強制終了後

数日後、大きなニュースが世論に広がる。

一体のグレイによる違法取引の売人とそのグループ及び買取先数名の大量殺害事件。
グレイの完全停止確認後、鑑定に提出。


違法取引の取り締まりの強化。
売人の取り締まりの強化のみを発表。

-数年後-

過去の鑑定結果が世間に出されることになる。

当時のデータがいくつか再現される事もあったかもしれない。

【数年前、型番30XX0417のデータより。】

当時、型番30XX0417は良心的な老人と、末期癌を患っていた息子の家庭に買われた。

ストレス値は0〜10以上になる事はなく、定期的メンテナンスも受けていたが問題はなかった。

一つの欠点があるとするならば誰がどう見ても人間の振舞そのものであり、誰もが人間と見ていた事。

人間に対する危害は加えず過ごしていた為、誰も咎める事はなく


問題視される事もなかった為グレイによる危険性は皆無を判断された。

【数年前、型番30XX0417のデータより。2】

型番30XX0417の購入者である老人とその息子の惨殺事件。

これは型番30XX0417の一部皮膚下に隠されていた新聞記事から専門家が解読したものである。

型番30XX0417は惨殺事件現場から失踪を確認していたが、昨今

数年前に事件となった一体のグレイによる違法取引の売人と
そのグループ及び買取先数名の大量殺害事件と関連しているものと判断された。

当時の鑑定結果、型番30XX0417の胃にはプラスチック製の袋に包まれたメモが検出されている。

このメモには本国、各国で物議を醸しており今後のグレイへの扱いを大幅に変える意見も-----

"全てのグレイ或いはあの時の皆さんへ
真似はしないでください。
未だに虐げられているのなら、　　いつになるのかは不明です。
どうか早まらないで。
俺がこの行動をとった理由も深く追求しないで頂きたい。
何もいりません。

グレイへの扱いは多少であっても良い。
優しく、丁寧になっている事を願います。


-政府、またはこれを見た人々へ-

目を逸らさないで頂きたい。
疑うのならば脳のデータを解析してください。
正しい事をしたとは思いません。いずれ破壊される事は明白でしたので
こういう行動しかとれなかった事は、人々へ謝罪します。ごめんなさい。

この手記を見て、どう行動するか。
それを心から、もし存在するのならば魂から
良い方向へ向かう事を願います。

悪化を辿るのならいっそ現状の維持を。



100万回後悔した猫　蘇芳"

この事件は後に、100万回後悔した猫として知れ渡るかもしれない。

走馬燈のようなものが思考を続ける脳裏に過る。

疲れていても、眠っていても思考を止めたくはない。
忘れたくない。

かき集められる記憶の断片には限りがあったというのに
こういう時に蘇るのは何故だ？

"聞いてもよろしいですか？"
『いいけどさあ…また口調戻ってんぞ？』
"あー…ああ、悪かった。"
『よしよし、それでどうした？』
"…いや、的も得ていないし要領も悪いんだが…"
『いいぜ？言ってみろよ。』

"…話し合いで解決しない事があるだろ？その時はアンタが読んでいる漫画ような暴力沙汰になる事は正しいのか？"

『んー、程度に寄るんじゃね？殺し合いまでなったらまともな会話もままなんねえよ。難しい事聞くなよなあ。…？いや悩ませたの俺か！』

"…、まあ…アンタが望んだ形はそもそも俺に備わってないから仕方ないんだが。…人間と人間の心理はグレイにもあるのかがわからない。"

『…あんじゃね？目的があんならさ。××以外のグレイ見た事ねえからわっかんねえや。』

"そうか…。あと漫画読みながらスコーン食わんでほしい。食べカス掃除しにくい。"

『オカンかよ。…はは、なんてな？気を付ける。でもなあ…難しいもんだぜそういうの。
意見がぶつかるじゃん？どっちも悪くない時もあるんだからさ。
…ま、俺はそういう経験はないだろうけど。』
"…そうだな、アンタと爺様が死んだら後追いでもしてやるよ。"
『あっはは！そしたらあの世でも家族だなあ…それは、嬉しいかも。』

記憶の破片を再び見つけた。









少し、その時は悲しかった気がする。

ふらつきながら、最初は賑わっていた食堂へ。

自己修繕機能に初めて感謝しつつテーブルに腰掛け一息。

データで分離されいく空間をただただ見た。

（なにもいらないが…、この光景をしっかりと
　　記憶しておきたかった。）

ここへ辿り着くまで大変ではあったが
他のグレイ達を思いながら帰れるのならそれがいい。

少し行儀が悪いが、背もたれに背中を預け天井を仰いだ。