叶 西路（カナイ サイロ）
　旧姓は針計（ハバカリ）。
　学生時代に両親が離婚し、以降は母元で育った。

　幾度も他者を、そして自らを害した能力は
　恐れていた父が交通事故で死去した際の記憶に起因するもの。
　夕日で真っ赤に染まった道路、砕けたガラス片、
　そして、ぐちゃぐちゃに胴体をひしゃげさせた父の死体。
　それらに覚えた強烈な安堵と解放感によるもの。
　ハリは恐ろしいものを元から断ち、その罪を突き付けるのだと。

　理不尽な叱責や加害を何より恐れ、同類を何より愛していた。
　家族への情はあったが、それ以上に
　母は同じ父の理不尽の被害者（同類）であり、加害者が居なくなればその感情は薄れた。
　拠り所は物心付いた時から共に居た愛犬だけだった。

死因：失血死（自殺）
自身の能力によって、奈尾を道連れにする形で死亡。
元よりその最期を看取った少女の血液が付着していた白衣は更に夥しい量の血に染まり、
その下にはまるで滅多刺しにされたような刺傷が無数に広がっている。
所持品は殆ど無し。上着や白衣のポケットから
スマホと幾つかのガラス片、それから解剖用のメスが見付かる程度。

そのような見るに堪えない有様であっても、
これまでずっと見せていた不安げなものではなく
実に穏やかに、安堵そのものといった表情で。

自身が死者である事を受け入れて、
今はただ静かに死の眠りの中にある。