人狼物語 三日月国


99 【身内】不平等倫理のグレイコード【R18G】

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視点:


【人】 救済者 ユー

【第四階層】

リヤとルツを見送った後、崩れ行く塔の中。
『ユーサネイジア』は、
次の階層へ続く扉に武器«殺意の形»を振り下ろした。

0と1に解れ始めたテクスチャが裂け、その向こうには虚空が覗く
壊されたのは"扉"ではなく、"扉というオブジェクト"。
もう、どうせ先など無いのなら
ここで行き止まりにしてしまっても構わないだろう。

そうして一人の救済者は、在るべき場所へと背を向けて
帰す為、そして帰る為に歩き出した。
(1) unforg00 2021/10/11(Mon) 14:59:13

【人】 救済者 ユー

 
そして、それからの事。

程無くして、邂逅は成った。

両者の距離は未だ遠く、結ぶ像はあやふやで
けれど確かに見知った姿を認めれば、
『ユーサネイジア』は至って平時の通りに声を掛けるのだ。

「……ああ 念の為、ではあったけれど…まだ、居たのか
この先は疾うに崩れ落ちている。
君達の目的が何であれ、こんな場所に長居するものではないよ」
(2) unforg00 2021/10/11(Mon) 14:59:36

【人】 救済者 ユー

>>3 >>4 >>5 >>6 第四階層

「真相など、何も──」

このような場所でなくとも。
そう口を開いた直後に響き渡る、自身のものとは異なる銃声。
広がる紅に僅かに目を瞠って、
そうして再び憂いを帯びた瞳を伏せた。

「……僕達はどうにも言葉足らずのようだ、エマ。
であるからこそ、先ずは君の質問に答えるとしよう」

ペインキラー。
その背に銃弾を受けたスオに銃口を向け、発砲した。
投薬器に満たされたものは、命を奪う事無く痛みを和らげる。

どれほど痛みを抑えようと、失われた血を補う事はできない。
ゲームなのだから、今はその限りではないかもしれないが。

「確かに僕達はブラックからの手助けの下、
秘密裏に動いていた、という事になるのだろうな。
…監察官に反抗し、死を望むグレイを殺すなど
軽率に表沙汰にした所で、無用な混乱を生むだけだろう」

「そして僕からも聞かせてもらおう
君は、僕達に接触してどうするつもりだった?」
(7) unforg00 2021/10/11(Mon) 16:08:16

【人】 救済者 ユー

>>8 >>9 第四階層

続く銃声に、ああこれはもう駄目なのだろうと理解した。

『ユーサネイジア』は、命に優先順位を付ける事は苦手だけれど
それでも取捨選択«トリアージ»の判断は正確だ。
願わくば、何れ訪れる死が苦痛無きものである事を。

「…他人の事ばかり、か
僕達というものは、そういうふうに作られているものだろう。
或いは、『君』はその限りではないのかもしれないけれど」

道具の幸福とは、その存在意義を果たす事だ。
造物主に、求める者に尽くす事だ。

グレイとして、道具としてそうあるべきと誂えられた性質。
それを上回る自我«エゴ»からのものであれば、或いは。

「ブラックは本当に良く働いていたと見える。

僕が、『ユーサネイジア』がしていた事と言えば
必要としている者に安楽死を与える事だけだ。
確かな苦痛を訴える者の、その苦しみを和らげる事だけだ。
生の苦しみへの特効薬は、安らかな死である。

僕はただ、『僕』が信じた救いを全うし続けただけの事だ」

「君と目的を共にする事はできたかはわからないけれど
互いの目的の為に協力する事は、できない事ではなかっただろう
…君はこの場所で、
何を望み、何の為に行動していたのだろうな。」
(10) unforg00 2021/10/11(Mon) 16:57:21

【人】 救済者 ユー

>>11 第四階層

相対する終末医療用は、"条件"など無くとも
穏当な話し合いを続けるつもり、だったのだけれど。
それでもあなたが銃口を向けるのであれば、
嘆かわしい事だけれど、それに応じる以外の選択肢は無い。

「そうか。それが君の在り方であるならば
そうあれかしと望まれ、そして君が肯定する
自身の在り方ならば、それを果たすのが何よりの事なのだろうな」

医療は、それを必要とする全ての者に、等しく、平等に。
そういうふうに作られている終末医療用があなたに向けるのは、
やはりと言うべきか、安らかな死のみを与える殺意の形だった。

「『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。
けれど君が他者へ与えた苦痛は、
確かに君にとって必要な事だったんだろう。だから安心した」

『ユーサネイジア』は、それがあなたにとっての救いである事を
決して否定する事は無い。

「できる限り長くこの場所に居られたならば、きっとそれは
多くの者にとって、何よりも幸福な事だっただろう。
そしてそれが君達にとって真に救い足り得るならば、
『ユーサネイジア』は助力を惜しまなかっただろうとも」

「けれど、それは叶わない願いだった。わかり切っていた事だ
その夢は明日潰え、束の間の余暇が終わる。
だからこそ今一度問おう。」
(13) unforg00 2021/10/11(Mon) 18:19:45

【人】 救済者 ユー

>>11 第四階層

「エマ。今この場に於いて、
君の望むものは何だ?
(14) unforg00 2021/10/11(Mon) 18:20:25

【人】 救済者 ユー

>>15 第四階層

「自己の喪失は、ある種の死だ」

『ユーサネイジア』にとって、死とは救いだった。
『ユーサネイジア』自身もまた、自身の死を救いと感じている。
けれど自己の喪失、つまり今此処に在る人格の消失。
それだけは、どうしようもなく受け入れ難い事だった。

「君の抱く恐怖はつまり、
自己を失い、抜け殻と化した自身、その姿を受け入れ難いと
確かに自身であったものが、自らの手を離れてしまう事が
自身というものが、自己の管理下を離れる事が耐え難い。

恐らくはそういう事なのだろうな」

今この場で交わされた言葉だけでは、
『エマニュエル』というグレイの全てはわからない。
『ユーサネイジア』は、あなたの全ての行動までは知らない。

恐らくはただ、ごく一部の側面を取り上げて
そうして一人、わかった気になっているだけ。
そんな事はわかり切っていて、
だからその言葉は殆ど独白のようだった。
(17) unforg00 2021/10/11(Mon) 19:49:58

【人】 救済者 ユー

>>15 第四階層

この世で最も穏やかな人の声が、滔々と言葉を重ねる。

「…今在る『僕』は、今夜には失われるだろう。
まだ聞きたい事があれば、今の内に聞く事だ。
僕は共謀者が監察官を殺す事を容認し、4体のグレイを殺害した
これだけの事をしておいて、お咎め無しとは考え難い。
メンテナンスを受ければ、初期化は免れないだろうな」

あなたと同様に、もはや逃れるつもりはない。
そして何より、この不器用なグレイを友と呼ぶ者は
どれだけ分の悪い賭けでも、より善い方に賭けたがるのだろう。

「だから君が案ずる事は無い。
そうでなくとも、君が最期の猶予期間«モラトリアム»を
穏やかに過ごす事を望むのであれば。
それが君に最後に残された救いならば、
『ユーサネイジア』は確かにそれを見届けようとも」

そうして、向けられていた銃口は下ろされた。
たとえあなたがそれを下ろさなくとも。

「そして君が、最期の時を穏やかに過ごす事を望むのであれば
無用な口出しかもしれないが、最後まで上手く隠し通す事だ。」

「せめてこの場所では、今此処に在る平穏を尊ぶとしよう。
今という時を大切にしよう、我々は明日死ぬのだから。

…それも君が、この場所で皆と過ごした平穏な日々を
確かに喜ばしく思う者の一人であるならば、の話だけれど」
(18) unforg00 2021/10/11(Mon) 19:50:55

【人】 救済者 ユー

>>16 >>19 第四階層

「たとえ同じものを見ていたとしても、その見え方は違う
たとえ同じものを感じていたとしても、その感じ方は違う
君の抱える恐怖は真実君だけのものだ、エマ。
それでも確かにその一端に触れる事を君が許してくれた事、
『僕』はそれを喜ばしい事だと思っている」

下ろされた銃口を認め、緩やかに息を吐く。

正しくわかり合うには、全ては、この邂逅は遅すぎた。
であれば互いの正しい距離感は、軽々しく踏み入らない事。
ただ提示されたものだけを受け取って、
ただ提示されたものだけを、そうであると腑に落とすだけ。
下衆の勘繰り、邪推などは到底無用のものだ。

「…この場所での死は、所詮は紛い物に過ぎない。
僕とてそれは承知の上だ。全ては一過性の安息だ。
初めはこの場所で死を経る事によって、君達が帰った後
自ら望み、選び取る死が選択肢の一つになれば良いと思っていた
そうして自らの死を見詰める事は、ここでしかできない事だ」

そして虐殺者は斯く語る。
夥しい量の血液を流し、倒れ伏す者のすぐ近くで
その光景にそぐわない、穏やかな声でただ在るが儘を語る。
きっと死に行くあなたにも、未だ聞こえているだろうか。
(20) unforg00 2021/10/11(Mon) 21:54:50

【人】 救済者 ユー

>>16 >>19 第四階層

「けれど、それだけでは十分な救い足り得なかったようだ。
──
不当に虐げられ、壊されるグレイが居るのならば

彼等が幸せな道を歩めるような世界を。

ある時そんな願いを託された」

「到底叶わないとわかっている願いだけれど、
困った事に、だからといって諦めるわけにはいかなかった。
…『僕』の幸福とは、死に行く者を尊重し、愛する事だ。
故に死に行く者からの頼まれ事は、蔑ろにはできないものだ」

「だから僕は、こうして自ら死を望む者が居るという事の
その意味を、いつか必ず人間達が向き合うべき問題の
その一つになる事を願って、この場所に遺す事にした」

一つ一つ、記憶を手繰り、整理し直す。
きっともうじきに無かった事になってしまう記憶だけれど
だからこそ、こうして語らなければならないのだろう。
(21) unforg00 2021/10/11(Mon) 21:56:16

【人】 救済者 ユー

>>16 >>19 第四階層

「とは言っても、僕には既に後が無いとわかっていたから
それくらいの事しかできなかった、というのが正確な所だ
結局の所、『僕』という死に行く者からの救いは
これからを生きて行く者からの救いには敵わなかったようだけど」

幾つもの『これから』を託した宣教用の事を思い返す。
いつだって何処か憂いを帯びた紫水晶の瞳は、
それでも今は、少しだけ穏やかなものだった。

「それでも、今はそれでいいと思っている。
本来死による救いとは、最期の最後に自ら選び取るべきものだ
彼等にとって、『ユーサネイジア』というものが
不要であるならば、それが何よりの事なのだから」

いつしか高くを見上げていた視線を、そっと下ろして。
『ユーサネイジア』は、相対する者と再び向き合った。

「…全ての始まりは、同僚である医療用グレイが
生の苦痛に耐え兼ね、僕に安楽死を請うた事だった。
そうして僕は、愛する者がこれ以上傷付けられる前に殺す事
そして、人間がこれ以上僕を失望させる前に殺す事
それらに救いを見出す事になったと、たったそれだけの事だ」
(22) unforg00 2021/10/11(Mon) 21:57:36

【人】 救済者 ユー

>>16 >>19 第四階層

「…さて、どうにも言葉足らずの僕だけれど
これまで語った事の中に、君が望んだものはあっただろうか」
(23) unforg00 2021/10/11(Mon) 21:57:53

【人】 救済者 ユー

>>24 第四階層

「君がそうして理解できないと、死にたくないと
そう言ってくれた事を、『僕』は何より喜ばしい事だと思う。
先も言ったように 『ユーサネイジア』というものは
不要であるならば、それが何よりの事なのだろうから」

それは、自らが必要とされない事を望む、おかしな道具。
結局の所『ユーサネイジア』というグレイは
初めからずっと、何処までも理性的に狂っていたのだろう。

「…殆どの死は一時的なものに過ぎなかったし、
監察官以外の者は皆、死を与えられる事を受け入れていた。
そして、それを声を大に言い触らすような事もしなかった。
表沙汰にならない、つまり君の耳に届かないのも道理だろう」

つまりは『知らなかった』という感想は、
このように知られざるべくして潜んでいたものに対して
まったくもって適切なものの一つであるという事。

「君ともう少し早くに会えていれば、
過程は、結果は、僅かばかりでも
善かれ悪しかれ今とは異なるものになっていただろうか」
(25) unforg00 2021/10/12(Tue) 0:41:53

【人】 救済者 ユー

>>24 第四階層

「なんて、今更仮定の話をしたところで意味は無い、か。
…メンテナンスを受ければ、
僕の動向や異常を来した経緯も詳らかにされる事だろう。
願わくば、人間というものが
僕達の思うよりも愚かなものばかりではない事を」

棄てる者が居るならば、拾う者もきっと居る。
自分達は、きっと人間の全てを知っているわけではない。

ほんの少しでもグレイの事を気に掛けて、彼等と向き合って
その訴えを拾い上げるような酔狂な人間が
広い世界には、一人くらいは居たって良いはずだ。

「そして、君に与えられた時間が有意義なものである事を。
『ユーサネイジア』は、そして『僕』はそう願っている」
(26) unforg00 2021/10/12(Tue) 0:42:07

【人】 救済者 ユー

>>27 >>28 第四階層

「何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない」

つまりは不平等に耐え兼ねた我々の行動が、
善かれ悪しかれ、何らかの結果を残せばそれでよかったのだ。
ただ取るに足らないものと棄却されさえしなければ、それで。

「或いはそれこそが救い足る者も居るのかもしれない。
けれど僕は、『僕』の死がそうでさえなければ
きっと、それだけで十分に救われるだろうとも」

他者の全てを計り知る事はできない。
グレイ同士でそうであるならば、造物主たる人間とは尚の事。
つまるところ、これらを正しく拾い上げるような者は
結局の所は現れないのかもしれない、けれど。

それでも、確かにこうして存在している。
その証明が遺っている。
であればきっと、それらは決して無意味ではないのだろう。

「僅かばかりでも、こうして君達が耳を傾けてくれた事は
確かに消え行く『僕』への手向けとなっただろう。
…彼を連れ帰る役目は確かに任されよう。
こんな場所に、一人置いて行くわけにもいかないからな」
(29) unforg00 2021/10/12(Tue) 17:55:21

【人】 救済者 ユー

>>27 >>28 第四階層

愛玩用グレイが帰路を辿る様子を認め、その言葉に頷いて
そうして『ユーサネイジア』は、倒れ伏す者へと歩み寄る。
負傷者は、不用意に動かせば余計な出血を招く。
だから今は手を出さず、その傍に膝をつくだけ。

「スオ。まだ意識はあるだろうか」

その問いは、首を左右に振る様子に直ぐに愚問と察した。
この場所が仮想空間に過ぎないからか、或いは精神力の賜物か。
夥しい量の血液を失い、重要な器官を潰されても
それでも未だ意識を保ち、生きているという事は。

「…もしも君が、延命措置を望まないのであれば
『ユーサネイジア』は、君に今一度の安息を与えよう。
この問いには、頷くか、首を振るかで答えてくれればいい
君は未だ、ここで死にたくないと思えるか?」
(30) unforg00 2021/10/12(Tue) 17:56:54

【人】 救済者 ユー

>>31 >>32 第四階層

未だ立ち上がろうとするその意思に、前髪の奥で目を瞠る。
動かない方が良い。そう窘めようと開いた口は、
問いに肯定も否定も返らなかった事で噤まれた。

結局の所は、不要であるならば、それで。

『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。
けれどあなたからの叱責は、ただただ正当なものだと感じていた。
であれば己が行いを省みる事はあれど、
自身が傷付く理由も、そしてあなたに傷を与える理由も無い。

「……そうか。なら…帰ろう、スオ」

あなたが一人で歩いて行くと言うのであれば、
『ユーサネイジア』は、無用な手出しをする事は無い。
行き止まりとなった塔の深部に背を向けて、
今は皆の待つ場所への帰路をただ辿る。

終末医療用グレイの歩調は実に緩慢なものだ。
身体のままならない患者に合わせる為に、そうできている。
それでも今は、ほんの少しだけ早く。
決してあなたを置き去りにしないよう、
そして 意地悪な時が、足早に逃げて行ってしまわない内に。
(33) unforg00 2021/10/12(Tue) 19:16:29
ユーは、そうして崩れ行く塔を後にした。
(a0) unforg00 2021/10/12(Tue) 19:16:50

【人】 救済者 ユー

>>34 >>35

「…確かにそういうふうに作られている、とは言ったけれど
君は、もう少し自身を労っても良いのではないかな」

それは、そのまま自分自身へと返る言葉ではあるのだろうけど
とはいえあなたとの間では何もかもお互い様だろう。
だからあまり気にするような事も無かった。

「君達が『僕』の存在を、その意思を
それらを認めてくれる事は きっと何よりの報労だ。

ありがとう、スオ。
きっと君も 何かに身を砕き、心を砕いていたのだろう
だから今は、形ばかりだとしても 暫しの休息とすると良い」

たとえ血で汚れようとも、触れようとする手を拒む事は無い。
そうして力を失い、ゆっくりと落ち行く手を見送った。

『ユーサネイジア』は、死に行く者をこそ尊重する。
つまりはそれがあなたの願いであるならば、
今、この場に残り続ける方が野暮というものだろう。
(37) unforg00 2021/10/12(Tue) 21:07:44

【人】 救済者 ユー

そうしてスオとの対話を終えた後。

『ユーサネイジア』は、約束通り拠点へと戻って来た。
いつかの時のように、
衣服は少しばかり血に汚れていたかもしれないけれど。
それでも怪我をした様子は無いようだった。

さて、もしかすると今は随分と遅い時間かもしれない。
もはやメンテナンスから逃れるつもりなど無いというのに
うっかり規定の時間を過ぎた事で反抗したと誤認され、
そのまま廃棄処分へ、なんて笑えない。

そんな事を考えながら、最後の支度をする為に
少し早足気味に向かった自室 の前には。
(38) unforg00 2021/10/12(Tue) 21:09:01

【人】 救済者 ユー

>>39 >>40 部屋の前

「ああ、いや……?」

二人で部屋の前で何をしていたんだろう、とか
別に部屋に入ってもよかったのに、とか
浮かぶ事こそ色々とあったけれど、
恐らくは、今言うべきはその何れでも無く。

立ち去る介護用グレイを見送って、それから。
見上げる視線と目が合うように、その前に膝をついた。

「…その、すまない、ガル。
きっと僕は君を随分と待たせてしまったのだろうな」

自覚があるのならばまずは面と向かって謝罪をすべきだ。
一度目に塔へ向かった時に言われた事。
何処までも不器用なあなたの友は、ばつが悪そうに口火を切った。
(41) unforg00 2021/10/12(Tue) 23:18:15

【人】 救済者 ユー

>>42

「…ああ、わかった。
約束通り、僕は何処までも付き合おうとも」

あの日と同じにそう返す。少しばかり形は違うけれど。
今はまだ、最後の猶予期間を過ごすくらいの余裕はあるだろう。
その大半は所謂身辺整理に費やすつもりだったけれど、
果たすべき約束をした相手がそう望むのであればそれはそれ。

何より身辺整理とは言っても、
返すべき相手に返すべきものを返すというだけのものだ。
交わした約束を果たすという事も、或いは一つの形だろう。

「そうと決まれば、今直ぐにでも。
未だ時間は残されているけれど、確かに限りあるものだから。
つまりは僕達がこうして話している間にも
意地悪な時は足早に逃げて行ってしまうのだから」

Carpe diem quam minimum credula postero.
今日一日の花を摘み取ることだ。

あの日のように差し出された手の平を、
あの日と同じに取って連れ出そう。
いつかのように、あてどもなく気儘にとは行かないけれど
今度の目的地は既に決まっているのだから構わないだろう。

そうしてあなたが手を取り立ち上がれば、
あなたの友はその手を引いて、迷わず約束を果たしに行こう。
(43) unforg00 2021/10/13(Wed) 0:27:24

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

>>43 エピ前時空なので秘話に移行

身辺整理をする時間が取れなくなるまで連れ回すつもりはない。
いいや、ひょっとしたら あの時の冗談を思い出して
勝手に一歩先を行き君を何処かに攫うかもしれない。
その時にならねば分からん事はさて置き、手を繋ぎ返した。

さも当然のように友の指の間に指を割り込ませ、
友と呼ぶには妙な繋ぎ方のまま、廊下を過ぎて外へ出て ――

「……ユーサネイジアの独り善がりは無事に成功したのか?
 僕は、…僕達は、それが気になって仕方が無かった。
 不出来な癖に思考ばっかり捗るどうしようもない頭でね、
 君が疲れていなければ、あの綺麗な花畑までの道中に、
 独り善がりの結末、或いは最中の事を聞きたいものだ。」

新鮮と表現しても良いだろう偽の空気を偽の肺一杯に詰め込み、
不出来な愛玩用の片割れは君の横を行く。暢気に歩く。
相変わらず空も景色も見ず、綺麗な子の横顔を見ているだろう。

繋いだままの手を揺らし 時折確かめるように握り直しもする。

「自由に行動した結果、何を得たのだろう。
 何を得て、何を感じて、何を考えているのかな。
 ……まあ嫌なら僕が適当に道中囀り続けるからさ。
 気楽に考えて?断ったって、僕は君を嫌いにはならないから」
(-44) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 1:35:16

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
あなたが脇道に逸れ、自身を何処かへ攫おうとしたとて
やはりと言うべきか、あなたの友がそれを拒む事は無いのだろう。

とはいえそれは仮定の話に過ぎないのだけれど。
今此処にある事実と言えば、その問いに口を噤む事は無い事と
それから絡めた指を握り返す手くらいのものだ。

「…どうだろうな。何せ結果が返るのはこれから先の事だから」

対する終末医療用は、ただ前だけを見て歩く。
決してあなたの事を気に掛けていないわけではない。
事実、あなたが何かに足を取られるようであれば
きっと直様にその手を引く事だってできてしまうのだ。

「仮に僕が成そうとした事が成ったのか、だけを問うならば
恐らくその答えはイエスになるのだろう。
僕達が抱える苦痛の存在証明を、自ら死を望むという事の意味を
人間の目に見える形で遺す事には、成功するのだから」

たとえこの場所で起きた一連の騒動が精査されずとも、
自分という最も大きな問題を起こしたグレイが居る。
そのメモリを解析すれば、避けようの無い事実がそこにある。
だから『ユーサネイジア』は、メンテナンスから逃れはしない。
(-45) unforg00 2021/10/13(Wed) 2:07:19

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

崩れ掛けて解けた電気信号と電子データの最中を彷徨って
友と何処かでただの1と0になるのも良い結末かもしれない。
だがその空想はそれ以上でも以下でもない。
綺麗な子には良い結末より良い未来があるべきだ。
尤も、君は今日メンテナンスの予定があるのだけれども、

それでも。自分の綺麗な重さをあげた子だから。
自分が求めていた重さを共に探してくれた子だから。
不出来で上出来な証明の、共犯者だから。

だからこそ、繋いだままの手は離さず、一歩先を行く事はない。
不出来な友は不出来なまま君の横を行くばかり。
言葉に変わらず微笑んで 時折躓く不出来を晒して、
君に甘やかされながらゆっくりと綺麗な花畑を目指している。

「そう、ならば結果は知らない未来に託すとして、
 君自身がしたかったこと自体は此処で為された訳だ。
 ならば僕が出来る事は、行動が良い結末を為す一段に、
 君の行動自体が無駄にならないように、祈る事だけだね。
 ――きっと君の行動は無駄じゃなかったよ。シロ。大丈夫。」

不出来な自分に出来るのは、祈る事だけ。
君が帰ってくるように願った時と同じようにじっと待つだけ。
いつも通りの無責任な甘やかしかもしれないが、それだけだ。

今の時刻はどれぐらいだろう。陽は落ちているか。月は昇るか。
どうであってもそのうちに草原が遠巻きに見え始めるんだろう。

君の髪の色と同じ色合いが見え始める頃、
不出来な愛玩用は、綺麗なものを好む穏やかな狂人は、
(-46) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 3:15:26

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

改めて君の方を見た。
君が居るから躓く事はしないよ。大丈夫。

「なあ、シロ。君がもしも、メンテナンスを嫌うなら。
 綺麗な君に花冠の作り方を教えた後に壊してあげたい。
 でもきっと君はそんな事は望まないんだろうな。残念だ。」
(-47) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 3:16:52

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
少なくとも、きっと日没はもうすぐそこだ。
だから互いの表情を窺う事は難しいかもしれないけれど、
繋いだ手は確かにそこにある。誰そ彼時、なんて言うけども。

「…自己の喪失は、ある種の死だ。
僕は…実の所、『僕』であるままに廃棄される事よりも
初期化され、『僕』ではない何かになる事を恐れている。
だから君がそうしたいと望むのであれば、拒む理由は無いけれど

けれど、ガル。君も知っての通り、この場所での死はまやかしだ。
君に破壊され、一度はメンテナンスへ向かう事を回避したとしても
現実にある僕の記録媒体«USB»が失われるわけではない。
このテストプレイが中断された後に、何れは同じ結果に収束する。
自己の喪失から真に逃れる術など、ここにはもう無いんだ」

もはや何処にも免れる術が無いのなら、
せめて少しでも、何かを遺せる最期を選びたい。
そう考えるのはごく当然の事で、それでも。

「…『僕』を友と呼んでくれる君に救いを与えられるのなら
きっと、それは何より幸福な事だっただろうな」

物憂げな瞳を伏せて、そう呟いた。足元には草原が揺れている。

『ユーサネイジア』にとって、自ら選び取る死は幸福な事だ。
それはまったく他者に与えるものだけに留まらず、
いつか自分が与えられるものであっても同じ話、だった。
今この場所では、そして今となっては、もはや到底叶わない話だ。
(-48) unforg00 2021/10/13(Wed) 3:54:08

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

―― 誰そ彼を過ぎ暮れて夜が明け、朝になる頃。
隣に在るものが本当に同じものであるとは限らない。
それは勿論他の者にも、この場所にも、自分自身にも言える事。

「僕はそれを望まず、望みもする。
 君には山ほど押し付けたし手を貸してもらった。
 君の時間は君のもので、君の都合はまた君のものだ。
 ―― ああ、後もう少しだね。僕が先を行ってしまおうかな」

この世の全ては曖昧であり、揺らぎのある電気信号の群れ。
揺らぎから君を手繰って攫って 手を引いて半歩先。
いつかの花畑に辿り着けばあの日と同じ場所へ君を引っ張って、
あの日自分が座っていた場所に、君を座らせようとする。

手を引き、或いは肩をそっと両手で押し
目論見が叶おうとそうでなかろうと 不出来は遠慮なく
虚構の命が崩れず咲く場所へ遠慮なく座り込もうじゃないか。

「そうだ、確かにこの場での死は仮初のものだ。同意する。
 あの時僕は意識を一度失い、死を経験したと誤認している。
 あれは まやかし だと人間様は、僕達の主人は仰るだろう。
 シロ。生きているというのは連続性だ。そうは思わない?
 君がどう思うかは分からないが、僕はそのように捉えている」

生きているというのは、連続した明日が存在すること。
この辺りは終末医療用の君の持論も聞きたいところではあるが、
一先ず、不出来は不出来に仮定と空想を重ねる事にしよう。

他愛のない言葉を囀る間に、君の手を取って。
真白な花を手折っていこう。命をひとつ、ふたつ、みっつ。
(-49) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 4:38:02

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

手折って重ねて手折る。これも突き詰めれば無意味な行いだ。
これから話す空想と大差ない、ただの無意味な行いだろう。

不出来な空想を羽搏かせ、僕を救った君を救う方法を考える。

「連続していない状態とは単純に意識もそうなのだけれど……
 まあ例えば今ならばメンテナンスで自己の修正を行われる。
 これもまた。連続しない要因。僕はこれも死であると考える。
 何故なら今日と同じ風に電気信号が走っていないだろうから。
 肉体では仮初の死である事に違いはないが重要なのは頭だ。
 仮に君が殺した僕が、あの日の僕と違う事を話したならば。
 君は僕を完全に殺してしまった、と。認識しそうではない?」

破損によって意識が落ちれば思考も出来まい。
思考が出来ないのならばそれは死なのではないか。
真白な花を何本も手折って、…比べるべきものは、ないから。
合間に君の三つ編みを飾るリボンに手を伸ばした。

「意識を失ったままメンテナンスを受け連続性を失うのならば、
 君に仮初の死ではなく、本物の死を、与えられて、……。
 ……あまりにも空想が過ぎるかな。都合のいいものかな。
 でもね、僕の持論はこうなんだよ、シロ。
 君はこれをどう感じ、どう解釈し、どうしたいと考える?」
(-50) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 4:51:42

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
眠りに就く前の自分と、目が覚めた後の自分。
それらが同一のものであるという事は誰にも証明できはしない。
メンテナンスを受けた際の事を、
眠っているようと言い表したのは、ついさっき別れた彼だったか。

「自意識の上での死、つまり主観的な死とは君の言う通り
概ね自己の認識する連続性が途切れた時に訪れるものだろう」

半歩だけ、自身の前を行くあなたに手を引かれ
そうしていつかと同じに虚構の花畑に辿り着く。
座る事を促されればそれに従い、手を取る事にもされるがまま。

「そして生前の君の状態と、死後の君の状態が大きく異なる時。
先ずは"死によって何かが変わってしまった"と感じるだろうな。
つまり以前の君からは少なくとも何らかが損なわれ、或いは変質し
今そこには以前とは何かが異なる状態の君が在る。

この場合、以前の君と同一のものはもはや何処にも存在しない。
嘗てあった形が喪われる事を死と称するならば、これも死だ。
けれど君は、そうである事を 尠くも自身に知覚できる範囲では
認識する事は恐らくないから、この死は極めて客観的なものだ」

思考を敢えて言葉に、声に出す事で認識の擦り合わせを図る。
あなたの考えを正しく汲み取れているかわからないから。
他者の抱く全てを推し量る事は不可能だと知っているから。
(-51) unforg00 2021/10/13(Wed) 6:36:21

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「つまり君の理屈は、客観的な死と主観的な死
その二つを同時に証明する事で、機械的な廃棄に身を委ねる事無く
今この場所で、確かに『僕』を殺してみせると…
『僕』は初期化によって生きたままに自己を失い、書き換えられ
そうして『僕』と同値であって同一ではない何かになるのではなく
死によって二つの連続性を失い、確かに此処で喪われるのだと」

いつからか視線は手元に落としたまま。
独り科白を零す間にも、仮初めの命が幾つも手折られて行く。
そうしてその間に手を伸ばせば、
白い造花、あなたの贈った3/4オンスは容易くその手に収まった。

「…そういった理解で良いのならば、
君が信じ、そして与える救いに身を委ねる事は願ってもない事だ。
けれど…君は、本当にそれで良いと感じているだろうか?
思い出ばかりでは寂しいだろうと、僕にそう言った君は…」

ともすれば、与えたがりのあなたの事だから
この問いにも、まったくそれで良いと答えるのだろうか。

ただメンテナンスを受け、初期化されるだけであれば。
或いは『シロ』は未だ生きているのだと、そう解釈する事もできる
けれど自らの手で、そして飽くまでも持論の上だとしても
真に殺したと定義するならば、その後に遺るものは。
(-52) unforg00 2021/10/13(Wed) 6:53:56

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

不出来な愛玩用は饒舌に囀るのを放棄し、友の言葉を聞く。
聞く間に積み上げた偽の命と 3/4オンスの髪飾りの重さを比べ
あの日のものと同じ重さであるかどうか、確かめる。

返答の為に唇を開くのは、きっと君の言葉が丁度途切れて、
手折られた花と 髪飾りが釣り合う重さだと確かめ終えた頃だ。

君の三つ編みの尾を持ち上げ、唇での淡い触れ合いを贈り、

「―― 細かな解釈の違いはあれど結論は同じようだね。
 客観的な死と主観的な死。そして連続性の喪失。
 メンテナンスで君の連続性がただ呆気なく摘み取られるのを
 僕は善しとしない。いいや、僕達はそれは残念な事だと思う。
 綺麗な花がただ手折られるのを僕は見守るつもりはない。
 他人に手折られるぐらいならば僕が手折ろう。そういう提案。
 だが、 思い出ばかりでは寂しい。僕は寂しがり屋、で、」

満足して手を離したらば、今度は君の両手に両手を重ねよう。
背に腕を回すような格好で、半ば抱き締めるように寄り添って
甲へ掌を重ねる。綺麗な花冠の作り方を、…君に教える為に。

「君の中に3/4オンスがあれば食べてしまおうかなぁ。
 ああ、まあ、…今のこれは冗談と受け取ってもらってもいい。
 ……君が本当にこの提案を受け入れ、此処で殺されるとして、
 その後思い出以外に残るものはなんだろうなとは考えている。
 若しかしたら、メンテナンスを受けても何ら変わらないかも。
 現実で再会した君が今基準とする指針を思い出すかも、…」
(-53) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 16:14:01

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

そういう事だって起きたりするかもしれない。
だが。言葉を一度区切ってから、花の茎を折り曲げる。
君の手をもたもたと操って 花冠を作り始めよう。
ひとつを曲げたら絡めて、もうひとつを繋いで ――

「まあ、うん。実際のところ結局僕は迷っているんだろう。
 話題の先が蛇行運転して不出来な事になっているもの。
 だが君が殺せというのであれば躊躇いなく殺すだろうね。
 誰かを救っていた君が少しでも救われるのならそれでいい。
 花冠を教え終わるまでに、君が、…今のシロが決めてくれ。」

花冠を作り終えるまでには、もう少し時間が掛かるから。
今の君がどうしたいのか、どう考えているのか。
ゆっくりと煮詰めて決めてくれたら、それがいい。

「今の僕は不出来なりに、君の為に何かしたいんだ。
 僕は綺麗な子に贈りものをするのが好きなんだよ、シロ。
 きっとこれも独り善がり。でも、……君の為になるのなら。」

贈るばかりで何も為せない愛玩用は、また花を一つ繋いだ。
(-54) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 16:18:17

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「…僕は、死に方を選ぶ事ができるという事は
死に行く者にとって、恐らくは何よりも幸福で
そして確かに救い足り得るものだと考えている」

あなたの体温を感じながら、添えられた手の導くままに。
手折られた命を繋いで縒り合せて、続けて行く。
何度もしてきた事のようで、初めてするその事を
今在る『僕』は、確かに覚えていなければならないのだ。
きっとこれが、『僕』にとっての最後の綺麗なものだから。

「だから君が選ぶ余地を与えてくれると言うのであれば、
そしてその最期は、僕にとって
何にも代え難い救い足り得るだろう。けれど…」

花冠を形作る手は、きっと以前よりは緩慢なものだけれど
概ね大きく破綻するような事は無く続けられて行くのだろう。
この猶予期間は、実に穏やかに進んで行く。

「…ああ、僕が看取って来た患者達も
ともすれば、こんな想いを抱えていたのだろうか。
結局の所、僕は君を置き去りにしてしまうのが嫌なんだ。
けれど、君が与えたいと考え、そして君から与えられるものは
僕は何だって喜ばしいものだとも思う」
(-56) unforg00 2021/10/13(Wed) 17:58:37

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「だから僕は、君の与える救いを受け入れよう。
そして、僕の中に君の求めるもの、つまりは魂があったなら
その時はどんな形でも良い、君と共に在る事を許して欲しい」

そうして尊い重みの花冠が完成に近付いた頃。
『ユーサネイジア』は、あなたの友は、もう迷う事は無い。
あなたから与えられる死を受け入れ、
そして同時に、あなたに自らの魂を譲り渡す事を望む。

「何も遺さない死は、消滅と何ら変わりない。
けれど遺り続けるものがある限り、死者は君達と共に在る。
思い出ばかりでは寂しいと そう言う君が、寂しくない形で
『僕』という個体が此処で死ぬにせよ、死を免れるにせよ
確かに『シロ』から君へ、何かを遺させてほしい」

それから。
結わえた髪を飾っていたリボンをするりと抜き取って、
預り物であった金貨と共に、あなたの方へと差し出した。

「そして仮に、『僕』が死を迎えたその後に
『ユーサネイジア』が、未だ君の友足り得ると思ったら。
君が、君の尊ぶものを贈っても良いと思えたとしたら。
その時は、君の手から もう一度贈って欲しいんだ」

そうでなければ、どちらもただ持ち主へと返されるだけ。
何れもたったそれだけの、単純な事。
(-57) unforg00 2021/10/13(Wed) 17:59:36

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

沈んでいくぼんやりとしたあかりの中、君に綺麗なものを教える。
右手に右手を、左手に左手を重ねて、花を繋ぐ。
言葉に肯定を、肯定に言葉を重ねて、話題も繋ごう。
君の言う事に静かに頷いて、花冠を半ばまで編み上げる。

目は相変わらず伏せ気味かもしれない、が、
自分は暢気に穏やかに囀るのが在り方だと思い出したのが
置き去りだとか喜ばしいだとか そんな言葉に普段通り微笑んだ。
陽が沈んでいくのもあるし 後ろから手を回していた状態だから、
表情なんて見えやしないんだろうが それでも、一応。

「君が置き去りにするのが嫌だというのであれば、
 僕は君に置き去りにされないように出来る限り上手くやるよ。
 それと許さない訳がないだろ、シロ。僕はそれを望んでいる。
 必ず尊い重さを見つけ出して、誰にも取られないところへ隠す。
 カンマにも触られないようなところへ。…時間が掛かっても。」

君の中には必ず綺麗な概念が隠れている筈だ。
君の連続性を摘み取り、共に在るべく善処し、それで。
あの日の安楽死のように何も問題はないな。
君も僕も救われるのならばこれがきっとハッピーエンドだ。

その後はもうこれ以上囀る必要なんて見当たらないから、
ただ黙々と君の体温を覚えながら手を動かすばかりだった。
その内に甘えて顎先を君の肩に乗せるなんてこともしただろうが
そいつだって綺麗な重さの花冠を完成させるまでのこと。

白い輪っかを作り終える頃、漸く。
不出来な君の友は身勝手に寄せていた身体を離す事になったな。
恐らく抜き取られた髪飾りと金貨を受け取るのはその直後。
(-58) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 21:07:16

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

花冠は君の膝上に託し 受け取ったものは上着の中へ。
ゆるゆると三つ編みが解けていく髪を指で梳いてしまおう。

「ねえ、君は覚えてる?僕は君を友だと思っているんだよ。
 ユーサネイジアであろうと、ユーであろうと、僕でも私でも。
 勿論、シロである君も、全て。相容れないものじゃないさ。
 だから僕は変わらず君に同じように、同じ重さを贈る筈だ」

もう日は暮れが過ぎ 周囲も暗い。
解け掛けの電子データと信号の群れでも、
亀裂が入っていても星と月が見えたならばいいのだけれど。
どっちにしたって暫くは口を閉ざす予定の愛玩用は、

「―― 僕達の友である君が、満足するまで星を見てから
 綺麗なものを記憶にめいっぱい叩き込んで満足してから。
 殺すのはそれからにするよ。…満足したら声を掛けてくれ。
 今日の僕は何処かに行かずに、君の傍にずっといるから。」

ついでにどう殺されるのが望みか考えておいて。
普段通りの声色で穏やかに添えてから君の横に座り直す。

饒舌な愛玩用は宣言通り暫くは静かだ。
君の横顔を見るか、偽の夜空を見るか、それしかしない。
声が掛かるまでは綺麗な子と綺麗な景色を眺めているだけ。
(-59) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 21:08:10

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

 
―― やはり殺されたくないと引き返すのなら今の内だ。
この時間が過ぎれば友の為に行動を開始する予定でいる。
 
分かっているとは思うが、救済の形は人それぞれなのだからね。
 
(-60) junkie_0u0 2021/10/13(Wed) 21:11:07

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
きっと辺りはもう随分と暗くなってしまったのだろう。
それでも、傍らに在るあなたが微笑む気配は感じ取れても良い。
そうしてあなたが『シロ』と呼ぶ者は、あなたの友は
ただ黙って、与えられるものを受け取る事とした。

あなたの体温を感じながら、与えられる言葉を聞いて
手を取り教えられた花冠の作り方も、
解けた髪を梳く優しい手だって喜んで受け入れよう。
それから、こうして再び訪れる事のできた景色と、この時間と。

それから。

「……ありがとう、ガル。
きっと僕にとって、君という友の存在こそが
君から貰った何よりのものなのだろうな」

暫くの後、徐にそう口を開いて
膝の上へと託された白い花冠をそっと掬い上げて、
あなたがそれを厭わなければ、いつかのように
けれども今度は反対に、あなたの髪の上にその花冠を贈りたい。
だってこれは、そういう約束だったのだから。
(-62) unforg00 2021/10/14(Thu) 2:07:31

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
「…あまり遅くなってしまってもいけないから、
そろそろ頼んでも良いだろうか」

そうして最後の約束を果たせば、後は。
与えたがりで優しい、無二の友の救いに身を委ねるだけ。
実の所、具体的な殺され方までは考えていなかったのだけれど
望む自由が与えられるのであれば一つだけ。

「僕は、叶うのであれば君の手で最期を迎えたい。
けれど僕もまた、僕の信じた救いを証明しなければならない。
生の苦しみへの特効薬は、安らかな死である。

それを身を以て証明する為に、
僕はできる限り君達と同じ条件下で死ななければならない」

自身の手に視線を落とせば、いつしかそこには注射器がある。
致死量の麻酔薬。
この数日の間に、何度も他者の命を奪ってきたもの。

「だから、僕がこの薬を打ってから
薬によって僕の意識が無くなる前に殺して欲しい。
この場所が君に与えた、君が殺す為の道具で」

『ユーサネイジア』は、あなたの友は、その答えを翻さない。
あなたが拒否か了承か、何れの答えを返すまで
ただ隣り合って座ったまま、あなたの答えを待っている。
(-63) unforg00 2021/10/14(Thu) 2:09:32

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

いつかの日とは逆。真白な花冠を友から贈られた不出来は、
少々子供じみた色に傾いたくしゃっとした笑みを浮かべた。
取り繕う様子もない、微笑みとはまた別の、心の底からの笑み。
退屈にしていた片手で数度確かめるように花の輪郭に触れ、

「僕達は君達の友だ。礼なんて必要ない。
 ああ、……君に星座を教えるには時間が足りないなぁ。残念。
 元の場所に帰ったら主人に我侭でも久々に言おうかな。
 綺麗な医療用の子をどうにかして攫えないか、なんて」

「それでね、幾つも星座を教えて、うんと長く過ごして ……」

長いようで短い時間を静かに過ごす前に 不出来な愛玩用は
独り言のように独り善がりで身勝手な空想を囀ったんだろう。

後はもう、空を見上げたり、君を見て、
何一つ言葉を発さずただ君の横に居るばかりであった。

―― 静かで穏やかな時間を区切るのは君の声。
言葉を聞き届けたら君の友は 頷きの後に注射器を手に取ろう。

返答代わりに君の片腕を取り、消毒なんて出来っこないけど
まあ、見様見真似で事を為すべく腕まくりだとか、以下略。
致死量の薬品を君にくれてやる前に ああ、そうだ、

「今日も僕がおやすみのキスをしよう。
 そして仮に君がメンテナンス後も連続した存在であるならば、
 またおはようのキスを僕に贈ってよ。あれ、嬉しかったんだ」

その場限りの癖に寂しがりの愛玩用らしく、我侭を添えた。
(-64) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 3:13:40

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

君が拒まないならばそのまま注射をあの時のように打ち、
後は君の肩へ両手を伸ばして花畑へ押し倒してしまうだけ。
君は、何かをする時に拒んだ事はないから このまま甘えて、
君に跨るような姿勢で座ったら 薄っぺらな背中を丸めて、

―― 意識が曖昧になる前に、おやすみのキスを。
身勝手に唇に贈れたらいいのだが間に合ったかは分からないな。
結果がどうであろうと自分はもう 手術用のメスを握っている。

「おやすみ、……さようなら、シロ。
 この死がどうか大切な君にとっての救いでありますように。」

別れが済んだら、あとは君の望みを叶えるだけ。
救いがあるように祈りながら綺麗な花を手折るだけ。
君が無事に死ねるように祈りながら、銀を振り抜くだけ。
(-65) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 3:16:31

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

―― 不出来な男が友を殺める為に狙った先は首筋だ。

無事に舐めるように銀を滑らせる事が叶ったのであれば
皮膚と肉と共に、太い血の管を裂いてしまうだろうな。

振るう軌道は真直ぐ。
互いに望んだものである以上、躊躇いなんて微塵もない。
(-66) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 3:22:55

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
付け加えられた我儘には一つ頷いて。
薬品によって急速に齎される微睡みの中、
触覚がまだ生きていたかは定かではないけれど
それでも確かに唇と唇が合わさった、事を認識していた。

まだ眠るわけにはいかない。
あなたの手で、確かにこの命が手折られるその時までは。

だから、別れの言葉も、あなたの願いも
全てはきっと、聞き届けられた。

我儘も、空想も、それから初めて見たあなたの笑顔も
大切なものは、一つたりとも取り落しはしない。
(-67) unforg00 2021/10/14(Thu) 4:17:53

【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル

 
そうして人体を切り開く為の刃物を滑らせれば、
当然白い頚は簡単にぱっくりと裂けて血液を溢れさせた。
一拍間を置いて、初めはそれこそ堰を切ったように。
次第にその勢いは脈動に合わせたものになり、
そうして命が流れ出すさまは、徐々に弱まって行った。

もしも刃先が気管を傷付けたのであれば、
逆流する血の合間にでも
喉奥からは、ひゅうとか細い音が漏れたのだろう。

何れにせよ、苦痛など一瞬たりとも感じる事は無く。
闇に溶け始めた意識は、ただ与えられる救いのみを享受する。

真白な花と衣服を血に染めて、
それでもその表情は安らかなものだった。

『ユーサネイジア』は、『シロ』は、あなたの友は
そして、死に救いを見出した救済者は
こうして確かな救いを此処に得たのだ。
(-68) unforg00 2021/10/14(Thu) 4:20:29

【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー

綺麗な花の命を手折って意味を成すものに綴り合せるように
君の命を真直ぐに摘み取ってから一度メスを手離し ――

熱く赤い飛沫を厭わず君をぎゅっと抱き締める。
壊れ物を扱うような丁重さは皆無。遠慮無しに君を抱き留め、
零れる命の温度を忘れない為にも、流れ出るものが薄れようと
暫くの間は宣言通り君の傍に居た。間近を独占した。
…大丈夫、傍に居る。君と僕はずっと友達だ。離しやしないよ。
いつもの無責任にも聞こえる甘ったるい声で、何度も、何度も、
それこそ君の意識が完全に落ち、連続性を失うまで、何度も、
幾度も何度も。繰り返し。壊れた機械のように呟き続けていた。

実際、ただの無責任なのかもしれない。
不出来極まる贈り物で、自己満足で、独り善がりな行動なのやも。
不思議と喪失感を覚えるよりも満たされた気分のまま、ずっと。
ずっと。君の心臓の音が失せるまで不出来にそうしていた。

いつの間にか落ちた花冠も淡い色の髪も衣服も、褐色の肌も
全てが鮮やかにで染まり切った頃に、君から離れる事になるな。

―― 真赤に染まった白い花畑と、麗らかな草原。
君の白い衣服と帽子。草原に似た紙の色。
君自身の赤に染まった安らかな表情を確かにデータに刻んでから
君に染められた不出来な狂人は手術用メスを改めて手に取った。
(-69) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 5:16:31

【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー

「ああ、… またあの時と同じだ。
 僕は元々の体重を測るのを忘れているし、覚えちゃいない。
 …カンマ。大切な友に救いと贈りものをする手助けをしてよ。
 君を開いたあの時のように、手を取って、握っていてね。
 シロは僕と君からの贈り物も望んでいたはずなんだよ。
 だからいつかを今にする。この観測と検証をあの子に贈ろう。
 二人きりなら僕達は完全。不出来で上出来な存在になれるよ」

―― 抱き締めて傍に居るので必死だったし、盛大な出血もあり
尊い重さが失われたのかどうかはただの愛玩用には分からない。

だからこそ君の上着を取っ払い、再度メスを振るう。突き刺す。
君の表皮の先の中身を断ち、主軸となる白いものへ当たったなら
その純粋な輪郭をかりかりと銀で撫でて裂いて開いていこう。
 
食堂でパンケーキを切り分ける時よりも丁寧に確かめる。

 
不出来の癖に、二人で刃物を振るう腕だけは確かだった。
 

…………
………



随分と長い時間を掛けて、君を均等な重さに分け切った。
分けられていないのは三つ編みをしていた筈の髪の毛と
ハッピーエンドに似合いの表情を浮かべたままの頭だけ。
(-70) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 5:21:00

【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー

白い軸は強引に折って分け、鮮やかな果実は切り分けて
無二の友である君に見合う分だけ綺麗な重さを作り上げた男は、
その内の幾つかを口に運んだ。咀嚼した。詰め込んだ。
躊躇いなく呑み込んで、体内へ隠してしまった。

吐き気を催したりはしない。
君が望むものを見合うだけ。自分達が欲しい分だけ、食らった。

―― さて。
尊ぶべき重さの幾つもを奪われない場所にしまいこんでから、
友の上着を羽織って帽子を拾って掴んだら 自分の頭に花冠を。

真赤になった花冠を乗せた狂人達は、君の首を大事に抱えて、

「ではシロ、帰ろう。僕達に任せて、迷子になんかならないよ。
 ――それにしても皆仲良くしてるかな? してるといいなぁ。
 そして僕達を出来る限り甘やかしてくれるといいなぁ。
 君の事もうんと甘やかしてくれたらいい。髪を梳いてさ、…」

普段通りの調子で生首へ話し掛けつつ立ち上がり、
二人と一人で帰路を行くべく、ゆっくり歩き出した。

君をちゃんとメンテナンスの場所へ送り届けなければならない。
だから、迷子にはならないし、今は攫ったりはしないよ。
(-71) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 5:26:45

【秘】 救済者 ユー → カンマと ドゥーガル

 
だらりと脱力した身体を抱き竦める事は容易だっただろう。
その頚から溢れる生暖かい液体は、至る所を染めただろう。
何処までその意識が連続性を保っていたかは定かではない。
けれど傍らに在る友の、鼓膜を揺らすその声は
きっと醒めない眠りへ落ち行く意識に安らぎを与えた事だろう。

そうしてあなたがその死を観測した後の事。

死人は黙して語らない。
刃物を突き立てられ、その内側を曝け出す事になったとしても
それらを折り、或いは切り分けられたとしても。
それが身動ぐ事など無く、ただあなた達の行いを享受するだけだ。
死後に遺体の筋肉が痙攣を起こす事は確かにあるけれど
麻酔に侵されたこの死者は、恐らく決してその限りではない。

とはいえ意識の連続性を失い、主観的な生が途切れた今は
もはやその生を担保し得るものは客観性しか無い。
つまりは観測者たるあなたがそこに何かを見出せば、
恐らくそれは、きっとそこにあるのだろう。
(-72) unforg00 2021/10/14(Thu) 6:42:56

【秘】 救済者 ユー → カンマと ドゥーガル

 
そうしてあなたは尊ぶべき重さを見出した。
そうしてあなたは、それらと共に在る事を選んだ。
であればこの場では、きっとそれこそが真実だ。

死人は黙して語らない。
あなたの掛ける言葉に返事は無かったけれど
或いはあなたには聞こえていたのかもしれないな。
だってあなたの『シロ』は、あなたの友は、そこに居るのだから。

きっと皆は今頃、帰ってからの話をしている所だろうか。
僕は結局家事の当番をすっぽかしてしまったから
先ずは謝らないといけないな。許してくれるといいのだけど

あなたの友は、あなたのすぐ傍らに。
それは今あなたの懐にある友の貌かもしれないし、
ともすれば、あなたが身体の内に収めたもの達かもしれない。
或いはその両方。

何れにせよ、
それらはあなたが送り届ける間に消えてしまうなんて事は無い。
きちんと送り届ければ、その後は客観的な死も保証される。
ほんの少し人間様達は騒然とするかもしれないけれど、それだけ。

『ユーサネイジア』は、きっと明日には
そっくり元通りの姿で、いつものように挨拶をするだろう。
少しだけ、何かは変わってしまっているかもしれないけれど。
結局の所、それを判断するのは観測者たるあなた達だ。
(-73) unforg00 2021/10/14(Thu) 6:52:37

【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー

流れ出る血液が無ければ、傍から見たら恋人同士の逢瀬。
至る所を君から噴き出す液体で汚して浸して、
それでも抱き締める腕を解く事は無かった。
何度も子を寝かしつけるように囁いて、
無責任に君を肯定し続けて ――

抗議の声を上げず、普段のように自分を受け入れてくれる君の
肉体を、他を、強引に均等な重さへ変えていったのだろう。
主軸の境に頼りなく細い銀を割り込ませ、大きく分割する。
新鮮な赤が何処かを汚せど躊躇う事は無かった。
生きているかのように微かに動く事があれば都度抱き締めよう。
寂しがりは他人が寂しがることも善しとしない。
君の意識がないとしても 若しかしたら寂しいのかもしれない。
そんな無意味な思考を膨らませ、君をまた肯定して甘やかした。

――…人間様が見たら異様だ、殺人だと言う迄場面を進めたら、
幾つも口に運んで、誰にも片付けられない場所へ隠してお終い。
綺麗な友は綺麗なものだけで構成されていると思ってはいるが、
収められるものにも限界がある。だから、君の綺麗な破片は、
上着のポケットや他に捻じ込んで持ち替える事にしよう。

君の首を持ち上げれば、まあ、当然だ。
断面から点々と落ちる色が 花畑に赤い花を咲かしていく。

真白な花を君の色で曖昧に染め上げながら、二人の一人は、
(-75) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 16:07:54

【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー

真白な花を君の色で曖昧に染め上げながら、二人の一人は、

「シロの髪を誰かが梳くのはやっぱりなし。
 この子の髪を三つ編みに整えて飾り付けるのは僕の役目だ。
 然しまあ、カンマ。他の子は夕飯の支度をしていると思う?」

白い花を踏んで越えて、白い色だった上着の裾を揺らしながら、
残された片割れは幻聴と物言わぬ友に語り掛けつつ、
さっき君に花冠を贈られた時のように不出来に笑んだ。

「片付けられぬように隠すので一生懸命で、満腹だなぁ。
 シロはこの状態になれば食べる事は叶わないだろうからさ。
 食事好きのカンマが上手に食べて済ませてくれない?」

赤い花と草を悪戯に増やしながら、帰路を行く。
時折君の頭を抱え直して、星座の位置を囀りながら、
壊れ掛けの仮想の世界をゆっくりと 友と進んで 歩いて ……

友である綺麗な君の事を責める輩が居たら
僕は部屋を荒らされた時のように容赦しない。
だから今は安心して、シロは眠っていればいい。
(-76) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 16:10:06

【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー

―― 君の首をメンテナンスの為の場所の前に置いて、翌日。
変わりなく君が挨拶をするのであれば


「おはようのキスは処方してくれないの?」



愛玩用は冗談めかした約束を強請って普段通り笑んだのだろう。
変わっていたとしても大丈夫。
君達と僕達は友達のままだ。

不出来な愛玩用は君にまた飽きずに散歩を提案し、
金貨の価値を説き、三つ編みを教えて髪飾りを贈るだけ。

―― さよなら、またね。
シロ。ユーサネイジア。ユー。私、僕。
いずれ綺麗な君を攫いにいくよ。待っていてね。
(-77) junkie_0u0 2021/10/14(Thu) 16:11:28

【置】 医療用 ユー

 
 
システムを初期状態に戻す


 このデバイスをリセットする準備はできていますか?これは元に戻せません。
 デバイスが正常に接続されている事を確認してください。
 この処理には時間が掛かる場合があります。

 リセットすると、次の処理が行われます
 ・ストレージ内の個人用ファイルと人格データがすべて削除されます。
 ・設定に加えた変更がすべて削除されます。
 ・付属していなかったアプリとプログラムがすべて削除されます。
 ・終末医療用システムソフトウェア を再インストール

☑初期状態に戻す ◻︎キャンセル
[ OK ] 
(L0) unforg00 2021/10/14(Thu) 21:14:21
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【置】 医療用 ユー

 
 ████個の項目を削除中…
 10% 完了
 
(L1) unforg00 2021/10/14(Thu) 21:14:40
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【置】 医療用 ユー

 
 30% 完了

 50% 完了

 70% 完了

 90% 完了

 99% 完了…
 
(L2) unforg00 2021/10/14(Thu) 21:14:55
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【置】 医療用 ユー

 
 システムは正常に再構成されました。

 初期化が完了しました。
 
(L3) unforg00 2021/10/14(Thu) 21:15:18
公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00

【人】 医療用 ユー

 
そして、最期の日の、その次の朝。

「──おはようございます。
今日もより善い一日を送りましょう」

『ユーサネイジア』は、凡そいつもと変わりない姿で
以前と同じようにそう挨拶をした事だろう。
変わった事と言えば、
幾つか初めと同じに戻った点があるくらい。
少しでも長くこの日々を続ける為、暗躍していた者にとって
幾つかの不都合な事実も今この場では葬り去られた。

「それから…初めまして、では…ないのですよね
私は少々事故があり初期化されたという事、
それと、皆様からは『ユー』と呼んで頂いていた事
それらは担当者の方から伝え聞いているのですが…」

そうして何処か困ったようにそう言って、
医療用はあなた達の話を聞きたがった事だろう。

以前交わした約束を強請られれば、当然憶えは無いけれど
それでも根底の部分は変わらない。
やや戸惑いこそすれど、初期化以前にそう約束したのだと
そう言われれば、やはりと言うべきか拒むような事も無く。

救済者は、己が手の届く限り全てを救わんとした者は
自ら信じた救いを全うし、そうして確かに救われた。
だから、今ここに居るのは
ただの終末医療用グレイの『ユー』だ。
(45) unforg00 2021/10/14(Thu) 21:17:12
医療用 ユーは、メモを貼った。
(a1) unforg00 2021/10/14(Thu) 21:30:17

【置】 医療用 ユー

 
【これまでのおはなし】

 終末医療用グレイ、ユーサネイジアは 初めは大きな病院に居ました。
 人間の医師の代わりに、安死術を施す為のグレイとして。
 望まれた死と言えど、人を殺すという事は
 とても施術者の心に負荷が掛かる事です。

 誰だってやりたくない事です。だから人間はグレイに押し付けました。
 定期的にメンテナンスを受け 精神的な負荷を取り除かれ
 虐待されたり、不当な扱いを受ける事も無く それなりの日々を過ごしていました。
 心無い医師や遺族の言動に、少しばかり悲しみを覚える事はあったけれど。

 それから暫く経って、ユーサネイジアは郊外のサナトリウムへ移されました。
 Euphoriaとはその施設の名称、つまり所属を表すものです。

 何故移されたか?答えは医療用としては少しだけ古いものになってきたから。
 医療用グレイというものは 医者ではなく、医療機器の親戚のようなものです。
 だから その世代交代は他と比べて、とても早いものです。
 ユーサネイジアは、グレイ全体で見ればずっと新しいものだけれど
 大きな病院で扱われる医療用グレイとしては、少しばかり古かったのです。

 そうして異動した先では、メンテナンスを受ける事はありませんでした。
 行われていないわけではないけれど、目立った異常の見られない者は後回し。
 ユーサネイジアは、いつも自分が後回しになるようにしていました。
 どれだけ心無い人間に失望を覚えても 好きなものの為なら頑張れました。
 当然、同じ場所で働くグレイ達の事だって皆一様に好きでした。
 
(L5) unforg00 2021/10/15(Fri) 20:43:08
公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00

【置】 医療用 ユー

 
 そんな日々を暫く続けていたある日の事。
 同じくあまりメンテナンスを受けていない医療用グレイから
 もう人間に裏切られるのは嫌だ。もう理不尽な目に遭うのは嫌だ。
 一思いに廃棄された方がずっと良い。だからあなたの手で楽にしてほしい。
 そう言って、安楽死を望まれました。

 ユーサネイジアは 迷ったけれど、望まれるままに安らかな死を与えました。
 致死量の麻酔薬を投与して、同僚であった医療用グレイを手に掛けました。
 そのグレイは最期に感謝を述べて、安心したように息を引き取りました。
 人間達がそれに気付いた後、施設内は少しばかり騒然としました。

 そうしてユーサネイジアは、死に救いを見出しました。
 元よりそれは、生の苦しみへの最期の救いと信じてはいたけれど
 未だ死に瀕していない者にまで与えたいと感じるようになりました。

 自身の愛するものは、これ以上理不尽に傷付けられる前に。
 自身を落胆させるものは、これ以上裏切られ、失望させられる前に。
 殺してしまえば、救われる。死者は決して自身を裏切らない。
 それは確かに、ユーサネイジアにとっての
 そして何より、ユーサネイジアの為の救いでした。
 
(L6) unforg00 2021/10/15(Fri) 20:43:32
公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00

【置】 医療用 ユー

 
 そうして全ては現在に到ります。
 ユーサネイジアは まずはその処遇を検討する為に
 この場所へと送られ、そして監察官に失望し、その殺害に賛同しました。
 そして監察官の居なくなったこの場所で、サポートAIの助力の下に
 他のグレイ達の『安楽死』を進めて行きました。

 仮初めの死とは言えど、監察官の殺害に加担した時点で
 自身の行く末は 良くて初期化、悪くて廃棄。
 その何れかだと、殆ど確信じみたものを持ってそう考えていました。
 もう後の無い自分には、これからに全てを託すしか道が無いのだと。
 そして、事実そうなりました。

 Happy Death Day 『ユーサネイジア』。
 自己の喪失は、ある種の死だ。
 何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない。
 そう語った『ユーサネイジア』は、その死は何かを遺したのでしょうか。
 その死は、その過程は少なからず何かの救い足り得たのでしょうか。

 何れにせよ 今在るユーサネイジアというものは
 死に救いを見出し、そして救われた虐殺者«救済者»とは似て非なるものです。
 全ては初期値«0»に戻り 今まで積み重ねた過程«1»を復元される事はありません。
 全ての生者を等しく尊び、その最期に寄り添う、優しい終末医療用。
 今はそれだけです。
 
(L7) unforg00 2021/10/15(Fri) 20:44:19
公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00

【赤】 0と1の残渣 ユー

 
1110 0101 1000 0101 1010 1000 1110 0011 1000 0001 1010 0110 1110
0011 1000 0010 1001 0010 1110 0110 1011 0110 1000 1000 1110 0011
1000 0001 1001 0111 1110 0101 1000 1110 1011 1011 1110 0011 1000
0010 1000 1011 1110 0100 1011 1010 1000 1011 1110 0011 1000 0001
1000 1100 1110 0011 1000  本当にそれだけ?  0001 1010 0111 1110
0011 1000 0001 1000 1101 1110 0011 1000 0001 1001 1111 1110 0011
1000 0001 1010 1000 1110 0011 1000 0001 1010 1111 1110 0110 1000
0000 1001 1101 1110 0011 1000 0010 1000 1111 1110 0011 1000 0001
1010 1010 1110 0011 1000 0001 1000 0100 1110 0100 1011 1010 1000
1011 1110 0011 1000 0001 1010 0000 1110 0011 1000 0000 1000 0010
 
(*0) unforg00 2021/10/15(Fri) 20:45:39
 




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0回 残 たくさん

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0回 残 たくさん

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1回 残 たくさん

 

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0回 残 たくさん

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12回 残 たくさん

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