「　ハツナちゃんって、太陽みたいだよね　」

　　

　　まっさらなノートに
　　書きこまれていく二人の思い出。

　　楽しいことも哀しいことも、
　　二人にとって、大切な記憶。

　　書かれた文字が消えていくとき、
　　二人は何を思うのでしょう。

　　

　　　


　

　　そこにはどんな物語が描かれるのでしょうか。

　

　　想いの歌を奏でましょう。
　　思い出話を綴りましょう。


　　
　　

　　
　　消えない物語を、二人の心の中に。

　　

　「　ハツナちゃんって、太陽みたいだよね　」>>0


　　　　そーかな、ありがとう。
　　　


［　いつだって私は笑ってそう返してた。


　

　

　　　


　　

［　いつもは、明るくふるまってるから
　　みんな、私には悩みなんてないだろうって
　　そう思ってるんだろうし、そう振舞ってた。

　　

　　私にだって悩みくらい、あるよ。
　　でもそれは胸に秘めて過ごしてた。

　　　　　　　

　

［　胸に秘めた本音を、吐き出したい日は、
　　いつも屋上に行って、歌を歌ってた。
　　



　　決まって太陽に手を伸ばしながら、口ずさんで。


　　聞くに耐えないってほどじゃないけど
　　誰かに聞かれるのは……恥ずかしいな。

　　

　　

［　そんな私の歌を、
　　君は聴いたこと、あったんだっけ？　］




　　

***

［　人に囲まれてたって
　　惜別ハツナはほんとの意味ではひとりぼっち。
　　そう思ってたから、教室で隅の席にいる
　　君のことは、前から気になってた。

　　



　

［　チャンスが巡ってきたのは
　　移動教室があった日の事。
　　理科の授業で、実験があるから
　　実験室に移動になったんだ。

　　その日は休んでる人が何人かいて。
　　上手く座らないと、四人掛けの広い席に
　　一人で座ることになったりする。

　　上手く座ればいいのに、
　　結局こういうのって、
　　仲良し同士で固まって座るから。

　　

　

　　　ね、ここ座ってもいいかな？

　　

［　君の席の隣に行って、
　　そう聞いた時、君はどんな反応したかな。



　　だって、チャンス、逃したくなかったもん。　］

　　

　　　そういえばさ、来週は遠足だよね。
　　　朝日くんはもうおやつ、買った？

　　　なーんて、気が早すぎるかな。


［　君の隣に座った私は
　　ありきたりの話題を振って。
　　話すチャンス伺ってたくせに、
　　話題の方は実は考えてなかったの、
　　ちょっと笑えちゃうよね。

　　あとはそう……好きなもの聞くとか
　　それくらいしか思いつかなかった。　］**

　

　　　

［　四限の息の根を止める鐘が鳴ると
　　淀んだ薄暗い世界から強制送還される。
　　
　　ふと覗い窓際の席からは四季の映りがよく見えた。
　　季節外れに半袖の生徒、無駄に暑い気温、
　　夏はドジっ子なのか忘れ物が随分多い。　　］


　　　(……まいった。頭が重い。)


［　夏どころか時世にまで置いていかれたボクには
　　此処教室はあまり居心地のいい場所ではない。
　　此処地獄は居るだけで体力が削られる毒沼だ。

　　ボクは此処から消え去るように席を立って離れる。
　　混んでしまう前にさっさとパンでも買って
　　邪魔者が居ない屋上にでも逃げてしまいたかった。］

［　でもここ屋上にはいつも先客がいる。>>9
　　彼女がいる時はいつだってこの世界は夜だ。
　　太陽が陰り、夜が我が物顔でふんぞり返り
　　頼りない、しょぼくれた朝日が空に添えられる。>>7
］


　　　ごめん、邪魔した？


［　もう何度目にもなる太陽の夜想曲。>>9>>10
　　悲鳴にも似た音色が耳を掠めて、>>8
　　それでもその場を立ち去ろうとしなかったのは
　　そこに居たのがだったからだ。］*