人狼物語 三日月国


22 【身内】Valentine's black art【R18】

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[犠牲者リスト]
――――

二日目

事件:楽観

本日の生存者:エガリテ、ジェレミー、ポップ、うさぎさん、大河内 佳代以上5名

 
[ふたりきりで閉じ込められた部屋。

 もし俺が、オルグレン一族の
 血を引いていなければ
 甘受できただろう幸せな状況が
 その唯ひとつのせいで、酷く……苦しかった。]
 

 
[押し殺すみたいにして咽び泣く
 ヒューの声が胸を刺し、
 堪らなくなって
 抱きしめようと引き寄せれば
 華奢な腕が伸ばされ、包み込まれた。]



   っ、 ヒュー‥‥、



[ぽたり、ぽたぽた。

 光の具合でほんのりオリーブ色を纏う
 深い森のような黒髪に
 慈愛に溢れた雨が降りそそぐ。]
 

 
[痛かった訳ではないことが分かり
 少しほっとしていたけれど、
 ”あとで、きく”
 しゃくりあげる合間に聞き取れた言葉に
 また……、胸がキリキリと締め付けられた。

 俺の、”理由”のせいで
 大切なひとを、こんなに
 泣かせてしまっているのだと知って。]



   ごめん、 …ごめんな  ヒュー、



[過去の自分が
 選んでしまった選択を
 責められたとて仕方ないと思う。

 そう思うのに
 涙も、撫でてくれる手も
 温かすぎるから、目の奥がじわりと痛んだ。]
 

 
[ずっと封じ込めてきた何かが
 溢れ出しそうな気配に
 瞼を閉じて、
 縋るように回した腕に力を籠める。


 頼りない恋人で
 申し訳ないと思うけれど
 今は、それで、精一杯だった。*]
 

 
[胸に抱え込んだ彼が謝罪を口にする。
 フリフリ、首を振って否定する。]


  あやま、ないで……っ
  ジェレミ、……悪くな……っ


[以前見せてもらった義眼のこともあり――、
 彼が背負わされてきたものが
 とても重いだろうことは想像できてしまう。

 彼自身にはきっと非のないことだと信じているし]

 
[仮に、彼が道を踏み外した大罪人で、
 世界中を敵に回すことになったとしても

 自分だけは彼の味方で居続けたい。居続けるだろう。

 狂っていると言われたら、そうなのかも知れない。
 他人からどう評価されたとて構わない。]

 
[恋人を腕の中に閉じ込めながら
 自身も恋人にそうされている。

 他に、何も要らない気がしてきて

 衰弱して死を迎えるまで、こうしていてもいい――、
 そんな馬鹿なことを考えてしまいもして。]


  ……


[拘束が強くなれば、一層、
 優しく掌を動かして、深き森の色を撫でた。

 少しは頼りにして貰えた気がして、
 嬉しくなってしまう。

 ここが二人きり、
 他に誰もいない空間であることに初めて感謝をした。]

 
[泣いてくれたって構わないのだけれど

 彼は自分の前で格好つけたがりな所があって
 ……実際、途轍もなく格好いいのだけれど

 泪を見せるのは好きじゃないんだろう。

 彼の分までを俺がたっぷり流した……その後に。]

 
[少しだけ拘束を緩めて、頬を手で拭って、
 身体をズラして、額と額をコツリ、合わせた。

 目を見て話したかったから。

 白目の部分がやや赤くなったふたつの眼差しを
 彼のひとつに向けながら
 壊れものを扱うように顔の輪郭を指の腹でなぞった。]


  中断させて、すまない……
  俺は大丈夫だし、ジェレミーは悪くない

  ……愛してる


[濡れた睫毛で二度、瞬きをして。
 させて貰えるなら口づけたくて
 自分の顎をそっと持ち上げた。**]

 
[まだ、何も話せていないのに
 俺を信じて
 庇ってくれる声が
 抱き締められた胸から直に響く。
 

 
[こんなにまで…
 全てを許されたことは無かった。

 存在自体が疎ましいと
 条件を課せられ、
 腫れ物に触るように接されるか
 禍々しいと遠巻きに嫌な視線を投げられるか。

 気にしたら負けだと
 飄々と遣り過して生きてきたが、]



   ヒュー……、 



[こんな温かさを知ってしまったら、
 もう二度と戻れる気がしない。

 甘えるように緩く頬を擦り付け、
 押し付けた鼻先で
 肌の匂いをたっぷりと吸う。
 愛おしさと、失う怖さが胸の内で溢れかえった。]
 

  
[ことん、ことん…
 確かに此処に居る、と
 恋人の生を伝えてくれる鼓動。
 己の命を投げうってでも、護りたい音。

 だが、同時に
 そのナイトの役目を
 誰にも譲りたくないとも思う。


 器の綻びを治すのも
 魔力炉の暴走を止めるのも‥‥

 俺でなければ、嫌だ。


 万が一を考えて
 任せられるヤツを見出しはしたが 
 易易と殺られるつもりはない。

 ましてや こんな
 つまらぬ罠などでは、絶対に。]
 

  
[乾いた大地を潤すように涙が注がれて
 小さく芽生えていた反骨心が
 根を張り、力を漲らせる。

 掛け替えのない
 この大切なひとを護るためならば
 諦めて良いとさえ考え始めていたけれど。

 結局、俺がヒューから離れられない限り
 巻き込んでしまうから
 逃げずに戦って
 変えていくしかないのだろう。


 でも、それは
 独りよがりな考えでしかなくて、
 彼が全部を知った上で
 もしも別の道を望むなら、俺は─────…]
 

 
[抱きしめる腕が弛んで
 視線を上げると
 小さな手が涙を拭うところだった。

 優しい想いの滲んだ
 赤い眼差しが、ふたつ近づいて
 覗き込むように此方からも額を重ねた。]



   俺も、愛してるよ



[輪郭を辿る
 いとおしい指先を捕まえて
 ぎゅっと絡め合わせながら口づける。

 離れたくない。
 離さない。
 離したくない。

 気持ちが募るせいで
 なかなか咬合を解くことのできない
 酷く余裕のないキスになった。]
 

 


   ………っ、  はぁ、…



[それでも、どうにか区切りを付けて
 惜しみながら唇を離す。

 まだ、ほんのり
 赤みの残る瞳を切なげに見つめながら
 乱れた息を整えて、切り出した。]
 

 


   今度…、なんて
   先延ばしにしようとして、済まなかった。
   よければ今、聞いてくれないか?

   俺と関わり合う限り
   どうしたって付いて回る厄介事だ。

   それで、全部聞いた上で
   ヒューはどうしたいか
   どう思うかを
   教えてもらえたら嬉しい。



[繋いだ手に知らず力が籠もる。

 覚悟は決めているけれど
 それでも、怖いものは……怖い。*]
 

 
[取られた手。
 離さないという意思を込めて
 指を深く絡めて握った。

 元々、彼の掌の方が大きかった。
 性別が変じたから、より大きく、
 より頼もしく感じられてしまうけれど――]

 
[助けられるばかりでは嫌だ。
 護りたい。俺が、この人を。]
 

 
[貴方を愛している。

 その想いが伝わって欲しくて
 触れるだけの口づけをした。]


  (…………、すきだ……)


[何時迄も繋がっていたいのは自分だけではないのか。
 二対の柔らかな唇は離れる頃、
 すっかり同じ温度になっていた。


  ……っ はぁ、…… ジェレ ミー……


[切なげに歪められる瞳を見つめて
 困ったように笑みを浮かべながら息を整えた。

 貴方の不安を、全て、取り除いてあげたい。
 俺に出来るのだろうか。何が出来るのだろうか。]

 

  ……勿論、聴くよ。聴かせて欲しい


[頷き、繋いだ手に込められた力に気づく。

 不安にならないで。きっと受け止めるから。

 大丈夫だと、言葉で伝える代わり
 親指の腹で優しく撫ぜた。]

 
[一度だけ足下に視線をやり
 声無しにシーツを引き寄せた。

 揃いのペンダントだけを身に着けた裸体が
 風邪を引かないよう肩の上まで覆って。

 彼に視線を戻し、静かに耳を傾けるだろう。
 繋いだ手を離すことなく、握りしめて。]

 
[叶うことならばこのような事態に陥る前にも
 話して貰えるような関係でありたかった。
 そうして貰えない自分は、情けない。

 けれど、それを悔いて謝罪した所で、
 貴方は喜ばないだろう。
 だから、反省は胸の内でのみ。

 いまは自分に出来ることをしよう。
 貴方の隣に立ち胸を張れるパートナーになりたいから。**]

 
[深く繋いだ手が
 勇気づけてくれるように撫でられる。

 それから、長丁場になっても良いようにだろう。
 シーツを引き上げ
 互いの体を覆うように掛けてくれるのが
 しっかり聴こうとしてくれている心情を
 雄弁に伝えてくれているようで、嬉しかった。

 あと‥‥
 恋人の素肌も香りも
 俺を落ち着かなくさせるから
 そういう意味でもありがたい配慮といえた。]
 

 




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