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人狼物語 三日月国


150 【R18G】偽曲『主よ、人の望みの喜びよ』【身内】

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カナイは、決して強いとは言えない人の事が結構好きだった。
(a13) 2022/06/15(Wed) 21:08:29

カナイは、理由は言ったら怒られそうだから、言わないけど。
(a14) 2022/06/15(Wed) 21:08:36

【秘】 晴の再路 カナイ → 日がな向き合う フカワ


「でも、」

一度、するりと手を離して。
片手を床について、もう片手は壁に添えて立ち上がる。
まだ少しふらつくけれど、どうにか一人で立てそうだ。

「…おれがそうしたいから、
 だから一人で責任を果たしたい事が、まだあるんです。」

自分にとって、この場所は。
逃げてしまったり、途中で投げ出してしまった事ばかりで。
だから、それらを拾い集めて来る事くらいは、自分の手で。

「それでも、あなたに話してない事もまだあって、だから……
 全て終えたら、ちゃんと戻って来ますから」

「それだけは、一人でさせてくださいね」

その路に、何があったとしても。
もう言った事を、言われた事を、反故にはしない。

だから──この先は、自分だけで。
(-14) 2022/06/15(Wed) 21:11:03

【人】 棕櫚の主日 コゴマ

>>5 伊縫
「……熱っぽかった、ね。まあいい。詮索するのは生産的じゃないからな。
 少なくともこれ以上不愉快ななにかに蝕まれるということは、無いらしい。
 そんな便利なものをいくらも用意できるなら、騒動のほうも治まるだろう」

果たしてどんな手を使ってそんなものを手に入れたのか、わかったものではない。
そして、同時に彼女がどれほどの労力を賭してそれほどのことをやってのけたのかも。
脱出するまでの短い道をどのように切り抜けるか、必要なものをかき集めつつ。
疑わしいような、恨めしささえあるような目で貴方の顔をじっとにらみつける。
もしくは観察しているのかもしれないが、愛嬌のない表情からは知れるものもない。

「僕はまだだ。退去する前にやるべきことがあるかもしれない。
 撤収する前にはどうにかするから、気にしなくて良い」

エマにはきちんと治すつもりであることを説明した上で、今は固辞しておいたらしい。
記憶に関わる力は、これから外で生きていく者には必要となることもあるだろう。
それが誰で、どんなふうにか、なんてのは交友が狭かったぶんわからない話だ。
(6) 2022/06/16(Thu) 0:16:50

【人】 棕櫚の主日 コゴマ

>> 叶
「……ああ、そうか」

言葉をかわしながらに、思い出したように手を手で打つ。
それから、破損しないようにハンカチにくるんだままにしてあった余剰の薬剤を、
貴方のほうへと押し付けるように寄越した。
手はさっと引き上げられ、返却は許されないらしい。

「僕は誰がこれを必要としているやら、皆目検討もつきませんので。
 "約束"をした貴方が、どうするのかは決めてくださいね」

そう言い残し、撤収準備に立ち返る。
それが、掌の上の希望が誰に向けられるべきであるかは。
自分よりも貴方のほうが、知っているはずだと、わかっているのだ。
(7) 2022/06/16(Thu) 0:19:29

【人】 晴の再路 カナイ

>>7 古後

「────へ、」

ざっくばらんに現状把握を終えた後。

反射的に受け取った、手の中のものに一度視線を落として。
それが何であるか、そして掛けられた言葉の意味を理解して
既に先の事を見据え、
自らのすべき事へと再び行動を移しつつあるあなたの方へ。

「……あ、あの、古後さん!」
(8) 2022/06/16(Thu) 1:38:40

【人】 晴の再路 カナイ

>>7 古後

「あの時、……僕達の事を
 助けてくれて、ありがとうございました。」

少し以前の事。会議室のやや手前、廊下での一件。
そこでの出来事は、
少なくとも自分達にとっては些細なものではなくて。

あの時、確かに自分は多少なりあなたに恐怖敵意を抱いていて。
それを知らずとはいえど、
そして、あなたにとってはそれが当然の事だったとしても。
寄る辺など何処にも無いと思っていた自分達の事を、

あなたは確かにその身を挺して助けてくれたのだ。

その事は、確かに皆が行き着く先を変えたのだと思う。

「それから…今もまた、こうして助けてくれて」

年甲斐も無い、助けられてばかりだな、と思う。
とはいえ事実今の自分にできる事が何かと言えば、
あなたのその行いを、その言葉を裏切らない事が最上だろう。

「ありがとうございます。
 あなたが、皆が無事で、本当によかった」

手渡された希望は、届けられるべき先へ。
だからあなたに返すのは、この言葉だけ。
(9) 2022/06/16(Thu) 1:40:25

【置】 晴の再路 カナイ

──この先は、自分だけで。

話を終えた後、預かったものを二つ持って、資料室を出た。
その用途を委ねられた注射器と、今ここには持ち主の居ない、
ロックされたファイルばかりのタブレット端末。

ふと、こんなに心細いものだったかな、なんて思った。
安全な場所を離れ、一人で行動するなんて
この数日の間で何度もしてきた事なのに。

とはいえそれも当然の事で、そもそもの話。
これまで自分が形振り構わずあちこち出歩く事ができたのは
ただあの力の殺傷力に頼り切っていただけなのだから。

人気は無く、人以外のものは遠く。
実際はもう自分達以外に動くものは少ないようだけれど、用心深く慎重に。
気配を感じ取るなんて事ももうできないから、頼りになるものは五感だけ。
資料室を後にして、随分静かになった廊下をやはり恐る恐る歩いて、
一回、二回、角を曲がって、……

三回目の角を曲がっても、
今そこにあるのは幾度か見た事のある扉だけ。
(L0) 2022/06/16(Thu) 3:37:50
公開: 2022/06/16(Thu) 3:40:00

【置】 晴の再路 カナイ


「職員仮眠室」のプレートが掛かったその扉を開けて、
いつかこの場所を後にした時同様、静かに電気を点けた。
あの時からどれだけ時間が経っているんだろう、
なんてふと過った詮無い考えは答えがあるはずもなくて。

神様なんて居ないと思っている。

少なくとも、子供心に思い浮かべるような都合の良いものは。
もしもそんなものが居るのだとしたら、
どうしてもっと早く、他の形で助けてくれなかったんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうはならなかったから至った今を否定したくはないけれど、
弱い自分は、きっとそう思ってしまうのも事実だろうから。

神様なんて、居ない方が良いと思っている。

けれども居ない事を証明できはしないから、
自分以外の誰かが居ると思う事を否定するわけじゃない。
自分にとっては、居ない方が良いものというだけだ。

もしもそんなものが居たとしたならば、
起きた悲劇を"それ"のせいにしてしまえるものだから。
(L1) 2022/06/16(Thu) 3:39:00
公開: 2022/06/16(Thu) 3:40:00

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


「…………」

やっぱり、まだ少し明るい場所は眩しくて。
再び室内を照らす明るさにほんの少し目が眩んで、
暫しの後、目が慣れれば仮眠室の中へ歩いて行く。

これまでの全てを、悪夢だったと思いたくはない。

「………弓日向さん。
 …すみません……すぐに戻るつもりだったんですけど」

だからあの時、確かにこの手で寝台に横たえたあなたが。
眠りから覚めれば忽ちに消えてしまう夢のように、
何処かへと消えてはしまわず、今もそこで待っているのだと。
返る声は無くたって、確かにそこに居るのだと。

「また…待たせちゃったみたいですね」

約束したわけでは、ないけれど。
許されるのであれば、叶うのならば、そう思っていたくて。
(-15) 2022/06/16(Thu) 3:40:39

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

曲がり角を三度曲がったその先の扉の向こう。
もう、すっかり慣れてしまったでしょうか。
開け放てば、むっとするような濃厚な死臭が漂います。

他の……つまり、開放されている廊下だとか、
そういう場所と比べると、この部屋は随分静かで、
閉じられたままで、それこそ遺品を取りに来られた時以外は、
一切の光もなく、音もなく、ただ暗闇が蟠り。

ここは、大きく肉が裂けた胸元を淀んだ空気に晒しながら、
満足気な微笑みを浮かべて眠る、納められた死者の為の部屋。
……随分短い間で、部屋は大きな棺に変わっていたようでした。

電気をつければ、血が和装を染め、ベッドから滴った血が
周囲に赤く広がっているのがよく、わかります。
ともすれば、それは赤い花を亡骸の周囲に敷き詰めたよう。

棺に納められた死者は、言葉を持ちません。返事も、しません。
あなたを責めもしなければ、許しもしません。
だからこそ悪夢のような光景は、あの時のまま。

――あなたのしてくれた事への感謝を顔に浮かべて、
ただそこにあります。まるで、待っていた、というように。
(-16) 2022/06/16(Thu) 10:42:43

【人】 海底撈月 ヌイバリ

>>6 古後

「話が分かって助かる〜。
はあ、あれ便利だったんだけどな……」

ふるり、と身を震わせてから青年は不思議そうな表情を作った。
自らの『想い』を『意思』のままに制御下に置いていた分、全ての主導権を一気に失ってしまったかのような感覚になる。
例えばそれは、恐怖であったり。


じっとこちらを睨むあなたと目を合わせ、へにゃりと笑う。
ここにいるのは怖い。怖かった。でも今は何だか大丈夫だと思えた。
無理矢理に誤魔化すのではなく、自然とそう思えた。
あなたがそこにいるからだ。

「……あんまり、無理しちゃだめだぞ?
出るまでの話とはいえさ、使うのも辛いだろうし。
注射怖かったら手握っててやるから言えよな……


あなたの能力に救われた人間はここにいる。
忘れることで救われる人間だってきっといる。
そのためにあなたが身を削ることだけは、釘を刺しておかねばと思った。
(10) 2022/06/16(Thu) 11:09:52

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


そこにあるのは、今や静謐な死の気配ばかり。
死者は何も語らない。死者は生者の罪を咎めも赦しもしない。
そこに何かを見出すのは、そして如何なる行いをしたとして。

──結局のところ、やはり生者の身勝手でしかない。

「…………」

肌に纏わり付き、息をする度肺に蟠るような重苦しい空気。
これまで幾度も自ら作り出して、けれど。
人殺しの狂人とて、終ぞそれに慣れる事は無かった。
いつだって我に返れば後に残るものは恐ろしいばかり。
(-17) 2022/06/16(Thu) 19:29:07

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


「…ずっと考えてたんです」

それでもやはり、今も恐れるべきはあなたではなくて。
だから徐に、けれど迷わず死者の傍へと歩み寄って
手向けのような赤の中、ただ安らかに眠る表情に視線を落とす。

あの時、あなたはもう、変われていたんじゃないかって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

悲鳴のような想いが書き連ねられたタブレットは、その傍らに。
血に汚れていない、まっさらなシーツを掛け直して
そうしながらに、誰に届くかも知れない、身勝手な独白を零す。

「あなたにはもう、自分の抱えるものを誰かに打ち明けて」

文字だけの言葉の裏に何があったとしても、
あなたがあの時自らの背負うものを打ち明けたのは事実で。

「誰かを頼る勇気があったんですよ」

あんな形になってしまったとは言えど、
あなたがあの時、誰かの助けを求めた事も事実なのだから。

そうして変われたからある今が、きっとそれを証明してくれる。
(-18) 2022/06/16(Thu) 19:30:52

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


「…後悔が無いなんてとてもじゃないけど言えなくて」

結局、あんな形であなたを助ける事になってしまった。

「やらなきゃいけない事、終わってない事も沢山あって」

ここから無事に出たとしても、良い事ばかりではない。

「せっかくできた約束だって、
 まだ全部は果たせていないんです」

それでも、まだこれからだったはずなのに。
もし無事に外に出られたら、なんて。
あの時は、口約束未満の皮算用だったかもしれないけれど。

それでも。

あなたがこれから先の事を話してくれたのは、
実は結構、嬉しかったんですよ。
(-19) 2022/06/16(Thu) 19:31:37

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


「……おれはやっぱり、神様が居るとは思いたくなくて」

また一つ、息をして。
重く停滞した空気を鼻腔に肺に感じながら。

「でも、わかったんです」

助けてくれる人は、案外居るんだって・・・・・・・・・・・・・・・・・

眠り続ける少女の、冷たい腕をとって。
確かな一人の意思によって、向ける先をこの手に委ねられた希望。
戒めでも、断ち切る為でもないその針を皮下に潜り込ませた。

それが再び同じ結果を齎してくれるとは限らない。
けれど、深く昏い眠りの中に、ほんの少しだけでも。
あなたが導とできるような、光を落とす事ができればいい。
それを導として、暗い森を抜けた先が何処であったとしても。

叶 西路は、あなたの味方だ。
行き着く先が何処であったとしても、これからも、ずっと。

一人では沈み行くばかりの西日でも、 
一度は砕け、罅割れの残るガラスでも。
誰かの光を受け、反射して、ほんの僅か。
あなたに光を届ける事は、できるのだと。

身勝手だとしても、今だけは。
誰の赦しが無くたって、そう信じる事だけは。
(-20) 2022/06/16(Thu) 19:33:22
カナイは、晴の路を歩く。
(a15) 2022/06/16(Thu) 19:38:16

カナイは、日向から暗い夜へ、その光を届けに行く為に。
(a16) 2022/06/16(Thu) 19:38:30

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

あなたの独白が、棺の中へ降り積もります。
もう噴き出すほどの血も残っていないのでしょう、
まっさらなシーツは微かにその白を赤に染めただけでした。
傍で見れば尚更、血の失われた青白い肌が目立つのです。

それでも、幾つも、幾つも言葉を零していけば。
その空っぽになった胸にある、半分以上潰れた少女の心に
幾らかは零れず残るのかもしれません。

あなたが、考えてくれたことが。
あなたが、守った約束のひとつが。
あなたが、人に少し近づけた事実が。


そして、西へ旅立ったあなたが、叶西路が、今ひとたび。
東から現れて、傍で味方をしてくれる。それが、
きっと、少女にとっては、なにより嬉しい事なのです。
(-21) 2022/06/16(Thu) 21:41:48

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

ぶつり、冷たい身体に幾らかの抵抗をしながら針が刺さります。
流し込まれる薬液が、その腕の内部へと滲みていって。
そうして、全てがからっぽの身体に流し込まれました。
それだけでした。
血流の止まった体では、薬液が行きわたる事もありません。
神に弓を引いた少女は、 の を受け取れないのでしょうか?
変化のないまま、数十秒が経って、きっともう何も起きないのだろうと思った頃に。

「こぷっ」


と。小さな音が聞こえました。
(-22) 2022/06/16(Thu) 21:42:49
マユミは、その固まった微笑みの口から、血を流しています。
(a17) 2022/06/16(Thu) 21:43:09

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

こぷ、ごぷ。
声ではなく、空気と血が吐き出される音。

……少女の微笑んだ顔は変わらないままに、
血が口から垂れ流されます。
それと時を同じくして、シーツの奥から音が鳴り始めました。
ぱき。ぱき。
それは結晶が生えているような音でした。

――目の前で、シーツが持ち上がっていきます。
抉れたような形だったそれは、音と共に膨らんで。
胸骨が再生しているのでしょうか、
ぱき、ぱきり。

そして、脈動の音が聞こえます。どくん。どくん――。
(-23) 2022/06/16(Thu) 21:45:02

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

心臓の稼働する音がする度、口から血が吐き出されます。
マットレスが血で赤くなり、シーツの赤がじわと広がりました。
ぱき、ぱき。
また、シーツが盛り上がります。ゆっくりと。
それを以て、シーツの赤が広がるのは止まりました。
少し形の歪んだ二つの山が布一枚を隔てて、
すっかりと元のように現れるのがわかります。

針を刺した腕の血色は、気付けば随分と人のそれに近づいて、
未だどくん、どくんと響く音は力強く。
口から流れた血は枕を重くする頃に、やっと止まりました。
腕から肩にかけて空いていた丸く小さな幾つもの穴は
きっと結晶を生やしていた痕でしょう。
それらもまた、安心して眠るように瞼を閉じて治っていきます。

そして、ひと際大きく。
どくん
、と響いて――。
(-24) 2022/06/16(Thu) 21:46:52
マユミは、目を開いて、大きな血の塊を吐き出しました。
(a18) 2022/06/16(Thu) 21:47:07

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

少女は、酷く混乱した様子でした。
開いたばかりの目を白黒させて、見えているのかいないのか、
手さぐりに胸元のシーツをぎゅうと掴んで、
その血で濡れた感触に肩を跳ねさせます。
未だぼたぼたと垂れる口元からの血に何度も何度も咳き込んで。
目元からは苦しさからか涙の粒が幾つも零れます。

その手が、ふらふらと辺りを探ります。
その指が、ふらふらと伸びていきます。
一番近くにいるのか、あるのか。
見覚えがある色な気がするそれに、すがるように。
はくはく、口が動きます。

「たすけて」


叶の方へ、苦しげに。助けを求めました。
あの時よりはずっと、普通に。
(-25) 2022/06/16(Thu) 21:49:19

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


針先は、蒼白な肌の僅かな抵抗だけをその手に伝えて。
そののち、ゆっくりと押子を進めていけば、
シリンジを満たす薬液はすっかりなくなってしまった。

そうして針は抜き去られ、空っぽの注射器はよそへと置かれ。
それが齎す結果を、自らの身勝手が行き着く先を。
どこか祈るような気持ちでただ見ていた。

自らが祈る神など居ないとしているのに、おかしな話だと思う。

それでも暫しの後に、そうおかしな話でもないのだと。
そう思ったのは、今この場に於いて、この祈りの先はきっと
神でもなく、運命でもなく あなた自身に、だったからだ。
(-26) 2022/06/16(Thu) 23:52:49
カナイは、だからただ、あなたに祈るだけ。
(a19) 2022/06/16(Thu) 23:52:55

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


実際はきっと、そんな思考の間は短くて。
その間に、何らかの変化を見受けられるはずもなく。
これは忽ちに全てが良くなるような、そんなものではないと。

そう理解してはいても、一抹の不安を覚え始めた頃。

「────、」

少しずつ、水が溢れ出すような、小さな音。
再び流れる血。死の停滞が、その均衡が崩れていく証左。
それが少女にとって、或いは自分にとって、善いものであるのか
そうでないのかは、今はわからない。

シーツの下、液体が立てるものではない、やや硬質な音。
幾度か聞き覚えのあるそれは、少し不穏なものを感じさせた。
けれど、それでも、いつかの時に聞いた、
まるであなたの心が軋むような、凄絶な音ではないものだから。

そして、何よりも。
あなたの表情が、穏やかなもののままでそこにあるから。
だからただ、黙ってその光景を見守っていた。

再び巡り始めた血が未だ残る傷から溢れ出し、
毀された人体が独りでに形を変え、元の形を取り戻していく。
おおよそ奇跡などと呼べはしないであろうその光景を、
その行く末がどうなろうとも、事実として向き合う為に、ただ。
(-27) 2022/06/16(Thu) 23:53:29
カナイは、後悔している事が無いとは言えない人間だ。
(a20) 2022/06/16(Thu) 23:53:37

カナイは、けれど、今にして思えば、後悔ばかりでもなくて。
(a21) 2022/06/16(Thu) 23:53:45

【秘】 晴の再路 カナイ → インザダーク マユミ


そうして、それら急速な変容に区切りをつけるように。

一度鼓動が大きく脈打って、閉じていた瞼が開かれる。
また一つ、少女の口からは多量の血液が溢れ出て。
混乱も顕に咳き込み涙を流し、けれど確かに、生きている。

そうして死者を安らかな死の眠りから引き摺り出す事が、
どれだけ残酷な事なのだとしても。
また罪を重ねる事になっても、それさえ承知の上でした事だ。


「大丈夫」

彷徨う手指を柔く、けれど確かに捕まえて。
この手が、暗く冷たい眠りから覚めたばかりのあなたを
安心させられるほど温かなものであるかはわからないけれど。

「ちゃんと傍に居ます。」

何処かしら血で汚れるなんて今更な事。
あなたは今、ひとりぼっちではない。
それさえ確かに伝わるなら、それで。

「落ち着いたら、ゆっくり息をして……
 ちゃんと待ってますから、焦らないでいいんです」

あなたを待たせてしまった分、今度は自分が待つ番だ。
そうしたら、改めて『おはよう』を言おう。
(-28) 2022/06/16(Thu) 23:54:51
カナイは、何より今は、しなかった事で後悔をしたくはなくて。
(a22) 2022/06/16(Thu) 23:54:59

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

ただ一度。
捕まえられた手は、びくりと大きく跳ねました。
            
インザダーク

きっと、少女の目はまだ見えていなかったのでしょう。
少女のその手はずいぶん、冷たくて。
冬のあいだじゅう、ずっと外に出していたような冷たさでした。
だからでしょうか、少女は……一度跳ねさせただけで、
その後はあなたの手を指で慎重になぞっています。
形を、そして熱を確かめているのです。
きっと、そのせいであなたの手は赤黒く汚れてしまいます。
まるで、少女があなたによって殺された事を、
改めて示すかのようでした。それでも、少女は続けます。

そうして震える指は、少しずつ、落ち着いていくでしょう。
それは、氷が溶けるように。
そこに居るのが誰か、分かったように。

だから、『大丈夫』のあと。
咳き込む自分の音を聞く事すら惜しんで、
酷い耳鳴りの中で、確かにその声を拾ったのです。
(-29) 2022/06/17(Fri) 0:41:46

【秘】 インザダーク マユミ → 晴の再路 カナイ

……はじめは。少女はそれを、夢かと。
それもとびきり、幸せな夢かと、思ったのです。
地獄以外に行く場所などありはしない自分が、
そこへ行く前に持たせてもらえた最後の幻なのかと、
冷え切った身体を抱えて思ったのです。

だけど、違いました。
それは、夢なんかじゃありませんでした。
それは、幻なんかじゃありませんでした。

そこには、温もりがありました。
嫌悪を呼び起こすような、自分を穢す
ではなくて。
いつか、ずっとまえに、他愛ない会話で得たような。
それこそ、お散歩をしていた時の。
……ただ、じんわりと暖かい――
(-30) 2022/06/17(Fri) 0:42:35
マユミは、咳がやっと落ち着きました。
(a23) 2022/06/17(Fri) 0:42:47

マユミは、深呼吸を二回、三回。
(a24) 2022/06/17(Fri) 0:42:56

マユミは、ぼやけた視界が、はっきりとしてきます。そして、
(a25) 2022/06/17(Fri) 0:43:10

マユミは、あなたをみつけました。
(a26) 2022/06/17(Fri) 0:43:19

マユミは、ぼろぼろと涙をこぼして、飛び込みます。
(a27) 2022/06/17(Fri) 0:43:27

【秘】 日向の再会 マユミ → 晴の再路 カナイ

――おひさまのような、あたたかさ。

マユミは、今、生きています。

    
in the sunshine.

あなたと一緒の場所で。
(-31) 2022/06/17(Fri) 0:45:20

【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ


──日は沈めばまた昇る。

暗く、寒く、寂しい死の夜は終わり、
少し眩しいけれど、暖かな日の差す時間がやって来る。
夢も悪夢も一様に、覚めても消えて無くなりはせず
一度夢から覚めた人間の歩む路の名は現実だ。

「────あ わ、 
〜〜ッ


いつかの時と、似ているけど違う。
なんとも格好の付かない声を上げて、それでもちゃんと。
若干バランスは崩しかけたかもしれないけれど、
ぐっと踏ん張って、今度こそ、確かにあなたを受け止めて、
(-32) 2022/06/17(Fri) 4:46:43

【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ


「………おはようございます、弓日向さん。」

一つ息を吐いて、へにゃりと笑った。

紛れもなく、現実だ。
今ここにある、明るさも、あたたかさも。
確かにあの時、自らの意思であなたを手に掛けた事も
そして、確かに今こうして互いに生きて居る事も。
(-33) 2022/06/17(Fri) 4:47:20
カナイは、きっと良い事ばかりではないけど、それでいい。
(a28) 2022/06/17(Fri) 4:47:28

カナイは、今ここにある安堵もまた、現実なのだから。
(a29) 2022/06/17(Fri) 4:47:36

【秘】 晴の再路 カナイ → 日向の再会 マユミ


比喩ではなく自分が血に塗れている事もまた、現実で。
血に塗れた手も袖も、あなたの涙を拭うには憚られた。
だからその頬を伝うあたたかさは暫し流れるままにしておこう。

殺して、殺して、殺して、殺して、死んで。
その後に、一度は潰えた路の先へ、手を引かれて。
だから今こうして、その続きを歩んではいるけれど。

じっとりと血を吸った服をどうにかする間も無く来たものだから、
こちらも殺人現場から抜け出た惨殺死体宛らといった有様で。
近付いた分きっとひどく血の臭いを感じるだろうけれど、
これはお互い様という事で許されないかな、なんて現実逃避。

そんな詮無い事を考えながら。
あなたが落ち着くまで、言葉通り、ただ傍に居た。

触れようとする事に拒絶を示されなければ、
そっとその背を撫でる事は、あったかもしれないし。
そうでなければ、もう一度その手を取るだけで。
(-34) 2022/06/17(Fri) 4:49:59

【人】 棕櫚の主日 コゴマ

>>8 >>9
例えばあの時貴方達が敵であることをわかっていなくとも、
今ならわかっているか、と言われたら。
この不安定な力をそこまで意識的に扱えたのだ、なんて確証もないまま、
そうに違いなかったろうと、確信めいて思うことはできなかった。
そして、古後愛施は小さな疑念を過ぎ去った後まで持ち出す人間ではない。
自分以外の人間に、さほど価値を見出していないが故に。

「些事でも助けになったのなら何よりですよ。
 僕は自分の周りのことしか、わかりませんので」

貴方の感謝の念の重さに比べれば、返した言葉のなんと軽いことだったろう。
背中越し、或いは横顔から放たれた"どういたしまして"がどれほど価値の在ることやら。
兎角、この出来事を超えて変わった様子のあった貴方に比べたら、
この青年ときたら、最初に偉そうにしていた様子から大きな変わりもなく。
それでも、返る言葉を受け取る腕は、変わらずそこに、あるだけだ。
(11) 2022/06/17(Fri) 4:53:32

【人】 棕櫚の主日 コゴマ

>>10 伊縫
「結局のところここから離れるまで安心できるわけでもない。
 僕は戦うための力というわけでもないけど……まあ、保険だ」

例えばひとたび使うだけで追手を振り払えるようなものだったなら、
もう少しだけ渋る理由もあったかもしれないし、或いは危険視されてしまって、
今よりも早くエマから駄目押しの注射が振る舞われていたかもしれない。
誰かを斃すに向かずとも、何が出来るわけでもない、とは思っていないようだった。

「……何が怖かったら手を握っててやる、だ。
 注射が怖いから躊躇しているとでも思っているのか?」

長い前髪の向こうで眉間に皺を寄せて、渋い顔。
貴方の忠告を侮られたとでも思ったのかもしれない。
作業の手を止めて、伸ばした人差し指で額をつついてやろうとしたかもしれない。
けれども少なくとも。貴方の言葉に思うところは、あったのだろう。
まとまった荷物を脇に置いて、貴方の隣に座り込む。

「――でも、そうだな。
 ここから出ていくまでの道中が恐ろしいなら。
 僕が、お前の手を握っていてやるさ」

手を、差し伸べて。
(12) 2022/06/17(Fri) 5:14:49