人狼物語 三日月国


81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】

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【人】 遊惰 ロク

 間借りしている病室にて。
 ベッドに腰掛け、音が弱まった外の方へ視線を向ける。
 閉め切られた儘の雨戸。
 外の様子は、何一つ窺い知ることが出来ない。

 手持無沙汰、右手は耳介を弄っている。
 幾らも開けた穴を埋める色取り取りの耳飾り。
 白く光る小さな石はそこに無く、穴が一つ、空いた儘。
(1) 2021/07/07(Wed) 22:31:33
ロクは、今日も死んでいない。
(a1) 2021/07/07(Wed) 22:32:10

「……、……」



瞳を開けた。双眸は紅に染まっている。
目が醒めたのは外だった。

雨がふりしきっていて、"肩が濡れる"。

此処は、あのとき  の死体を見つけた場所だ。




「死んでも、魂が残るとは言いようだ。
 生者と死者の違いがこんなところにあったなんて。
 体験しないとわかりませんでした、今ならわかります。

 これが、
命の重さ
ですねぇ?」




男は肩を濡らさなくなった。
いつの間にか腕の中で眠っている黒猫を抱え、
一歩病院へと歩き出す。

「さぁ、取引を続けましょう」

取引を終えていない。

【人】 遊惰 ロク

 いつかの様に、空のタライを持って二階をふらつく。
 弱まった雨風の合間を縫って、滴る雫の音が聞こえる。

 意味も無く、雨漏る箇所を一つ一つ順に巡る。
 その内の幾らかは新たに修繕されていた。
 ――誰が、いつの間に。
 その答えをとうに持っている様に思われて、
 けれどもしかし、未だ認め切れずにいる。

 伸びる廊下、フラリフラリと歩を進め乍ら、
 躊躇いじみた間を置いて、それから開く扉があった。
 開けようとしない扉があった。

 何かを、誰かを。
 避けながら、けれどもどこか探している様な足取りで。
 男はタライ一つ抱えて彷徨っているのだった。
(3) 2021/07/08(Thu) 2:34:13
走っている。

霞む意識の中、何かから逃げていた。
しかしどうにも足が重く、思う様に進めない。
一歩踏み出す度に、泥中の意識が浮上していく。
逃げなければ殺される。
逃げなければ生きられない。

────そういえば。

──何から、逃げているのだろうか。



足を止める。
見慣れた廊下と、少し弱まった雨が窓から見えた。

ここは三途病院だ。敵などいない。
銃声も聞こえないし、戦闘機だって飛んでいない。
その筈だ。
一体何故、何を、恐れているのだろう?

セナハラ

貴方が足を止めると、ペタ…ペタ…と背後から足音が聞こえる。
聞き覚えがあるはずだ。
貴方を慕う少年の足音……生きている時は、仕事中の貴方の後ろをよくついてきた。

……ペタペタ……ペタペタ

段々と近づいてくるその足音は背後で止まるだろう。

タマオに、  を渡すように頼んだ。

 ニエカワ

ペタペタ。
……ペタペタ。

足音の主を、知っている。間違うはずがない。
ひとつおかしなことがあるとすれば──、
この足音は、もう聞こえない筈であることか。

男は己が死んだ事を、まだ理解できずにいた。

「……、……っ」

兵士が背後に立っている時より、
銃口をつきつけられる時より、ずっと恐ろしい。
恐る恐る、そうっと、振り返る。
視線は当然のように、数寸下へ向いていた。


振り向いた先には……
何もいない。

 セナハラ

「──ねぇ」


至近距離、正面から少年は呼びかけた。


「ここだよ、セナハラさん」

 ニエカワ

「────ッ!?」


声にならない悲鳴と共に、正面へ顔を向ける。
生前と変わらぬ姿の少年がそこに立っていた。

「……な、ぁ、なんで、」

思わず一歩、後退る。
そんな筈はない。
貴方は間違いなく、この手で殺したのだから。

男は死後の世界を信じない。
霊魂の存在を否定する。
そうでもしないと、気が狂ってしまうから。

 セナハラ
「……………なんで…?」

貴方が後退るたび、その距離を詰めるように一歩前へと進む。

「会いに来たんだよ、セナハラさんに……」

その頬に触れようと手を伸ばした。
痩せた細い子供の指が素肌に触れようとしている。

会いたかった……

これは、少し前。
まだ男が命を落とす前。

病院の裏手にスコップを持った男の影が一人。
スコップの影がもう一つ。

深く、深く穴を掘っていました。

少し離れたところにも、もう一つ、穴が掘られました。

一つの穴には小さな骨と薬の入った陶器の壺。

もう一つの穴には黒猫の遺体を入れました。

壺の中には、ニエカワの骨が入っていました。
もう一つ、ニエカワの夢が入っていました。

黒猫はタオルに包まれていましたが、
埋められれば次第に土にかえるでしょう。

どちらも弔う為に、作られた、お墓でした。

技師の墓は、ありませんでした。
知りませんでした、知ろうとしませんでした。
彼女はきっと、どこかに、行ってしまったんでしょう。

ニエカワ

痩せた細い指の腹が、頬に触れる。

「……ぁ、」

その瞬間、思い出した。
喉に触れる指を。首に回された子供の掌を。
脚から力が抜けていく。崩れるように座り込んだ。

「ごめッ、……ごめんなさ、ごめん、なさぃ」

きっとこの子供は、復讐をしに来たのだ。
叶わない約束をした自分を。
殺した自分を。
かつて喰らい殺した人々も、
こうして自分を呪っていたに違いない。

「……ゆるして、」

まだ雨の降りしきる中、濡れない男はその地面を見下ろす。
しゃがみこんで、手を合わせて。
目を細めればどこかに"彼ら"の気配を感じた。

まだ病院のどこかで、誰かを待っているのだろう。


「ああ、結構無事ですね。
 かなり深く掘りましたし、……突然掘り出す人も、
 墓荒らしする不届き者も獣ぐらいで。大丈夫かな」


同時に誰の墓かかも皆にはきっとわからない。
ここに残る彼らになら知らせてもいいかもしれないが、
今だと外に出てきてしまうかもしれない。
骨があったことが知られてしまうかもしれない。
あの肉が"人"であったことが知られてしまうかもしれない。

……しばらく秘密のお墓としよう。
この病院によくいた猫も一緒に埋めた。
多分、寂しくないだろう。


「もう二度と口を聞けないと思っていたんですけど…。
 せっかくまだいられるのなら、
 最期ぐらい見届けようと思います。

 さて、一体人の魂の寿命はいつまででしょうか?」

セナハラ
「……なんで、あやまるの…?」

温度のない掌で両頬を包む様にしてこちらを向かせる。

「……俺を殺したから?
 身体をバラバラにしたから…?
 先生の肉を食べたから…?
 嘘ついたから…?」

貴方の罪を並べ立てる様に一つ一つ問いかけた。
少年に悪意はない。
ただ貴方の事が知りたいだけだ。

ニエカワ

止まった筈の心臓が悲鳴を上げる
気がした

胃が中身を絞り出すように痛んでいる
気がした


「……っ、怒ってる、ん、でしょう?」


罰が当たったのだ。
定めに流され、嘆いていれば良かったものを。
人の手で命を選んで、自ら人の道を踏み外して、
……抗ってしまったから。

「な、……何でも、する、からッ…………」


目を逸らせない。
何の力も込められていないのに、
顔に触れる手を振り払う事ができなかった。

「……、許して、ください」


震える声で、唇で、赦しを乞う。


「怒ってないよ…… ──でも」

あの優しくて大人なセナハラさんの怯えた表情に心の奥底が疼く様な感覚が這い上がる

「セナハラさんのその顔……可愛い……」

目を細め、柔らかく微笑んだ。
その笑みがどこか妖しげなのはこの少年の本質か死人だからか

「ねぇ…何でもしてくれるってホント……?
 “コレ”は嘘じゃない…?」

ニエカワ

大人として振る舞う余裕など、とうに無くなっていた。
何を言われたのか、理解する前に口が動く。

「ぅ、うそじゃない。……ほんと、本当だから、」

震える手で縋るように、貴方の服を掴む。
その笑顔が、ただ恐ろしかった。

セナハラ
「……じゃぁ…、じゃぁさ……」

耳元にそっと唇を寄せて、内緒話をするように囁きかける。

セナハラさんが欲しいな
……
 ずっとずっと…俺の傍に居てほしい……」

縋るように掴む手が愛おしくて……優しく、宥めるように頬を撫でた。

「セナハラさんが俺のものになってくれるなら、
 全部全部……
許してあげる
……」

別に最初から怒ってなんかいない。
貴方に恨みも持ってない。
でも、"許す"という口実で貴方を自分のものにできるなら、それでもいいと思った。

ニエカワ

──許してあげる=B

囁かれた瞬間、気付けば頷いていた。
その言葉の、本当の意味もわからないまま。

「ずっと、いる……、います。
傍に、います


安易に終わりの無い約束を交わした。
視界が霞み、涙が頬を伝っていく。
許されるという安堵から溢れたのか、恐ろしいからなのか、
……何もわからなかった。

 セナハラ

約束
だよ……」

そのまま、ぎゅっと貴方を抱きしめた。

セナハラさん……大好き……



死後漸く望みが叶うなんて、皮肉以外の何物でもないが、少年は幸せだった。

【人】 遊惰 ロク

>>4
「オハヨウ、お嬢サン」

 ポツンと佇む少女の背後から声を掛ける。
 これまでと変わらぬ笑い顔、軽快な調子で。

 
一つ深く息を吐いた事、それが震えていた事。
笑い顔をシッカリ作ってから声を発した事。
それらは全て、少女の視界の外での出来事だ。
(6) 2021/07/09(Fri) 21:01:27

【人】 遊惰 ロク

>>7 フジノ
 見てねェなァ、と答え乍ら、釣られた様に辺りを見回す。
 
少なくとも、生きている人間の姿は周囲に無いだろう。


「……散歩がてら探しに行くとするかねェ」

 距離を掴み損ねている様子で、
 提案とも独り言ともつかぬ言葉を吐いた。

 少女と面と向かうのは、商人の遺体を前にして以来だ。
 あの時は会話どころでは無かったから、
 もう一つ遡れば無暗に怖がらせてしまって
>>2:104
以来。

 どことなく、気後れしていた。
(8) 2021/07/09(Fri) 22:57:21
ニエカワ

抱き締められても、温もりなど少しも伝わってこない。
そこにあるのは交わしてしまった約束と、
剥き出しの好意だけだ。
何故好かれているのか、男にはちっともわからなかった。
だからこそ、恐ろしい。

「──……はい。
約束
、です」

恐る恐る、背中に手を伸ばす。
この約束を手放してしまえば、
自分は永劫許されなくなると思った。

約束をした。

 セナハラ

背に回される手には同じように温度はない。
けれど心が温かくなるような感じがした。

約束をしてくれたから、自分は彼を信じていよう。

セナハラさんは“大人”だから、また約束を忘れてしまうかもしれないけれど、その時はまた思い出させてあげればいいだけだ。


「(──やっぱり…、セナハラさんにはお嫁さん……いらなかったね)」

【人】 遊惰 ロク

>>9 フジノ
 言われた儘、少女のことを待って。
 返ってきた上着を受け取り、袖に腕を通す。

「おれこそこんくらいしか役に立てねェで。
 ……なにかしようなンざ、思わねェでいいンだよ」

 それに、と付け加え乍ら、
 自然な仕草で少女の頭にポンと手を置く。

「お前サン、なんにもしてねェこたねェよ。
 ホラ、はじめにあのひと見つけてやっただろ」
(10) 2021/07/10(Sat) 10:41:08

【人】 遊惰 ロク

>>11 フジノ
 つい置いてしまった手と、跳ねる少女の薄い肩。
 その反応が反射的なものだと察すれば、
 浮かしかけた手でそっと一度、緩く撫でた。

 それから手を離し、上着のポケットに突っ込み。
 漂う匂いの方向へ顔を向ける。

「……お医者サンかねェ。
 ゴショウバンにあずかろォか、お嬢サン」

 そう言ってフラリと歩き出す。
 
――そんなことを言い乍ら、
この男はここに来てから殆どものを食べていない。
(12) 2021/07/10(Sat) 11:55:30
メモを貼った。

【人】 遊惰 ロク

>>15 【調理室】
 少年の口振りに疑問を覚え、
 何とはなしに出入り口の辺りを見る。

「……お医者サンはいねェのか」

 それから、皿に置かれた肉、少年の仕草を見て。
 ニカリと笑みを浮かべてこたえた。

「そうだなァ、腹ァへっちまった。
 おれもひと切れ、もらっていいか?」

 
……それが“何”の肉であるか、少年がした事。知っている。
全てでは無く、憶測も多分に含むけれども。
(16) 2021/07/10(Sat) 15:55:16

【人】 遊惰 ロク

>>17 >>18 >>19 【調理室】
 少年の言葉に、僅かに笑みを濁らせる。
 この状況だ。言っている意味は直ぐに分かった。

「そうかい。せっかく焼いてくれたんだ、
 “会いに”いくのはこれ食ってからにしようかねェ」

 イタダキマス、と皿の上に手を合わせてから。
 薄い肉を一切れ、口に放り込んで咀嚼する。

 
――嚥下しづらいのは、込み上げる嘔吐感は。
久しぶりの食事に体が驚いたからかもしれないし、
肉の正体を思って心が拒絶していたからかもしれない。
……どちらでも良いと思った。


 この場で男が口にしたのはきっと、その一切れだけだ。
 空腹を満たすための食事では無いから。
(20) 2021/07/10(Sat) 19:38:48

【人】 遊惰 ロク

>>21 >>22 【調理室】
「――ゴチソウサマ」

 机に頬杖をつき、二人が食べ終わるのを待ってから。
 
もし、全て食べ切ろうとする少年が苦しげであれば、
食べる量を減らすため多少手伝っただろう。


 使える水も限られている。
 軽く濡らした布で皿を拭い、重ねて。
 クルリと振り返り、明るい調子で声を掛ける。

「そンじゃ、お医者サンのとこいくかァ」

 そうして少年に案内を任せ、その少し後ろを、
 ポケットに手を突っ込んでフラフラと着いていくだろう。
(23) 2021/07/11(Sun) 0:22:05
 




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