覚えていらっしゃらないのも当然ですし、
　あの日話した通り昔のお話ですから。
　わたくしが貴方に気付いたのも奇跡的。

　どちらが先かは判然としませんが、
　わたくしと貴方が外に出られなくなったことによって、
　プツリと糸が切れたように、全てが終わってしまいました。
　わたくしの目的は、
　
　突然付き合わせて申し訳ないとは思いますが、
　わたくしの奇行には、もう慣れましたでしょう？

[と、余裕ありげに語っておりますわたくし。

貴方も大分変られましたが、
わたくしの比では全然ありませんので。
に、自らスパイクで踏み躙るレベルでの、
奇行、奇行……そして奇行。

　まぁ色々とありましたけど、
　残念ながらわたくしの中にはまだ、
　貴方というが残っていて。
　勝手ににしていたのです。

　もう二度と会うことは無いでしょう……完！
　のつもりでしたが、何故かこんな展開になってしまって、
　正直な所、わたくしとしても困惑しております。

[困惑しているのは貴方だけではありません。
言葉の合間に耳に届く音楽は、
内心にそぐわない柔らかなものでした。**]

[やっぱり律儀な人ですね。>>0:84>>214
だから見抜かれるのですよ。

わたくしは思うのです、
貴方の人生の全てを知っているわけではありませんが、
きっと逃げずにい続けた方が、
立派な大人からは遠ざかっていたんじゃないかしらって。

もう少しヒントをお出しすることも考えました。
ですが女の感は鋭いですから、
悟られてはまずい人に悟られてしまう
可能性がありますでしょう？
今と違って、他の方の目もありました。
私が敏く感づいたように>>0:168、
気付いてしまう方もいるやもしれません。
逃げ道を確保した上で出せるヒントは、あれが限界でした。]

　ですか。
　嬉しい事を言ってくださいますのね？

[芽生えた喜びが、いずれと知っていても。
ゴセンチョ・ウェンホスィ城にいらっしゃった時も、>>215
わたくしは実は心待ちにして、
入り待ち出待ちしておりましたの。
……もはやストーカーの域。おかしいですわね。
まだこの頃は、まともであったはずなのに。

ご挨拶に伺った時>>-374などは、あまりに緊張してしまって。
何を言ったのかもろくに覚えておりません。
ヤバい発言などしていないと良いのですが……。

　力になれない？何を言っているのですか？
　力になって下さっていたのは過去形で
　今更何か手を貸していただこうなどとは思っておりません。

　家は"本物の"ユラルネアが嫁ぐことで再興しましたし、
　"本物の"ユラルネアの居場所に
　今更帰ってどうするのですか？
　わたくしも今、この場所で人生をしておりますので。

[「ご心配なく」と最後に付け加えました。]

[店内に、麗しいワルツが流れました。]

　元王子様ですもの、
　ダンスの嗜みくらいは御座いますわよね？

　そうでなくても、わたくしはワルツの名手として
　名を馳せたこともありました。
　足を踏んだり踏まれたりするような、
　無様は晒しませんことよ？

　

[最後の舞踏会、お受けいただけるかしら？*]

[婚約者が決まった時は、別段驚くこともなく。
誰が選ばれるのかなんて、
ほぼほぼ出来レースみたいなもので。
候補に入って、お目通りが叶っただけで
わたくしは満足していました。

グラスと掲げられると、>>235
初めてパーティに正式加入した時>>0:162
のことを思い起こします。
素直にわたくしもグラスを掲げて。]

　

[控えめにそう言いました。
傾けられたグラスに注がれた色は、
片や貴方の。片や貴方の。
皮肉に感じてしまうくらい符合してしまって、
きっとそんな共通点を見出そうとしてしまうのは、
わたくしだけなんでしょうねって、
苦い笑みが浮かびました。]

[内心かなり胃痛でしたが、
ダンスのお誘いには承諾して頂けました。>>236
知人は見えないように思いましたけれど、
踊っている方は他にも数人いらっしゃいました。]

　わたくしは有能ですのよ？
　性別さえ違えば、相当大成できたかと。

　失望だなんて意地悪を言いますね？
　
　

[おずおずと、差し出された手を取ります。
ほらやっぱり、
卒なくエスコートしてしているではないですか。
なんて、小さく笑みを零しました。]

[向かい合い、自然と手を取り合って……。
触れ合う手が熱くなって、
そのまま全身を駆け巡るようで。
おかしいわ。わたくし、
アルコールなど1滴も飲んでいないのに。
酩酊するように、ふわふわと。
"酔う"というのは、こういった心地なのですね。


傍から見たら、どういう状況なのでしょうね。
片やドレス姿の淑女。片や伝説装備の紳士。

体はしっかりと3拍子を捉えて。
先ほどはあんな風に言いましたが、
わたくしにだってブランクは御座います。
でも少しも、そんな風には感じなかった。
或いはわたくしに、それを感じる
余裕がなかっただけかもしれませんが。

美しい……今は見るのが怖い。
溺れて、沈んでしまいそうで。
その瞳が何に揺れているのか。
想像するだけで、のです。]

[シンデレラの魔法は、永遠にはかかりません。
わたくしの呪術が、生涯かかり続けることなどないように。
ピアノの音が止み、足が止まり、手を放して……。
舞踏会は終わるのです。

魔法が解けても尚残る、思い出という名の美しいガラスの靴。
片方は、もう王子様ではなくなってしまった貴方の心に。
もう片方は、もう伯爵令嬢では
なくなってしまった、わたくしの心に。]

　迎えなどいりません。
　ただどうか、わたくしが落としたを、
　無くさないで下さいね。

[　もうわたくしはただの。

　　
　　ですら、ありません。