「またやってんの。
　今どきそういうの流行らないよ、時間決めて用事ある人もいるんだろうしさ。
　昔と違って抜き打ちやってるなんてのは本当にヤバいの持ってくるやつにはメッセですぐ伝わるし、
　無言実行なんてやっても大多数が割食うだけで無駄だって」

手作業ベルトコンベアでゆっくり流れていく生徒の波に溜息をついた。
きっと窓から入り込む不届き者も居るだろうし、異能でパスする生徒もいるだろう。
渋々と言うよりは開き直ったように列に並び、鞄を開けて中身を見せた。
練習後の体は少しの汗と制汗剤のにおいがする。

「大したものもないだろ。だいたい、準備期間中なんだから」

めぼしいものは鞄の中には入っていないだろう。せいぜいが、学校指定でない図書くらい。
図書館内の本につけられる目印のない本は、少なくとも漫画類ではなさそうだ。

>>G74 ザ・風紀委員 普川
「十二人の怒れる普川を校舎の周りに設置したほうが検挙率いいと思うね俺は」

どういうこと？

「工具とかなあ。それこそ先生が全部用意してくれりゃ楽なのに。
　異能格闘あんのに何が危険か安全かなんて区別すんの厳しいだろ、なあ？
　さっさと切り上げてお前もクラスの準備手伝えよ」

聞き様によってはこれ見よがしに嫌味を言ってやっているかのようにもみえる。
丁寧にレンズ上にまでかっぴろげた鞄を背負い直すと、ポンと肩を叩いた。

>>G78 普川
「冤罪が処されても人の欲望がある限り第二第三の冤罪が現れるだろうし」

本題から離れに離れた上滑りした話がどんどん北上していく。

「はいはい、んじゃまた教室で。風紀のやり過ぎて遅刻したりすんなよな。
　準備に遅刻もなにも〜って感じだけど、さ」

去りゆく背中のベルトにはしっかり惣菜パンの包装の端っこがはさまっていた。
どちらかというと他人の様子を気にしいの世良にとしてはこういうふるまいは珍しい。
関門をくぐり抜けた背中は三年の教室の方へと上がっていく。