「あまりあの子にちょっかいかけないでほしい、かな。
冗談とか、苦手なんだ。ごめんね？」

周囲の温度が一気に下がった。

『げんきか〜』

連絡先を多分交換しているのでメッセが飛んでくる。
ぴろーん。

『なんかおもしろいことねーかー？』

『暇人かよ！』

そう間を置かずに返ってくるだろう。

『面白いどころか悩み事しかねぇわ』

貴方の元に近づけば、小声でささやく。

「うっかりしちゃいました。センパイごめんなさーい」

あまり反省の色が見えない、緩い返事をして。

「大丈夫ですって、皆ちゃんと"間違えてお父さんって言った"って受け取ってくれるかもしれないじゃないですか〜」

『どんな悩みだー、んー？』

『大量の女に言い寄られてるとかか〜？』

「言葉の前後がよくねぇよ、うちの生徒なら教育的指導だ」

こそこそ話は続行しつつ、ため息をついて距離を離した。

「ま、……今はどうこう話してる方が疑われる。
　あとででもなんでもいい、なんかあんなら事情話せ。
　金とか別のもんとか……気になっちまうんだよそういうの見ると」

『なにそれ怖い……』

女の子は可愛いけど、大量にいてこっち向かってくるのは怖すぎる。

『センパイはそーいうの、経験豊富なの？』

「そんなぁ。これまでちゃんと黙ってたから見逃してくださいよ〜」

泣きついている。もちろん嘘泣きだ。

「んー、了解です。
　忘れてなければ、聞いてもらえればいいですよ。

　秘密に抵触することは黙秘権を行使してもいいんですよね？」

約束しますよ、とセンパイの口にドロップを一つ押し当てた。
酸っぱいそれはレモン味だ。

『嫁はさっさと死んだ。
　あとは恋人がいたが、結婚はしなかったな』

ぽん、ぽんと軽く重いものが送られてくる

『ゼロじゃないって程度だ、人並みにな』

「可愛い子にそんなこと言われたらな〜！」

パパ活通り越してジジ活よ？
体も精神も結構若めには振る舞っているので、気分の問題だ。

「じゃ、また誰かの秘密が晒されたときにでもお邪魔すっか。
　この甘いキャンディーのお返しも添えてな」

レモン味を噛み砕けば、ペロリと口許を舐め軽快に手を降った。

きっとこのパラダイスにはアドレスを強制的に交換するシステムもあったと思うので、何も予兆もなくそれは来た。

貴方にはわかる。

これは―――頭を使っていない男子高校生のメッセだ。


『お題：』

きっとこのパラダイスにはアドレスを強制的に交換するシステムもあったと思うので、何も予兆もなくそれは来た。

貴方にはわかる。

これは―――頭を使っていない男子高校生のメッセだ。

　
見た。



ほんと、そう思う。打たないけど。

「……えー…………」

でも、律儀に考えた後、返信が来た。

『俺には人並みの基準がわかんない……』

そういえば御年90代だったなぁ、などとおもいつつ返信をうつ

『招待状、貼ってあるじゃん。
　俺、とあるやつからあの通りにしてあげてって言われたんだ。
　ヒントは会いたい人、心当たりのある人、嫌いな人、気になる人
　俺の解釈で良い……って言われたんだよ』

『もう何がなんだかわっかんねーしさ……
　俺自信がどう、思ってるのかわかんなくなる時があるし……
　何もかもがわから……』

面倒くさいって言った。

女扱いしている？
冬にデートに誘う女扱いをしている？

いいえ、普通にかわいそうだな……
っておもったおじいちゃんの優しさ。
相変わらず非常に言葉が足りないだけである。

『俺に会いたいって素直に言えよ』

なんか口説いてる気分だな。他意はない。

『適当に間食食うかよ』

時系列はわからないが昼ならおやつタイム。
深夜なら夜食を食べに誘うだろう。

　


女扱いと冬にデートに誘う女扱いと誤解されてるぞ！
そりゃあ、そう。唐突過ぎるもん。責任取って下さい。

時代というか。なんというか。
なんとなく、昔の嫁さん愛してるとかよりは、
いい思い出になってそう。大分捉え方が達観している。
110歳だもんね。



強いて言えば、将来甲斐性はある男だと思っている。
性格に難はあるが。