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　旅籠で朝食を済ませ、
　早速ゴンドラに乗って薄墨神社の方へやってきた。］


　（今日も良い天気だ。まずは出店を見て回って……。
　　そうだ昨日薦めて貰った舞を見に行きたいな。>>0:42
　　ご神木も姫櫻の神楽も見たい。楽しみがいっぱいだ！）


［人とぶつからないよう注意しつつも、
　きょろきょろと忙しなく辺りを見回す。
　
　
　
　自分は今一人だけれど、
　同じ物を見に来ている人達の中に入り込んでいると、

　

　
　
　　お祭って、其処に居るだけで しいんだな。

　　　　　　　　　私は、そんな事さえ知らなかったよ。
　
　

　
［幼い頃から、機械に囲まれ生きてきた。
　豊里家の子は真希奈と、歳の離れた弟のみ。

　真希奈が後を継ぐかもしれない。
　そう思って、父は真希奈に豊里家流の英才教育を施した。

　暫し時を遅くして男子が生まれたものの、
　真希奈は筋が良かったから、其の儘教育は継続した。
　勿論、弟にも同じく英才教育が施されたが。

　厳しく躾けられ、技術を知識を叩きこまれた。
　だから知らなかった。


　

　

　

　
［あちこち見ていると、太刀を振るう人形が見えた。>>1
　香具師の男の口上に合わせて、人形が動いている。
　当然の様に興味を引かれ、
　近寄ってじっくりと動きを観察した。
　
　
　






　　　他にもぶらぶらと屋台を見て回ると、
　　　瓶入りのラムネを売っているのを見つけたので、
　　　購入して一休みすることにした。
　　　近くにベンチがあったので、其処に腰掛ける。
　　　瓶を呷れば、シュワシュワと
　

　
［ラムネを飲みながら、人の往来をのんびりと眺めていた。
　親に連れられ、はしゃぐ子供たち。

　頻りに上を見て歩いているように見える、髪の長い御仁。>>19

　

　
［飲み終わったラムネ瓶を店へと返し、
　引き続き出店を見て回っていると、射的を見つけた。



　　これを自分へのお土産にしよう。
　　親父さん、一回やらせてくれないか。


［射的は得意なので、もうすっかり取れた気で云うと、
　コルク玉を五つと、銃を出してくれた。
　しっかり狙いを定めて、まずは一回目。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　


　　まずいな。
　　命中してもあれは一発では落ちない。



　仕方ない。
　本気を出すか……と、真希奈はゴーグルを外した。］
　

　
［真希奈の家は、代々銃を作る銃工の家系だった。
　幼い頃から工房で育ち、
　銃作りの技術や知識を叩きこまれて成長した。


　　　　　　　ある時、工房に一人の青年がやってきた。
　　　　　　　当時の真希奈よりも年若い、
　　　　　　　何処か少年らしさを残した青年は、



　　　　きっと、大事な兄が負傷して、
　　　　いてもたってもいられなかったのだろう。
　　　　逆恨みであることを薄々気づいていたけれど、

　

　

　

　
［それ以来、すっかり心が折れてしまい。
　
　父も流石にこんな危険な目に遭った以上仕方ないと、
　真希奈に仕事を強いることはしなかった。

　幼い頃から、機械に囲まれて生きてきた。
　其れ以外の色々を知らない真希奈は、
　結局作る物を変えただけで、作ることは止められなかった。



　

　
［何年かぶりに外でゴーグルを外したので、やはり眩しい。

　集中して、連続で玉を当てた。
　動かない的相手なら、何度も実弾だが試し撃ちしてきた。
　最後の一発が見事頭に当たり、人形は棚から落ちる。］


　　やった！旅の思い出が一つ形になった。


［ご機嫌で、人形を布に包んでトランクに入れた。
　隣の店で敷物が売っていたので、それも購入した。
　お昼に食べようと思い、塩焼きそばと苺大福も購入。


　

　
［話に聞いていた場所に向かってみると、
　人垣の先に大きな櫻。
　そして其の下で舞う狐面の男が見えた。>>13


　音を鳴らすのは鈴のみで、お囃子などはないけれど。
　でもそれが却って神秘的に思えた。
　狩衣の袖がふわりと揺れて、扇が空を切る。
　桜の花びらは、舞い手に追従するように踊った。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　最後に鈴が一つ鳴ると、舞は終わった。
　拍子をとっていた見物人の手が、拍手を送る。
　

　どのような歴史がある舞か、
　残念ながら真希奈は知らないけれど、
　お薦めして貰って、見ることが出来て良かったと思う。
　技術は新しいものに、どんどん上書きされてしまうけれど、