「うわぁぁぁぁん！！セリフかーんーだー！！」

頭をクッションに埋めてため息をつく。女優業やっと板についてきたのに、セリフ噛むなんて……ちょっと落ち込んでたら、同じ学校にいた男友達から連絡が入った。

「もしもし？」
『今、いいだろうか』
「う、うん……どした？」

ちょっとドキッとした。最近彼との関係が曖昧だから、変に意識しちゃう。学校で初めて会った時、目を奪われた彼。整った顔なんだから当たり前でしょ！！

『今度、いちご狩り行かないかと、誘いたくてだな』
「あ、いつものメンバーで？いいよいいよ。いつ？」

同期数人でよく出かけるから、いきなりの誘いでも動じることはない、と言いたいけど女子の比率が男子に比べて低い。だって偶に男子4人で女子が私だけの時あるくらいだし？

『今度の日曜日、11時から……どうだろうか』
「オッケー。任せて！それじゃ、待ち合わせは現地でもいい？」
『最寄駅で、待ち合わせないか』
「ん？いいよん。それじゃ、アドレスとか別途教えてねー」
『チカ！』

切りそうになったら、いつもとは違う、大きくて焦った声。

「な、なぁに？」
『その…ドラマの撮影、頑張ってくれ』
「あ、ありがとう……！」

すぐに優しい声が、私に勇気をくれる。そのまま、バイバイと言ってお互い一緒に切った。なんだか古いなぁ。

「くーるーみーさーーーーん」

何もうまく行かないときは甘いものに限る。
久留美さんの甘いものが、欠かせない。

「どうしたの？」
「新しい役がうまく行かないんですよー」
「あらあら、どういう役なの？」

今回の役の話を軽くすると、くすりと笑われてしまった。

「私も、そのゲームやったことあるんだぁ」
「え、どうでした？」
「私も、すっごく疑われたの」
「やっぱり？」
「チカちゃんほどじゃないよ。私バレてたからのんびり生きながらえてたともいうかなぁ。あ、はい。ケーキと紅茶」

狼やってたんだって、久留美さん。
羨ましいなぁ……って思いながら、出してもらったケーキもぐもぐ。あーーーー生き返る。

「あーーーーーんんんん」
「チカちゃんお疲れだねぇ。はい、もっと甘いもの食べようねー」

疲れた……
え、疲れた……

「久留美さぁん……」
「んー……あ、伊織ちゃん？！？！」
「伊織？！？！」
「レアキャラ扱いしないで」

伊織抱っこしようとしたら、手をぺちんされたぁぁ。
で、荒れてる理由言ったらこっちからも笑われた？！

「それ、姉がやってたよ」
「うそん」
「姉も大変そうだった」
「大変じゃなかった人とかいるの……」
「さぁ？」

「自信家の役やってるだけだもん、私そこまで自信持ってるわけじゃない」
「チカちゃん、がんばれ。僕は実際にやったことあるわけじゃないから」
「伊織ぃ……」
「はいはい、久留美ちゃんチカちゃんのお気に入りつくってくれる？」
「生クリーム泡立ててからすぐ作るね！」
「久留美さん好き……」