［手首を掴まれていてかつ、抵抗する気もないのだから
　全ては彼の思うがままに。
　下着の留め具はするりと外れ、
　支えるもののなくなった双丘は重力のとおりにゆるりと崩れる。］

　　ぁ、や、……っ

［麗央くんの感想は耳に届いていたけれど、
　指が、舌が、羞恥心をも溶かしてゆく。
　下腹部を通り過ぎていった指が向かう先は───…

　もし、内股のその奥へ、指が伸びるのであれば
　くちゅ、と音がしそうな程、
　愛しい人を、待っていた］*

［内腿を触りながら下着の隙間から潤んだところへ触れて、指を1本入れてくちゅくちゅと中を探り、準備ができているのを知れば、拘束していた両腕を離す。

　裸身を飾る最後の1枚を剥ぎ取って、もどかしく自分も全部脱いで。こそこそとゴムを装着して。

　彼女の膝の間に割り込んで、お互いの最も熱いところを擦り合わせると、くちゅ、と淫靡な音がした。］

俺のが真珠のに当たってるの、わかる？── いくよ。

［ピアスの穴を開ける時と同じ言葉を合図に、奥へと突き入れる。

　包み込まれるような、締め付けられるような感覚。中を思うように掻き回したい気持ちを抑え］

動いていい？

［答えを待ってから抽挿を始める。最初はゆっくりと、やがて勢いがつき始め。

　呼吸が荒く、汗が飛び散って、頭が痺れて、やがて真っ白に］

真珠、愛してる。

［うわ言のように言って、果てて。彼女の上に覆いかぶさった。そのままハアハアと、呼吸を整える*］

［両の手が自由になっても、位置が少し変わっただけ。
　腕を下ろし、顔の横あたりのシーツをきゅっと握る。

　2人の色々を守る為の薄膜1枚を装着する頃には、
　もうすっかり、麗央くんを迎え入れる準備は整っていた。

　そっと其れが宛てがわれると、
　お腹の奥の奥でずくり、欲が音を立てて。
　貫かれる直前の宣告にまた、心臓が高鳴った。］

　　う、ぁ………ぁあ

［しっかりと解され、十分すぎるほどの蜜で濡れた其処は
　すんなりと彼を迎え入れるどころか、
　今までに感じたことがないほどの快感を伴って。
　挿入ってきた彼を収縮し締め付けたのは無意識に。］

　　ん……、……して、

［熱い吐息と、艶めいた声の合間に返答を。
　貫かれただけでは足りないと、はしたなくも欲して、
　ゆるりと動かれただけでも、声が抑えられなくて。

　律動に合わせて声が漏れ、腰が揺れ、ぐちゅりと淫猥な音がする。
　息が上がって、溶かされてしまいそうで……登り詰めて。
　達したのは、きっと、同時に。］

　　──っぁ、れお、く、………す……き、

［ぎゅっと抱き締めて、強く…もっと強く。
　愛しい人と同じように肩で呼吸をしながら。

　………でも、ちょっと、今、
　恥ずかしさで視線が合わせられない］*

［呼吸が落ち着いたら、身を起こして後始末を。お互い軽くシャワーで汗を流してから真珠のピアスホールを消毒する。］

今日は、裸のまま抱き合って寝ようよ。

［恥ずかしいというのなら、服は着て。抱き合って眠るのは譲らない。］

身体辛くない？

［労るように肩をさすって。］

真珠のこと、もっと愛しくなった。ありがとう、おやすみ。

［額と頬と唇に、おやすみのキスを。
　首筋に顔を埋め、彼女の匂いを堪能してから目を閉じた。

　先に起きて、愛しい人の寝顔を見たいと思いながら**］

　　……麗央くんの、お嫁さんになりたい。

［今すぐじゃなくてもいいよ。でも、お約束は、してね。］*

ん、大学卒業したらね。

［花束ごと真珠を抱きしめれば弾みで帽子が落ちて。
　いきなりのプロポーズで周囲の注目を集めていた事もあり、それまでの羨ましいとかおめでとうとかの雰囲気が、阿鼻叫喚の大騒ぎになった。］

逃げよう。

［真珠の手を引いて、走り出し］

今日は帰さないよ。

［待たせていたタクシーに飛び乗った**］

［そう言えばここ大学の正門だった。
　──まあ、女子大とは言え男女交際に煩い学校ではないから、
　それは良いんだけど。いや、そうじゃない。

　衆目を集めただけなら、まだいい。
　でも！でも！！どうして！！
　そこで帽子を落としてしまったの！！！！］

［麗央くんが待たせていたタクシーまで
　阿鼻叫喚のパニックの中を縫って逃げる。

　いや、アクション映画じゃないんだから。
　──今なら女優にでもなれそうな気がしたわ。無理か。

　タクシーに飛び乗って、逃げる。］

　　………か、帰るに帰れないよっ！
　　こ、これ、SNSとか、やばいやつじゃないの……？？

［三上麗央のプロポーズは瞬く間に広がるだろう。
　女子の情報ネットワークを舐めてはいけない。
　真偽の程が定かにはならないだろうということは、
　幸なのか、不幸なのか。］

［SNSを伝わり広まった情報は妹の手を通じて両親にも渡るだろう。
　長女から突如送られてきた「ごめん、今日帰れない」という
　メッセージの正体に気付くのは、いつ頃か。

　どちらにせよ帰れないのだから、と
　ある程度で連絡を放棄して、
　ついでにSNSも全部放り出して

　彼氏改め婚約者となった人の腕の中で、幸せなひとときを、ね］*