商人の私には関係がありません。

 理由は、先程言ったとおりですね?
 私は、偽善のつもりはありません。
 商人として取引をしに来たのですから」

でも、と続け。
死んでも個人の情報は守り続けるべきだと、
細かい内容は伏せられる。
質問をされたら、答えるかもしれないが。

(-134) toumi_ 2021/07/10(Sat) 14:40:10

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「私から取引をすることはあまりありません。
 ひとまずの目標は患者さんや、技師のアユミさんでしたね 
 とくに、
困っていそう
でしたから。

 一番はじめに、ニエカワさんの
を聞いて取引をしました。
 少しの金銭をやりとりをして、未来を夢見ました。
 少し間に合わないとも、思いましたが。

 次にロクさんです。取引したのは
願い
でした。
 他にお礼にピアスを一ついただきました。
 それは。取引とは関係ない物でして。
 とても、嬉しく思いました。"私が"いただいた価値ですから。

 次にタマオさんと
言葉
の取引をしました。
 この取引は、私の人生にとって目からうろこでした。
 ですが、どうやら過剰に払いすぎたらしく。
 その後いくつか私の手伝いをしてくれるようになりました。
 それが先程の話に繋がります。

 次にフジノさんと
未来
の取引をしました。
 村での暮らしや、有意義な会話をして。
 彼女には大人になるまで生きていて欲しいと思いました。

 次にメイジさんと
将来
の取引をしました。
 落ち込んでいましたが、生きていて欲しいとお伝えしながら、
 無事に別れを言えました」

(-136) toumi_ 2021/07/10(Sat) 14:44:28

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「その中で、
取引
が一つ。ありました。
 
 
私が死ぬこと
に、
価値
を見てもらえたんです。
 商品にしたつもりはその方は無かったのでしょう。
 ですが、生きていてもなにもなかった私は、
 求められた瞬間、人生を差し出せると思いました。

 理解していただけますか? できませんかね。
 望まれたことなんて無かったんです、生死のどちらも。
 私はなんのために生きていたのでしょう。

 そんなところです、私が死んだ理由は。
 私を死んで欲しい
[必要]
としてくれたのが嬉しかった。

 ただ。どうして死んだのか、と聞かれて答えたのですが。
 正しい答えを返せていないようです。
 あなたに生きて欲しいから、取引をしたからだと言ったのに。
 どうしてわかってくれないんでしょうね」


男は酷く饒舌に語った。死んでいるのに。
(-137) toumi_ 2021/07/10(Sat) 14:50:23

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「『取引だから』『約束したから』、
 それがそンなに大事なことかねェ」

 駆けてった猫を目で追って、
 消えた辺りを見つめ乍らポツリポツリと言葉を吐く。

「……産みの親は顔も名前も分からねェ。
 上のきょうだいはいたらしいが覚えちゃいねェ。
       
 とこ

 クソみてェな孤児院で何遍も盗みはたらいて、
 隠すのばっかりハンパに上手になっちまったから
 養子にとられてあいつらおいてく羽目になって。

 銭盗って逃げても、女子ひとり迎えにいけやしねェ。
 ――そンで逃げ込んだ先でガキも守れず、
 手ェ汚さずに人様死なせた。

 こんなロクデナシ、生きてく必要もなかろうよ」

 
いつかの問いのやり直し。
あの子らが生き延びて満たされて、おれも生きてる未来の話。
夢物語だと思ったから、簡単に答えられた。
男の出した本当の答えは、『そんな未来はやってこない』。


 ふっと顔ごと視線を動かし、琥珀を見つめる。
 紫に黒を僅かに落とした様な、暗い色した瞳で問う。

「なァ、商人サン。『取引』すりゃァ、おれのこと。
 お前サンが死なせてくれんのかなァ」
(-138) 榛 2021/07/10(Sat) 14:53:32

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「ミロクとしての生き方に、それしか有りませんから」

"ミロク"は"商人としてもらった名前"だ。

「あなたが"目的"と"言い値の金銭"を払ってくれるのならば。
 取引は出来ますよ?
 私を、納得させられる目的ならば、ですが。

 それがあなたに必要なことならば、
 私は叶えてあげたいですね。
 目的に、倫理を問いはしますが、
 取引に信頼と倫理は関係ありませんから」

どうしてそう思ったのか、あなたに訪ねるでしょう。
隠し事をさせず出来る限り納得するまで問うでしょう。
その結果与えるものが凶器でも、罪でも、死でも。
取引として渡せる物ならば、私は、与えるのでしょう。
(-139) toumi_ 2021/07/10(Sat) 15:23:53

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「生き方、生き方ねェ。
 それ言うなら、おれァロクでもねェ生き方しか知らねェや」

 上着のポケットに手を突っ込む。
 体を揺すって、弾みをつけて口を開く。

「一緒に育った子らがいんだけども。
 あいつら、死んでたんだ。おれがあそこを出てスグに、
 火事でみィんな死んじまったんだと。

 ……おれァそのこと知りもせず、他人と手紙で話してた。
 二十歳になったら会いに行くって、
 ハハ、そんな約束、する相手ももういなかったってのに」

 空笑って、ポケットの中、見えぬそこで手を握って。
 あと一年もなかったのになァ、と呟いた。▼
(-146) 榛 2021/07/10(Sat) 17:15:54

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「たまにあいつらのことは見えてた。
 おれのこと見て、心配そうな顔してんだ。
 寂しくってマボロシ見てンだなァって思った。

 ――あいつらが死んでたの知った日からかなァ、
 これまで静かだった癖、口きく様になっちまって」

 右の耳介を一度なぞる。
 捨てようとした銭の代わりに色取り取りの石を選んだ理由。
 “死人に強請られたから”なんて言える筈も無かろう。

「おれの頭がオカシイからだと思ってた。
 ……今もちっとはそう思ってるけども」

 商人の頬の辺りに伸ばした手が、空を切る。
 触れられないのは本当の本当にそこに居ないからで、
 全て妄想でしかない可能性だって大いにあるのだけど。▼
(-147) 榛 2021/07/10(Sat) 17:17:16

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「でもお前サン、おれの頭ン中から
 出てきたにしてはややこしいんだよなァ」

 指の先、透けた耳飾りを見てヘラリと笑う。
 まさかこんなものをつけて死んでいるとも、
 つけた儘出てくるとも思わなかった。

「このとおり、おれには後も先もねェんだけども。
 納得してくれるかねェ、お前サン」
(-148) 榛 2021/07/10(Sat) 17:18:11

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

「……、…………。………………」

途中から
あっ人選間違えたな
とは思ったが、最後まで相槌も打たず聞いていた。

「……まあ、貴方の生い立ちは理解できるかもしれません。
 価値なんて人によって違いますし、
 何より恩義や信頼という感情は強い。
 金銭で買える品ではありませんからね」

最初の印象通りだと思った。
取引という形に固執していたのは、ただの結論。
経緯を見れば、商人としての生き方しか知らない子供の様だった。

商業を学ぶ前から自分の芸を売っていたのだから、
恐らく、物心つく前から商人だったのだろう。
きっと人との関わり方を、取引以外に知らないまま死に絶えたのだ。
(-149) wazakideath 2021/07/10(Sat) 17:48:21

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

貴方が本当に望む物は金銭や価値などではなく、
人との交流において得られる感情そのものではないかと。
心を動かす何かではないかと。

「貴方がどんな人生を歩んで来たかは知りません。
 けれども話を聞いて、納得はしました。
 もし僕が同じ立場にいたら、同じ事をしたでしょうね」
 
そう思い至りながらも、口にはしない。
互いに死んだ身だ。
指摘した所で、何の益にもなりやしない。

「その取引をしたの、ロクさんでしょう?
 彼は正しく、真っ当な倫理を持っていますから」 

これまで自身の付加価値だけを求められ、
応じてきた人間“そのもの”を要求するなど──蜘蛛の糸を垂らす事に等しい。
それをあの青年は、理解できなかったのだろう。
(-150) wazakideath 2021/07/10(Sat) 17:49:40

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

「さて。貴方に合わせるなら、
 僕も何か話した方が良いですかね?」

自身が死んだ時の話を求められていたが、
忘れたふりをする。
この少年のような男に話すには、
あまり気が進まない経緯だからだった。
(-151) wazakideath 2021/07/10(Sat) 17:50:33

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「……触れたいのなら触れますか?」

男は青年の空を切ったあとの手を掴んだ。
体温も何も感じられない。ただの手。
確かに実在し、今だけは強く握り返された。

「気狂いと言われるぐらいの思考をしていますが、
 この社会に暮らして問題のない教養はつけました。
 だから、信じてくださいね。世迷言ではないと。

 私は死んでいて、あなたは生きています。
 今までのものが幻覚だとしても、今だけは本物です。
 そして、今、
一人分の命の重さ
だけで、ここにいます。
 わかりませんよね。
 私も、こうなるまで知りませんでした。

 今の私は、
 
 誰か一人を死の世界に誘うために存在しています。
 同時に、連れていけばもう、口を利く事はないのでしょう」


「私が差し出せる最後の価値です、もらっていきますか?」
(-153) toumi_ 2021/07/10(Sat) 17:56:32

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 突然掴まれた手に、ビクリと肩を震わせる。
 熱を失った、冷たい手。
 ジッと見つめて、確かめる様に緩く握り返す。

「……お前サンきっと、
 頼んだらこの手で殺してくれんだろな」

 そうしてその“最後の価値”とやらを差し出して、
 跡形も無く消えてしまうのだろう。

「――もらわねェよ。ちいせェガキじゃねェんだ、
 手ェ引いて連れてってもらう必要はねェや」

 握られた手から力を抜いて、笑いかける。
 いつものカラリとした笑い顔――
 ――を作ろうとして、眉の下がってしまった様な顔。
 下手くそに笑った顔の儘、質問を一つ投げかける。

「……ひとつ、言ってもらいてェことがあったんだが。
 “誘う”ってのに、そいつは数えられちまうのかなァ」

 
殺してくれと死なせてくれは、似ている様でまるで違う。
――欲しいのは、望むのは。
少年一人分で欠けて、広がった。理由を埋めてくれる事。
(-156) 榛 2021/07/10(Sat) 19:19:58

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「……、……。
 その取引をした方は。
 死にたがっているように見えていました。
 一人の意志だけで生きるというのは難しいことなんですね」

男は、そう思ったようだった。生きて欲しかったと呟く。
後に学べば一人よりも二人、支え合って生きていくのが人生を豊かにすることもあるという論につながる。
今では到底出てこない意見だったりした。

「はい、なんでも。あなたのことが知りたいです。
 聞かせてください。あ、聞けなかったこともあります。
 夢や目指してること、困ったことはあったのかなど。
 あなたは大人で、何でも自分で解決しようと見えましたから、聞けなかったんです」

男は、ミロクとしてしか生きていられませんでした。
だからこうして相槌をうってもらえるだけで満足なのでしょう。
なんせ、話をするのも聞くのも大好きなだけですから。
いろんな話を省略してくださっても、構いません。
(-157) toumi_ 2021/07/10(Sat) 19:21:23

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「……意地悪をしました。
 ロクさんがそう言ってくれると思ったので。
 死んでほしくなくて。……伝わればいいと思いました」

今までよりも言葉に感情がこもってしまう。
取引に納得ができなくても、男は応じてきた。
だけどもしかしたら、やめてくれるかと思って魂を売った。
結果は……願ったとおりだった。
あなたが悲しそうな顔をしていなければ。


「数えませんよ。
 ……私、その力がなくともあなたを殺せますから」


拗ねたように告げる言葉はあまりに物騒で。
きっと本当のことなのだろうと予測できた。
先程よりよっぽどわかりやすくあなたからそっぽを向いて、
聞きたくない言葉が訪れるのを恐れている。


もう隠す必要はない、ほしい言葉はもらってしまった。
一度でも、この問いに断られた事実が何よりも嬉しかった。
だから、彼が望むままに取引ができて、叶えられるのなら。
それはきっと自分にとって尊い想い出になると思った。
(-158) toumi_ 2021/07/10(Sat) 19:48:51

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「……、ハ、」

 端の吊りあがった口から、
 笑いとも溜め息ともつかぬ吐息が洩れる。 
 クロスグリの瞳がグシャリと歪む。

「……、自分の分まで生きてくれってさァ、言われんだ。
 恨んじゃいねェって、そればっかし、」

 胸が塞がって、喉が詰まる心地がする。
 らしくも無く訥々と、途切れがちに言葉を紡ぐ。

「――おれはもう、終いにしてェのに。
 これ以上、生きてたって。しかたねェってのに」

 死人の言葉は呪いだ。それを捻じ伏せるに足る理由も、
 生きている人間が一人減る毎、薄まって――
 いつの間にやら、消えてしまった。

 最早これは、誰かの為の死では無くなってしまった。
 ……男が死なずとも、残った子どもは生きていける。▼
(-161) 榛 2021/07/10(Sat) 22:27:38

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

 昔々に死んだ子どもらも、ここで死んだ少年も。
 優しい事ばかりを口にして、
 誰一人として言ってくれはしなかった。

『死んじまえ』
って、言ってくれ。
 ……頼むから、
おれのせいで死んだクセ、

 “死んでほしくない”なんて、
 そんな、……ッ、訳のわからねェこと、言わねェで」

 たった一言で良いんだ、     
楽になれる

 そうすりゃ全部を振り払って、漸く死ねる。

「……もう、痛いのも、苦しいのも、……いやだ……」


 俯いて、左手で目元を覆う様にして。
 草臥れ切った大人の様な、怯え切った子どもの様な。
 消え入りそうな声で幽かに呟いた。
(-162) 榛 2021/07/10(Sat) 22:28:33

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

独りの人間が生きていく難しさは知っている。
つい先程、諦めた立場だった。

「何でも、って。夕飯じゃないんですから」

何か面白い話は無いのかと、
子供に強請られているような心地がした。
苦笑を零し、心中でそっと後悔する。
こんな状況でなければ、彼のことも貴方のことも、
助言くらいはできただろうから。
こうなる前に。


「夢や目標なんて大層なものはありません。
 困ったことと言えば、夢見の悪さくらいですかね。

 ……僕は大人で、貴方達の善性を守りたかった。
 ですから、ええ。聞かれても答えませんでしたよ」

物言いは過去のものだ。
死んで失うものなど無いのだから、今は違う。
(-165) wazakideath 2021/07/10(Sat) 22:40:16

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

「僕の人生はあまり聞いて心地の良いものではありません。
 そうですね、……医者を志した理由に関わることだけ。
 以前は誤魔化してしまいましたから」

湯を沸かした調理室で問われた事だ。
貴方達が自分よりも年嵩であれば、あの場で話しただろう。

「僕が外地で生まれ育った事は話しましたね。
 彩帆という場所です。
 海のずっと先にある、淡い緑の海が美しい島でした」

努めて思い出す事ではない。
あの島での思い出は、全てが苦痛に満ちているから。
それは決して誰のせいでもない。時代のせいだ。
地平線に辿り着くよりも早く沈む疎開船を見て。
溺れているであろう母と姉と妹を見て。
父は“ここにいろ”と言った。

「……美しい島でしたが。戦争が始まれば、
 そこは内地よりも過激な戦いが繰り広げられました。
 内地からの物資も届かなくなってしまってね。
 ほら、海も空もアメリカーに取られちゃいましたから」

僅かに訛りが現れた。
自覚しつつも、続けていく。
(-166) wazakideath 2021/07/10(Sat) 22:42:53

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

「銃も、手榴弾も、服も、水も、食べ物も、全て。
 底をついたんですよ。
 畑は燃えてしまったし、空爆で建物は全て、
 跡形も無くなっていました。

 
しかしそれでも腹は減る

 食べ物と言えば、共に逃げる生き物くらいで。
 ……父から食べ方を教わりました」

その生き物は二本足で歩き、言葉を扱うことができた。
共に励ましあい、笑い合うことができた。
そんな、生き物だった。

「……、問題は戦争が終わって、平和になってからです。
 毎晩夢に出るんですよ、よくも食ってくれたな≠チて。
 血肉の色が、味や臭いが、忘れられない。

 だからね、それを日常にすることにしました。
 鉄錆の臭いも、冷えた人肌も日常にしようと。
 上書きしたかったんです、あの日々を」
 
(-167) wazakideath 2021/07/10(Sat) 22:43:32

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「"愛されて"いたんですね」

愛が呪いになる、皮肉で悲しい物語。

「『待っているだけの人達にも何かが起こるかもしれないが、それは努力した人達の残り物だけである。』
 あなたがいたから彼らは生きていました」

泣き叫びそうな少年を掬うことは。
新たな呪いをかけることに繋がるだろう。

「『他人のための行いにこそ価値があり、それが人生の重要な秘訣のひとつだ。』

 あなたには価値があります。
 誰よりも、してきたことはあなたが知っています」

濁った感情と混ざり思考を埋め尽くして。
慰めは沈殿物のように空虚な胸の隙間に流し込まれていく。

(-174) toumi_ 2021/07/11(Sun) 11:12:46

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「…… しています」


ぽつり。
瞬きをする音が聞こえるような静寂がおとずれた。

「貴方が生きた人生に納得するのなら死んでしまいなさい」


「『よく生きることは、よく死ぬことでもある。』
 貴方がよく生きてきたことを私は記録しました。

 人間は、愛されているうちに死ぬのが一番だと思います」

『私はあなたを愛しています』


これが導かれた善と、正しさ。
私の倫理でした。
(-175) toumi_ 2021/07/11(Sun) 11:35:51

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

セナハラの人生はミロクの人生とはかけ離れたものだった。
しかし選べもしない運命と、
生きるための行動に頭が働かないほど愚かでもなく。

だからこそ、ゆるく、首を傾げ。
納得していないかのような仕草をしたあとに、その顔を見た。

「解決は、しましたか?」

(-176) toumi_ 2021/07/11(Sun) 12:17:17

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「とても、辛いことだと思います。
 あなたの食べた方は心が狭く、
 あなたのことをいつまでも恨み、
 生きていることを喜ばないそんな方々だったと、
 あなたは思っているのですから。

 不仲であったのならば御愁傷様でした。
 あなたがそれで得ようとした日常に、
 "そんなことを言わないような"方との、
 良い縁が結ばれていたのならいいのですが。

 いかがでしたか?」
(-177) toumi_ 2021/07/11(Sun) 12:19:21

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「――――ッ、」


 胸の底を温く満たす様な、
 柔らに撫ぜる様な慰めの言葉。
 『聞きたくない』とばかりに力無く首を横に振る。

 ――そんな大層な人間じゃ無い。
 どんな行いをしたところで、何にもならなかった。
 実を結んだのは、ロクでもない事ばかりで。

『            』
 

 ゆるりと顔を上げる。
 揺れる十字架の、金具の擦れる音が響く。
 そう錯覚する程の静寂。

 幾らか上方の琥珀色を見つめる。
 齎されたそれは求めたものと近い癖、少し違っていて。
 ――この兄サン、意地悪だなァ。

 人生に納得するのなら、だなんて。

 虐げられて、騙されて、喪って。
 拾い上げる先から取り溢し続ける様な人生だった。
 こんなもの、納得なんて出来ようものか。


……けれども。
▼ 
(-178) 榛 2021/07/11(Sun) 14:52:43

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

けれども、恐らくこれ以上は、無い。
今このとき以上の幸いは、やってこない。
それで、終いにするには十分だろうと思った。


 目を細めて、酷く満足げに、
 これ迄で一等嬉しげに――

「ありがと、兄サン」

 満たされ切った顔して笑う。
 それが、青年の出した答えだった。

――これはきっと“納得”とは違う。
今ここで、生を手放すことを許された。
そんな身勝手で手酷い、 の受け取り方。
     
……漸く、空いた穴が満ちた。
(-179) 榛 2021/07/11(Sun) 14:53:11

【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク

「そうですか。
 それなら、―――あなたが生涯を終えるそのときまで。

 一緒におしゃべりする時間はいただいてもいいですか?」

 今こうやって話せているのは奇跡なんだろう。
 死者と生者が当たり前のように交わる世界を見ていた男にとって、
 別れが惜しく感じるのが死んでからだなんて。


「私、みえる方にしかみえないと、やっと学びましたから。
 どこにいても、問題ないですよね」
(-180) toumi_ 2021/07/11(Sun) 15:40:44

【秘】 療育 クレイシ → 商人 ミロク

「飼い猫じゃない……け、ど」

なんて言った?

「殺、した……?」

呆然としながら言葉を繰り返す様子から頭へまともに話の内容が入ってきていない事が分かるだろう。
脳が理解を拒んでいる。
けれど、時間を費やせば言葉の意味を少しずつ咀嚼してしまえるわけで。

「……っ、お前ッ、こんな時に何勝手なことをしているんだ、厄介者が……ッ!」

腹の底から無理矢理にでも出したかのような低い声。
どいつもこいつも厄介ごとを持ち込んできやがって。こっちは人を探さなければならないと言うのに。

貴方の真実を知らぬまま、男は身勝手な呪詛を連ね続ける。

(-181) もちぱい 2021/07/11(Sun) 15:42:38

【秘】 療育 クレイシ → 商人 ミロク

「誰だって外になんかいたくなんかない!けれど俺は……俺は、俺はァッ!!!」

未練を、忠告を、全てを振り切るように扉の向こう側へと飛び出した。

ほんの数秒で冷たい雨が全身を覆い尽くす。
風が体を掬おうとし、大きくよろめき歩くのを阻む。
暴風雨が決意を瞬く間に攫っていきそうだった。

それでも自分はやらなければならない。
子供を探さねばならない。

『たとえ水底、土の下。
 果てまでキッチリ探してやって――
 、、、、、、、、、、、、 、、、、
 あの子の手を引かぬうちは、帰らねェことだよ』

そうしなければならないと──蛇に囁かれてしまったから。
(-182) もちぱい 2021/07/11(Sun) 15:43:27

【独】 商人 ミロク

ロクさん。

あなたなら、きっと死を選ぶとわかっていました。

だから、ミロクに、取引をさせました。あなたの幸せを。
だから、倫理に問いました。ミロクの生き方に問いました。
だから、わがままを言い切れませんでした。

ミロクという善と正しさの気質を持った生き方に後悔はしていません。

ですが、一つ惜しい事があるとするならば。
私という個人の生き方は未発達だったことでしょう。
もし成長していたのなら、運命は変わったかもしれません。
本当の私は、あなたの死を許すことなんて出来なかったでしょうから。

我を通して苦しめることが出来たら呪われてくれましたか。
それは祝福になりましたか。死んでから幸せなことなんてあるんですか。
あなたは何があっても、苦しくても、
どんな未来でも手に入れることが出来るというのに。

死者の私が何を言っても、想いは通じないのでしょう。
生きて隣にいれば、何かが変わったかもしれませんね。

ごめんなさい。
あなたを幸せにすることが出来なくて。
生きていて善かったと思わせることが出来なくて。

ごめんなさい、私は、あなたを           。

必要としてくれた人として、守りたかったんだと、思います。
(-184) toumi_ 2021/07/11(Sun) 16:02:13

【秘】 商人 ミロク → 療育 クレイシ

「―――なんだ、おそろいでしたか」


この声は届きません。

「きっと良い取引が、出来たと思います」


この声はいつまでも届きません。


 
「私も子供たちを生かして死ぬことが、ミロクとして生きることです」





黒い猫の亡骸をやさしくひと撫でして目を伏せる。
まるであなたの心を見透かしたような言葉。
理由は違えど決意は似たような形で明かされるのだろう。
そして、瞬く間に暴風雨に言葉はかき消され、扉は閉じられた。
(-185) toumi_ 2021/07/11(Sun) 16:18:50
ミロクは、あの日、彼を黒猫を抱え見送った。『無事に帰ってきてくださいね』
(c5) toumi_ 2021/07/11(Sun) 16:27:02

【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク

「……、問題は、まァ、ねェけども」

 目を逸らし、歯切れ悪く答える。
 好意とやらは肌慣れず、どうにもこうにも据わりが悪い。

「……そンなら暇つぶしの相手、してくれ。
 もうちっと――助けがくるまでは生きねェとだろうし。
 
……あの子らほっぽり出して死んじまうのは、さすがになァ


 ぼやく様に呟いてから、ヘラリと笑いかける。
 肩の荷を下ろした、年相応の緩んだ笑顔。

「――そンじゃ、なにから話すかねェ」

 暫くは傍に居るらしい彼と、終わりの時まで。
 好きなこと、嫌いなもの、他にも沢山。
 互いのこれまでと、限りのあるこれからの事なんかも。

 暇さえあれば、どこででも話しているのだろう。
(-186) 榛 2021/07/11(Sun) 17:41:10
ミロクは、ロクと話をしている。結構、かなり、ながく、ずっと。
(c6) toumi_ 2021/07/11(Sun) 19:12:43

【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク

「当人達がどう思ってるか、なんて決まってるでしょ。
 飢えてりゃ皆心が狭くなります。
 親だって子供が煩わしくなる。
 自分さえ助かりゃ良くなるんですよ。
 それに。
 遺族にとっては、終わった話じゃあない」

眉を顰めた後。
決め付けるような物言いと、
吐き捨てるような抑揚で言うのだった。
その時その場所における真実が、今もそうであるかのように話す。

男の刻は止まったまま、死に絶えたのだ。

「解決は、……しないまま終わりましたね。
 縁もあったらこんな事にはなってないですよ」

人を信じない男は、
自身を求める少年の言葉も未だ嘘だと思っている。
それは戦争の後遺症であるが、気付けぬまま。
(-193) wazakideath 2021/07/11(Sun) 19:49:38

【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ

「そうですか、それは。
 とても、残念です」

取引を持ちかけたら、何を求めたのだろう。
すぐには思いつかなかった。

「私、もう少しだけここにいられるようです。
 誰かを死の世界に誘える能力があるみたいで。
 この力と人の魂の重さを考えながら過ごしていくと思います。

 だから、少しでも、です。
 あなたの人生を許した人間がここにいることを、
 覚えていてもらえたらと思います。
 お話、楽しかったです、また聞きたいです。
 たとえ……もし、成仏をして会えなくなったとしても。

 あなたが生まれたことを空に祝うことぐらいはできます。

 どんな季節に、あなたは生まれましたか?」

男はこの病院で誕生日を祝うことを覚えました。
それは、とても尊く、心が暖かくなることだと思いました。
死んでもなお、想われることは嬉しいのだと、そう感じたのです。
それを、あなたにも感じてほしいと思いました。
(-196) toumi_ 2021/07/11(Sun) 20:32:45
 




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