人狼物語 三日月国


225 秀才ガリレオと歳星の姫

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:

全て表示


[犠牲者リスト]
とある書物

二日目

本日の生存者:モモイ、エウロパ、ユスティ以上3名



   「手伝ってくれたのは事実でしょ?
    私は君の手伝いが無かったら
    今日宿題を終わらせることは
    たぶん出来なかったと思う。
    丁寧に教えてもらっちゃったもん。

            
―――――それに、ね。」


  


 
   正しくあろうと努力した人は報われるべき。
   その信念に従うのなら、
   一番報われるべきは君だと思う。

   誰より努力して
   誰よりも長く魔法の腕を磨いているんだから。

  



   寮の部屋に戻ったらルームメイトはもう寝てた。
   私も寝ないとね。
   折角頑張って宿題を終わらせたのに
   寝坊して遅刻したら台無しだもん。

   ……今日はユスティと沢山一緒にいられて
   いっぱい話せて楽しかったし、嬉しかった。

   抱きしめられて、頭をなでられて。
   ユスティにとっては何でもないことかもしれないけど
   私にとってはそうじゃない。
   ドキドキして、……
幸せ
だな、って思って。

  



   
……やっぱり私はユスティが好きなんだ。

   
 


   
   この想いを伝えたら
   君に受け取ってもらえるかな。


   少しだけ縮まった気がする距離に甘えて
   私からももう少し、近づきたい。


  



   一輪のスターチスが手の中で咲く。
   変わらない思いを君へと伝えたいんだ。


            募る想いを抱えたまま
            私は眠りについた。

  



   翌日、私は珍しく寝坊せず起きた。
   ルームメイトのシトゥラはそんな私を見て
   雪でも降るんじゃない?って揶揄ってきた。 
 

   「えーー、失礼!
    私だって起きられる時あるもん!」
      

   むぅっとしながら言い返したものの、
   珍しいのは認めるんだ、って
   やっぱり笑われちゃった。

 



   和やかなやりとりをした後、授業に向かう。
   昨日頑張った宿題を提出したら
   先生には驚かれたけど、疑われはしなかった。
   むしろ褒められちゃった。
   
きっとユスティのおかげだね。

   これからもきちんと勉強するように、と
   念は押されたけど。

 



   ユスティのことを思い出してた私は
   複数の妬むような
   それでいて何かを企むような視線に気づかない。


  


   
   授業も滞りなく終わり、お昼休みになって。
   お昼ご飯は……
   
どうしよう、ユスティを誘ってみようかな?

   そう思いながら教室を出て、歩いていく。

   確かユスティのクラスは……どっちだっけ。
   きょろきょろしながら歩いていくと
   ユスティの姿を見つけた。
   隣には女の子がいて。
   楽しそうに二人で談笑している。

  



   ……………友達、なのかな。
   私にすら友達がいるんだから
   ユスティにだって……。

   そうだと思っていたい。
   都合のいい解釈をしたいのに。


  



   その解釈を否定するかのように
   ユスティと女の子の距離が縮まっていく。
   まるで恋人みたいに。


  



   見たくない、嫌だと思うのに
   一歩も動けない、目が離せない。
   全部、見てしまった。
   二人がキスするところも、
   女の子が私の視線に気づいて
   意味ありげにこちらを見て嗤ったところも。


  



   もしかしたらもっと仲良くなれるかも、なんて。
   ただの思い上がりだったんだ。

   ユスティは優しいんだもん。
   きっと君にとっては何でもなかったのに
   私が勝手に舞い上がって思い違いをして。

   勘違いされちゃうよ、なんて言って
   勘違いしてたの、私の方だったんだ。


  



   ユスティには好きな人がいたんだね
   おめでとう、って言えたら、いいのに。


   言えない。言えない自分が嫌だ。
   大好きな人の傍に居る女の子に嫉妬してしまう。


  




     
世界が黒く染まっていく。



  



   Wよかったね。

       その調子で、これからも頑張るといいよ。W


  




   あぁ、そう、だったね。
   私、嫌われてたんだったね……

   よぎる記憶はあの頃の物。
   拒絶されてしまった日の、悲しい記憶。



   ごめんね、君は近づかないようにしてたんだろうに
   私はそれを無視して何度も近づいて。


  




   
―――――もう、近づかないから。



  



   
胸が痛い。
頭が痛い。

   溢れる涙を止められないままに
   私はふらつきながらも走り出して。
   学校の敷地の外にある森へと行ってしまう。

   
   ひとりになった私は
   力が抜けたようにその場に座り込む。


   だめだ、これでは前と同じことをしてしまう。
   ぼんやりとそう思いながらも
   昂った感情を抑えることなんて出来なくて
   周りの景色に雪がちらつき始める。

   抑えなきゃ、あの時みたいに深呼吸して……。


  



   …………どうして、
   君は何も教えてくれなかったんだろう。
   恋人がいるなら、そう言ってくれてたら。



   落ち着けるはずがなかった。
   心の中を示すかのように風が吹き荒れて
   着けていた青い花の髪飾りが遠くへ飛ばされる。


  



   
抑えなきゃ、という思いより

   もうどうでもいいかも、なんて
   自棄になる気持ちが勝って
   風も雪も勢いを増していく。


   立っていられないほどの風に
   吹き飛ばされて、思いっきり頭を打って
   血と魔力が混ざって流れ出てしまう。


   意識が朦朧としてきても、
   まだ、魔力の流れを抑えられず。


 



   こんな状況になっても考えているのは
   自分の身の安全なんかじゃなくて。


   
「ユスティ、私は君のことが―――。」*


  



   自分の言ってることが滑稽なことは
   自分でも良くわかっている。

   力を持つことが罪では無いのなら
   なぜ自分はここまでエウロパに嫉妬し
   彼女に冷たく当たっているのか。


   力を正しく扱わないという糾弾ならまだしも
   持つ力そのものへ向けている悪いのは自分なのだ。

   みっとなく劣等感を剥き出しにして
   守りたいはずの子を突き放して
   ユスティもまた、人間としての器はもろかった。






   寮に戻るとユスティは一人腕を抑える。

   流れた魔力が外に出ようと血管を巡り
   その流れは痛みとなって襲いかかる。

   ルームメイトがいると勉強に集中できないと
   無理を言って一人部屋にしてもらったおかげで
   この無茶がバレることは無いはずだ。

   人知れず時間をかけて、修復していけばいい。







   彼女には決して悟られるな。


         この心は決して知られてはならない。