あれ、海斗…… 彼女でもできた？
　　　こんなとこにキスマークなんかつけちゃって
　
　

[　ある日、友人の項に赤い痕を見つけてしまった。

　 『やらしー』と、>>5
　 けらりと笑って茶化したけれど
　




　 一緒に笑って、騒いで、楽しくて
　 ちょっと触ると嫌がる癖に、拒む仕草は優しくて


　 友人として好きだと思っていた。
　 だけど、この感情はなんだろうか。

　 白い項に散った赤い痕を見つけてしまって、
　 それをつけたのは、誰なんだよ、と
　 怒りに似た感情が湧き上がってくる。]
　

　
　
　

　
　
　

　
　　　
　　　ふーん、この前の年上美人とか？


[　『そんなかんじだよ』と肯定が返ってくれば>>6
　 湧き上がる感情の色は濃くなった。

　 いつもより、少し低い声で問い返したが、
　 海斗は、鬱陶しいというように、
　 手をひらひらさせるだけで、答えてはくれない。



　 これ以上、海斗に探りを入れても
　 情報は得られ無さそうだ。

]

　

　　　あれ？ 海斗？


[　次の講義までの間、少しだけ時間があったため
　 構内の喫茶店で時間でも潰そうかと思っていたら
　 サークル棟の方へと歩いていく海斗を見つけた。

　 サークルには、殆ど参加していないと言っていた。
　 そんな覚えがあるが、珍しく参加するんだろうか。

　 友人の珍しい行動に興味が惹かれて
　 後を追った

　 『アウトドア研究会』の部室がどこか
　 探すのに手こずりつつ、
　 やっと部屋の前までやってきたが
　 扉の向こうから、人の声が聞こえてこない。

　 少なくとも、海斗はいると思ったが、
　 いないんだろうか？

　 好奇心でドアノブをひねれば、簡単に開いて、]

[　そこで、海斗は―― 眠っていた。

　 眠っていると、普段の小生意気な表情が消えて
　 少し幼く見えるから、寝顔は可愛らしい。

　 本人に言うと怒られるだろうから言わないけど
　 初めて見たわけでもないのに、
　 なぜか、―― どきり、とする。

　 ハンモックの上で、器用に丸まって寝ている姿は
　 普段懐かない凶暴な猫が、無防備に寝ているようで
　 吸い込まれるように、足が動けば、
　 眠る海斗の目の前までやってきていた。



　 普段見ることはない光景が、妙に色っぽく見えて、
　 ぞくり、と身体の奥底がいた。]

[　僅かに身じろぐも、起きる気配がなくて



　 耳元に寄せた唇で、そのまま耳裏を擽って
　 起きないか様子を伺いながら、
　 いつだか、赤が散っていた場所まで辿る



　 今は、痕のひとつもない綺麗な場所に

　
[　ちゅ、ぢゅ、と下品な音を
　 誰が来るかもわからない部室の中に響かせて、
　 いつ起きるかもわからない友人の項に痕をつけた。



　 罪悪感と、背徳感に、ぞくぞくとする。

　 悪いとは思ってる、
　 でも、止める気にはならなくて
　 同じ場所に、なんども赤を重ねた。

　 最初は、薄かった赤は、重ねれば濃くなって
　 罪悪感は、より増していく。

　 何度目か、色を重ねていれば、
　 海斗が、もぞもぞと動いて、
　 僅かに、色香が漂う吐息を零す。]
　

[　心臓が、どくり、と脈打った。
　 たぶん、緊張のせい

　 海斗の口から、漏れた吐息に
　 興奮を覚えたとかではなく。

　 『睦月』と、俺の名前を呼んだ気配に
　 たぶん、気付かれたと焦ったんだ。

　 慌てて顔を上げて、数歩後ずさる
　 起きる気配がしなければ、引き際だと判断して、
　 そっと静かに部室を後にした。

　 これは、悪戯心だ。それと、
　 海斗を手に入れた奴に対して、ちょっとした警告


　 そう自分に言い聞かせなければ、
　 今の関係が崩れそうで、越えてはいけないラインを
　 飛び越えてしまいそうだったから。
]