人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



勝手に手渡されるものを突き返すのは難しい。
結局、こういうところが"悪役"になれないひとつなんだろう。
でもそれに後悔はない。後悔は、しない。

だから、君からの言葉贈り物。ちゃんと受け取るよ。

触れる肩。拒まれなかったことに安堵の息を吐き
海の色は視線だけが空に向いて、
少し、何かを考えるようにその双眸を閉じた。

「俺も、」

「………俺も、この街を出ようと考えているんだ。
 友人に頼めば、いい物件を探してくれそうなんでね」

A.C.Aに所属していた、それだけが理由じゃあない。
今の家は与えられたもの決められた場所で、職も与えられたもの決められた道で。
名前も、何もかもが"リヴィオ・アリオスト"のためのもので。

それは、愛されていたからじゃない。
引き取った以上、そうするしかなかったのだろう。
だから俺が俺として、彼らが彼らとして生きていくために、
今このタイミングで選ぶことが必要だった。

「………まぁ、だから」
「忘れることはないし、見守っている……が、」

(-370) 2023/10/01(Sun) 0:37:59

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



瞳を開き、深く、息を吸ってから。
吐いて、少し躊躇って、………それでも。

「──
暫く
、俺と一緒に暮らすかい?」

声にする。言葉にする。

自分を受け止めて受け入れてくれた人達のためにも。
抱いた本音や想いを語って、生きていこうと考えている。

これは、その一歩──のうちのひとつ。

「勿論、既に決まっているなら断ってくれて構わない。
 行き場がまだないならって話でね」

「……どうやら俺は、君のことが心配みたいだからさ」

ひとりで歩くのって、きっと大変だから。
その一時の支えを担い見届けて、満足に死ねたらいいなと。
狡い考えを笑顔に隠し、君の隣を
少しの間
歩こうとする。

「情けない俺も見せてしまうだろうけど、
 それは、……出来れば、許してくれると嬉しいな」
(-371) 2023/10/01(Sun) 0:39:15
リヴィオは、君と同じものを見ている。
(a37) 2023/10/01(Sun) 0:40:35

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



「あぁ、…約束、してくれ」

君には、ちゃんと"幸せになって欲しい"。
そしてこれは、身勝手な願いなんだろうと思う。
しかし、だとして。願わずにはいられない。
これは、仕方のないことだった。

だから、それでいい、そういうように頷いて。

「……君、言っても言わなくても同じじゃないか?
 約束してくれと言ったところだろう?」

「精々その時の俺に祈っててくれ。
 その約束はあまり、したくない」

君と俺は"対等"で、主と犬じゃあない。
気まぐれに消えた友人か知人か。
それを想って探すなど、やめておいた方がいい。

一方的に、身勝手に。
狡い言葉を並べ続けて、君を縛り付けるやつなんだ。
だけどそれが俺で、この約束を後悔することは一生、ない。

それでもきっとその時、俺は君のことを
考えずにはいられないのだろうなと──そう思うのだ。


「………さて、そろそろ俺は行くよ。
 伝えたいことは伝えられた」
(-373) 2023/10/01(Sun) 4:12:10

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → きみのとなり リヴィオ

「…同じじゃねえよ。」

唇を少し尖らせて。
ほんのちょっぴり、拗ねた顔。

「分かってて見送るのと
知らないうちに居なくなってるんじゃ、全然違う。
好きな奴が急に居なくなったら、心配する。それだけだ。」

そもそも、貴方が気づいたら居なくなるなんて
考えたくも無いのが本音だ。

それくらいには貴方の事を好いている。
守りたくて、笑っていて欲しくて、自分は此処に居ていいと
そう思って欲しいと願っている。


だからこれは、我が侭。
(-379) 2023/10/01(Sun) 10:59:18

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → きみのとなり リヴィオ

「怪我が治ったら、酒でも飲もうぜ。
ルチアーノを誘っても良い。」

貴方が去るのならば
男は見送る。次の約束新しい未来を取り付けながら。

「その時には、色々片付けておくからさ。」

警察は辞めないだろう。
まだやり残したことが多くあるし、何より――
そうしろと、背を押されたような気がしたから。
(-380) 2023/10/01(Sun) 11:07:39

【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ

どうやら貴方も同じように街を出るつもりらしい。
そんなところまでお揃いなんだなあって不思議な心地に微笑んでいたのだが。
躊躇いがちに何か言葉を続けようとしているの気付けば、なあにとでも言うみたいにその瞳を覗き込む。

なんでも言ってくれて構わない。
なんだって受け止めるつもりだ。
どんな言葉だって、隠さずにおしえて。

そう願い、続きを待っていた……ら。

「────……、……」

刹那、双眸がまあるく見開かれる。
何も言えず、貴方を見つめたまま、固まってしまって。

……思い出し、過る。
家を出たあの瞬間、どこまでも続く星空に。
途方のない孤独を感じたことを、寂しさを。
それでもおまじないを繰り返し、歩こうとしたことを。


提案が嫌だったわけじゃない。
むしろとてもうれしくて、堪らなくて、だからこそ。

──『大丈夫』がほどけてゆく。

あの夜みたいに一粒、また涙が落ちていった。

[1/2]
(-381) 2023/10/01(Sun) 11:25:18

【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ


「…………く、らす」


夜空を覆う厚い雲はもうないのに、
ぽたぽたと零れ行くそれは通り雨のよう。

「……せんぱいと、暮らし、たい」


感情が形となり溢れてからようやくに気付く。
本当はずっと、ずっと、苦しくて哀しかったんだ。

「オレ、……オレ、ほんとは、」


おまじないが解けた先にあるのはちっぽけな自分。
誰かの人生をなぞるために置き去りにされた、小さなこども。
そのありのままを隠さずに貴方に見せながら。


「………………ひとり、さみしくて、やだ……」



縋る先をようやくに見つけた指先は、
貴方の服の裾を強く握っていた。

[2/2]
(-382) 2023/10/01(Sun) 11:27:01

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



"同じじゃない"。
男はそう口にする君の顔を見て、翠を瞬かせる。

「……そうか、違うのか」

腕が自由なら、その手は口元を覆い
考えるような仕草をとっていたはずだ。

「………あまり、期待はしないで欲しい、が。
 ……メール一通くらいは送る、かもしれない」

約束は出来ない。約束にはしたくない。
その日がいつ来るかなんて、男にも分からないから。
くるりと身を反転させ、君に背を向ける。
そのまま扉まで歩いて、
来た時とは違い器用に扉を開いてから。

「………代わりに、その約束は叶えてもいい。
 そのために精々ルチアーノ友人を口説いてみてくれ」

「それじゃあ、ニコ──
また
ね」

ひらひらと、君に向け振る手はない。
それでも確かに未来の約束を結んで、君にまたを告げよう。

好きも嫌いも、愛も恋も分からない。
だけど君の気持ちは嬉しいと感じられたから、暫くは君と、
その関係を楽しんでいくのも悪くはないだろう。
(-387) 2023/10/01(Sun) 12:33:54

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



見開かれた双眸から落ちていく一粒を、
空に浮かぶ星々よりも綺麗だと感じたのは
君が君だからこそなんだろう。

「…あぁ──…一緒に居よう」

そうっと、大事な宝物に手を伸ばすみたいに
右手を伸ばして、君を軽く引き寄せようとする。

もしも君が拒まずにいるならきっと
間の子猫はにゃあと鳴いて、まぁるい瞳をこちらに向ける。
だから男は、少しだけ許して欲しいなと子猫に微笑んで、
夜空の下、二人と一匹で熱を分け合うのだ。

「哀しい時は泣いていい。苦しい時は吐き出していい。
 俺に抱えられるものはきっとそう多くもないけど」

「俺の前では大丈夫じゃなくて隠さずに甘えていいんだよ」

ほら、シンデレラも時間になれば魔法は解けるだろう?
おまじない魔法はあくまでおまじない魔法で、
『永遠』に続く万能さを持つものじゃあない。

しゃんとして、着飾っているのも悪くはないけど、
ひとりの人間である俺達は、本当ありのままであっていいんだ。
 
(-388) 2023/10/01(Sun) 13:31:45

【置】 きみのとなり リヴィオ


好きも嫌いも、愛も恋も多くのものを知らないまま。
それでも、誰かを、何かを大切に出来る心はあった。

それは、こんな自分を慕ってくれた君やエル、
こんな自分に何となくでも贈り物をくれたダニエラ君、
こんな自分でも友人になってくれたルチアーノや、
同じ立場で、落ちる前に手を掴んでくれたニコのおかげだ。

破滅願望消えない思いはあるけど、
それでも、生きているうちくらいは前を向いていよう。

俺はもう、ただのリヴィオひとりの人間なのだから。
 
(L3) 2023/10/01(Sun) 13:33:26
公開: 2023/10/01(Sun) 13:35:00

【秘】 きみのとなり リヴィオ → マスター エリカ



向けられた瞳を感じながら
皿の中身がなくなるまでは、ただ、静かに。

君の、貴方の変わらない態度が確かな救いだった。
友人でもない、時折寄る店のマスターである貴方に、
俺は、確かに救われていたんだ。

そんな話、この先誰かに話すこともないだろうが。
抱いた思いは偽物じゃなく、ずっと確かなもの本物だった。


やがて、皿の中身がなくなる頃。
手にしていたスプーンを置いて、両の手を合わせる。

「ご馳走様でした」

その一言に含まれるものが僅かな感謝ではなく、
今までの全てを含むことを知っているのは、男だけ。
だけどそれでいい。これは男の、勝手な思いなのだから。


「……それじゃあエリカさんマスター、落ち着いたら、また」

そう言って立ち上がり、
きっちり値段分のお金を君に渡して扉に手をかける。
そうしてそのままその場を後にする──のではなく、
「…あ」と何かを思い出したように振り返り。

「今度は、具沢山のシチューを食べに来るよ」
 
(-389) 2023/10/01(Sun) 14:44:54
リヴィオは、貴方の作る料理を大層、気に入っている。
(a41) 2023/10/01(Sun) 14:45:57

リヴィオは、柔らかに微笑んでから店を後にする。それは──5日目の午後のことだった。
(a42) 2023/10/01(Sun) 14:47:07

【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ

熱い身体だ。
一人、いたな。そういうのが。
彼は治療を受けただろうか、と脳裏を過った。
受けたのなら、近くまた会う・・こともあるかもしれない。


歪む表情。
無敵・・とは程遠いその様子。
けれどそれを崩し切らないあたりが、この男の趣味の悪いところを擽った。
湿って熱い吐息が好かった。形のいい唇が引き攣るのが好かった。

ああ。
いいな。


片手は貴方の顎に。もう片手は転がしておいた器具に伸びる。
合わせた額はまるで慈しむような優しさでいて、愛情の発露のように鼻先が擦り寄せられる。
金色が海の底を微かに映している。
そして、そのまま。
貴方の震えを食らうように男の唇が押し付けられた。
丁寧さも何もない。欲情の荒っぽさもない。秘密を引きずり出そうとする求めもない。ただそれは、この男が、昼飯を食う時にするような仕草。
食に拘りのない獣が、食べられるものを見つけたから口をつけた。それだけの仕草だった。

(-390) 2023/10/01(Sun) 14:54:09

【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ

可哀想に・・・・。」

哀れむ声には愉快さが滲む。
もう一度軽く口づけて至近に寄せた。それからようやく身を離し、場違いな恭しさでその手を取った。
口を開く。閉じる。弧を描いた。もう一度、開く。

「ダニエラが」「心配ですか」
「それなら」
「貴方が頑張れば」
ましになる・・・・・かもしれませんね。」

嘘だ。
彼女の責めは、もう終わっている。
(-391) 2023/10/01(Sun) 14:54:24

【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ


「……えっ、ぅ……う…………」


貴方の言葉が魔法を解いてしまったから。
涙と嗚咽は堰を切ったように。
溢れてやまない、いろんな感情が。

 とうさま、本当は抱きしめて欲しかった。
 かあさま、本当はオレを見て欲しかった。
 叶うことなら最期まで、ずっと一緒にいたかった。


浮かび上がる多くの言葉は声にはならず。
ただ大きな背に手を回し、肩を震わせるだけ。

 不安だよ、不安でしかたないんだ。
 これからなにをしたらいいのかな。
 探しても本当に、オレはオレの道を見つけられるかな。


誰かに言いたくて、でも誰に言えばいいかもわからなかった。
心配をかけたくなくて、あなたたちを大切に想えば想うほど。
寝台上の笑顔に平気だと笑った、あの癖がずっと抜けなくて。

 ひとりになりたくない。
 だれかといっしょにいたい。
 でも何を返せるかな、オレなんにもないんだ。
 後悔しない? ねえ、せんぱい。


やっぱり自信なんて全然持てないんだ、自分に。
だけどもうどうにも、ぬくもりから離れられそうにはなかった。

[1/2]
(-392) 2023/10/01(Sun) 15:15:58

【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ


────ずび。


「………………」

涙が落ち着いた頃、鼻を啜って。
あまりに泣きじゃくりすぎて頭がぼんやりしている。
落ちてくる涙になんだこれとなっていた子猫もまた瞼を落としていて。
その姿をぼんやりと眺めた後、ゆるゆると顔を上げた。

「……いっぱい……泣いちゃって、ごめんなさい……」


とりあえず謝罪と、あと。

「あの……誘ってもらえたの、ほんと、うれしくて。
 だから、えっと……一緒、ぜひさせてください」

改めてお願いしてから、あと。

「いろいろ決めることあるよね。
 でもとりあえず、せんぱいの身体落ち着いてからかな。
 ……あ、しばらくって言ってたけれど、どれくらい?」

先程溢れた感情に引っ張られてできなかった確認をいくつか。
泣いて縋って、いたくなかったかな。
今更のように思えばそっと貴方の腕を撫でたりもしていた。

[2/2]
(-393) 2023/10/01(Sun) 15:17:10

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → きみのとなり リヴィオ

「ん、分かった。
アイツのことだ、すぐ乗るだろ。」

不測の事態になったらそれはそれ
男も飲み込むんだろう。
そこまでは、貴方に強制するつもりは無いと頷いた。

「ああ、またな、リヴィ。」

手を振れない貴方と反対に
此方は無事な方の手を振るだろう。

この関係にまだ名前は付けられないけれど
いつかきっと、素敵な未来につながると信じて
男は前を向いて歩くのを決めるのだった。
(-394) 2023/10/01(Sun) 15:36:21

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 法の下に イレネオ



合わせた額も、擦り寄せられる鼻先も。
己を映す金も……顔を歪める要因ではあれど、
動揺を誘うような何かはなかった。

ただ、そこから先が
良くなかった


「……………ん、ッ」

押し付けられた唇の感触に男は目を見開き、
瞳をより一層強く揺らす。

それはきっと、長い時間ではないのだろう。
だとして、この男にとってはそうではなくて、
落ちた右手をまた持ち上げ、
君の体にその手を当て
弱々しく
押し返そうとする。

「……ふ、……………」

動揺で思考がぐちゃぐちゃだ。
自分がどのような表情をしているかさえ分からない。

ただ、目の前の君だけを感じることしか出来なくて、
自らが零す声にどうしようもなく弱さを感じて、
そんな自分がとても、とても、
嫌で堪らなかった。


(-398) 2023/10/01(Sun) 15:55:39

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 法の下に イレネオ



やがて一度目が終わる頃、何かを言おうと開いた口は
二度目によって音もなくまた、閉じられてしまう。

体が失った酸素を求めて、激しく上下する。
自分は知らぬうちに息を止めていたのか。
そんなことをぼんやりとした思考の中、考えて。
取られた手を、僅かに虚ろな瞳が追いかける。

あぁ、心配だよ。だって俺が連れてきたんだ。
友人に任されたこともあるけど、俺自身が彼女を心配で。
ここはいい場所とは言えないが、それでも。
彼女には少し、少しでも──休んで、ほしくて。


ぐず、と……胸の奥で何かが渦巻いた。

愉快そうな声も、弧を描くその唇も。何もかもが
信用に値せず、提案に乗っていいことがあるとも思えない。
それでも、欠片でもそれが"本当"であるなら、

「………………わかっ、た」

首を、縦に振る以外に出来ることはなかった。

せめて彼女の左手の小指大切なものにだけは触れないでくれと、
愚かな男は愉しげに笑う君に──願いを乞うた。

宝物のように大切に撫でるあの仕草が深く、印象に残っていて。
あんな風に何かを大切に思う気持ちは──彼女から、貰ったものだったから。
(-399) 2023/10/01(Sun) 15:57:58

【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ

半端な抵抗はこれを煽るだけだ。
弱りを強調するだけの手はむしろこちらの勝利・・を知らせた。
取った手の熱さが愉快だった。冷たいよりよっぽどよかった。
命を甚振ることを、この男は楽しんでいる。


からん。音がして器具を床から攫った。
高尚な道具なんてない。手にした器具は飾り気のないペンチ。
貴方が耐えなければ、彼女の整えられた爪が、こんなもので台無しにされることになる。
もう終わったことだ。

従順な様を褒めてやりたくて、けれど空いている手がない。
仕方なくもう一度額を合わせてから、ゆっくりまばたきをした。
本当なんてここにはない。
提供された聴取内容も。
貴方が吐かされる“真実”も。
傍から見れば慈愛か、情欲に見えそうな男の態度も。
本当なんてひとつもない。ここにあるのは偽物ばかり
────痛みを除いて。


(-401) 2023/10/01(Sun) 17:33:43

【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ

はじめは右の小指・・から。
そこは彼女の宝物にもっとも遠い。

指先に単純なつくりの金属が宛がわれる。
塗り上げられた黒の表面がぐ、とひしゃげさせられる。

そして。





一気に、引き剥ぐ。
(-402) 2023/10/01(Sun) 17:34:49

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



君に手を伸ばしてしまったのは、
自分』を見てしまったからなのだろう。
多くの感情を隠し、縋れなかった先を知っている。
だから、そうなって欲しくはなくて。

君には真っ当に、真っ直ぐに、生きて欲しいと願って。
身勝手な願いのまま、
暫く
なんて半端に手を取って。
でも、後悔なんて、微塵も湧いてこなくて。

引き寄せた背を撫でながら、
逸らすことなくありのままの君を翠眼に映し出す。

誰に何を言えばいいのか分からない。
迷惑心配をかけたくない。
平気だと笑っていれば、きっと『大丈夫』だ。

本当の願い言葉を飲み込んで、
本当の不安感情を隠し続けて、
それでも『大丈夫』だと──真実を箱の中に閉じ込めた。

そんな人間を、俺はよく、知っている。
そうしてそれが"普通"ではないことも、理解している。

無敵だから『大丈夫』なんて、そんなこと、在りはしないのだ。
だけど、『何にもなかった俺空っぽでしかなかった自分』は、そうするしか選べなかった。


(-405) 2023/10/01(Sun) 18:32:03

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



涙が落ち着いて、君が顔を上げた頃。
男は君に気にしなくていいというように微笑んでいた。
謝罪にだって、首を横に振る。

涙というものはそうなのだと、知っているから。
泣かないことが強さじゃない。
だから、涙を流せるのなら我慢せず泣いたっていい。

「…勿論、一緒に行こう」

「決めることは……うん、少し友人に確認してみるよ。
 落ち着いてからだと君の暮らす場所に困るだろうし、
 それに、俺も今の家から早く移動がしたくてね」

ひとつひとつ、君の確認へ答えを返していく。
最後については少し、悩むように撫でられる腕を眺めて。

「それで期間は………そうだな、」

「…君が、一人で歩いていけるように本当に『大丈夫』になるまでかな。
 暫くとは言ったけど、あんまり詳しくは考えてないんだ」

1年か、5年か、あるいは10年か。

どれほどでそうなれるのかが分からない男は、
のんびりとした口調で、そんな答えを返すのだった。
(-406) 2023/10/01(Sun) 18:33:03

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 幕の中で イレネオ



煽るつもりなど、この男には微塵もなかった。
思考の乱れた頭では考えようもなかった。
ただ逃げたいと思う心が、そこにあっただけだ。

冷たい金属の音が響く。

何をされるかなんてもうとっくに、理解しているのだ。
こんなのはもう、取調という枠から外れていることだって。
最初から、そうではなかったことだって。
理解していて尚、逃れることは出来なかった。
君に、正しさを教えることなんて叶わなかった。


虚ろな瞳は天井に向いて、
合わさる額と金の瞳をぼんやりと眺めてから
離れていく君の影を見送った。

それでも、最後の抵抗だと言わんばかりに
君が居る方から視線を逸らし、その表情を隠そうとする。
引き結んだ口は不器用な笑みを懲りずに浮かべて、
宛てがわれた金属の感触を、指先に感じた。

痛みには、慣れている──けれど。


(-408) 2023/10/01(Sun) 19:13:27

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 幕の中で イレネオ



、ッ……
あ゛
あ゛
あ゛
ッ゛
ッ゛〜〜〜!!」


絶叫。ここまで出来る限り笑顔に隠して、
それで、苦痛さえも閉じ込めていたけれど。
どうしたって、抗えないものはある。

体が跳ねる、左手の指先が床を掻く。
足は
ダンッ
と床を叩いて、
右手の指先が君の手に縋るようにきゅうっと力が入る。
目を見開いて、流れる汗は床へと落ちて。
そうして、めいっぱい開いた翠から一粒の雫も落ちていく。

「ぅ、あ゛あ゛…ヒュッ、は………っふ、……あっ、あ゛」


泣けるような男ではなかった。
泣き方なんてとっくに忘れてしまった。
それでも、それは生理的なもので、止めようがない。

落ち着けようと大きく吸った息は、
カヒュッと男の喉から詰まるような音を鳴らした。

既に異常とも言えるほどに、堪えてきた痛みもあった。
だから、それら全てが集約し、爆ぜて。

そこから先はもう止められない。
それでも、君へと頷いた以上嘘には出来ない。
男は、真面目だった。それでいて、愚かだった。
(-409) 2023/10/01(Sun) 19:15:21

【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ


貴方が嫌がる顔は想像していなかったけれど。
変わらず微笑んでくれていることにはやっぱり安堵してしまった。
だから泣いたばかりの顔は無理に隠したりしないまま。
ひとつひとつ返る答えには頷いたり、相槌を打ったり。
思っているよりも早くその日は来るのかなとか考えたり。

していたところ、最後の期間については少しだけきょとんと瞬いた。
何かの想定があるからの暫く、だったのかと思ったけれど。
そういうわけじゃなかったらしい、なんだ、なるほど。
それからもう少し瞬きを繰り返した後、唐突に。

「……あはは、それじゃあ」

声を揺らし笑えば、腕を撫でる手を止めて。
貴方の瞳をじぃと見つめて、笑って。

[1/2]
(-414) 2023/10/01(Sun) 19:34:42

【秘】 夜明の先へ ニーノ → きみのとなり リヴィオ


「オレが大丈夫じゃないままなら、
 ずっと一緒にいてくれるんだ?」

「…………なんて」

なんて。
そんなのきっと困っちゃうだろうな、わかってる。
目を細めてからもう一度、貴方の肩へ額をとんと押し当てた。

「……じょ〜だん」「…………でも、ほんとかも」
「オレって甘えたらしいから、気を付けてね」


勿論貴方が大切な人と共に生きていきたいと、
望むような日が来るなら止めたりはしないのだけれど。
そんな言い方をされたら、そんな風に返したくなってしまった。
だってオレ今、一人で歩ける未来なんてうまく想像できないから。

みゃあ、と目を覚ました子猫が鳴く。
ちょっとずるい顔しているのバレたかな、内緒だよ。
そう伝えるみたいにちいさな額を指先で撫ぜて。

「じゃあ、今日はとりあえず帰ろっか。
 落ち着いてからじゃないっていっても、ちょっとでも早く身体治して欲しいから」

「家まで送るよ、せんぱい、……
 …………リヴィオさん?」

そうしてぱ、と顔を上げた頃、濡れた瞳はそのままに。
変わらず微笑みを浮かべていたことだろう、うれしげに。
 
[2/2]
(-415) 2023/10/01(Sun) 19:35:32

【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ



その声に。
男はぱっと口を抑えた。手の下の唇は笑みの形に歪んでいた。
自分の体温もかっと上がった気がした。それが男は不思議だった・・・・・・
だけれど、それをただ不思議がる大人しさは生憎持ち合わせていない。
男が持っているのは、ただその情動に身を任せる愚かな素直さだ。
剥がされた小指の爪を眺める。裏を表を返して見る。白、黒、赤の三色が人工の光を弾いて光った。くく、く、と喉から笑いが漏れる。

喘ぐように息をする貴方に目を映す。
時折は咳き込み、逃避にもならないように身を震わせる貴方を見る。
瞳はそのまま。
貴方の顔に向いたまま。
男は右薬指に手をかけた。

(-424) 2023/10/01(Sun) 20:31:38

【秘】 幕の中で イレネオ → きみのとなり リヴィオ

みち。


肉とその被膜が引き剥がされていく。

みち。みち。みち。


上下に裂かれる神経が悲鳴をあげる。


みち。みち。みち。みち。


壊れた玩具かなにかのように貴方が叫ぶ。
駄々をこねる赤子のように頭を振る。

「あはっ」


縋るように握り込まれる指。
瞳ごと溶けるように零れる涙。
男は笑っていた。


「はは……
ふ、
ふっ 、く」


笑っている。



ふ、
ふ、
あははっ、
あははは!」



壊されていく貴方の上で。
これはずっと、笑っていた。
笑っていた。
(-425) 2023/10/01(Sun) 20:33:42

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → きみのとなり リヴィオ



「ああ無駄だね、俺はしつこいんだ。
 ……心配するな。何があっても俺がついている」

貴方の事を望んでいる。
貴方の事を、まあ、愛している。
貴方の事を、守りたいと思っている。

その生が苦しい者でないように、楽に息が出来るように。
あなたがいつか安らぎの中で涙が流せるようになれば良い。

「何度言わせれば分かる、その顔が俺の願掛けだ。
 勿論、顔が潰れても、オーラはなくせんよ」

その終わりが見えている。
貴方に求められてはきっと叶えられてしまう。
望んでくれるというのなら、きっと悲しみながらも、
あなたに休んで欲しいとその穏やかな声は告げるのだ。
それはきっと一つの愛で、紛うことない情の形。

それでもまだ少し、あと少しこれから先の未来を、
平和を祈った語らいを思い出して、過ごしていこうじゃないか。

「勿論一緒に行くぞ、それまでに好きな店を探しとけ」
(-427) 2023/10/01(Sun) 20:34:41

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



何だか悪戯っ子のようだなと、
笑う君に少しだけ眉を下げて笑う。
答えは上手く返せなかったし、君もそれを分かってる。

自分はこの問いに困っているのだろうか。
それとも、それ以外もあるんだろうか。
なんだか綯い交ぜになったような感情に僅かに首を傾ける。
その間に肩にとん、と軽い衝撃を感じて。

言葉はまだ、返せない。
聞こえる小さな声に眉を下げたまま、また、笑った。

「………はは、…そうか」

そうしてそれ以上、言葉は出てこなかったから。
止まってしまった手でもう一度、君の背を撫でる。
自分は、そう長くその選択を取れないのだろうと思うけど。
だからといって、そうだと君に明かすのは、まだ先の話だ。

再び君が顔を上げる時、その言葉に頷いて。
回していた腕を外し、緩慢にベンチから立ち上がる。

「頑張って治療するよ、困ることも多いからね。
 君に迷惑をかけることもあるだろうけど……あぁそうだ。
 俺には色男で猫のエキスパートの友人がいてね。
 今度紹介するよ、家の話も彼にする予定だからさ」

「──それじゃあ、帰ろうか」
(-428) 2023/10/01(Sun) 20:37:56
リヴィオは、「ねぇ、ニーノ。………いや、えっと」
(a45) 2023/10/01(Sun) 20:38:03

リヴィオは、署内での"ニーノの話"を思い返して悩むような仕草。しかし、言葉は続く。
(a46) 2023/10/01(Sun) 20:38:11

リヴィオは、「俺達はまだ、お互いに知らないことも多いからさ。落ち着いたら話をしようか」
(a47) 2023/10/01(Sun) 20:38:21

リヴィオは、言えること、言えないことがあるだろうけど──それでも、話すべきことがあるから。
(a48) 2023/10/01(Sun) 20:38:31

リヴィオは、「あぁ、そうだ。晴空の下の散歩も忘れずに行こうね」
(a50) 2023/10/01(Sun) 20:38:41

リヴィオは、
暫く
は君と、君達と歩んでいくために、足並みを揃え歩んでいくのだった。
(a51) 2023/10/01(Sun) 20:39:32