【神】 巡査長 清和>>G56 清和 【2日目 ピアノ勝負時空】 「ふふ。ばーか、生きてるよ。 俺が、そんな簡単にくたばると思ってるのか?」 頬をつねろうとする手を払い除け、不敵に笑みを浮かべた。 一瞬だけ触れた手は、確かに生者の温もりを感じさせるものだ。 もしも幽霊だったら、曲のタネにでも出来たかもな、なんて。 冗談めかすように言えば、あの頃の勝負のことを思い出して。 「……おばさんや、呼子鳥ちゃんにジャッジして貰ってたか。 戦績としては、俺の方が少しだけ優勢だったか? 確か……」 この部屋でしたやり取りの何もかもが懐かしく、思わず笑みが零れた。 呼子鳥は清和を贔屓していたような気もして、公平な審判ではなく。 その帳尻を合わせるように、宵闇の母は実の子に白星を与えていた。 ふとあの頃を思い出した清和の記憶にあるのは、そんな記憶だった。 「もう、俺たちだけでいいだろう。わからないわけがない、だろ?」 そうだ、もう第三者の介入なんて必要ない。 どちらが勝ってどちらが負けたかなんて、認められるし、理解できる。 「……先攻、貰ってもいいか?」 静かな空間に響いた綺麗な音が、気持ちをあの頃に戻してくれた。 随分と弾いてないので腕は鈍っているだろうに、何故だか自信があった。 (G58) 7_hertz 2021/08/14(Sat) 1:48:06 |