人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

げほ、げほ、と咳き込んでいれば。
少しだけの間を置いて、砂埃が女を襲う。
口の中がざらつき、目に入らぬよう瞑った目を両腕でかばって。
あなたの思惑通り、大きな隙が出来る。

が、っ!
う……ぐぇ……っ」

靴先が、女の腹に突き刺さる。
一瞬浮いた体は、もう一度壁に思い切りぶつけられて。
再び地に落ちた。まるでボールのような扱いだ。
膝で圧迫されていた時とは比べ物にならないくらい、抉るような衝撃が内臓を襲って。
その場に胃の中のものが吐き出される。
つんとした匂いが鼻を刺激して、口の中がきもちわるい。

その衝撃で、ポケットから
注射器
が転がり落ちる。
中身こそ空になっているが、使用された形跡のあるもの。
疑心暗鬼になっているあなたは、これをどう取るだろうか。

「っ、ぐ……あ、は」
「どう、おも、う?」

青い顔で、しかし。
負けるわけには、いかなかったものだから。
(-157) 2023/09/29(Fri) 2:05:05

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

びちゃ。

きっとそういう音。濡れた音が地面に散った。
同時にすえた臭いが立ち上り、男は厭うように距離を取ったろう。誰だって汚物で衣服が汚れるのは嫌だ。

────それでもきっと、
ここにいたのが貴方ではなく一般市民であれば、
迷いなく助け起こそうとしたはずだ。


潰れた蛙のような声を上げて身を震わせる貴方を、視線で見下して男は眺めていた。
月色の目を丸くして見ていた。そうしてひとつ、静かに息を吐いた。ぱち、ぱち。瞬きは油断の合図であり、転換の印。

一度目の暗転の後、瞳はまだ貴方を見ていた。
二度目の明転の後、瞳は転がる注射器に向いた。

男が手を伸ばす。貴方が奪い取らないのであればそれを拾い上げるだろう。しゃがみこんで、針先を見つめて。

「使ったのか?」

誰に、と言わなかった。
むしろそれは、自分ではないと確信した落ち着きだ。
逸っていた鼓動は今は収まっている。体温の上昇や低下、発汗等もない。それに針を刺された感覚はなかったし、液状なら──思い出したくもないが──口づけで仕込むのも不可能だろう。
だからこそ。
だからこそ問う。

無辜の民を犠牲にしたかと問う。答えの見えた問いだ。
見えているから、畳みかけて問い質す準備は出来ている。
(-163) 2023/09/29(Fri) 2:55:48

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

暫く、まともに声を出すことすら叶わないだろう。
身を丸めて、痛みを逃すのに精一杯で。

転がった注射器を拾う手を、止めることは出来なかった。
中身は空であるし、仮に女の体を調べたところで元の液体を持ち歩いているわけでない。それが何であるかまではここではわからないだろうが。

「……どう、かしら…使ったか、どうかくらい……見れば、わかるでしょ」

時間稼ぎにもなるか怪しい返答だ。
使用されていること自体は明白だから、否定する意味もない。
痛みを堪えながら、片手を身につけておきあがろうとしている。
もう片方の手は腹にあてて。ぐ、と力を入れる。
動きは緩慢で、簡単に妨害できてしまうだろう。
(-175) 2023/09/29(Fri) 8:45:36

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

肘の辺り目掛けてふるった。注射器を掴んだ手だった。立ち上がる仕草を妨害する。
というよりは、嬲りに偏ったような動作だ。

当たり所が悪ければ関節が非可動域に曲がり込んだかもしれない。或いは、使用済みの注射器の針が刺さったかもしれない。単にバランスを崩して、再び地面に顔から叩きつけられただけだったかもしれない。

血液の匂いはここにない。
ここにいるのは血に飢えた狂犬ではない。

「人を殺しておいてその態度か?」
「心が痛まないのか? これだからノッテマフィアってのは嫌なんだ。」

決めつけ。マフィアとはそういう生き物だ。
しかし今回はひとつだけ当たっている。貴方が人を殺したということ。

「黒眼鏡の命令か?」

問いながら自分の携帯を取り出す。
逃げない内に応援の要請。それから被害者の捜索が急務だ。相手をねじ伏せて少し落ち着いた頭は冷静な判断をしようとし、しかしそれは隙にもなる。
(-190) 2023/09/29(Fri) 13:19:31

【人】 路地の花 フィオレ

>>56 ロメオ

「涙は安売りしてやらないんだから」

少しの間そうしていれば、調子も戻ってきたのか軽口も飛び出して。
あなたの胸から顔を離せば、笑みを浮かべるくらいの余裕もあるようだった。

「やってやったんだから。私」


「ね、何でもしてくれるなら」
「何か美味しいものでも買って帰りましょ、あの部屋でお疲れ様会したいわ」

みんなも早く落ち着いたらいいんだけどね。
解放されたばかりであれば、なかなかそうもいかないだろうけれど。

#BlackAndWhiteMovie
(77) 2023/09/29(Fri) 14:13:14

【妖】 路地の花 フィオレ

「どこからそんな自信が出てくるんだか」

なんて呆れたように言いながら。顔は穏やかな笑みを浮かべて。
あとで整理するものがあれば手伝いくらいはするわよ、と続けて。
あなたが部屋のものにあまり触れられたくなければ、1人の時に任せるだろうが。

「意外と余裕…があるわけじゃ、ないんでしょうね。動ける人はとんでもなく忙しくしてそうだもの」

テーブルにグラスも並べて。
なんでも良さそうだったから、白ワインを注ぐ。辛口で食事向き。

「私はこう見えて気遣い屋さんだけど」
「そう。まあ無理に見せてとは言わないわよ、その手に関してはね」

他はまあ、追々。
とりあえずは食事が先決だ。

「乾杯でもする?」
($1) 2023/09/29(Fri) 14:20:27

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、う…、!」

注射器の針を避けるような動きをしたばかりに、下手にその拳を受け止める形になる。ゴキ、と嫌な音がしたのち。ぶらんと力が抜けたように垂れ下がる。

全身の痛みに、意識が持っていかれそうで。
気力でもって、なんとか耐えている形。
まだ、立っている。

「っ、…はぁ……先に、不義理を働いたのは…彼の方、よ」

口の中の異物を胃液と唾液に混ぜて、地の吐瀉物へ垂らすように吐き出し。
息を整える。痛みに意識を向けないように。

「違うわ。私の、独断よ」

たまたま火遊びの相手が、ファミリーに害を生した男だったというだけ。
ここに誰の命令も介在しない。この殺しだけは、自分だけの責任だ。

話していれば、あなたが携帯を取り出したものだから。勘がまずい、とでも告げたのか。
強く地面を蹴って、諸共地面に叩きつけられるよう飛びかかる。
携帯を取り落としてしまえばいい、と。不意をつく形で。
ここで捕まるわけには、いかないのだ。
(-196) 2023/09/29(Fri) 17:23:04

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 路地の花 フィオレ

>>5:-581
「ああ、いつだって俺の子猫ちゃんのおねだりは歓迎だ」

何処かの噂で聞けば、この男は部下を持つのを嫌がっている。
本当に誰かを抱えるのは苦手で、責任を取るのも面倒くさくて仕方ない。

それでも貴方だけは簡単には手放してやらないと、貴方の意志を大事にしながら共に歩かせると決めたのだ。
誰かに言われたからでもなかった、後で――誰かさんに言われてしまうが、そんな背中を押す言葉なんていらなくて。

「頼むぞー。一番が自分だからな。
 俺はちゃんと、……お前が帰ってくる場所を守ってやるよ」

いつかその場所が自分自身にならなくなっても見守り続けよう。
この場所を離れたくないというのならずっと傍に置き続けよう。

貴方は自分の部下で、自分は貴方の上司だ。
血の掟などなくとも絶対の誓いをここに、そう信頼を込めて貴方の額に口づけを落とした。
(-200) 2023/09/29(Fri) 17:47:22

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ


──貴方が初めて人を撃ってから数日後の夜。

其方のスマートフォンに着信がひとつ。
非通知、或いは『公衆電話Telefono pubblico』と表記されたそれに出てくれるのなら、聞き慣れた弟の声がしたことだろう。
用件としては短い、『今夜どこかで会えないかな』。

承諾してくれたのなら貴方が指定してくれた場所へ。
場所の指定が無ければ昔二人で遊んだことのある公園へ。

昼と比べれば人気のない場で、弟は貴方が来るのを待っている。
黒いパーカーのフードを被り、ぼんやりと月を見上げていた。
(-235) 2023/09/29(Fri) 22:28:02

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ

「ああ、すぐに出るさ」

嘘は言わない。

「そう、俺は嘘は言わねえよ。
 まぁお前は特別だ」

嘘を言う。

「──そうそう、ここに来る前、ちょうど荷物送ったから。
 じき届くと思う。
 まあ、適当に受け取ってくれ」

いつものこと。

「──ああ。
 まあ、…色々、気を付けてな」

いつもでないこと。


手を振って、その背中を見送る。
はあ、と息を吐いて、


「じゃあなあ」




(1/2)
(-236) 2023/09/29(Fri) 22:39:38

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ


翌日、あなたがいない時だろうか、荷物が届く。
入っているのは、口紅が一本。
色々悩んだ結果、あなたに似合うかもわからずに選ばれたに違いない、
オレンジのシアーリップ。
どういう意図で選んだのかも何も書いていないままだ。

──いつものように。

(2/2)
(-237) 2023/09/29(Fri) 22:40:04

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、う…、!」

注射器の針を避けるような動きをしたばかりに、下手にその拳を受け止める形になる。ゴキ、と嫌な音がしたような気がした。
地についた肘に、強い痛み。
全身の痛みに、意識が持っていかれそうで。
気力でもって、なんとか耐えている形。立ち上がろうとした格好のまま、脂汗を浮かべている。

「っ、…はぁ……先に、不義理を働いたのは…彼の方、よ」

口の中の異物を胃液と唾液に混ぜて、地の吐瀉物へ垂らすように吐き出し。
息を整える。痛みに意識を向けないように。

「違うわ。私の、独断よ」

たまたま火遊びの相手が、ファミリーに害を生した男だったというだけ。
ここに誰の命令も介在しない。この殺しだけは、自分だけの責任だ。

話していれば、あなたが携帯を取り出したものだから。勘がまずい、とでも告げたのか。
立ち上がろうとしていた格好から強く地面を蹴って、諸共地面に叩きつけられるよう飛びかかる。
携帯を取り落としてしまえばいい、と。不意をつく形で。
痛む身体も、男女の対格差も考えない。がむしゃらに仕掛けたお粗末なものではあったけれど。

ここで捕まるわけには、いかないのだ。
(-241) 2023/09/29(Fri) 23:09:48

【人】 路地の花 フィオレ

>>78 ロメオ

悪戯小僧には、目を細めて悪い女ぶった笑みを返す。
こどもっぽい仕草が、なんだか今は一番似合う気がしたのだ。

「片っ端から気になるもの買ってみちゃう?
 出来立てのお惣菜とか、お店の人の今日のおすすめとか!」

今なら何だかいいものと出会えそうな気がしたから。
あなたが運転席に戻っても、後部座席に居座ったまま。
体は起こして、白いクッションを抱きかかえる。
キャップをかぶり直して、アクティブなスポーツレディの装いをもう一度。

「うん、いつでも行けるわよ」
「安全運転で、でもぱっと済ませちゃいましょっ」

吹っ切れたような顔で、楽しそうに笑ってみせた。

#BlackAndWhiteMovie
(84) 2023/09/29(Fri) 23:27:25

【妖】 路地の花 フィオレ

じゃあ後で手伝うわね、なんて会話をしたかもしれない。
この女に任せると、捨てようと思っていた物をいくつか持って帰られるかもしれないけれど。
それはそれとして。

「お気の毒様ねえ」
「まあ、警察も上がああなった以上はドタバタ騒ぎもやむなし……っていうか。
 それくらいで済んでよかったって感じじゃない?書類仕事で済むなら、それほどの痛手でもないでしょうしね」

署長代理とやらが捕まることで、丸く収まっているならいいことなのだろうけれど。
自分が撃ち抜いた彼の事も公になっている。結構な地位にいたらしいと聞いたから。
警察内部の事情に疎い女は、実際のところどうなの?と聞いてみている。

落ち着かない様子をちらりとみて、にまと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「怪我人は大人しくしてて下さ〜い」と楽しそうに口にして。
鼻歌まじりにデリのパックを開けていく。
チーズとろけるピザに熱々揚げたてのアランチーニ。ジューシーなポルケッタ、パリパリのパネッレにほくほくクロッケー……本当に片っ端から屋台飯を買ってきたようなラインナップ。
結局こういうものが一番おいしいのだ。

「まあそれもそうなんだけど。
 テオが見せたくないものは、無理に見たくないってだけ」

嫌な思いさせたくないし。気を遣ってくれてるのを無碍にはしたくないし。

「できないことはないか、じゃないのっ」
「もし難しそうなら私の片手をテオだと思って乾杯するから」

どういう有様かは知らないけど。無理してグラスを落としたり、不安定になってもいけないし。
ちゃんと持てる状態でないと、この女は折れなさそうだ。
($3) 2023/09/30(Sat) 0:56:35

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

半端に立ち上がった姿勢では男の頭の位置も低かったはずだ。
身体ごと突進すれば胸あたり、或いは運良く顔面に入った・・・かもしれない。がつん、ともどすん、ともつかない音が大きく鳴って、男の身体がよろめいた。

けれど、それでも。重みの差というものは大きく。
そもそも筋肉量だって随分違う。よろめく以上のことは起こらず、しかし目論見通り携帯は軽い音を立てて地面を転がっていった。
男が顔を顰めたのが至近で見えたろう。鋭い犬歯が剥き出しになり、チ、と舌打ちが寄越される。
苛立ちにかっと燃える瞳は金で、温度の上昇がよく分かった。

貴方は男の胸元に埋まっているだろうか。
未だに組み付いて離さないでいるだろうか。それをラッキーだなんだと思う遊び心が男にあったなら、こんな出会い方はしなかっただろう。
生真面目で四角四面で実直な男は、貴方の両頬を両手で掴む。
けれどそれは整ったかんばせを眺めるためでも、勿論口付けのためでもない。

「動くなよ」

​────ごん。

声の直後、仕返しとばかりに硬い音と感触が響く。
額と額を打ち付ける音。貴方は上を向いていたから、首にかかった負担も大きいはずだ。
それで腕が緩むなら突き飛ばして立ち上がるだろう。じんじんとこちらの頭も痛んでいるけれど、背に腹はかえられない。転がした携帯、或いは手錠​
──今は持っていないのだが──
を探す隙を見せた。
(-255) 2023/09/30(Sat) 2:07:53

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ

公衆電話からの着信に、怪訝そうな顔。
怪しい相手ならすぐに切ればいい、と通話ボタンを押して。声を聞けばすぐに、愛しい弟のものだと分かったものだから。

あなたから会えないかと打診があったのならそれを拒むことは絶対にない。
公衆電話からかかってきたのだから、もし何かあったら連絡をこちらから取れないだろうしと。
場所の指定を結局委ねて。

夜、月を見上げるあなたの元に駆け寄る足音が一つ。

「───フレッド!」

名前を呼んで、駆け寄ってくる。
まだ顔も見えていないあなたを、そうであると確証があるかのように。
(-264) 2023/09/30(Sat) 3:41:26

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

女の身体はあなたの胸元に勢いをつけてぶつかって。
あなたのことを地に伏せることは叶わなかったけれど。
カシャン、と石畳に携帯の落ちる音が耳に入る。
目論見は上手く行った。

「は、あは……これ、で……」

少しは時間稼ぎになっただろうか。
苛立ちの色を見せるあなたの顔を見て、"してやったり"といった表情を見せて。
しかしすぐに、その顔も眉を寄せ 苦痛のそれに変わっていく。
痛みが、どっと襲ってくる。
腹も、肘も、背中も喉も。痛みが、戻ってきて。
立っているのもやっとなそれらに、女は"あなたに掴まっているしかない"。
縋るように、そうしている。だから。

「っ、が……!?」


頬は容易に捕らえられる。
痛みにぼんやりとした頭が、あなたを見上げて。
強い衝撃。
ノイズが走る。
ぐら、と脳が揺れて。縋っていた腕の力が抜ける。
今度はあなたの思惑通りに、突き飛ばされる。尻もちを着く前に、なんとか踏ん張って。

もう、後は意地だった。
あなたが自分の携帯を拾いに行こうとしたのなら、無防備な尻ポケットに手を伸ばす。
彼女自身の携帯だけでも返してもらおう、とでも言わんばかりに。
ぐらりと揺れる体が、ふらふらとあなたの背後に近付いていく。

これさえあればあとは、逃げるだけなのだから。
(-267) 2023/09/30(Sat) 4:12:02

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

名を呼ぶ声を聞けば弾かれたようにそちらへと顔を向けて。

「──ねえさん!」


珍しくこちらから両腕を伸ばし、駆け寄ってきてくれた貴方をぎゅうっと強く抱きしめることだろう。
伝えたいことがある、言いたいことがある。その為に呼んだくせに。
言葉はすぐに出てこなかった、ただ細い肩に顔を埋めて。

「…………フィオねえ……」


その存在を噛み締めるように、そのぬくもりを確かめるように、もう一度呼んだ。
抵抗がなければ少しの間そのままでいて、とはいえその内にはちゃんと顔を上げ貴方を解放することだろう。

「……あはは、話がしたくて呼んだのに、会えたの嬉しくて全部吹き飛びそうになっちゃった。ごめんね」

「ええと……あのさ。
 オレ、家を出たんだ。それでその内、街も出ようと思ってる。
 色々あって……なんていうか、ニーノは死んだことになって、それで今後はフレッドとして生きていこうと思うんだけど。
 死人が歩いてたらマズイからそのへんのね、調整、それから自分探し……?うん、とりあえずそんな感じで」

「だからねえさんともちゃんと落ち着いて会いたかった。
 ……急に、いろいろごめん」

ひとまずは随所奇妙なところがあっただろう理由の説明をして、とりあえずの貴方の様子を伺っては表情を覗き見る。
(-309) 2023/09/30(Sat) 14:57:56

【妖】 路地の花 フィオレ

優秀な人は引く手数多でいいことねえ、なんて言う。
その分頼られて大変なのだろうけど。

「そう。妥当な処分が下るといいわね」

下手人の捜索が始まっていると聞けば、少しだけ目をそらすようにして。
それでも、それ以上の動揺はない。
協力者がうまくやってくれているだろうから、よほどのことがなければ足がつくこともないだろう。
そして何より、目の前の彼に知られたくはないものだったから。

あの時のことを見られていたなんて、彼女には知る由もないのだ。


「もう!前から尊重はしてたと思うんだけどっ」
「あなたが何してようと勝手に喜んでる女なんだから。
 まあ……しつこく付きまとってるところを言ってるなら、たまには放っておけって言うのも分かるけど」
「不機嫌になったくらいで離れるような女、つまんないでしょ」

黙って近くにいるくらいはするのだろうけど。
「病人食の方が好みだった?」なんて揶揄いながら。

「それなら許してあげる。軽めのグラス選んだから、そんなに力入れなくていいわよ」

それじゃあ、と気を取り直して。

「お疲れ様、テオ。乾杯〜」

テーブルの上で、グラス同士をぶつけ合うのだろう。軽い音が響いた。
($5) 2023/09/30(Sat) 16:56:31

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ

「あら……珍しい、フレッドの方から来てくれるなんて」

あなたがぎゅうと強く抱き着くと、驚いたような顔をするけれど。
すぐに穏やかな笑みを浮かべて、少しだけ低い位置にあるその頭を撫でてやる。
フィオねえだよ、と優しい声で口にして。
あなたが熱を出してしばらく会えなかったあとに、久し振りに再開するとこんなふうに顔を埋めてくれたっけ。なんて懐かしく思いつつ。

「解放されたばっかりなんだもの、私だってこうしたかったわ」
「だから気にしないで、ね」

ちょっと座ろうか、とベンチを指して。
話が短くたって、まだ出所したばかりなのだ。体力が心配だ。

そうして落ち着いた状態で、あなたの話を聞くことになるのだろう。
うん、うん、と口を挟まずに相槌を打ちながら。だんだんと表情は曇っていく。

「そう」
「街を、出るんだ。……気軽には、会えなくなっちゃうのね」

寂しいな、と。飲み込めずにいた言葉は素直に口をついて。
しょうがないことだとは分かっているのだけれど。

「でも、フレッドが決めたことなんだもんね」
「お姉ちゃんなら、応援しないといけないよね」
(-320) 2023/09/30(Sat) 17:47:57

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

強く打ちつけたことでずれてしまった眼鏡の位置を直すとか、
連絡のために携帯をまた拾い上げようとするだとか、
今は手にしていない手錠を咄嗟に探す仕草だとか。
そこここに充分な隙があって、男の手慣れなさ・・・・・を示していた。

雑に突っ込まれたそれを奪い取るのは難しくないだろう。
先程とは違いこの道は狭く、男は後ろを向いている。
振り向くのにかかる時間は、貴方の逃走に寄与するはずだ。


────当然、男は追いかけるだろうが。
仕返しに砂でもかけてやれば、更に時間は稼げるだろう。
(-326) 2023/09/30(Sat) 18:52:37

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

耳元で落ちる優し気な声は、昔から聞くそれとずっと変わりない。
この声がずっとあったからニーノを手放しても自分フレッドを思い出せる今がある。
その名を呼び続けてくれた感謝も込めて、抱きしめる腕の力は強かったのだろう。
同じ気持ちを抱いてくれていたと知れば安堵をしながら、指されたベンチに隣同士に座る。

「…………ううん」

「応援してくれたらさ、すっごくうれしいけれど。
 いやだなって怒ってくれてもいいんだよ。
 止めるのは難しい、んだけど……」

それでも感情に蓋をしていつか煮凝ってしまうのなら、今自分にぶちまけてくれたっていいとも思う。
自分だって寂しいから、隣に座る貴方の指先を左手で撫ぜた。

「……オレも弟だからって。
 ねえさんのすること全部に応援はきっとできないから」

そうしてぬくもりを感じながら開いた唇が伝えるのは。
あの日から貴方に話したかったこと、届けたかったもの。

[1/3]
(-353) 2023/09/30(Sat) 21:57:20

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

「ねえ、フィオねえはやっぱりさ……マフィア、なんだよね? 
 にいさんとおんなじ」

「あんまり何してるかって詳しくないけれど……誰かの命を奪うことも、あるんだよな。
 そういうのが必要なときがあったりとか。
 ……何かあったときに、そういう手段が取りやすかったり、とか」

脳裏に過るのは今でも思い出せる一瞬だ。
あの時酷く痛んだ胸がまだ疼く心地がする。
大事な人が、大事な人を撃ったこともそう。
……それから、もうひとつも。


「でも、オレはさ。
 そういうの、あんまりねえさんにしてほしくないって思う。
 人生の中で選択に悩んだときに……それが並ぶようになってほしくない」 

「オレは、そう思ってる。
 ……ねえさんが大事だから、思ってる」

綺麗ごとだけで生きていけないのは知っている。
憎しみや悲しみが簡単に片の付けられる感情ではないことも。
だからこれは貴方の行為を否定したいがために紡ぐのではない。
誰よりも大切に想う貴方の前だからこそ、これ以上を偽ることなどないように。

「だからねえさんのこと、応援できないこともあるんだ」
「…………でもね」

そうしてその先に、一番に伝えたいことを伝えられるように。

[2/3]
(-354) 2023/09/30(Sat) 21:58:15

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ


「もしねえさんがこれから先、何をしたって。
 どんな罪を犯すことがあったって──」

ぎゅう、と。
今このひと時だけは、誰よりも近くに自分がいる。
その証明をするみたいに手を強く握った。

「──オレの "だいすき" は変わらないから」

「辛くて苦しいときは、傍に居たいし。
 涙だって拭ってあげたい。
 世界で誰よりも、ねえさんの一番の味方で居たい」

今までみたいには簡単に会えなくなる。
涙落ちるときに傍にはいられないかもしれない。
だけどもしまた、貴方の心が暗闇に落ちることがあるとき。
今のこの瞬間が微かでも光を届けられたらいいと、願って。

「そう思っている弟がいるってこと。
 離れてもずっと……忘れないでいてねって」

「伝えたかったんだ、今日」

そうして笑みを浮かべて、その顔を覗き込んだことだろうか。
受け取ってもらえるかなあ、そんな期待を込めた瞳を細めて。

[3/3]
(-356) 2023/09/30(Sat) 22:01:20

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、痛……」

頭を抑えながら。それでもこの機を逃すわけにはいかないと、あなたのポケットに入った携帯電話を抜き取って。
足元の砂利を砂ごと掬ってから、痛む身体を引きずって走り出す。
片腕に力が入らない。新たに連絡を入れる余裕はない。
だから、最初の場所へと戻るしかない。今ならまだ、迎えに来たはずの同僚がいるはずだ。

「はっ、……ッ!」

蹴り上げられた腹も鈍い痛みが走って、顔を顰める。
足が縺れそうになっても、ひたすらにこの路地を抜けだすために足を動かして。

あなたが迫ってきたところに、掬った砂を投げつけてやるのだろう。
狭い路地では、それを避けることも難しいはずだ。あなたのような体格ならなおさらのこと。
(-364) 2023/09/30(Sat) 23:06:01

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ

「……フレッドは自分探しをするんでしょ?
 だったら、やっぱり姉さんは止められないよ」
「寂しいけど、ずっと会えないわけじゃないのよね?」

指先に触れるあなたの体温に、ずっと触れていられたらななんて思うのだけど。
無理をしているわけではない。
今まで気軽に会えた分、会えない時間が増えるのは心配になるというだけで。

「………何で」

知ってるの、と。
あなたの口から出てくるとは思わなかった"マフィア"の言葉に目を見開いて。
驚愕したような様子で、あなたの顔を見ている。
知らないでいてほしかった、なんて言えるわけもなくて。
そのまま目を伏せてしまうのだけど。

うん、と相槌を打った。
自分だって、出来れば殺しはしたくない。
そう思っていたのだけれど。でも、どうしたってマフィアである以上は。
避けては通れない。もう、引き返せない。
胸がぎゅうと痛むのだ。

(-377) 2023/10/01(Sun) 8:57:33

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ


「……フレッド」

けれど、あなたがくれたのは否定の言葉ではない。
手に伝わる温もりも、真っ直ぐな言葉も。
自分がいつもそうするみたいに、寄り添うようなそれで。

「そんなこと言われたら……甘えちゃうよ、姉さん」
「忘れない、忘れるわけない。姉さんも、フレッドのこと大好きだもの」
「嫌いにならないでくれて、ありがとう」

だいすきなあなたが、自分を大好きなままでいてくれるというなら。
これ以上のことはない。
その顔は、眉こそ下がってはいるものの 笑みを浮かべていて。

胸を張れるような立場じゃなくてごめんね。
そんな言葉は飲み込まれた。
あなたはそんな言葉を望んでいないとわかっているから。
(-378) 2023/10/01(Sun) 8:58:57

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

「……甘えてよ。
 恩返しさせて、ねえさんがいたから生きてこられた」

大袈裟に言っているわけでは決してない。
貴方が居ないと本当に、生きてはこられなかっただろう。
早々に命を落としていただろうし、今も自分を見失っていた筈だ。
そんな大切な家族に少しでも返せるものがあるのなら。
躊躇うことなく差し出したいと強く願う。

「…………へへ。
 ちゃんと伝えられてよかった。
 オレもありがとう、言葉、受け取ってくれて」

「ずっと会えないわけじゃないよ。
 たまには帰って来ようって思ってるし……
 どこに行くか決めたら、ちゃんと伝えるし!」

まだ決まっていないけれど決まったその時には。
真っ先に貴方に伝えて、手紙を送り合ったりしてもいい。
会いに行ける距離なら遊びに来てもらったり、とか。
今はまだ見えていない先のことを思いながらも。

[1/2]
(-385) 2023/10/01(Sun) 12:17:06

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

「此処を出る前にはまた挨拶しに行く。
 あ、だから今日住んでるところ教えてね」

何を偽ることもなくよかった。
これからも、貴方の前ではずっと本当のままでいられることを安堵して。
圧し掛かっていた重荷が軽くなった心と共に笑い、そっと手を引き立ち上がるだろうか。

「……夜遅くに来てくれてありがとう。
 ええっと、送るよ、……ボディガード?うん。
 もうちょっと話したいし」

こんな夜道を一人で帰らせるわけにはいかないからと言葉を添える。
にいさんにだって、色々と任されたしなと頭の隅。
近くでずっと支えるのは難しそうだが、自分なりにできることをこれからも貴方へと贈っていきたい。
そんな考えは今は一先ず胸の内に秘め、貴方が了承してくれるのなら仲良く手を繋いだままに歩き始めることだろうか。
輝く月と瞬く星だけが、寄り添う姉弟の暖かな絆を見守っていた。


──例え、立つ場所がこれから先も違うところにあったとして。
それでも男は家族を、あなたを、愛している。
不変などないのが世の常だとして、
そんなもの関係ないって笑い飛ばせるぐらい。
この感情だけはいつか最期を迎えるそのときまで変わったりしない。

いつの日か貴方という花が教えてくれた愛の強さを胸に抱き。
男はこの先も塞ぐことのない瞳に世界を映し──生きていく。


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(-386) 2023/10/01(Sun) 12:18:51

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

路地裏を知り尽くしている程度では貴方に分があった。
それでも“このあたり”に限ればおそらく互角だった。

だから男は油断した。
だから男は隙を見せた。
自負があったから、思考が鈍った。
鼠程度捕まえられると思っていた。

窮鼠は猫を噛むのだ。
投げつけられた砂はさしてダメージにならなかった。
それでも物体が迫れば目を守ろうとするのは反射の動作だ。
立ち止まった隙に貴方は角を曲がったかもしれない。最後の力を振り絞って走ったかもしれない。それだけの時間はきっとあった。
入り組んだ路地は分かれ道が多く、そのひとつひとつを確認するだけで時間を取る。

貴方は逃げた。
男は追った。
貴方は逃げるためだけに走った。
男は、貴方が自分から逃げている・・・・・・・・・のだと思った。
街に出るという選択肢を失念している。



だから。
男は貴方を見失ったのだろう。
建物の向こうから車の出る音だけが聞こえて、
ようやく気付いたころには遅かったのだ。
(-400) 2023/10/01(Sun) 16:11:56
フィオレは、気まぐれに、もらったリップを塗っている。似合う?なんて近くにいる彼に聞いたりして。
(a49) 2023/10/01(Sun) 20:38:38

フィオレは、なんとなく、予感がしたのだ。
(a52) 2023/10/01(Sun) 20:39:32

フィオレは、予感が、悪い方向に当たるなんて。この時は思っても見なかったのだけれど。
(a53) 2023/10/01(Sun) 20:48:31