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【人】 法の下に イレネオ>>0:186 ダヴィード 空になった紙袋を移動させようと底を掴めば、出来立ての食事を入れた時特有の熱が移っていた。湯気のせいだろう、少し湿り気もある。 自分の座るスペースを少し広く取る。腰を落ち着け、手にしたピッツァの切断面に目をやれば、空洞がほとんどないくらいにチーズと肉が詰め込まれていた。なるほど、これは半分にしてもらって正解だろう。 貴方の言葉を受けて、ほんの少しだけ先を譲って。それでも、のんびり貴方の食事を眺めるなんてことはせず。 「そうだな、Buon appetito.」 言うや否や、ぐわり。大きな口を開け、手に持ったピッツァにかぶりついた。 男の好む熱い食事だ。 逆に、それ以外で食事の好みはあまりない。この男は、どんな味のものでもそれなりに食べる。 かと言ってどの味に対しても同じ反応をするほど鈍感ではなく、感想を言う程度の能はあった。この男に食事を勧めるのは、まあまあの娯楽になるだろう。 すぐに感じたのは肉の硬さ。噛み切れないというわけではなく、しっかりと食べ応えのある肉の塊。それがごろごろと入っている。見た目以上の重量感に、細い目が軽く開かれた。 「美味いな。」 一言、息を吐いて呟いた。 貴方の方を見れば、嬉しそうに食べ進めているだろうか。 食事中の人というのは、どうも幸福な雰囲気を纏っている。会話でそれを遮るのはちょっと迷うくらいに。 だからそれ以上のことは言わず、こちらも静かに食事に戻る。食べる速度自体が早いわけではないが、一口が大きい。それで遠慮なく噛みちぎっていくから、結果的に食事にかかる時間は短い。 食べ終えるのは同じくらいのタイミングになるかもしれない。 #商店街 (2) rik_kr 2023/09/11(Mon) 21:17:10 |
【人】 門を潜り ダヴィード>>2 イレネオ 「美味しいでしょう! ああよかった、一番好きな物を勧めるって緊張しました」 片手に食べかけのパニーニを持ちながらほっと胸をなでおろす。 先ほどまで喜色満面の笑みを浮かべていた表情は、ほのかな安堵が滲んだものに変わった。 食事中にあまり言葉を交わすことはないから、傍から見ている人物がいたとしたらあっさりすぐ食べ終わったように見えるだろう。 口元を紙ナプキンで拭いて、貴方の方にも一枚差し出す。 「お腹いっぱいになりましたか? すこし甘いものも追加しようかな、と思うんですが」 イレネオさんもどうでしょう。自らの懐から財布を取り出して、今度はこちらがお返しをする番だと暗に示す。 #商店街 (19) NineN 2023/09/11(Mon) 22:59:01 |
【人】 法の下に イレネオ>>19 ダヴィード 「そうだったのか。教えてくれて嬉しいよ。」 好むものを共有してもらえるというのは光栄なことだ。 安堵に足ることが言えたのもよかった。実のところこの男はそうよく考えて話すたちではないが、貴方をしょぼくれさせてしまったことを理解出来ないほど馬鹿ではない。そして、もしそうなっていたら、どう言い訳をしたものか困っていただろう。 「また行くよ。」 「あの、バナナのやつ。初めて見たから、気になる。」 そう話題にしたのは、季節限定と銘打たれていたチョコバナナとマシュマロのパニーニだ。 見るからに甘そうなそれは、頭の固い人間からすれば、食事にするにはふさわしくないと感じる。今日ではなく、仕事帰りに小腹を満たす時にでも立ち寄ろうと決めた。 ナプキンを会釈して受け取る。舐め取ってしまったから、汚れはあまり付かなかった。少し行儀が悪い。 「ん。」 「まだ食えるのか。俺もだよ。」 「そっちもおすすめしてくれるのか?」 にやり、と口角をあげて快諾する。 この男は頭は固いが、年下からの奢りを固辞するほど、前時代的ではなかった。 #商店街 (26) rik_kr 2023/09/11(Mon) 23:51:49 |
【人】 門を潜り ダヴィード>>26 イレネオ 「少し迷いましたけれど。 自分の中での一番を避けるのも違うなと思いまして……」 もし仮に貴方の口に合わなければ、他の店が一番のお気に入りに変わり、次回はそこに行きましょうと言ったことだろう。その程度に取り繕うことは出来たが、そうはならなかったので問題にもならなかった。 「しっかりチェックしていらっしゃる。 甘いものも美味しいですよ、保証します」 味覚が合うというのはなんだか形容し難い嬉しさがある。 少なくともこの食事を提供したのは自分ではないのに、なんだか誇らしくもなるから不思議なものだ。 「ええ。少しだけ待っていてもらえますか? すぐ戻ってきますから」 #商店街 (32) NineN 2023/09/12(Tue) 7:43:01 |
【人】 法の下に イレネオ>>32 ダヴィード 多分、それは自然体の親愛だ。 そういうことを具体的に理解している男ではない。人の感情の機微にも疎い。けれど人であるからには当然本人も備えていて、だから実感として真っ直ぐに受け取れる。 「食べたことは?」 あるのだろうな、言いざまからすると。 貴方の方が、楽しいことや美味しいものはたくさん知っていそうだ。 単に、何よりだ、と思う。楽しいのであれば、嬉しいのであれば、何より。 「いいのか。」 「一人で大丈夫か?」 これはからかい半分。 楽しいものも、美味しいものも、貴方の方が知っている。任せて問題ないだろうと思っている。 その上で、信頼からの冗談をひとつ。 #商店街 (43) rik_kr 2023/09/12(Tue) 10:24:59 |
【人】 門を潜り ダヴィード>>43 イレネオ 男もまた、それを言葉にできるほどの語彙を持たなかった。当たり前にそこにあるものをどうにか大切にするのが精一杯で、それらはいつも失われてから名前を与えられた。 「まあ……それなりに」 それなりに。 一人で済ませる時ならば、食事用とデザート用にそれぞれ買って帰る程度には。 美味しいものを食べるのは、好きだ。隣に誰かがいるならなお良くて、いなくとも誰かの笑い声が聞こえる場所がいい。 「おつかいくらい任せてください。 泣いて名前を呼んだりしませんよ」 フレーバーの選定も任せてもらおう。 さっぱりとしたもの、甘いものの2種を買ってきて選んでもらうのがいいか。 そんなことを考えながら小走りで商店街に走っていった男は、5分と経たないうちにレモンのジェラートとチョコレートのジェラートのカップを貴方の目の前に差し出すだろう。 #商店街 (51) NineN 2023/09/12(Tue) 13:38:57 |
【人】 法の下に イレネオ>>51 ダヴィード どうも貴方は健啖家らしい。それを知るのもきっと初めて。 人が何を好み、何を食べ、何を選ぶかは個人の自由に委ねられている。体質なんかもあるだろう。けれど、まあ、よく食べれば食べるほど、安心するものだ。健康っぽい、というイメージだけで。 泣かない、名前を呼ばないと言われれば、そういう童謡もあったなと思い出す。 「そうだな、迷子になるなよ。仔猫ちゃんじゃないんだろう。」 なぞらえるなら自分は犬のおまわりさんか。まあ、悪くない気もする。犬は好きだった。 軽く冗談を飛ばせば手をひらと振って見送るだろう。小走りに逸りが見えて少し可笑しい。暫くその背中を見ていたが、やがて寛げていた足を組むとポケットに手を突っ込み、中を探ろうとして、やめた。 子どもの前でわざわざ吸うものじゃない。 道のそこここで路上喫煙をしている通行人はいるわけだが、そこはそれ。禁止されているわけではないから止めはしないし、自分だってしないではないが、今は。 そんな風にしたから、戻ってきた貴方が目にした姿は変に手持ち無沙汰に見えただろうか。これは携帯なんか取り出して、埋まってもいないスケジュールを確認しているらしかった。 ずい、と差し出されたところから冷気を感じれば顔を上げて。 「おお。」 「おかえり。……ジェラート? だな。」 黄色と茶色、貴方の手、腕、そこから顔へ。 視線を移して、問う。 #商店街 (54) rik_kr 2023/09/12(Tue) 16:01:12 |
【人】 門を潜り ダヴィード>>54 イレネオ 食べ物は分かりやすく人間を幸せにしてくれて、それは時折愛情の代用品となる。 目に見えないものの代わりに煌びやかな宝飾品を贈ることもあれば、温かなスープの一杯を差し出すこともある。 そのあたたかさに男は貪欲だった。 小走りで駆けて行く間に考えは巡る。 貴方の好きなものはなんだろう。次は教えてくれるだろうか。 こんな話をするのは初めてだから、変に思われていやしないだろうか。 定番のフレーバーを用意してもらって、両手に感じる冷たさにまた急かされる。 誰に叱られるでもなく、人のために急ぐのはやっぱり好きだ。 「只今戻りました。 えーと、その通りです。レモンと、チョコレート。 どちらがお好きですか?それとも、両方?」 両方、と問う男の顔はいたずらっ子の顔だ。 勿論ジェラートのカップは小さいものだから、両方と言ってもあっさり食べられてしまう量だが。 #商店街 (66) NineN 2023/09/12(Tue) 19:27:55 |
【人】 法の下に イレネオ>>66 ダヴィード 駆けて行って、駆けて戻ってきて。 まさか店先でUターンしてきたわけもないから、わざわざ走って、止まって、走ったのだろう。その過程を想像するとやはり微笑ましい。 まさか店先で足踏みを? と、それもまた想像しては笑いを噛み殺した。 「両方好きだよ。」 問われた言葉には、そんな答えを返して両手を差し出す。 笑んだ口元のまま、珍しく貴方より低い視線で続けた。 「と言えば、困るのはお前じゃないのか。」 おそらくは、分け合うつもりで来たろうに。 二つとも寄越せと言えばどんな顔をするのか、少し興味がある。興味があるだけで真意ではないと、そこまで見抜かれている可能性も、あるにはあるけれど。 #商店街 (80) rik_kr 2023/09/12(Tue) 23:08:02 |
【人】 門を潜り ダヴィード>>80 イレネオ さて、本当のところはどうだったのだろう。 走って行って、デートかとジェラート屋の主に揶揄われて、いいから早く用意してくださいなんて宣って、そこからまた走って戻ってきたのかもしれない。 そう離れた距離ではないが、こればかりは貴方の知らない話。 「いいえ?困りはしませんとも。 こいつが少し行き場を失うだけですよ」 ひらりと取り出したのはジェラート用の木匙。 よく見れば、差し出されているカップには木匙が添えられていない。 どちらも!と言えばジェラートだけが手に入ってしまいますよ、という意地悪……悪戯である。 #商店街 (84) NineN 2023/09/12(Tue) 23:53:09 |
【人】 法の下に イレネオ>>84 ダヴィード 空白はあるほど想像を誘う。 その想像が悪い方に向くことは、この状況では有り得ない。だから男はきっとその空白に、あたたかい、或いは愉快なことばかりを当てはめて考えていたのだろう。 伸ばした手が一時止まる。 「なるほど。」 選択肢として用意されていたからには、この回答もお見通しだったわけだ。 こちらは口が大きいし、冷たいものが頭に響くたちでもない。だからコーンに入っていたなら何も問題はなかく食べ進めたのだろうが、生憎カップに顔を突っ込んで食べるのはさすがに気が引ける。 「一本取られたよ。お前が上手だ、ダヴィード。」 レモンの方がいいな、と降参したように軽く手を上げながら。ついでにその木匙も貰えれば嬉しいが。わざとらしく上目遣いを作ってみた。 #商店街 (88) rik_kr 2023/09/13(Wed) 1:04:39 |
【人】 門を潜り ダヴィード>>88 イレネオ うんと幼い子どものようにジェラート屋の前で足踏みをしていたかもしれない。 気がはやり過ぎておつりを忘れかけるなんてこともあったかもしれない。 そこにあるのは絵本のような、なんともやさしい想像だろう。 「ふふ、溶けちゃう前にどうぞ。 こちらも進呈いたしましょう」 上目遣いにくすくすと笑い、恭しく腰を折って貴方にレモンのジェラートと木匙を手渡す。 悪戯が終われば隣に座り、二人でデザートの時間だ。 #商店街 (97) NineN 2023/09/13(Wed) 8:51:48 |
【人】 門を潜り ダヴィード>>132 イレネオ 「はは〜」 一度は取り繕った格好つけた動作もすぐ剥がれた。 持ち上げられたカップには『gattino』の文字とデフォルメされた小さな猫のイラストがある。 「子猫ちゃんからの贈り物ですよ」 なんてくすくす笑った。 穏やかで長閑な時間が流れていく。 #商店街 (143) NineN 2023/09/14(Thu) 8:46:20 |
【人】 法の下に イレネオ>>143 ダヴィード 「猫の日だな。」 今日はよく猫に会う。動物を好きでも嫌いでもなく、当然ペットも飼ったことがない男だ。モチーフになっているような商品も買うことはない。だからか物珍しいらしく、そんなことを呟いたりもする。 ジェラートはその黄色さに恥じないくらいしっかりレモンの味がした。優しい甘みの中に確かな酸味があって、それが冷たさを引き立たせる。小さなスプーンでちまちますくって食べるのはもどかしさもあったが、少量でもしっかり味がするのだから大したものだ。 あなたが気にしてみているようなら一口二口分けてやったかもしれない。そこまで子どもではないだろうか。 「ご馳走様。美味かったよ。」 程なくして食べ終わるのだろう。 カップはあればまとめてゴミ箱に。なければ持ち帰るようにしようか。先程の紙袋に入れて、手に持った。 立ち上がって腕時計を確認すればそれなりの時間になっているだろうか。非番の男には時間があるが、貴方はそうもいかないかもしれず。 #商店街 (154) rik_kr 2023/09/14(Thu) 20:33:26 |