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【人】 学生 涼風>>54 髪置……優くん! 貴方と同じように、一度、二度、三度。 ぱちぱちと忙しなく瞬きを繰り返して、それでも信じられないといった様子で。 時間をかけてゆっくり貴方の言葉を飲み込んで、代わりにそっとはにかんだ。 「無理に変わらなくていいんだよ。だってそれが君の魅力で、私が惹かれた部分なんだから。 君が君である限り、皆が何と言っても私は君を肯定するよ」 そこまで話し、少年は笑みを深める。陶器製の人形めいた顔立ち、けれどそこに乗る目尻や頬の赤みは確かに生きている事の証であり、貴方に紛れもない好意と信頼の形でもあった。 「うん。これからも、大人になっても! ふふ、ありがとう髪置く……、……。 …………ううん。優くん!」 (57) 2021/08/16(Mon) 2:07:41 |
【人】 巡査部長 鬼走>>@1 夜長【三日目/海の洞窟】 「最後はお前の父親の名前を呼んだ。ああ。だからみんなお前の事をそう思っている。……そこだけ聞こえないのも本当にキツネにつままれたようだが、まあ仕方ない」 わからない。到底信じられない事が起きているけれど、何故か不思議と腑に落ちた。一瞬何かに引かれている感覚を覚えたが、自分はすぐに振り払えたけれど。多分それができなかった人間がいる。だから彼らを気にしてた。晴臣は事情が違ったようだけれど、この不思議な現象に関わっていたからそう思ったのかもしれない。 「明日、祭りがあった気がするな」 そして一つ、思い出した事。 どうして1年前、雪子が一人で村に帰ったのかと言う事。理由を知ってはいるはずなのに、なぜか靄が掛かった様に思い出せない。けれど伝えられるこれだけは言うべきと思った。 「それと、雪子は無事だ。理由は上手く思い出せないが、それだけはハッキリと言える。もう探さないで楽しんでみるといい。全部終わった後、思っていた事を言ってやれ。……3人でな」 (58) 2021/08/16(Mon) 2:24:43 |
鬼走は、「気にするな」と言いながら晴臣の分の水着を買って海に顔も出しただろう。 (a21) 2021/08/16(Mon) 2:26:27 |
【人】 影法師 宵闇>>55 御山洗 「……よう、アキラくん。 俺がこの家に上がるのも久しぶりかな、変わってないね」 男は扉に手をかけたまま、まるで最初から行く気がないかのようなその姿に何を言うこともなく、いつもどおり、にやりと笑って見せた。 「外、暑かったからさ、勝手にあがらせてもらったけどよかったかい」 男はぱたぱたと胸元に空気を送りながら ずかずかと部屋に上がり込んで、後ろ手に扉をしめた。 「それに、まだ昼だしな。祭が盛り上がるのは夜だ。 ……久しぶりにゆっくり語り合おうか?」 特に咎めるような様子はないが、何か言いたいことがあるなら聞いてあげよう、そんな姿勢だった。 (60) 2021/08/16(Mon) 2:44:21 |
【置】 巡査長 清和鬼走も、宵闇も、御山洗も、添木も、花守も、誰も違った。 この金髪を持っていたのは、外から来た、清和だけだった。 それがコンプレックスだったわけではない。むしろ、誇りだと思う。 母から貰った大切な宝物だった。だけど、それでも寂しかったのだ。 だから、あえてみんなから浮いて、前に進んで、羨まれる位置にいた。 お前が自分と同じになってくれて、俺は、嬉しかった。 寂しくなくなったんだ。お前がいてくれたおかげで、俺は。 だから、お前が戻ってしまうのが、こんなにも寂しいんだ。 だけど、お前は追いかけてくれる。こんなにも嬉しいのか。 ああ、どうすればいいんだろうな。この気持ち、わからないな。 (L11) 2021/08/16(Mon) 2:54:12 公開: 2021/08/16(Mon) 2:55:00 |
清和は、添木の髪に酔った勢いでキスをした。 (a22) 2021/08/16(Mon) 2:54:52 |
【置】 巡査長 清和俺は本当は、鬼走さんの部下でも、添木と一緒の配属先になったわけでもない。 これは俺が10年前、この田舎に捨ててきた憧れと願望が作り出した、夢幻なのだ。 無力だと感じた。事が起こる前になんとかできなかった。 みんなを守れる"オトナ"にならねばならないと強く思い知らされた。 ハーフで地毛が金髪だなんて、警察官になれないと何度も言われた。 すべて、実力と実績で黙らせてきた。それをするほどの覚悟があった。 そして俺は『公安』になった。この田舎のみんなを守るために。 何かが起こってしまう前に、すべて俺たちで解決してしまえるように。 俺は『公安』だ。夢が終われば、あの不発弾の中身は全て処分しなければならない。 『公安』の正体が明らかになるようなものは、可能な限り処分しなければならない。 それがどれだけ思い出深いものであろうと。 俺の名前は『清和ルカ』 ──清和とは、世の中がよく治まって穏やかなこと。 ──ルカとは、光をもたらす聖者の名前。 お前たちの未来に光あれ。清和の世を生き、幸せであれと俺は願う。 (L12) 2021/08/16(Mon) 3:20:13 公開: 2021/08/16(Mon) 3:20:00 |
【人】 学生 涼風>>+35 凪 なんだか不思議な感じがして、八の字眉を下げて微笑んだ。二日前、勇気が無いと迷い子のようにしていたのはこちらだったのに。 「……うん。見つかったよ。夕凪姉ちゃんへの答え。ここに来て気づいたんだ」 忘れていたものを思い出した。 ずっとこの日々が続けばいいと、皆を誘う担い手か。 何故かここに残らなければならないと声を聞く者か。 違う、そんなものじゃない。そんなものを思い出す前に私は気づいてしまったんだ。 「私はね、ここでようやく亡くなった母さんにきちんと近況報告をすることができた。母さんは成長を喜んでくれる人だから、きっと楽しく聞いてくれたはず。きっとこれからも、望んでくれるはず。 だからね、私は。 ここにはいない、ここには来れなかった人たちに…… 沢山の思い出を、沢山の感情。 生きてきた軌跡を綴って、報告してあげたい。 それが私の……今を生きる人としての本当の役割だと思うから。 だから立ち止まるなんて出来ない。私は、もう一度ペンを執るよ」 【→】 (61) 2021/08/16(Mon) 3:45:26 |
【人】 学生 涼風>>+35 >>61 目の前の貴方 「ねえ、教えて」 からん、ころん。 下駄が鳴る。誘うように、手招くように。 「こんな私は、格好悪いかな? 医者を目指して、物書きもして。両手にいっぱい抱えるから、私はきっと沢山転ぶ。 そんな私は、格好悪いかな?」 からん、ころん。 夕凪よりも少しだけ高い目線からそっと優しく見下ろして。 「大人って、どういう人のことを言うの?」 からん、ころん。 出来る限り距離を詰めて。貴方と離れるのは嫌だと言うように。 「──ねえ、お願い。 答えが出ないのなら、出るまで一緒に考えよう?勇気が無いのなら、出るまで一緒にいてあげる。 会えないなんて、寂しいよ。大好きな夕凪姉ちゃんと夜凪兄ちゃんが苦しむのは、悲しいよ。 私に出来ることはない? ねえ── ■凪さん」 からん、ころん。 貴方に寄り添う、夏の音。涼やかな囁き。 (62) 2021/08/16(Mon) 3:48:49 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>59 鬼走 【四日目/夏祭り】 「………あれっ、」 不意に名前を呼ばれて、下駄を鳴らして振り向いた。 その声と呼び方には覚えがあったけれど、 自分に声を掛けるような用事があっただろうか、そんな疑問。 「鬼走さん! ううん、約束はしてるよ。 先に行っててって言われたから適当にぶらついてただけ!」 涼風と、一緒に行こうと約束したのは事実で 先に行っていてほしいと言われたのも事実だ。 独り歩きの違和感、その理由にはならないかもしれないけど。 (63) 2021/08/16(Mon) 5:13:14 |
【人】 学生 涼風>>+36 >>+37 目の前の貴方、夜凪兄ちゃん 「じゃあきっとまだ大人じゃない。大丈夫。 だから、まだわからないままでいいんだ。はっきりした夢が見つからなくてもいい。 だから、君は格好悪くなんてないよ」 それは単なる子供の屁理屈かもしれない。でも、それが当然であるかのように少年は涼しい顔で言ってのける。 「うん。勿論。 全部聞かせて。私も全部話すから。 そうして一緒に会いに行くんだ。皆で会いに行こう。きっと皆も会いたがってる。皆、二人を必要としてるもの」 ここに来て夕凪が色んな人と助け、助けられをしていたのをこの目で見ている。 貴方たち姉弟を、皆好いていることを知っている。 「約束だよ。──夜凪兄ちゃん」 絵が得意な年上のお兄ちゃん。夏を楽しんでほしいと願う姉思いのお兄ちゃん。 貴方は遠慮しているけれど、自分にとっては自慢の兄貴分なのだ。 少年は笑って手を伸ばす。 大丈夫だよと伝える為に、抱きしめる為に。 (65) 2021/08/16(Mon) 7:23:37 |
【置】 少年 編笠ある日家に帰ったら母親がいなくなっていた。 誰もその理由を教えてくれなかったし 俺宛の手紙や言葉も何一つ残されてなかった。 だから想像するしかなかったんだが どうやらどう考えても子供の俺には 悪者が世界のどこかに連れ去ったんだって そんな想像しかできなかった。 でもどうせそうやっていつか皆んな 黙って俺の元からいなくなるんだって思ったら いつからか上手く笑えなくなってた だってそうだろ… 母親がいなくなって泣けないやつに 誰が笑うことを許してくれるんだよ。 例え誰がいなくなっても泣けないかもしれないやつに 誰が手を差し伸べてくれるってんだ。 あの時独りで見上げた空と同じ空が 今ここには広がっている。 (L13) 2021/08/16(Mon) 10:23:20 公開: 2021/08/16(Mon) 12:00:00 |
【人】 おかえり 御山洗>>66 宵闇 「行く、つもりは……ないわけじゃ、ない、けど」 すぐ間近に見下ろした顔を見てまた怯えたように顎を引いた。これ以上逃げる場所がない。後ずさろうとした肘が壁にぶつかって擦れる。痛みを感じない。 夏の盛りだというのにやけに冷えて感じる空気が喉を凍りつかせていくばかりだ。 「俺は、別に。後からでも、みんなで、行けば、」 うまく言葉が出てこなかった。自分は何を言い訳したいのだろうか。何を申し訳なく思って、何に後ろめたさを感じているのか。思考がごちゃ混ぜになる。 怯えている。恐れている。全部が全部壊れそうな思いだ。 見下ろした目の中に鏡のように映り込んだ背の高い男の表情は、罪の重さに耐えられないような顔だ。 「来なければよかった、帰ってれば」 そのまま踵を返してどこかに行ってしまうことを願っていたのに。じっと黙り込んでいれば、そのまま別のところに行くだろうとそう思っていたのに。夢の中の景色と重なって息を呑む。苦しさで瞼の裏の景色が滲んできた。 「俺は、」 思い出を壊したくなかった。壊すのは自分自身だ。 思い出を汚したくなかった。忘れ去るままでいたかった。 「俺は、」 息ができないほど焼き付いた胸が、楽になろうと自白しかける。 ずっと隠していた罪悪は、紐解くつもりなんて一度もなかった。 10年も昔から。子供だった時分から。 どうして今、思い出してしまったのか、帰ってこなければよかった。 → (68) 2021/08/16(Mon) 11:30:11 |
御山洗は、恐れている。怯えている。思い出を壊す自分自身の心に。 (a23) 2021/08/16(Mon) 11:31:03 |
【人】 さよなら 御山洗>>66 宵闇 掠れるような声でそう吐き出して。伸ばしてたが肩を押して遠ざけた。 苦痛を堪えるように目を伏せる。焼けた髪の色より幾分濃い色の睫毛が視界を閉ざした。 首を横に振る。力は強かった。そのまま、腕を伸ばしても届かないくらいに距離を空ける。 「……ごめん。祭りには、一人で行ってくれ。 瑠夏とか百千鳥とか、みんな待ってるだろ。 俺は一緒に行かない。行けない。だから、一人で行ってくれ」 言うつもりはなかった。言うべきことではなかった。 ずっと、いつだったか、子供の自分が口を閉ざして隠していたものを、自分が壊してしまった。 御山洗は恐れていた、怯えていた。自分にとって大事な思い出を壊すこと。 御山洗はこの場所に帰ってくるまで思い出の中にしまっていられた、焦がれるほどそばに置かずにいられた。 なのに、帰ってきてしまったから。思い出のままにしておきたかった全てを掘り起こしてしまった。 口にすれば全てを終わらせてしまうのをわかっていた。 いつかの三人組ではいられなくなることを、わかっていた。 「……今までありがとう」 だから、これは、決別だ。 (70) 2021/08/16(Mon) 11:32:23 |
【置】 警部補 添木添木には何もない。 両親の写真は、一枚もなかった。 一枚だけ祖母がとっておいたものを、見もせずにキッチンで焼いた幼いころ。 自分を捨てた大人なんかと、自分が繋がっている由縁を、一つたりともこの世に残したくなくて。 あんたは優しいけど。 ずっと前にいるのに、時折振り返って笑ってくれた。 ずっと一緒に過ごせるんじゃないかって、そう思わせてくれた。 嘘つきだ。 あんたは嘘つきだ。 本当にひどい。 でも、今度はその嘘を俺が引き継いで、誰かに背中を見せてやる。 こうしないと、きっと救われない”誰か”がいる気がすんだよ。 これでいいよな。 これでいいんだ。 きっと。 (L15) 2021/08/16(Mon) 13:22:55 公開: 2021/08/16(Mon) 13:25:00 |
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