「！」
今はわざわざ、どんな気持ちでいるかなんて説明しないけど。
あなたの視界に入ったレヴァティの顔は、わかりやすく嬉しそうだ。
言ったこと、覚えてるのは一緒だったし。

「じゃあさ、なんだろ……」
とりあえずはまだ近づかないままで。
何を話そうか、と考えを巡らせたあと、表情を曇らせて、ひとつ質問。




きっと他の人には見えなかった、あなたの表情をもっと正確に言い表せる言葉があったのかもしれないが。
大雑把にこう表現した。

「酢は飲むと健康に良いらしいよ。まあ気休めの健康なんて船の中では意味ないけどさ。」
そんなことを言いながら男は普通にメロンソーダを選んだ。ふつう。

「そうだね、僕も君と話してない。どうか楽しい話がしたいね」
と笑う男は言うほど色んな人と話していない。

「そりゃあ、無礼講だ、好きなことをしたいだろう？
本当は動物もほしいんだけどさ、流石に生きた動物の申請は通らないってさ。人間が居るからそれでやれってこと？」
標本を見せびらかしながらため息をわざとらしくつく。別に、ここには人間の標本はないが。

「
……なんだ、まあ疲れるよねえ、流石に僕も毎回処刑してるのは大変だよ？楽しい歌があるからともかくねえ。」
疲れる、に便乗して同意するように。

「そういや君は無礼講は楽しんでる？何してるのか聞いてみても？」
男は、暇つぶしの会話には明るくないが、あなたが何に興味があるのかには興味がある。

嬉しそうな表情に、僅かに吐息が零れた。
無意識に。どうしてか、己でさえ理解しないで。

「……………。」
間をあけて答えることを、君がどう思うか分からないが。



「俺は、楽しんでたよ。…あんたが死ぬのも。
次もきっと、楽しめる。だから、嫌な気分じゃない」
君が見たものを否定するように。感じたものを否定するように。



「俺は、そういう道具人間だ。
…………なんてな、なんでそんなこと聞くんだよ」

本当にそうなのか、と疑う。

「んじゃあ……まあ、つまんねーよりいいな！」
……一瞬だけ。
またすぐ笑顔になる。
ヴェルクが、まだあまり知らない人間であったなら怒ったかもしれないし、もう少し元気があればちょっとやり返してやろう、とでも思ったかもしれないけど。

「そんなん、オマエがヤな気分になってたらなんか……ヤだからよ！
元気なほうがさ、いいじゃんか」
ヴェルクの発言を疑うこともなく。
あなたが楽しく過ごせたのなら、それだけよかったと思った。