人狼物語 三日月国


94 【身内】青き果実の毒房【R18G】

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少年は微笑む。今まで仏頂面ばかりでいた男は、恋人のおかげで笑えるようになった。
それから柔らかい小豆色に、貴方を映した。

「──ありがとう、迷彩。
お前のおかげで、俺は幸せを知ることが出来た」


 ――少し前までは何時でも煌々と照らされていた場所。

 様々が撤去された院の中、明かりは消え、ただの部屋へと戻ったそこで一人、腰掛けている。
 いくらかの考え事と、疲労感。静かな場所を求めていた。

 足を組み替える。
 ぎぃ。古びたパイプ椅子が軋んで音を立てた。

 
「ライト、もう点かなくなったね」

この部屋には何もいない。誰もない。
貴方に最後に祝福を授けた者も、もう姿は見せない。

ここに居るのは『異能』である存在と、貴方の一人とひとつ。
或いは──二つ?それとも、貴方はふたりと表すだろうか?

「ここならもう誰にも聞かれないよ。
 文字通りの“舞台裏”だ。お話ししてくれますか。
 
 俺に近くて、遠い。
 『靖史』を助けてくれた、不思議な“あなた”。
 ──君に、俺からも感謝を伝えたかった」


「何をしたつもりも、無いんだが」

 頬を一度撫ぜたこと。あれは何気ない仕草だった。
 特別、深い意味など持たなかった。

「そうだな。話をしようか、靖史やすふみ
 ……で、お前。アレを見ていたのか?」

 あの時とは呼び名を反転させて、問う。
 目の前のこれが見ていないうちに顔を出したと、そう言っていたのを思い出して。

 
「彰人くんは意図していなかったんだろうけど、
 “靖史”やすしは両親以外に触れられた経験が無い。
 
 ……俺が、その前に対話するようになって。
 俺が──俺を、“僕”を、止める為に姿を消した。
 靖史は小学校すら通い終えていない。学歴もない。

 その上で俺が身体を持ち続けていたから、
 例え誰かに『触れられた』としても、異能である俺だ。

 だから、多分。あの子は宗教が、聖句が嫌いだったのに。
 君の幸せを『祈る』と言うくらいには、
   ──幸せに感じる行為だったんだよ」
 
 ▼

 
「俺はその時、見ていた訳じゃないよ」

  
「 “思い出した” 」


「大好きな大好きな、誰を殺しても何をしても愛されたかった“靖史”やすしに。
 去られた事が、置いて行かれた事が。その理由が。当時の俺は全く理解できなくて、悲しすぎて、耐えきれなくて、……自分の記憶から、抹消していた」

「まさか、靖史が残っていたなんて知りもしないまま」

「でも、消し切れるわけなかったんだ。当然だよね」

「 それだけ、“靖史”を愛していた」


「──思い出した切っ掛けトリガーは、他との会話でもあるし、君とのここでの接触行為でもあるし、きっと、靖史にとっても賭けだった。最も、時間の問題でもあったと思う」

そう、淡々と語れるくらいには、記憶を受け止められる程には。
賭けには勝ったのだろう。下手をすると狂乱の末自殺でもしていてもおかしくない。己を愛しすぎるとどうなるかなんて、……語らずともいい話か。


「そうか」

 手を伸ばす。届かなければ、立ち上がって。頬を撫でる。
 馬鹿だな、と呟く。
思いのほか、柔らかく響いた。


「『うまれつき他者の事を正しく愛せなかった』。
 ……ただしい人間は、難しいな」

 お前のことだとも、俺のことであるとも――あるいは、両方とも、示さず。
 草臥れた声でもう一度、難しいよ、と言った。


「ん……」

 嬉しそうに目細めて、その感触を受け取る。
 本当はこれを受け取るのは俺じゃない筈だ。
 でも、あの子が好きなモノを俺が好きじゃない訳がない。

「──そう。難しい。
 “コッチ側”と言ったよね、この舞台で。
 俺はその辺りの感性を含めて、近いんじゃないかなと思った。
 勿論勘が殆どだったけど、君の異能を考えると強ち間違いじゃなかったんじゃないかな。

 俺達は、
 『他者の事を正しく愛せないし、
  社会の倫理にも適応できなかった』……違う?」


 手を離し、だらりと体の横へ下ろして押し黙る。
 ……横たえた沈黙が答えに等しかったものの、口を開いて。

「――違わないな」

 ゆったりと紡ぐ。
 
この男は、言葉にはなるべく、言葉をもって返す人間であった。
それが美徳であったからそうしたのか、元々そういう人間だったのかは、
記憶の奥底に沈んでしまったけれども。


「だから、死を望まれたんだろう。
 ……おかげで、“あの人”は死なずに済んだが」

 肉体の死と記憶の死は同一ではなく。
 殺された己の記憶のみを引き継ぎ続ける、短命の生き物。
 “黒塚彰人”の劣化コピー、上書き保存を繰り返し続ける、かつては人間で――今となってはもはや、何であるか、定かでないもの。

 詳細を問われれば、そう言葉にして説明を返しただろう。

 
「──何で皆すぐ消えたり死んじゃうのかな」


ぽつり。もう暴れはしないけれど。
遥か彼方の自分から、つい最近の潤くんまで。
出会って好きになった相手は、みんな何処かで消えてしまう。

「でも、引き継げるんだ。コピーのコピー(35)でも。
 感情じゃなくて、記憶だけを引き継ぐのかい。

……これさ、今元気に記憶もってる俺の目の前が君が、新しい子を作ったとして。そっちが先に死んだ場合、真っ白上書きコピーとかになったりしないの?」▼

 
「死を望んだのは“ただしい人”達でしょ。

 同じじゃない事を酷く怖がる人達。或いは異端に害される前に排除したい人達。……単に“多数派”って言うだけの存在なのにね?

「俺、ずっと思ってたんだけどさ。
 “ただしい人”とや、一緒に生きる必要あるのかな。
 彰人くん、ただしい人を目指してたのって、ここから出る為じゃないの?ここを出た後もそれを目指して生き続けるの?」

「俺、君がここを出た後何をしたいか聞いたことが無いや」

「俺はね。結局のところ、“ただしい人”と相容れないから。
 別にわざわざ害する気はないけど、不干渉でいられる──彼らを邪魔しない場所を探して、ただしくなくても、自由に過ごせたらって思う。……彰人君は、ここを出てどんな生き方をしたい?」


 椅子に腰掛けた膝の上、指を組む。右手の親指のはらで、左の親指の爪を擦る。
 そうやって、言葉に迷うような、言い渋るような、何とも表現し難い沈黙があって。

「ここを出て――大切な人と生きたいと、言っていた奴がいるんだが」

「…………心底、羨ましいな。
 俺の大切な人は……あの“俺”は、もう、いない」

 目の前の少年から視線を逸らしたまま、ぼそぼそと言葉を吐く。 
 
己の声が、遠い。……あの人の声は、もっと、低かった。


「……記憶だけは、ここにある」

 とん、とこめかみを人差し指で叩く。
 
今となってはもはや、この記憶だけが、あの人の存在を残している。


「まっさらにはならないな。
 そいつの見た景色を、俺も見るだけだ」

 は、と自嘲するように笑う。
 降り積もって、いつまでも残り続ける。便利で、不便な仕組みだろう?▼


「……静かに、生きられたら。それでいい」

 先の見えない答え。
 矯正を続ける日々は、愛したものからかけ離れていく月々は、確実にこの少年の心を擦り減らしていた。



「そう。羨ましいな。仲間だね、彰人くん。
 ──俺も、一番大切な自分には“二度と会えない”し、
 “誰も、その存在を証明も観測もできていない”から。

 彰人くんは最期に話せたみたいだけど。
 
俺は未だに自分の中に“靖史”がいるのを認識できない」


「……生きてるのか死んでるのかすら、不明で、」

「俺と言う“自我を持った異能”“やすふみ”が存在する事すら、証明ができない。
創くんの記事見た?異能が自我ってマズいらしいね色々と。
でも俺こうして普通に生活してるのって、普通に見逃されてるのか、
ただの多重人格者の狂人
の“戯言”と思われてるのか」

「──実は、最も存在があやふやなの、俺なんだよね。
 記憶だけが、『私』と『僕』の存在を証明してくれる。俺にだけ、ね」

君はコピーがあるから。肉体があるから。
同時に二つの個体が存在する限り、『外部の観測』によって証明がなされるだろうけど。俺の答えは誰一人観測ができない。『ただの多重人格者の妄言』を否定できない。

「……俺は死んだ事がないから、羨ましいとは言わないけど。
 ただ、『最も大事な自分を、他者から認められなかった』」

「その一点は、君と共感できると思っている」 ▼



「彰人くんの異能は、寿命と記憶の問題で、死体と苦痛が出るんだよね?」

「──俺の異能、使えないかな。」

「結局の所、俺の“1番”は俺から変わらない。
 普通に誰かの傍にいるならこれはハンデだけど、彰人君も同じでしょ。そして、俺は“君の為に君を無痛で殺すことができる”」

「昔の俺の『自分が1番』で『他の全てが2番』が、此処で変わった。今の俺には、2番も3番も付けられる。」

「だから、君に声をかけている。俺、“ただしい人”に紛れて生きていける気がしないよ。だから、……ここから出たら、」

「“ただしくない人”のままで生きられる世界を、
              一緒に、探しませんか」

 「例え1番が自分でも、“独り”は寂しいから」


 少年の顔を見上げて、目を細める。
 
眩しいライトはもう無いというのに。


「……つくづく、似ているな」

 人間のなり損ない。
 一番を自身と定める、ただしくないものたち。

「だが、お前は『俺じゃない』。
 お前と違って、……違うものを、愛せる保証は無いぞ」

 手を伸ばす。指輪の嵌ったそれに、指先を絡める。
 交じり合う温度はやっぱり心地が悪くて、けれども少しばかり、マシになっているような気もした。▼



「知ってるよ。その上で、そこも似てるから誘ったんだ。

 俺もまだ、2番も3番も生まれただけで──
 『自分以外を愛せてはいない』のは同じ。保証なんて俺もない」

指を絡められた手を見て、少し考えた後に。
もう片方に常に嵌めていた自分の右手の薬指の指輪を取る。

「凄くない?記憶ない状態で“それでも誰にも渡したくなくて”自分の両手の薬指に婚約指輪代わりに嵌めてたの相当だと思う」

「なのに一回、彰人くんこれ外して来たでしょ。君だけだぞ」

だから、責任取ってよ。冗談めかしてそう言って、
取った指輪を貴方の右手薬指に着けようとしてくる。▼


「……保証も証明もないない尽くしだね、俺達。
 だから考えてくれるって言ったから、それ、あげる。」

「気が向いたら別の指に着けてくれたらいい。
 或いは、誘いもそれも不要と思えたなら捨ててくれていい」

「俺も、今着けている“この指輪の意味”が、
 変わる事があるのか──1年、2年?もっとその先?わからないけど、」
 
「互いに、賭けてみよう。
 それでも苦しかったら、終わらせよう。全部」

俺は幾らでも、『居てくれるなら』答えを待てるから。
本当に『ただしく人を愛せなかった』俺達なのか、
それを確かめる未来への誘いへの返事を、俺はずっと待ってる。

 

「暗いところに行きたいな」
 

 最初から、ずっとそれがあったのさ。

 愛してくれる人がいて、食事や寝床に困らないくらいの 
 高望みしない普通の幸せって、自分の幸福に思えなかった 

 多分これがもっといっぱいいっぱい……  
 ──誰も彼もからあいされて、贅沢がいっぱいできて 
 そんなふうになっても幸せにはなれないのが、漠然と感じられて 
 それでも、きっとそれは決まっていることだって確信があって 


だから、幸せって言えない方に向かってみた 

 結果としては、幸せとまでは言わないけど 
 それまでの人生よりは満足感があると思えた 
 ひどく扱われて、なんだか生きている心地がした 

 自分が可哀想な立場になったり、不幸に見舞われる方向に
 行こうとするのを止められないのは、知っているけど形にしていない 

 

 

 こんないびつな存在は、自分のほかになくていい。
だからなくそうとするんですよ。 
 可哀想な君らに、ほしいものをあげるよ。
ぼくだったらほしいから。 
 たすけたげるよ、他に引く手がないのなら。
ぼくはたすけてをずっと言えない。 
 自分で立ってられるだなんて、ただの意地だろうから。
ひとりはさみしいだろ? 
 だから、手を取る誰かが現れるまでは、勝手に手を引いていたげる。
だれかができたら、ほどいていいよ。 

 たすけてが聞こえたら、そう思ったら、

ぼくもいつかいえるかな。 
 僕は好きに振る舞いますよ。
さみしいな だれかたすけて  

 




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