人狼物語 三日月国


145 【R18G】星仰ぎのギムナジウム2【身内】

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【秘】 雷鳴 バット → 青金石 ラピス

「……そう」

頷く。森に毎日入る理由、飼育係を志願した理由。
尖った牙の理由から、それを突き立てた理由まで。
何もかもが一つの線で繋げられる。

「森に入って、罠を仕掛けて。
 それでも何も穫れない日が続いたら、"そう"した。
 見つからないように埋葬して、隠してた。
 それが露見したから、……」

暗に指し示されるのは、大人に連れられた神隠しの日のこと。
本当はもっと別の理由なのだろうけど、青年からすると心当たりも理解もなく。
そんな体たらくなのだから、青年に関してはエネルギーの取得は上手くいかなかったかもしれない。
どちらにせよ、何もかも今は終わった話だ。

「……怖い?」
(-19) redhaguki 2022/05/12(Thu) 7:07:17

【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット

指の先で、塞がった傷の跡をつい、となぞる。
かさぶたがその形に合わせて凹凸を伝えた。
あの時、自分はどんな感情になっただろう。

『上手く言えませんが』
『怖くはないかもしれません』
『驚きはしました』

本来は恐怖を覚えるのが正しい防衛反応なのかもしれない。 
突然のことに瞠目したのは覚えている。
実際に話を聞いた今も、恐ろしいというよりは。
これはもしかすると同情だとか、苦労を慮るような、そんな気持ちのように感じられた。

『身体が受けつけないものは』
『そういうもの、なのだと思います』
『治したいと考えるかは、また別のことなのでしょう』

克服できればそれに越したことはないのだろうけれど。
全てを否定をされることもないような。
どちらにせよ今の青年を形作る一部なのだと認識した、 
(-20) dome 2022/05/12(Thu) 11:53:34

【秘】 雷鳴 バット → 青金石 ラピス

「よくないことだって、わかってる。
 食べ物じゃない生き物は、かわいそうだ。
 でもそれ以外に、苦しいのをどうにかする方法はなくて……」

事実だけを話すように心がけても、どうしても上手くいかない。
ぽつぽつと語る言葉は次第に心情や不安を吐露するほうに至っていく。
わかってほしい、と。そう思ってしまうからなのかもしれない。
上がらない視線は時々振れるようにテーブルの上に浮いては、またカップの底に沈む。

「今はどうにかする方法を考えてくれるって。
 けれど、それ以外のことはどうしたらいいんだろう。
 自分がどういう人間か、"病気のこども"じゃなくなるのか。
 ちゃんとふつうの人みたいに、物を感じたりできるのか、……」

いつか貴方の指に牙を突き立てた時、自分の中にはどんな感情があっただろう。
それはまだ未完成の心を持つ青年にはわからない、人間的な慕情なのか。
それとも獣のような、狼のような、獲物に対するそれなのか。
答えが出る日が来るのかさえ――
(-21) redhaguki 2022/05/12(Thu) 20:48:48

【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット

『わからないものは怖いですからね』
『わかるようになれば、怖くなくなるのかも』

浮いては沈む瞳を真っ直ぐに見ていた。
未知への恐怖。
理解できないものへの恐怖。
それがそのままであるかもしれないことへの恐れ。
そういったものも存在しているのだろうか。
吐き出される不安の全てを理解してあげられなくても、理解したいとここに居る自分は確かなものだ。

『可哀想と感じる気持ちがあるなら、
 バットくんには心があるのだと思いますよ』

どうしようもなく獣に変じ切っていれば、獲物への憐憫は感じ得ないだろうから。
いつになるかわからないけれど、答えが欲しいのなら、そのいつかを目指して歩まなければならない。
それもまた事実なのだろう。

『私は』
『バットくんと一緒にその答えを考えたいです』

いつか、先生になりたい。
誰かのわからないを助けられる人になりたい。
受け入れられるのなら、そうありたかった。 
(-22) dome 2022/05/12(Thu) 22:58:02

【秘】 雷鳴 バット → 青金石 ラピス

瞼はゆっくりと瞬きをする。喉の奥、凝りになったものをのど飴が解かすように。
吐き出した息を反動にするようにようやく目を上げて、貴方の瞳を見た。
落ちかけの陽を受けたテーブルの上を這うような視線は、どこかに縋るものを求めている。

「心」
「……かわいそうだと、思えるなら」

少しだけ、ずいぶんと時間を掛けて迷いを心に留めたなら。
机の上に置かれた手にもう片方の指をかけて、迷って。
そっと、いつも指先まで隠しきっている手袋を外した。
その中から現れた肌には微かな獣毛と、鋭い爪が携えられている。
どちらも"ふつうの"人間にはありえない、まるで獣のようなそれだ。

「まだ、ずっと。僕は病気を抱えている間、答えがほんとのものかも迷うのだと思う。
 いつだって、見えるところに僕を否定するものが、あるから。
 ……少しだけ。ほんのすこしだけ。
 僕の中のなにかを、君に預けても、いい?」

いつか、貴方が自分を導いてくれるなら。
自分の中のわからないを助けてくれるなら。
受け入れられると、信じていいのだろうか。
(-23) redhaguki 2022/05/13(Fri) 7:26:07

【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット

『もちろんです』

自分にできる範囲なら、喜んで受け入れよう。
皆どこかが普通ではないこの場所で何かを見つけられたなら良い。
不安を湛えた瞳を見つめ返して、肯定する。

『一緒に迷えば、きっと気持ちも楽になります』

手袋の下から現れた獣毛と爪。
鋭い牙と合わせて、獣を想起させるものであることは間違いなかった。
けれど今の青年の一部であることもまた間違いのない事実で。
それを握ろうと、夜を映した宝石の手が伸ばされる。
無機質なようでいて、血の通った小さな手。

この両手に掴める分くらいは、青年が抱えた何かを預かれると信じていたい。
 
いつか普通を手に入れるのか。
いつか普通じゃないことを肯定できるようになるのか。
それすらも曖昧だけれど、答えと呼べるものに辿り着くために歩もうと思えた。
(-24) dome 2022/05/13(Fri) 11:23:47

【秘】 雷鳴 バット → 青金石 ラピス

互い違いの指に重ねるように、少しだけ力を加えた。
陶器のようにつるりとしたそれが、壊れてしまわないように。
いつだかもそうした指の合わせは、以前よりもほんの少しだけ確かなものになった。

「……一緒に、迷ってくれる?」

問うたけれどその答えはわかっていた、わかっていると思っていいと感じた。
投げかけられる光が柔らかい月のそれに入れ替わって、表情を変えても。
青い光に照らされる貴方の優しさが変わらないことを、
あの森の中での一件があってからもこうして言葉を交わしてくれることで、知っている。

「ずっと。答えが見つかるまで。
 ……僕と一緒に、いてほしいな」

大きさの違う手で、青い指を包み込んだ。小さくか細い指。
どんな心を抱いているのかはまだ、判然とはしないけれど。
貴方なら、己の手をとって導いてくれるような気がして。
(-25) redhaguki 2022/05/13(Fri) 20:04:55

【秘】 青金石 ラピス → 雷鳴 バット

少し前までは微かに引っ掛ける程度であったそれが、今はより確かなものになったことは少女にもきっと伝わっていただろう。
問いかけの答えも、決まってる。
脆いこの身を傷つけないようにとしてくれる青年も、同じように優しさを持っている。

──ずっと一緒です。


音にならない、吐息と唇の動きがそう紡いだ。

青い光を注ぐ月の下。
花の香りが仄かに漂うテーブルの上。
大きな手と小さな手で、これからを願う約束が交わされた。
(-26) dome 2022/05/13(Fri) 20:36:34
 




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