「ああ。……この命、あんたに預けよう」

「同じ罪を背負い、共犯者となって。運命共同体となって、いつかこの世界を一緒に全て滅ぼそう。
　綺麗なものも、汚いものも、好きなものも、嫌いなものも、全て。……全て。塵すら残さず地面に返そう。あんたの手で魂ごと燃やされる、その時まで。



それが成されるのは、一体どれぐらいの未来だろうか。
10年？100年？1000年？それ以上掛かるのかもしれない。
それでも自分が楽になる事よりも、抗い続けたい。壊してしまいたい。叛逆を成したい。

楽な道で無かろうとも。ひとの道を外そうとも。
その方が『楽しく終われそうだ』と、彼は思ったのだ。

　男はカウンセリング室にいた。
　部屋の椅子を借り、テーブルに置かれていた砂の箱庭をじっと見つめている。何をするわけでもなく、ただ大人しく、視線を落とし続けていた。

　もし貴方がカウンセリング室に入ってきたのなら、「ニアか」と視線を上げて声をかけるだろう。
　無機質、無愛想、無表情。見慣れたいつも通りの姿がそこにある。

あなたの『うん』、と同時に無言で頷く。
そうして続くあなたの言葉にも頷きを落としていって、

「……、なるほど、キミは……そういった行動でも、
　囚人としての役割を…………、果たそうとしたんだな」

そして、最後の言葉には……

「嗚呼、……具合、もそうだし…………、
　キミが何を想ってずっと部屋に居るのか、気になってね」

「…………、兎は、キミという"人"に興味があるのだが、
　遊ぶ、でなく……そういった会話をする事も、
　キミのポリシー……、に反してしまうだろうか？」

首を傾げる。遊びではなく、ただの雑談のお誘い。
どうやらあなたを"知りたくて"此処まで来たようだ。

もちろん、時間が無い場合や、ポリシーに反する場合は
断ってくれて大丈夫だよ、と付け足しながら。

との瞳が交わる。
その赤はあなたを見据えたままに。

不死兎はその小さな身体で、全を喰らいつくす信念を持つ。

との瞳が交わる。
思考するあなたを見据えたままに。

不死兎はもうきっと、この世にはたったの一羽しかいない。
少女もまた、たったの独りでその信念を抱えて立っていた。

との瞳が交わる。
沈黙するあなたを見据えたままに。

不死兎はこの提案が、あなたにとっては
…………ただの足枷でしか無い事を、理解している。

だからこそ、キミの"本当"が知りたい。


▽

との瞳が交わる。
口を開いたあなたを見据えて。

「嗚呼………、」

解を聞く。

「……、そうと決まったのなら、」

あなたの解を。本当を。呪いを誓いとして飲み込んだその信念を。

「この　　はキミを歓迎しよう　　よ」

「キミが真に燃え尽きるまで、」

「――――」

そして少女は不死兎へも呪いを掲げよう。
誓いとしてそのを飲み込んで、新たな信念のとしよう。▽

ふっと赤の揺れが引く。淡い紅水晶が煌めく。

「…………、一緒だ…………、うれしい」

不死兎は……少女の顔で、声で、







ただただ"嬉しい"それだけを、あなたへと、

笑顔を、向けるのでした。

あなたの処刑が行われた後。
漂う身体は再びあなたを探し回っていた。
娯楽室へ、トレーニングルームへ、巡り巡って……

「…………、！」

カウンセリング室にいたあなたに、名を呼ばれる。

「ダビー、お疲れ様…………、身体の調子は、どうだい？」

その身体もまた、空いている椅子へ。
箱庭の近くに居るあなたを、首を傾げながら見ている事だろう。