人狼物語 三日月国


82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】

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テンガン! 今日がお前の命日だ!

──豪華客船の旅、五日目。女は電話を鑑賞室からかけていた。
人払いが済んだ共犯者たちの為の隠れ家。
まだ、VIPたちが使用するカメラの映像も繋いでいない頃。

あーあ、バラしちゃった。
多分私はタダじゃ済まないよね、これ。
ざわつく関係者とか賓客とかいるのだろう。焦る奴とかいるのかな。

それって、とっても──

「──反吐が出るほど気持ちがいい。
私が妬み続けた到底敵わない偉そうな人間の厚いツラを崩せるなんて、最高じゃないか」


悠々と特等席に座ってこちらを眺める悪趣味な賓客が妬ましい。
不快でも苛立ちでもつまらなさでも。自分を見下ろしてくる人間の顔を曇らせることが出来るならそれでいい。

「…………ぁは、あははっ、あははははは!」

抑えきれない。笑いが止まらない。もう、笑うしかない。
今まで、ずっとずっと我慢してきたのに。
男の声が、頭に響く。

" 盛り上げて、先導して、昂らせて、
 巻き込んで、喝采を受け、注目させる。
 それこそが賭けに興じる者の本懐だろうがよ。"


「……やったよ。ああ、やってやったとも」

賭けるチップは自分自身。
もう後戻りなど出来やしない。
全てを投げ打った後の自分の心は、それでもどこか清々しさに満ちている。

「ッ見ているか、ムルイジ!
誰より一番妬ましい存在よ!」


狼は、吼える。

「これが私、エンヴィー……いや、違う!
勝負師サダルの大博打だ!


裏切りと駆け引き蔓延る豪華客船、イースター・カッサンドラ!

絢爛豪華な宴の仮面を被ったこの欲望塗れのテーブルで、私は全てを賭して勝負する!


勝つのは──この私だ!」

泣きそうなほどに顔を歪め、女は力無く笑う。
けれどそれも束の間のこと。女はすぐにペストマスクを被り直し、再び動き出す。

来るべき結末が訪れるその時まで。

「…………あはは、ああ……仮面を被らないでいるのって、こんなに楽しかったんだな………………」

……

……ねえ。どうしてこんなことしたと思う?
何が勝利で、何が敗北だと思う?

共犯者の私が公開抽選等で排除されること?
いいや、違うよ。そんなの宣戦布告した以上、そして落ちてきた者を今徹底的に管理しきれていない以上、いずれ私は落ちる筈だから。

私は、何に賭けたと思う?
それはね──。

私は醜い人間。そしてこれからもっと穢される。華やかな世界と程遠い、愚かで惨めな女。
君はさ、そうなった私を……本当に欲しがってくれるのかな。
地の底で、待ってるね。

最後の仕事を終えた。

用済みになった。

舞台から降りた。

下卑た視線に晒された。

哄笑の的となった。

今まで自分がして来た事の、その報いを受けた。

乗船して以来、幾度も足を運んだ観賞室。
そこへ連行される側になる、というのは
どうにも奇妙な気分だった。

──緩く、かぶりを振る。
装いは『ラサルハグ』の着ていただぼついた服ではなく
『スロウス』の着ていた、白を基調とした上等なスーツでもなく
今となってはもう、『従業員の制服』に身を包んで。
首輪から伸びた鎖が大仰に、がらりと鳴った。

「……『研修』は、既に一通り受けています
それでも、あなた達が必要だと判断するのであれば
どのような内容であれ、如何様にでも受けましょう」

重い口を開く。
それを自分から宣言しろ、というのも上からの意向だった。
けれど、後に続く言葉は言えと指示されたものではない。

「…あなた達さえ望むなら、以前と同じように
共に『お客様』の為、その謀略の為に動く事もできる」

「なぜなら、内通者であろうと、従業員であろうと
僕が道具であるという事は変わらないからです」

『従業員』からの暗い視線に晒された。

それでいい、と思った。

きみの望みが叶えばいい、とも思った。

やはり、嘆く事も苦しむ事も無かった。

ラサルハグにとっては、なるべくしてそうなった事だ。

暗い表情を──して、いない。

燃えるような、ギラついた瞳をしている。

喜びを、仮面の下でなければ隠せないでいる。

部屋の隅で震えている。どうしてここに自分がいるんだ。

ここにいる人を、見た。

メモを貼った。


「くはッ、ハハハ、
 はははははッ!!」

 ──ただ、狂喜する。

 一夜にして、人間が、それも警察官が“ヒト扱い”すらされなくなる。嗚呼、成ってみればやはり大したことではないじゃないか。それでも、俺はこんなに人間らしい感情を取り戻せた。

 何度も、何度も何度も何度も、
 自分は言ってきた。

“船のシステムはどうとも思わない”と。
“ただ、それを悪用して、人道から逸脱した行為に出るものに破滅を与えたいだけ”なのだ、と。

 少し前までは、
 自分はそのためだけに生きてた抜け殻だった。

 だけど今は違う。
 空っぽの器には、水が満ちている。

『破滅を与えられる』ことが“嬉しい”んだ。


 友人を虐げ。船の売る商品を必要以上に痛めつけ、壊し。それを肴に酒を飲む者たち。この船ならあらゆる手を尽くして、そこに(概念として)毒を仕込むことだってできる。ああ、そう、この恋焦がれる乙女の様な気持ちは、
カタルシスへの想い!


警察なんて肩書きを掲げるより、“標的として、従業員に身を窶していた方がよっぽど干渉しやすい”。
いや、果たして標的は──どちらなのだろうか?


画面の下で、牙を剥き、笑う、笑う──

>>【4日目・バーナード】
あなたの表情が崩れる様を、あなたの喉が快楽を拒むのも、そうして多大なる苦痛を背負うのも、そのどれもを見て、全てを受け止めて、
──ふつり、と何かが切れる音がした。

「く……ッくく、あはははははは!!!!!」


哄笑。ああ、苦しい、悲しい、痛い、辛い、耐えられない──
笑いを堪えるなんてできそうにもない!

欠けてしまった『常識』の内側から、割れてしまった卵の内側から、口にするのもおぞましい怪物が顔を覗かせている。

観客の反応はまちまちだ。苦痛の声に悦ぶ者、『前回』と同じ展開に呆れる者、あなたの反応でささやかな賭けをしていた者達の身勝手で他人事な感想戦。あなたの失った右目をスプーンの上で転がしていた青年は観客の皆々様に掲げるようにしてその"珠玉"を見せ、あなたと向き直り。
あなたが見ていても見ていなくても、青年自身の喉奥に転がし、やがて嚥下した。
言っただろう?『お前をひと欠片たりとも譲ってやれない』と。


「ああ、惨めで、かわいそうで、不幸なバーナード・フェデラー。
 よくよく頑張ったあなたにもご褒美をあげましょう。」

言いながら青年は手枷につく鎖の長さを調節させ、黒服達に運ばせたベッドの上にあなたを横たえさせることだろう。青年もまたその上に乗り、あなたの脇腹辺りから首筋にかけてくすぐるような、煽るような口付けを落として。ほっそりとした美しい手指が、それをなぞるように撫で上げて行く。
かつてあなたが青年にそうしたように。

聞こえてきた笑い声に、酷く怯えている。

メモを貼った。

どうして。
自分は何もしていないのに。

どうして連れ戻されなければならなかった?

どうして どうして どうして。


少年はもう逃げ出すことが出来ない。体が酷く震えて、その場に蹲っていることしかできずにいる。

そこにいるのは、暗殺者ではなく―――
恐怖に怯え竦むただの少年だ。

メモを貼った。

メモを貼った。

最早三人の王はほとんど座を降りてしまっている。
『スロウス』を失い、『エンヴィー』を奔らせ。最後に残った『グラトニー』は、
地下のホールへと従業員たちを連れてきた。もはや観賞室では狭いのだ。
半円にせり出したステージは向こうからはこちらがようく見えるのに、
強化ガラスで覆われていて、拳の擦り切れるまで殴ってもそちらへ行くことは敵わない。

「紳士淑女の皆様、お集まりいただきありがとうございます。
 今宵はこの船旅の一番の盛り上がりとなるでしょう。
 さあ、かれらの顔はお知りでしょうか。従業員達も馴染みになったでしょうか?
 これより、彼らの全ての苦痛と屈辱は、皆様のものとなるのです」

きらびやかな照明、アップテンポのBGM。誰が疑うこともなく、それは見世物であると知るだろう。
壊れかけた青年を見つめ。
再度の落花となった少年を見つめ。
かつて同胞であったパフォーマーの姿を見つめ。
自らも顔を覆うマスクを被った女は、従業員たちを紹介する。

「皆様、彼らには何をお望みいたしますでしょうか。
 彼らの価値はあなた方の手に。値を吊り上げ、望みをどうぞ!
 いちばんに当てた方には、どのように扱うか優先権が得られるかも知れませんよ!」

/*
ということで、恒例のお伺いになります。
新たに従業員となった方々はどのような"研修"を望むか、ロールにてお知らせください。
過去の様子を見るとどんな感じでやってたかわかるかもしれません〜!

"仮面を被った従業員"だ。

メモを貼った。

一度逃げ出した少年の怯えた様子を見て、客が声を上げる。

二度と逃げ出す気が起きないほど、痛めつけてはどうか。
手段も程度も問わない、彼が泣き叫び許しを請うほどの罰を与えよ。


少年が嫌がる素振りを見せるのも構わず、その声は響き渡るだろう。

メモを貼った。

 
──あの従業員は、上からこの船に売り渡されたと聞いた

──なら、あれを玩ぶなどいつでもできる事だ。

──そうだ、そうだ。

──今は、新しく入って来た二人のショーに興じるとしよう

────そうしよう、そうしよう。

そのような声を受けて、
嘗て"怠惰"に座す者であり、そして"共犯者"であったものは
鎖を引かれ、従業員に連れられて、舞台の袖へと消えて行った。

きらめく、貴婦人の面影を。否、
最後に残った、“今は従うべき王”の視線を追って、

運の尽きた少年を見る。
役目を終えた珈琲の君を見る。

彼らが虐げられるくらいなら自分が。
自分が彼等の分、客たちの欲望を受け止めれば。

そこにあるのは高尚な自己犠牲の精神などではなく、寧ろその先に待つだろう“喜び”を手にしたいが為の──倒錯した、“溢れんばかりの嗜虐性欲を前提とした”被虐欲!

ステージの狂った様相に、未だ捨てきれぬ屈辱や、僅かな憤りを抱きつつも、異色の双眸は、不思議なほど据わって、客たちを鋭く見定めている──

到底この世のものとは思えない瞳。
それに対する客たちの反応は、様々だ。


あの余裕を粉々に打ち砕くべく、凌辱の限りを尽くせ、と誰かが言う。

アレは中々に生意気で丈夫そうだ。
心なき機械、あるいはこの船が運ぶ搾精生物をあてがえば、きっと見応えのあるショウになるだろう
、と誰かが言う。

それを聴き、仮面の奥の瞳がほんの僅かに陰りを見せる。お前らが直接来ればいいものを。

なんとか【スペシャル☆アニマルパイ】を確保することができた。(3)1d3時間、シマウマanimalの特徴を持つ。

なんだかとってもシマウマだ。

何故か【スペシャル☆アニマルパイ】にありつくことができた。別の時間軸で、animalの特徴を持つかも。

衣服が脱げないと聞いてこっそり別時間軸でパイを食べanimalの特徴を持った。かも。

パイが食べたかった。

開場はファンクテイストのジャズが鳴り響いている。ステージの反対側、後方の雛壇からだ。
それぞれの形の、やはり仮面を付けたオーケストラは開場に演奏を吹き鳴らし続けている。
端には賓客達を楽しませるためのグロテスクな寄食、樽の匂いのするようなアルコール。
この世の贅を推し固めたかのごとくある会場は、なんと美しく/醜くあることだろう。

「いいコールに御座います。今宵も興味を傾けていただき何よりです。
 『スロウス』には以前と変わらず、ショウの手伝いをしていただきましょう。
 ただし、立場を変えて。『ラサルハグ』として、よりショウにのめり込んでいただきます。

 テンガン、彼には……ええ? ジェラルド様、とっておきの用意があると、それはよろしい!
 皆様本日の英雄をご覧ください、テンガンのショウには、かの会長がご協力なさるそうです!
 日頃より派手な"開発品"をご用意いただいているジェラルド様ですが、
 本日はどのようなものを持ち込みなさったのでしょうか。今からでも楽しみです。

 そして――ナフ。
 お待たせいたしました、皆様。一部の方々のお待ちかねの演目です。
 再度我らの前に舞い降りた踊り子には――『エンジェル』!
 此度の船旅の『エンジェル』は、彼を指名いたします! 我らの天使に、大きな拍手を!」

歓声が上がった。パラパラとした拍手はそれでも多くの人間が叩けば大喝采となった。
彼が? 今回もか。素晴らしい。今日は良い日だ。様々な声が拍手の合間を縫って聞こえる。
それは、一体何を意味しているのか。それは誰の口からも一切、聞こえることがない。

拍手と喝采に怯えている。

/*
求む!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
エッチな機械姦or触手姦自信ニキ!!!!!!!!!!!!!!!

それが何かもわからないのに「嫌だ」と繰り返している。

/*
グラトニーとテンガン様はじめ各位ご連絡ですわよ!

テンガンのれっちっち触手責め機械姦研修、スロウスことラサルハグwithエンヴィーでいかせていただきまーす!よろしくお願い致しますわね!

挑発するかのように、腰に手を当てた。

/*
助かる……エッチな触手お願い申し上げる……

チャリ、と鎖が擦れる音がして。
また今日も始まったかと薄く目を開ける。
ここで繋がれて毎日ショーに出されて、
心も摩耗してきたころに、冷や水を差し込まれる感覚があった。

「なっ……!?」

少年が。裸で壁に繋がれたオレに覆いかぶさってきている。
手足の拘束は普段よりきつくなっており、身動きが取れない。
少年は切羽詰まった顔で爪で傷を残すような無遠慮さで、
俺の胸板を、腹筋を、首筋を欲望のままに這わせる。

予想外の『客』の襲来に、流石に顔が歪む。
相手の意を探ろうとその表情を見ようとして、
少年の向こう側に強化ガラス越しの肥客が居るのを見つけた。
好色満面の顔でこちらを見てくるその欲には覚えがある。

成程、そういう趣向かと、吐き気を催した。

――少年はこれを、やらされているわけではない。
ただ全てが自分の意思でもないのだろう。
欲の吐き出し先を、下卑た大人たちに差し出されて、
行き場のない若さが抑えきれないだけだ。

その若い欲の暴走を、それに成す術がないオレを見て、
楽しむ者たちが、この行為の"意思決定者"だ。

吐き気がする。反吐が出る。
この先、この経験が齎す人生の陰を考えると、
金を持つ者の傍に生まれる者も、
金を持たない者と同じくらいに不幸であると思った。

少年が、どう発散していいか分からない己の欲に戸惑い、
初めての経験にオレの身体を切り傷や噛み疵だらけにしていく。
初の褥に作法なんてないのは当たり前だが、
それが鎖で繋がれた相手なら、こうもなる。
征服欲と独占欲と性欲のない交ぜになった感情を向けられ、
必死なその少年の形相に大きくため息を吐いた。

「そのままでいい……聞こえてねェフリしろ。
 焦んじゃねェよ。逃げやしねえ」

後ろの大人たちに聞こえない声で言うと、
それでも貪りの対象から声を掛けられたことで戸惑いが混じる。
歳の頃は15くらいの餓鬼に、無理な話かと息を吐いた。

……馬鹿野郎が。本当に。

「……ゆっくりでいい。
 したいようにしろ。今から少し声出すがビビんじゃねえぞ。
 俺が目をつぶったら思い切り顔面を殴れ。手加減すんなよ」

言って、大きく息を吸い込み。

「テッメッ!! 離せこのクソガキ!!
 オレを誰だと思ってやがる、天下のムルイ――」

目を瞑る。戸惑いが感じられるが、頬に走る衝撃。
……いい子だ。笑いが出る。

興を載せた。悪くない。

少年がぎこちなくも乱暴に、躰を貪り始める。
下手糞な愛撫に、躰が反応しやがるのは癪だったが、
相手に痛みを与えるよりは100倍マシだった。
挿入れる場所を探りやがったのは殺してやろうかと思ったが、
無事接合すると腰の辺りが互いに震える。……最悪の気分だよ。

「っ……っ……」

乱暴で、己の快楽しか考えていない腰の動き。
少しは分かって来たのか、指先も撫でるような動きになってきた。

オレは痛みと異物感に吐き気を抑えながら、
ただ揺らされるがままになっていた。

その少年の必死な顔が。
――金に踊らされ、狂わされたかつての自分と重なり。
貫かれながらも、俺は大人に見えない角度で微笑んでいた。

「………ごめんな。
 ………救って、やれなくて」

それは、誰に対しての言葉かは分からない。
少年も急にそんなことを囁かれて、困惑した顔でオレを見る。

そこに愛情はなくとも、身体の刺激で男は容易に果てる。
限界が近いようで、少年の動きにも余裕がなくなってきた。

きっとこの経験は、この少年の人生を歪める。
金が人の人生を狂わせて、誰もが正しくなんて生きられない。
勝つ奴が居れば同じ数負ける奴が居て、
そのたくさんの屍の上に立てるのは一部だけだ。

「っ……でもな。狂っちまった人生の先も
 ………案外っ、悪く、っねェからよ。
 真っ当にっ、誰か好きっ、になって、"お前は"っ、
 ……幸せになれよ」

褥には似合わないセリフだが、
この奈落に居るオレが言ってこそ、意味がある。
一つ亡くせば、全てが終わるわけじゃねェ。
一度負けがつけば、這い上がれないのが人生じゃねェ。
その果てに、こんな船の上で逢える奴だっている。

だから。
――自分に賭けることだけはやめんじゃねェぞ。    。

最後に、強く"締める"と。
少年はあっさりと絶頂に導かれた。

吐き気が込み上げてきて、口元を手で覆った。

暑いほどのスポットライトが当てられる。灼熱の中にあるようだった。
仮面をつけた従業員達はなにやら大仰なセットをステージへと持ち運んだ。磔台のようにも見える。
木製の台を運び終えた従業員達は、今度はナフと呼ばれた少年を持ち上げ、着衣の一切を剥ぐ。
その体は、台の上に乗り上げさせられた。まるで処刑される直前の光景のようだ。

「さあ皆様、ご覧ください。我らの前より逃げ出した天上の虎の姿を。彼は再び我らの楽園に足を踏み入れてくださいました、そして……、
 『エンジェル』の演目に投票されたチップの数はいくらであると思いますでしょうか、本日はそれを彼に当てていただきましゃう!」

『命の価値は天使の為に!』
『命の価値は天使の為に!』
『命の価値は天使の為に!』

まるで一切に示し合わせたかのような声があちこちから上がる。それは次第に合唱のように膨れ上がった。
女はそのフレーズが、大層お気に入りらしいーー命の価値は貴方が決める。

身を隠すものすべてが取り払われる。その端正な顔を隠す仮面を除いて。

少年は、台を見上げた。
罪人を磔にする十字架。
自分には似合わないはずなのに。

だって。何もしていない。

「投票された…チップの、数…?」

何を言っているのかわからなくて。
頭の回っていない様子で、少年は今この場における王に問いを返す。

耳を塞ぎたくなるような、大合唱が更なる恐怖を煽って。
その返答すらもろくに頭に入っては来ないかもしれないのだけれど。

まず、体は仰向けに台の上に横たえられた。首に輪を嵌めずり落ちないようにしているが、シリコンを噛んで傷が出来ないようには配慮されている。
腕はやはり透明の覆いのつけられた箱の中へと入れられた。腕の下にはクッションがあって、力を抜いても壁に当たらない。
ただ、腕のすぐ横に何か……モーター式で駆動する、鋸刃のような大掛かりな器具が横たわっている。
それは腕よりも太く、差し詰めカートゥーンのドリルにも似た、でも全く違う……有刺鉄線のようにとげとげした何か。

足元には何かのペダルがあった。数は三つ。透明のアクリル玉覆われているが、膝下を全て入れないとならず、しかと膝が天井に引っかかって足を抜きにくい。
ペダルにはラベルが張られている。客席にもナフにも見えるように表裏にしっかりと。
そこにはこう書かれている。『200万ドル』『5000ドル』『4.65セント』。
ところで、貴方が暗殺を請け負った報酬というのはどんなものだっただろう? 実費に換算し、経費を差し引いて、感情的な値を差し引いて。
貴方の命の価値はいくらだった?

「ナフ、選択肢は三つ。あのペダルを踏んで解答するのよ。
 ペダルを踏むと軽い電流が流れます。痛めつけるためではありません。ペダルから簡単に足を離さないようにするためです。
 チョンっと踏んですぐに引き上げてはつまらないし、賭けにもならないでしょう?
 貴方が己の価値を考えるの。正答はひとつだけ。命の価値はいくらでしょう、貴方の命の価値はいくらでしょう?」

動揺も冷めやらないだろうに、女はそっと囁くとすぐに客席の方を向いた。パチパチと拍手が二人を迎える。
スポットライトとカメラは正しくナフの方を向いて、貴方が主役であることを指すように惜しみなく飾った。

「皆様、固唾を呑んでお見守りください、じっとですよ……彼が怯えてしまわないように。
 命の価値は、
 命の価値は、
 命の価値はーー」

船の狂気が抜け殻だった自分に満ちているのを感じる。

罪悪感こそ抱けど、
暗殺者の彼が友人の破滅を喜んだように。

画面の下で
牙を剥いて笑みを浮かべた。

少年は、酷く震えている。
横たわっている器具にも、女の声にも、置かれた状況そのものにも、恐怖を感じて。

「お、おれ の 命」

考えろ。考えろ。考えろ。

家族には、好かれていたと思う。
友達は、多くはなかったけれど。

踊り手は、家族が教えてくれた舞いを広めたくて。
殺しは、小さな弟妹を育てる母親を助けたくて。
―――選択肢がなかったとはいえ、身を犠牲にして、貢献してきたはずだ。

あの人以外の、
誰にも褒められなくても―――



「痛いのは、嫌だ……」

200万ドルの価値は、ないだろう。
けれど、4.65セントでは家族を助けられない。

それならば――――答えは。

少年は、青い顔のまま
『5000ドル』のペダル
に、足を、入れた。
電流を警戒して、奥歯に力を入れている。

許されることを望んでいる。

助けてほしいと思っている。

「命の価値は、5000ドル!」

笑い声がオーケストラの演奏を掻き消すようにこだまする。
ぴり、と電流が走るものの、細い針を刺したような鋭い痛みはあれど心臓を蝕むほどではないだろう。
けれども確かに足の動きは縫い止められるように硬直して、ペダルから足を離すまでには時間がかかる。
その、一呼吸深く肺に酸素を入れるように時間。たったそれだけの時間。


ギャルルルルルルルル!



凄まじい轟音を立ててモーターが回転した。
左腕を捕捉している回転鋸はまず最初に肌に棘を引っ掛けて、シーツを巻き取るかのように皮膚を引き剥がした。
真っ赤な肉が露出して、思い出したかのように遅れて鮮血が噴き出す。容器の中に血は溜まることなく、繋がれたチューブから台の下のケースに流れていった。
回転鋸は止まらずに肉を轢き潰し、フォークで何度もステーキを引っ掻くように細い粗挽きを作り出した。
端々に見える白い芯は骨だろうか? 辛うじて当たらないものの、身動ぎをして暴れたならばそれも同じように巻き込まれるのだと言うのは想像に難くない。

少年の腕は側面の半分の肉をごっそりと抉り取られ、もはや自分の意思で動かすのもむずかしいほど原型を無くしてしまった。

「おや、これはこれは。どうやら間違えてしまったようですね?
 選んだのは中間。思い切りのなさが不安を生んでしまったのかもしれない、悲しいことです……。
 さあ、ショウはまだ終わっていませんよ。ナフ、さあ、選び取りなさい。
 貴方の命の価値は?」

喜ぶ
客たちの顔を一人一人覚えている。墜とされても変わらない猛禽類の瞳だ。

その光景と、更にその光景を見てる奴を自分が見ていたら生き生きしていた。

電流は大した痛みではなかった。
ほっと息をついて――――

「………ぇ」

何が起こったのか、分からなかった。
凄まじい音がして、何かが刺さるような鋭い痛み。
皮が剥がされ血が噴き出すのを、腕がズタズタにされていくのを、呆然と見て。
一度機械が止まって―――

「あ ああああぁあああっ!!痛い、いたい…っ!!!
 なんで、腕 おれ おれ、まちがって…っ!!」



初めてあった頃の落ち着いた雰囲気はもはやなく、喉を潰すのではないかと思わせるほどの声を上げて、涙をぼろぼろと零している。
痛みに慣れていないのは本当で。
痛い事をされないように、機嫌を損ねないように必死で生きてきたのだ。

少年は、舞いをしなやかに見せるための腕を失った。

それでもまだ、この遊戯は終わらない。

早くこの痛みから解放されたくて。少年は、足を引き抜いて、『4.65セント』のペダルを踏んだ。
自分の価値なんてどうだっていい。早く解放されたい。

喜びしか分からない。劈くような悲鳴の先にあるものしかわからない。

全ての感情が喜びに支配されている。矛盾した気持ちに気づけない。

笑いながら、酷く胸を締め付けられた。

惨憺たる歓楽の一齣をただ舞台の袖から見ている。

骨に刃が当たって、痛みと恐怖で泣きじゃくっている。

目を逸らし口元を覆った。

幼い頃から母親によって丁寧に手入れされてきた左腕を失った。

少年は悲鳴をあげ、血飛沫は容器の口から少年の顔へ、胴体へも血を飛ばす。そばで補佐する女も例外ではない。
真っ赤な衣装に更なる絢を重ねながら、少年がよく見えるように顔の血を拭ってやった。美しい顔を皆に見てもらえるように。
少年の勇気を讃えでもするかのように、客席からは拍手喝采が上がる。見世物としてはとても喜ばれているらしい。
一度の痛みを与えられても、ショウは平然と、終わらない。

「命の価値は4.65セント!
さあ果たして彼の選択は……おや!」

まるで道端に美しい花でも見つけたかのように声を上げる。それはすぐにやはり、モーター音にかき消された。
高速で回転する刃が少年の残った腕を引き裂いたのだ。
刃には糸のように細い血管や神経が絡み、カツカツと引っかかる音を立てながらそれでも止まらずに奔らせる。
チチ、と火花でも散らすように鳴っているのは、肩まで繋がる組織を巻き取って引きちぎる音だ。
電流に呼び止められた脚がようやくペダルから離れる頃には、両腕は揃いの傷を抱えていた。

「さあ、残るペダルは後一つ。
 皆様はどう見受けましょう、これにも仕掛けがあるのかどうか?
 いいえ、神は彼を見放さず天上へと迎え入れてくれるでしょうか。
 拍手でお見送りくださいませ、彼の勇気ある第一歩を!
 命の価値は━━」

最後のペダルは、『200万』。それは彼の命の価値に、見合っているだろうか?

 




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