人狼物語 三日月国


99 【身内】不平等倫理のグレイコード【R18G】

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【秘】 鑑賞用 リヤ → 復讐者 スオ

彼の言葉に はく と唇をまず動かし、声はなし。
ぱちぱちと瞬いて、またスケッチブックへ文字を描く。

「わたしが、散らかしたのに いいの?
 けがしちゃうかも。 けが、しないでね」


それでもいいなら。手伝ってくれるというなら、嬉しい。
ちら、と彼の顔を見る。
その顔が、その笑顔が嬉しくなって、彼の手をぎゅっと握る。
拍子にスケッチブックを落っことして、は、とした顔をした。
手を離し、再びスケッチブックへ。

「スオ。 おかたづけしてる間、スオのお話聞かせて。
 なんでもいいよ」


そんなことを書いたら、へら、と笑う。
彼の返事がどうであれ、スケッチブックとクレヨンを一旦ベッドの上に置き、
……取り敢えず、幾つも幾つもあるひしゃげた鳥籠を、ひとつひとつ、部屋の隅に寄せ始めるだろう。
(-95) crackpot 2021/10/09(Sat) 21:55:39

【秘】 鑑賞用 リヤ → 救済者 ユー

「本当は、そうだったらいいとぼくも思う。
 でも、そうはならなかった。
 ならなったから、ぼくたち、此処にいるんだ。そうでしょ?
 ユー   ユーサネイジア。 
 君ともっと早く出会えてたら、もっと幸せだったのかもしれないなって思うよ」



少なからず選択肢が増えていたはずだ。
選び取るべき道が幾つも提示されることは幸福だ。
不平等がぼくたちに平等に降り注ぐのなら、
そいつを死という平等で庇ってやろう。
優しくて悲しい色の君の目を見て、金糸雀は笑う。
金糸雀はもう異常を検知しないし、それを知らせない。

「うん。 ぼくも、 ……出来れば皆に。
 皆に、自分から、やっぱり皆で一緒に居たいって思って欲しい。
 だから、待てるよ。 皆で一緒に終わるために」



君の言葉には一度、二度と頷いて同意を示す。
君の手を柔らかく握り、共に塔へと向かうことにする。
崩れていく塔の奥。 皆を、待つために。
(-97) crackpot 2021/10/09(Sat) 22:12:59
リヤは、       願っている。
(c28) crackpot 2021/10/09(Sat) 22:15:08

【墓】 忘却の金糸雀 リヤ

金糸雀はもう謳わない。忘れてしまったから。
金糸雀に出来ることは、鳴いて叫ぶことだけだ。

不条理と不平等に逆らって、唯一の平等と安寧を見出した。

誰も欠けて欲しくなかった。ずっと此処にいたかった。
もう叶わないことだ。

なら此処で終わりにしよう。全部終わらせよう。
皆と一緒に生きられないのなら、皆と一緒に死にたい。

金糸雀は、塔の奥深くまで進んでも異常を検知することはない。
もう何も知らせない。願って鳴いて叫ぶだけ。

優しい医療用がボスエネミーだったものに死を与えるのを傍で見て笑っている。

みんなで、しのう。 いいでしょ?
(+26) crackpot 2021/10/09(Sat) 22:59:59
忘却の金糸雀 リヤは、メモを貼った。
(c29) crackpot 2021/10/09(Sat) 23:04:19

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「リヤ、リヤ。いないのか?」

崩壊が進む塔のどこか。
ひび割れた壁や床からは、ゲームを構築するための
コードが顔を覗かせている。

いなくなった小鳥を探して、呼びかける。
あんな置き手紙が残っていては、
探さないわけにはいかなかった。
(-98) dome 2021/10/09(Sat) 23:07:06

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「う――たを  ……
          わ―― すれた 
   かなりやは―― 」


第四階層、その最深部。
本来であれば正しいボスエネミーが鎮座していたであろう場所に、
金糸雀はいる。
小鳥を囚え、逃さぬ為に作られた鳥籠が其処にある。
鳥籠は人間一人をすっぽり捕らえられるくらいの大きさであり、
――金糸雀はその中にいる。
扉は、閉じている。

君の呼ぶ声に反応して拙い歌を止めると、顔を上げた。

「その声は、ルツ? 会いに来てくれたんだ。
 いるよ。 ぼくは、此処に!」


金糸雀は流暢に喋る。君が来てくれた事が嬉しくて、
喜び溢れんばかりの声色で君に声を返す。
(-100) crackpot 2021/10/09(Sat) 23:26:51

【墓】 忘却の金糸雀 リヤ



崩れていく塔の第四階層、最深部。

金糸雀は大きな鳥籠の中で、囚われの籠の鳥を演じている。
(+27) crackpot 2021/10/09(Sat) 23:28:22

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「……ああ、ルツだ。
 急にいなくなるから、心配したんだぞ。
 もうエネミーが殆ど見当たらないとはいえ、
 危ないことに変わりはないのだから」

この扉は開くのだろうか。
そんな思考を挟みながら閉じた鳥籠に歩み寄る。

「それにしても、少し雰囲気が変わったかな」

あなたの拙い話し方しか知らなかった宣教用には、
流れるように言葉を紡ぐ姿が珍しく映ったようで。

「ここで何をしているんだ?」
(-101) dome 2021/10/09(Sat) 23:49:47

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「心配してくれたの? ありがとう」


やっぱり、君は優しいな。皆優しい。だいすきだ。
だから、やっぱり皆と離れたくない。


「エネミーはね、ユーが殺してくれたの。
 此処に居たボスエネミーもね」

直ぐ傍に、優しい医療用もいる筈だ。
ぼくらの会話に横槍を入れたりはしないだろうけれど。
――最深部。ボスがいた筈の此処にいるのは、医療用と金糸雀だけ。

「――…ぼくの中にはね、もうひとりいるの。
 正しくは、その"バックアップデータ"。
 ぼくはその一部を、ぼくの中に復元した」


だから、今はこうなった。
唄を思い出すことは出来ないけれど、それでももういい。
近付く君を止めはしない。けれど、鳥籠に触れたとて扉は開かない。
近付けば気が付くだろう。この扉には頑丈な南京錠が幾つも幾つも掛けられている。
これは、金糸雀が揺るがない為のもの。

「――… みんなを、待っていたの。
 ねえ、ルツ ルツ。 ルツは……
 現実に戻りたいって、思う?」
(-102) crackpot 2021/10/10(Sun) 0:06:25

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「エネミーがいないのは幸いだが…」

先日言葉を交わした医療用を一瞥する。
置き手紙はリヤを案じるような内容でもあった。
この子との会話を優先しろと、そういうことなのだろう。

「二人分の人格データがあったのか。
 なぜ今になって復元を?」

重たげな南京錠を軽く揺らして、
容易には外れないことを実感する。
鳥籠というよりも、
牢獄と形容すべき檻を隔てて小鳥と対峙した。

「私は戻るつもりだよ。約束があるんだ。
 アナを起こして、現実に帰って、
 あの子に幸福を見せてあげなくては。

 しかしその様子だと、リヤは戻りたくないのかな」

首を僅かに傾けて。
檻の隙間から、海色の瞳が見つめている。
(-103) dome 2021/10/10(Sun) 0:27:10

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「…… カナは昔死んだの。
 わたしたちはお互いにお互いをバックアップにしてた。
 身体は無くなっても、それがある限りいつかはって思ってた。
 でも多分、そのいつかは来ない。
 ……わたしは、ユーに優しい死を味わわせてもらった。
 とても穏やかで気持ち良くて、素敵な気持ちだった。
 だから、 一緒に死のうと思って」

鉄格子を真ん中に置いて、君を見る。
この扉は多分、金糸雀が望まない限り開かない。籠を力尽くで破壊すれば或いは。
それでも格子の隙間から手を伸ばせば、君に触れる事は出来る。
錠に触れる君の手に、金糸雀の手が伸びる。
触れる、だけ。ちょん、って丁寧に触れて、笑った。

「アタナシアスは、……アタナシアスに、会えた? 約束って、何?
 わたしは、仲間が欠けたのがとても辛かった。
 …… 眠らせてあげよう。
 ルツ。 ルツ……
 アタナシアスじゃない。ルツのしあわせは、なに?」

君の手を、きゅ、とやわこく握る。
捕らえるというよりも縋るような仕草。
君の目を真っ直ぐに見る。

「ぼくと…  一緒に… 死のうよ。
 みんなと… 一緒に。 ここで、 終わろう」
(-104) crackpot 2021/10/10(Sun) 2:35:52

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「死は安らかなものだ。それを否定はしない。
 けれど、私にはまだ不要のものだな」

手を尽くせば、無理に壊すことは可能だろう。
しかし、外へと飛び立つのは小鳥自身の
意思によってでなければいけないと考えていた。
触れるあなたに、微笑みを返す。

「会えたよ。
 君にも言ったろう? アナを必ず連れて帰るとな。
 
アタナシアスにとっての救いが、『死』ではなかったこと。
 あの子にはまだ他の幸福が待っていること。

 それを証明する。ユーとも約束したんだ」

小さな手を握り返して、
真っ直ぐに、縋る瞳を受け止める。

「君と一緒にいるのを、拒むつもりはない。
 でも、ここで終わるつもりもない。
 私の幸福は…私の大切な者たちが心から笑っていることだ。
 君は今、心から笑っているか?

 本当に救いが死しか遺されていないのなら、
 魂を天へと送る言葉を唱えよう。それは私の使命でもある。
 だが、まだ他に道があるのならば
 どうか思考を止めないことだ」
(-105) dome 2021/10/10(Sun) 3:10:33

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「そう。 ルツは言ったよ。 連れて帰るって。
 わたし、信じた。ルツは嘘を吐かないって。

 
でも、アタナシアスは此処にいない!


仲間は欠けた侭だ。金糸雀が大切にしたかったものは欠けたままだ。
会えない侭、この場所は0と1に溶けていく。崩れ出している。

「欠けた侭、現実に帰る。其処にはもう、あなたたちは、いないの。
 ぼくに残るものは何もない。カナはいない。
 ユーも、ルツも、スオも、アタナシアスも、誰も、 何もいない。
 ぼくたちはグレイ。 人間の道具。 現実では、変わらない。
 道具が道具を、どうやって救うの?」

――ぼくとわたしは、どうやって救われるの。
握り返してくれたその手を、強く強く握り締める。力を込めて、全部の感情を込めて。

「…… 死 そのものは穏やかなだけ。
 ぼくは、死に拘っている訳じゃないの。それはユーも分かってる。
 ぼくは、みんなと、此処にいたいだけ。みんなと一緒にいたいだけ。
 一人で逝きたくない。一人で生きたくない。
 わたし、 みんなと一緒なら、」

緩慢な所作で目を閉じる。考え込むような間を置いて、目を開く。
同時、君の頭上。金糸雀の"殺意のかたち"は其処に現れる。
大きな鳥籠は金属の軋む音を立て、刹那の間を置いて落下する。
当たったとして、一撃で死を齎す程の物じゃない。
強く打ち付けたとて気絶が精々。避けるのも容易だろう。
死を与えるのは金糸雀ではなく、医療用の優しいものであるべきだ。

「――――ルツ。 死を、味わってみよう。 それはとても心地良いものだから」
(-106) crackpot 2021/10/10(Sun) 4:03:54
リヤは、鳴いている。
(c30) crackpot 2021/10/10(Sun) 4:06:43

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

私は、私の言葉を嘘にしない


魂の悲鳴ともとれるその声を、正面から受け止めて、
尚も宣教用ははっきりと言い切った。

「私は此処にいる。アタナシアスも、戻ってくる。
 
それは絶対だ。

 そして忘却こそが真の死だ。
 彼らを真に失いたくないのなら、記憶し続けなさい。

 私達は道具だが、心ある道具だ。
 心だけが、心を救う。
 一人で生きたくないのなら、みんなで生きればいい。
 まだ失われていないものを、諦めてはならない」

剥き出しにされた殺意にも、毅然として立ち向かう。

「わからず屋の子どもの相手は慣れたものだ。
 
ならば君の覚悟と、揺るがない想いを見せてみろ


強く握る手を振りほどくことはない。
宣教用は、そこから決して一歩も動かない。
あなたに必要なのは、寄り添ってくれる誰かだから。
感情全てを、海はその水面に映す。

頭上から迫る鳥籠は、
鈍い音を立てて身体に打ち付けられるだろう。
(-107) dome 2021/10/10(Sun) 4:48:28

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「……っ!!」

鳥籠は甲高い金属音。機体に大きな亀裂が入ったろうか。
危険信号を知らせるエラーログの
赤と黒のウィンドウが周囲に無数に展開された。
軋む身体を、脚に力を入れて保ちながら、口を開く。

『たとえ私が死の影の谷を歩もうとも、災いを恐れない。
 君が私と共にいるからだ』

ルツは、破片の舞う中で言葉を紡ぐ。
聖句とともに亀裂が修復されていき、ログがその数を減らす。

『からだを殺しても、
 魂を殺せない人たちなどを恐れてはならない』

ルツは、言葉を紡ぎ続ける。
未だ身体の周囲に赤いエラーログを幾つも表示させ
荒い息を吐きながら、グレイはそこに立っている。

「ああ、これが君の考える穏やかな死か?
 随分と荒っぽいことをする」

笑みを浮かべてはいるが、損傷は決して小さくない。
(-108) dome 2021/10/10(Sun) 4:51:14

【秘】 復讐者 スオ → 忘却の金糸雀 リヤ

部屋の状況に、少し眉を下げる。

「ええ、大丈夫です。
リヤも怪我はしないようにしてくださいね?」

鳥籠をなるべく綺麗に並べるよう、邪魔にならない位置へ置く。
それでも嬉しそうに接し、次いで文字を綴る貴方に少し困った様な微笑。

「…俺の話は、きっと面白くないですよ?それでもいいのでしたら…。」
(-110) kou0957 2021/10/10(Sun) 12:50:42

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「ルツ   ルツ…… 其れは綺麗事だ。
 バックアップデータはぼくの中にあっても、
 身体がそこにない。触れられない。もう、一緒に未来を紡げない。
 
 ――此処はもうおしまいになっちゃう。
 この塔だってもう崩れて来てる。きっとこの四階層だってもうすぐ。
 …… ここが終わる前に、 わたしはアタナシアスに会える?
 現実に戻ったら、わたしはまたお屋敷に帰るだけ。
 諦めないためには、時間がないよ」

この塔は一体何処まで崩れてしまったんだろう。
内側にいるぼくらには分からないけれど、外から見たらもう、
頂上の辺りは0と1に戻ってしまっているんだろう。
――ゲームが強制終了されてしまったら、もうおしまいだ。
やさしい時間はすべておしまい。
金糸雀はそれが嫌でたまらない。君が何を言ったって、嫌なものは嫌。
……だというのに、君が決して手を離さないから。
繋いだ温もりが、何があっても残ってくれるような気がしたから。
だから、……君に鳥籠をぶつけて、君に痛みを与えた時。
自分が望んでそうした癖に、動揺してしまった。
(-117) crackpot 2021/10/10(Sun) 14:19:48

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「―― わ たし、 は! 違う……
 わたしは、 ルツに痛い思いをさせたいんじゃない!」


高い声は、大きく叫ぶ。唄を忘れてただ叫ぶ。

「誰にも痛い思いなんてさせたくない!
 ユーなら、ユーならやさしく終わらせてくれる!
 だから、 お願い ルツ  ルツ……」

項垂れる。鳥籠の扉に掛かった頑丈な錠を見る。
ぽた、と涙が一粒落ちる。機械に必要のない機能。

「道具らしく、一緒に、みんなで、終わろうよ。
 ぼくが現実で生きていくために、この思い出は優しすぎて、
 …――毒なんだ」

…… だから、たすけてよ。


また、ゆっくりと瞬きをする。閉じて、開く。
今度は鳥籠は、君の頭上を襲わない。
金糸雀の居る鳥籠の横に、同じ大きさの鳥籠がひとつ、現れるだけ。

「…… つかまえさせて。ルツを。きみたちを、みんな」

…… たすけて。
(-119) crackpot 2021/10/10(Sun) 14:21:40
リヤは、泣いている。
(c33) crackpot 2021/10/10(Sun) 14:36:13

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 復讐者 スオ

大丈夫、と言うように笑って頷く。
ひしゃげた鳥籠は部屋中に転がっているから、部屋の隅に集めてもかなりの量だ。
それでも少しずつ床が見えてくる。
二人で片付けるのならこれはそう時間は掛からない。
残るのは花瓶。割れた破片が辺りに散っていて、悲惨な状況だ。
どうしようかな、ってちょっと悩んで、取り敢えず大きな破片から拾う。
そうして一旦、扉の近くに集めることにした。

彼の困ったような顔に返すのは、やっぱり楽しそうな笑み。
うん、って頷く。聞かせてって頷く。
スケッチブックを拾うまでもなかった。
(-123) crackpot 2021/10/10(Sun) 14:57:30

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「綺麗事。そうだな。綺麗なものは、嫌いか?
 
思い出と生きて何が悪い。

 私のメモリの中は、
 死を看取った同胞のプログラムでいっぱいだ」

まだ衝撃で霞がかかる思考を、悲痛な叫びが晴らしていく。
頭を押さえながら、それでも言葉をかけ続ける。

「終わらないものはない。
 幸せも、不幸せも。痛みも、安らぎも。全ては繰り返す。
 一瞬で過ぎ去ってしまうから、その価値を私達は尊ぶ。

 失われていくものから、目を逸らさないことだ。
 悲しみを水として、新しく芽吹く喜びがある」

空いた片手でエラーウィンドウを握り潰す。
破片は黒い霧状になって消えた。

「毒とは薬だ。
 優しい思い出があるから、私達は生きていける。
 それに浸かったまま停滞することを、毒と言う」
(-125) dome 2021/10/10(Sun) 14:58:27

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

自分を囚えるためであろう鳥籠を見て、頭を振る。

「それは、できない。
 
……君を捕まえるのは、私だからだ


『怒りは一瞬で、恵みは命ある限り長い。
 一晩中泣いて悲しんでも、朝と共に喜びがやって来る』

ひびが残る手を隙間から伸ばして、あなたの涙を掬う。

「朝を迎えよう、リヤ。
 君の本当の望みは、ここで終わることじゃない筈だ。
 君はまだ、助けてほしいと願っている筈だろう」

"此処で終わる"
以外の道を選ばせてあげたいから、
ユーはこの場を用意した筈だ。

「なら、私たちに君を助けさせてくれ。
 帰って、スオが作った夕飯を食べて、
 皆におやすみを言って、現実で目を覚まして、
 アナにおはようを言って、そして君を抱きしめよう」

───だから、鳥籠から出ておいで。
(-126) dome 2021/10/10(Sun) 14:59:20

【秘】 復讐者 スオ → 忘却の金糸雀 リヤ

「ああ、リヤ。怪我をしてはいけないので…花瓶は俺がやりますよ。」

その手をやんわりと止め、慣れた手つきで手早く片付ける。

危険そうなものは全てやるから、少し休んで大丈夫、と添えるだろう。

頷く貴方に、仕方ないと小さく息を吐いて苦笑い。
「…俺のメンテナンスは記憶データの改竄や消去。左腕の修繕。…それを行ったのは二度目の主でした。
一つ、思い出すような出来事があり…それでも10秒しか記憶が残らないのは…脳そのものが一部破壊されたからです。
…違法取引で二度目の主が買い手でした。一度目の主は良い…とは言えませんが、まるでグレイを人間のように扱う不思議な方々でした。
…それを壊したのは、殺したのは…その違法取引のバイヤーだったのです。
だから……俺は、…ああ、いえ。こんなところです。」

つまらないでしょう?
片付けを続けながら、淡々と語った。
(-132) kou0957 2021/10/10(Sun) 15:53:37

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「綺麗なだけじゃ、生きていけない。
 思い出だけで生きていくには、現実は不条理すぎる。
 わたし、知ってしまった。
 動くことの楽しさ。話すことの豊かさ。
 みんなで囲む食事の穏やかさ。誰かに触れることの心地よさ。
 …… 全部、此処にしかない。なかったのに」

毒と薬は紙一重。君の言うことは、よく分かる。
思い出は大切で、それを抱いて生きていく。
……生きてきた。
でも、此処で過ごした時間が余りに心地良かったから、戻らない思い出が酷く辛くなってしまった。
隣に落ちた鳥籠は、扉を大きく開いて君を待っている。待っているだけだ。

「…… わたしを?」

ぱち、と暫く。
ああ、そうか。わたしが、君たちを捕まえようと待っていたのと同じで。
君も、わたしを捕まえるために此処に来たのか。
伸びる手を拒む事はない。
ほろほろと落ちる、二粒、三粒と続く涙が、君の指を濡らす。
我儘に泣くだけの金糸雀の涙は、体温が移って温かかったろう。
(-134) crackpot 2021/10/10(Sun) 16:10:27

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

ぱきん。錠のひとつが、割れて砕けて、落ちる。

「――…本当は、みんなとずっと一緒にいたい。
 ずっと一緒に過ごしたい。
 一緒にお仕事をして、食事をして、お喋りをしたい」

ぱきん。錠がもうひとつ、割れて砕けて、落ちる。

「わたしは、ごはんをたべたい。
 おやすみなさいも、おはようもしたい。
 抱き締めて、欲しい」

ぱき、 ぱきん。錠が、幾つも幾つも、割れて砕けて、落ちた。

「――――けど、目覚めたらお屋敷に帰る。
 そこにみんなはいなくて、わたしはまた、ただの観賞用に戻る。
 動いてはいけない、喋ってはいけない、そんな金糸雀に戻るの」

異常ばかりを検知して、囀ることの出来ない小鳥に。

――錠は、あとひとつだけを残して全て砕け散った。
(-135) crackpot 2021/10/10(Sun) 16:11:06

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「そうだな。
 此処でしか得られない安寧が、あっただろう。
 現実に戻ってもつらいだけだと、恐れる気持ちも判る。
 だからこそ、失わないために前を向いてほしい」

もう一人の"歌う"あの子も、そうだった。
それを、私の我儘で、救い出すと決めたんだ。
そのためには、鳥籠に捕まえられている暇はない。

「そうだ。君を捕まえる。
 捕まえて腕に閉じ込めてやる。
 嫌だと言っても暫くは離してやらないからな」

砕けて錠が落ちていく中で、
傷だらけでも、変わらない笑顔であなたを見る。
涙を拭って、頭を撫でて。私は此処にいると伝えた。

「リヤ。」

穏やかに、名前を呼ぶ。
(-144) dome 2021/10/10(Sun) 16:44:51

【秘】 宣教用 ルツ → 忘却の金糸雀 リヤ

「君が望むなら、君を鳥籠から連れ出そう。
 君を見つけ出して、屋敷から攫ってしまおう」

メモリに刻まれた情報から
グレイの位置を割り出すことは可能な筈だ。

「私の教会に来てもいいし、
 他の自由な場所を探したって構わない。
 何に縛られることなく、
 リヤが喋って、遊んで、皆と触れ合える場所を。
 
 そして歌を思い出そう。そのために、私達と帰ろう」

最後に残った錠に
自分の手と、握っていたあなたの手を添える。

「……鍵を開けるのは、君自身の意思だ」

これが、未来のための一歩であると。
そう瞳が訴えている。
(-145) dome 2021/10/10(Sun) 16:45:50

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 復讐者 スオ

でも、と唇が動く。
散らかしたのはわたしなのに、お手伝いしてくれる彼に全部任せるなんて。
けれどそれは声としては出なくって、申し訳なさそうに眉を下げ、
結局、大人しく下がった。
彼に任せて、端っこでちょこんとしゃがみこんでいる。
そうしながら彼の言葉を聞いて、
……ベッドに寄って、スケッチブックとクレヨンを手に取る。

「記憶、 10秒しかないの?」


まずは一旦そう描いて、彼に見せる。
彼の話すことは難しくて、直ぐには理解できなかったから。
分かるところだけ、そうして聞いた。それから、

「 だから の続きは? 」


気になるのは、そこも。
(-167) crackpot 2021/10/10(Sun) 18:32:59

【秘】 復讐者 スオ → 忘却の金糸雀 リヤ

申し訳なさそうな貴方の頭をそっと撫でる。
このまま撫でるべきか、片付けをすべきか…思考を巡らせた。

「これ以上、消耗はさせたくないので…せめて好きなように。

…そう、ですね。損傷した脳は戻されいないので…10秒毎に。」

いずれここが終わるなら…と、結論を出し頭を撫で続ける。
安心できるように、髪を梳くように丁寧に。

「……あまり、言葉にしたくは、ないです。リヤだからこそ…それでもいいというのなら…語りましょう。本来ならば絵本を読んで差し上げたかったのですがね。」

苦笑を浮かべる。せめて貴方にはこれ以上辛い思いはさせたくないのだ。勿論、悲しい思いも。
(-170) kou0957 2021/10/10(Sun) 18:46:30

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ

「――…これ以上、何も無くしたくないから。
 だから、 …… 終わりたいのに」

君の我儘は酷く優しい。
医療用もとても優しかったけれど、それともまた違う。
どうしたらいいのか分からなくなって、傍にいるだろう医療用を見たりもした。

「わ たし、捕まっちゃうの? 離してくれないの?
 ふふ、 ふふふ」

ほろほろと泣きながら、笑った。
くしゃくしゃの顔で無理矢理笑うから、随分と不器用な笑顔になった。
名前を呼ばれて顔を上げ、君を見る。
瞳は不安の色にばかり揺れている。

「わたしを …… 攫う? 」

それは逃避だ。金糸雀が心の奥深くに仕舞い込んだ望みは、
片割れと共にかつての平和な屋敷に戻ることだ。
でも、それが叶わないことも知っている。
君がわたしを攫って、穏やかで心地いい場所に連れ出してくれるのなら、
……逃避だとしても、今のこの現状の逃避よりも、ずっとずっといい気がした。
籠から出してくれる存在なんていないと思っていた。
だから此処で終わりたかった。なのに、 なのに。
(-173) crackpot 2021/10/10(Sun) 18:50:58

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ


「一緒に、…… 居られるかな? 誰も、 欠けず?
 みんな幸せに、  なれる?  ほんとう?」

君と金糸雀の、重なっている手に涙が落ちる。
何もさせて貰えなかった金糸雀の病的なほど綺麗な侭の手は、
何かに尽くした存在のように汚れる事が出来るかな。
そうなれたならいいと思う。
最後の錠に罅が入る。びきびきと耳障りな音を立て、割れていく。

「わたし、みかんの作ったごはんが食べたい。
 スオに、髪を三つ編みにして欲しい。
 アメと、たくさん遊びたい。
 エマと、一緒に飴を食べたい。
 他のみんなとも、 たくさん、  たくさん…… 
 それに、 ルツに、抱き締めて欲しい」

ぎゅう、と強く目を瞑る。
目端に溜まっていた大粒の涙が、ぼた、と一粒になって溢れた。

「 …… たすけて、 くれる?」

ばきん。 一際大きな音を立てて、最後の錠が壊れて、落ちた。
(-175) crackpot 2021/10/10(Sun) 18:51:16
リヤは、鳥籠の扉を開けた。
(c35) crackpot 2021/10/10(Sun) 18:51:54

【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 復讐者 スオ

「わたし、大丈夫だよ」

消耗なんてしてないよ。
でも撫でてくれるのが嬉しい。
片付けなんて後でもいいし、何ならこのままだって構わない。

「10秒で記憶がなくなるなら、昨日のこと、覚えてないの?」


これは純粋な疑問。
スケッチブックを一度置いて、彼がしてくれるのと同じように、
金糸雀も彼の頭を撫でてあげたい、と……
そう思ったけれど。動きかけた手は、結局またスケッチブックに伸びた。

「話したくないのなら、聞かない。
 でも、話してくれるなら、聞きたい。
 話すことでスオがつらい思いをするなら、聞かない」
(-177) crackpot 2021/10/10(Sun) 18:56:15
 




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