「……、……」「あの……」
登校時間か休憩時間か、
その辺りでひょこひょこあなたに近寄ろうとする男子生徒。

「友達、ともだち」「ぷれぜんと……お贈り……」
……個包装に包まれた白い飴を一袋分抱えている。

「？」
「あ、おはよ〜？でいいんだっけ……」

きっと今が何時でも、今日あなたと初めて会ったなら、おはようでも大丈夫なはず……と挨拶を口にする。
この女生徒らしい、ゆる〜くてふわふわな挨拶を。

「え〜っと……プレゼントくれるの？」

飴の袋とあなたの顔と、ふわりと視線を上下させながら尋ねた。

「ぷれぜんと、友達に食べ物渡す、これで達成」
"友達"とする事でも決めていたのか、貴方に飴を渡すつもりだったようだ。
ミルク味らしき甘い匂いが、袋からふわりと微かに香る。

「ん。友達作る方法、いろいろ御爺から教えてもらった。
　友達作ったら、食べ物渡す、いいことって聞いたから」

青年自身が自分の目を指差す。

「ははぁ、なるほど〜？？
確かにお友達にはプレゼントも大事なのかも？
ありがた〜くいただきます、えへへ……」

手を伸ばして飴を受け取ろうとしよう。
甘い香りが鼻をくすぐった。

「
貰うなら私からも“お返し”しなくちゃね〜
ん〜っと…ちょっと待って……」

肩に掛けていた鞄に手を突っ込んでゴソゴソ……と探し物。
ちょっとして「あった！」と嬉しそうに声を上げて、あなたの方を見上げて。
──その時。



「……。」
「あっ……えっと、透くんはチョコ好き？」

「あ……あなた、からも？　じゃあ、交換になる、嬉しい」
受け取られた飴に笑みを浮かべた。嬉しそうにぽやぽやしている。ぽや……ほわ……

「うん、甘いものとお菓子、全部好き。
　なんでも食べる、おいしい」
お菓子の名前に、更に嬉しそうにしている。滲む喜びは柔らかい。

「うんうん、プレゼントは交換してなんぼでしょ〜？
」

鞄からズボッ！！とふわふわのポーチを引き抜いて、じじじ〜っとファスナーを開けた。
中には小さな台形の包み紙がころころ……カラフルなのがいっぱい詰まっている。

「えへへ、寒くなると泳ぐのは大変そうだなぁって思うけど
チョコが溶けなくなるのは嬉しいなぁって思ったり。
…ということで、私からのプレゼントはチロルチョコだよ〜。はいっ」

5個ほどチロルチョコを手に取って、あなたの方へ差し出した。
ふわふわにんまり得意顔。

「チョコうれしい、おいしい……甘い、いいもの」
「寒いと冷える、冷えるとみんな大変そう。
　友達、あなたは寒いの、つらくない？」

もっ……と一個頬張りつつ。おいしい！
じっとあなたの方を心配そうに見つめ、困り気味で身体を揺らした。後ろ髪と袖がぱたぱた。

「寒いの辛い、今度はあたたかいもの持ってくる、教えてほしい」
ほくほく顔。幸魂が溢れている。

「私も甘いもの好き〜」

飴玉をころころ。甘くておいし〜！

「ん〜寒くなると……
朝のふわふわお布団から出られなくて…大変になる……ふふ
お布団と一緒に登校できたらいいのにねぇ。」

ふわふわお布団のオバケになっちゃうね。

「あ、でもお布団持ってくると怒られちゃいそうだから…
ん〜と、持ってくるなら飲み物とかかなぁ？
あったか〜い紅茶とか、ココアとか…。」

「紅茶、ココア……」「あんまん、ピザまん……」

なぜか真似をするように食べ物の名前を挙げた。
あたたかいもの、とぼんやり呟く。

「二人分あれば、あなたにも渡せる。
　そうしたら、お互い寒くても、お腹あたたまる」
「持ってくるもの、また考える……ぷれぜんと……。
　布団の代わり、あたたかいもの……」

「あっ！あんまんやピザまんもいいなぁ……
冬がきたって感じするもん。」



「あんまんとかって、2人で違うの買ったら半分こ〜とかするのも楽しいよねぇ。
いろんな味が食べれて、2倍ほかほか。」

「私もあたたかいもの探ししよかな、そしたらまた交換できちゃうね？」

「色々売ってる、おいしくてあたたかい。とてもいい……」
とてもよい……。おすすめの気持ち（？）になった。
「レジの近くにあるから、つい買ってしまう……」

「うん……やってみたい、今度する……？
　またぷれぜんと、できたら楽しい、嬉しい」
友達の貴方と、できるかもしれないことが増えて嬉しそうにしている。にこにこ……ぽや…………

「えっと……学校まだ終わってない、引き止めた、謝罪。
　授業、がんばって……たのしみ、増えた、嬉しい。ありがと……」
引き止めてしまったことが気になったのか、ぺこ、と一度頭を軽く下げつつ。

「やってみる？いいよいいよ〜
今度購買とか、コンビニとか？一緒に行こっか。」

お友達って感じがしてテンション上がっちゃうね。
にこにこふわふわ

「ううん？プレゼント嬉しかったもん、会いに来てくれてありがと。
えへへ、……次も楽しみです。」
「透くんもがんばってね。」

手をふりふりして、次の授業の教室へと足を向けた。

「一緒……うん、できたら、嬉しい。
　体育祭の準備とか、大変だと思うけど……」

ぱあ……と笑顔を浮かべた。にこにこ。

「ん、うん。じゃあ、ね、ともだち……尾関、さん」
軽く袖先を振って貴方を見送り、青年も教室へと向かっていった。