「……まるで自分がされたみたいな。
　　　　そんな言い方をするんですね。

　　　　　　　　　　


　　首を微かに傾げて。
　　私の気の所為だとしても、そう聞こえたから。
　　知っている人に見つけて欲しい
　　忘れないでいて欲しい。


　

　　誰も冥福を祈ってくれる人が居なかったと
　　そういう声はどこか寂し気に響いた気がして
　　ゆらり、と瞳が揺らめく。
　　貴方の大切な人も……
　　祈ってくれなかったのか、と言いかけて、
　　私の声は酒場の賑やかさにかき消された。
　　届いたとしても、聞こえなかったと
　　誤魔化せそうなくらいの、声だったから。
　　

　　

　　

　　一人のゴーストさんの意見を聞いて
　　私は悩みながらも。
　　最後に付け加えられた一言に
　　ムッとした顔をしてしまったはず。
　

　　　


　

　　頼んだピザは一人で……食べられなくはないけれど
　　分けるつもりでいたから。





　　　　

　　だから―――――。
　　ハバネロまみれのピザが来たとして。
　　私は彼を優しいと、思ってしまう。

　　辛い辛い、って何の躊躇いもなく泣けるでしょう？

　

＊＊＊


　　夜が明ける。霧夜の終わり、
　　私は席を立って外を見た。
　　うっすら明るくなっていて、今なら帰れそうで。

　　結局自分が飲み食いした分のお金は
　　席に置いて、立ち上がった。
　　……夜が終わりを告げたからかな。
　　


　　　「ごちそうさまでした。
　　　　


　　シーフードピザも、分けてもらった船盛も
　　唐揚げも、海の色みたいなカクテルも。
　　ありがとう、と小さく呟いて。

　

　　それから、懐の中から一枚、
　　タロットカードを取り出す。

　　
　
　　　「決めました。
　　　　逃げてきたあるべき場所へと
　　　　一度戻ることにします。

　　　　残してもらった物の意味を考えるために
　　　　他にもないか、探すために
　　　　

　

　

　　　

　

　　　「次来た時に、
　　　　貴方達がここにことを。」

　　

　　遠回しで、素直な言い方じゃない祈り。


　　それがどう取られていたとしても
　　私はもう、見ることが出来ない。

　　ブレスレットを付けてから微笑って。

　　私は店を後にした。**
　　
　

　　酒場を出た後、一度自室に戻って
　　故郷へと戻るための用意をしてから
　　ギルドへとキンウに渡してもらうつもりの手紙を
　　持っていった。
　

　

　　

＊＊＊

　　故郷にある外れの森にセシリーのお墓はあった。
　　殺されたと、里の皆に知られたようで。
　　寂しい場所に、弔われていた。

　　セシリーの死の原因は、何処からか
　　里の皆にも伝わってしまったらしい。
　　セシリーは里の恥だと、
　　生きていた時に好かれていたのが嘘だったみたいに、
　　嫌われていて。


　　

　　

　　「さよなら、セシリー。」


　　里を後にした。

　　　そして、また霧の夜が来たのなら。　
　　　私は、またあの酒場を訪れることになるだろう。
　　　もういない店員がいると知れたなら
　　　その人の行く末を思って。
　　　
　　　変わらず酒場にいる人、
　　　以前は見なかった人に対しては……
　　　どうだろう、占いでもどう？なんて。
　　　言って見たかもしれない。

　　　それは、行ってみなければわからないけれど。

　　　いつかは来るだろう霧夜の前日に
　　　流れる噂を耳にした私は、きっとこう言う。