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人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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視点:


【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

2月、花祭りの名残のある日和。窓の外には白い小花があちらこちらに散って見える。
いつかの日。遠く過ぎ去った春の日。
思い返すのは青年か、貴方か、どっちだったろうか。

ニュースにもならないような小さな話だ。
路地裏でたむろしているチンピラの一人が街から居なくなったという。
あるものは出稼ぎでも言ったんだろうといい、あるものは夜逃げでもしたかといった。
島の上から社会の益にもならない人間がひとりきり消えていったところで、誰も問題にはしない。
そんな誰かの名前なんて、誰も覚えていやしないはずだった。

いくつかある貴方の隠れ家の内、たかだかの駒であっても知れるような場所。
一つくらいは他のカモフラージュのために、近しい人間には明らかにしていたところがあったのだろう。
ちょうど貴方がそこに滞在していた頃、貴方が世話していたうちの子供が尋ねてきた。
子供、なんて言ってもとうに成人してから2年は経っていて、孤児院からは離れていて。
そのくせまだ日雇いやアルバイトを転々として身の置き所も定まらないような問題児だ。
ソレが意味のある言葉をやっと長く繋げて日々の報告だとかを向けてくるようになった頃から、
ずうっと貴方の手を煩わせてきた、ちょろちょろと周りをうろつくだけの、ただのガキだ。

「先生、居る? 留守かもな……忙しいって言ってたし、こっちには居ないかもな」

貴方が滞在している時に青年がちょうど訪ねてきたのは、おおむね偶然だったんだろう。
同じ組織の中にいるのでもない子供が貴方のスケジュールを把握しているわけもないし、
どこで今何をしてるか、だなんて聞ける相手を、知っているわけでもない。
気まぐれな生き物は、訪ねてみてから連絡すればいいか、なんて楽観的に考えてもいたのだろう。
インターホンを押して数秒。待つこともうしばし。貴方は顔を出してくれるだろうか、なんて。
そわついた素振りをして、窓に映した自分の顔を見ながら髪型を整えたりなんかしていた。
(-1) redhaguki 2022/08/24(Wed) 23:25:52

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー

その昔、冷たい風が肌を撫でる季節。
春の訪れがまだ見えないのをいいことに暖炉にくべる薪を増やして、男は部屋に引きこもる準備をしていた。
外回りをするといって定期的に向かういくつかの隠れ家、人の暮らしている形跡を普段から残しながら使わないと脆く朽ちていく家具たちを消費する。掃除は嫌いだからハウスキーパーを雇いつつ、だ。

一息ついたところで鳴り響くインターホン、体を動かさずともスマートフォンから監視カメラの映像を確認する。映ったのは嫌でも心を揺さぶらせる子供の姿だ。子供、なんて言ってもとうに成人してから2年は経っている、立派な――社会の一員になるべき俺の駒の一人。

「あいつ、今の状態の俺に会いにくるなんて。
 どれだけツいてないんだ」

居留守を使うにも幹部として確かめなければいけないことがある、今この目の前の子供が敵であるか。排除しなければいけない対象であるのか。
家具の隙間に隠してある拳銃の弾の段数を確認して再び戻し、数秒数えてため息をつけばネクタイを緩めて玄関へと向かう。
あのニュースにもならないような情報がひどく頭で響いていた。


ごきげんようBuonGiorno、ソニー。
 ……仕事終わりで今から休むところなんだ、風呂に入りたいんだが話は長くなるか?」
(-2) toumi_ 2022/08/24(Wed) 23:58:00

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

「!」

足音が聞こえて来たなら慌てて姿勢を正し、すぐに開くのだろう扉の前に直立に向き直る。
別にそれも大きな音じゃない。今までの多くのために培われた教育と資質の賜物だ。
それでも今、いつかの未来よりも一層立ち振舞いはあからさまなくらいにわかりやすい。
唯人、ごく普通に市井を生きる一般人とは一挙手一投足の洗練のされ方まで違えてしまってるくせにだ。

ごきげんようBuonGiorno、先生」

扉の隙間から見えた姿にほとんど飛びつくみたいに、一歩踏み出して両頬にキスを交わした。
別に特別なものじゃない、ふつうに人々が交わすバーチョだ。右に一回、左に一回。
けれどもなんとなく緊張だったり落ち着かなさだったりの滲む動きはほんのり不自然だし、
それをごまかすために一度唇を歯のうちにぎゅうと巻き込んでから笑顔を作って見せもするし。
貴方に対してはどうにもばかばかしいほど隠し事の出来ない男が、誰某れからの刺客である筈もなく。
けれどそこまでわかっていたって、背に回したままの片手には目を留めるだろう。
ちら、と自分の背中に一度目をやってからそれを取り出すんだから、凶器であるはずもないのだが。

「コレ、花祭りの季節だからさ。その辺の枝折ってきちゃった。
 忙しいトコごめん! どうしても先生に話したいことあったんだけど、ダメ?」

目の前に差し出されたのは白い小花をつけた木の枝だ。言う通り、勝手に折ってきたのだろう。
もちろん街路樹を傷つけるなんてのは良いことであるはずもないのだが、
チンピラ上がりの青年には、目先のこと以外はどうにも後回しにしがちなんだろう。
未だに、一生相手の背丈を越せそうにもない小柄な上背の上にくっついて見上げる顔は、
簡単に用事だけ済ませて帰るつもりはなさそうな、既に名残惜しそうなさみしげな表情をしている。
(-3) redhaguki 2022/08/25(Thu) 0:20:45

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー

(ここも引っ越して……
 あえて残して仕事場に泊まっていることにするか?
 いや、完全に姿を消すような真似は怪しまれるな)

見える範囲のスキンシップは激しくなってきて、つるんでる連中の色も怪しい。おまけに色事がなんとも褒められたものではない噂が飛び込んできたんだが、信じられなくて監視の目を閉じてからもうどれぐらい過ぎたか。仕方ない身分なのはしっているが、本当に苦い虫を噛んでる気分には変わらない。

そんないつでも己の懐に入って幹部様を刺せそうな子供が差し出すのは白い花だ。警戒する方がバカらしくなってくる。

「……用が済んだら帰れよお」

頬に口づけを返して家に招いてやる。暖まった空気が余所者を迎え、玄関に向かう前に電源をつけておいたコーヒーメーカーから豆がが薫っているリビング。
ソファーにその疲れきったを沈めれば隣を開けてやった。

「話したいことって?例の話だったら
すまないな


 あのしつこい就職の催促なら俺のせいだ。
 この間ソニーが早く自立している姿が見たいと愚痴ってやったからな、次にあったら叱ってやると息巻いていた」
(-6) toumi_ 2022/08/25(Thu) 1:01:37

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

今も昔も、そんなふうに案じられているなんているのはいざ知らず。
心はとうにずうっと飽きもせず途絶えもせずに貴方のものだ。けれど相手はそうではない、と。
大人と子ども、相手にされやしないものだと内心仕方なく思いながらに追いかけ続けていた。
とっくの昔に捧げた心、それ以外の身体だとかっていうのはどう振る舞おうが構わないと考えていた。
今更操立てして他に目移りすることがないなんて示したところで、何か意味を成すわけじゃないのだし。

聞き方を変えれば長居はするなと嗜められているようなものなのに、大層嬉しそうに笑う。
それがなんとも得意げそうなのだ。別に自分の功績ではないんだけれど。
いつまでたっても子供っぽさの残るような仕草も、垂れ目の童顔の上では浮いても見えない。
あなたの前じゃいつだって、背伸びをしただけの子供だった。

跳ね回るように後ろをついて歩いて、当然のように開けられた隣に座って足を伸ばす。
ぽきりと折られた白い花の枝は、挿す花瓶も都合よく空いてるわけじゃないから、
適当にテーブルの隅っこに置き去りにされてしまう。季節の花を見せたかっただけなのかもしれない。

「そうなの? ちぇ……そのこと報告に来たんだけどな。
 オレだっていつまでもあちこちほっつき歩いてるワケじゃないよ、ホント。
 最近はバイトだって続くようになって来たし……」

隣にぴったり座っていたって尚身長差を感じるような小柄な体躯とは裏腹に、振る舞いはいっぱしだ。
いっぱしのチンピラだという意味でしかないけど。放っておきゃもっと始末に追えなかったろう。
心配をかけてばかりの生き物は、言い訳めいた言葉を吐くごとに段々と声を小さくする。
ちら、と怒られる気配を察したみたいに、上目遣いに貴方の目を覗き込むのだ。

「先生もやっぱ、……困ってた? オレがいつまでもフラフラしてるから……」
(-11) redhaguki 2022/08/25(Thu) 8:37:31

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー

「ああ、早く一人前になって」

ノッテの刺客かと疑われたソニーのファミリー加入は容易でなかった。孤児院はマークされているし、なによりも俺と仲がいいことぐらい監視の目があればいくら誤魔化しても知られるのだ。

「まともな金を稼いで、家族たち孤児院に出来るようになれ。
 懐の余裕は心の余裕だ。しっかり背広を着こなすお前はそれはいかした男になるだろう」

であればできることは余計な接触を持たず、子供たちがいる所でのみ会話し、こうした密会など持っての他で、とっくに気づいているその熱のこもった瞳を見つめ返さないようにすることだ。
あの事件さえなければ変わっていた距離感感情に気づいてはいけない。


うまくいったのはたったひとつのコネだ。
先代が救ったアルバの知人幹部はひとつだけ何かを融通をしてくれると約束をしていた。彼が亡き今通用するとも思わなかったその願いを聞いてくれたときは、ただではつぶれない組織になると感嘆したものだ。合併の推進派はすでに押し込まれて、互いに敵対をしている立場。互いの信用と誓いの証は、二度と接触をせず全て管理を任せ、情報を渡し合うことをしないことに収まった。

「なんだ?今さらか、お前の振るまいには困ってたさ」

視線は白い花に注がれている、さてこいつの種類はなんだったか。手は伸ばさずにただただ見ている。

「なんせ俺はお前をずっと見てきたんだからな、
 この間だって医者に胃に穴が開く寸前だと言われた」

誤魔化してばかりの人生だったが、これは真実である。
(-12) toumi_ 2022/08/25(Thu) 10:06:59

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

「はあい……オレに出来っこないよそんなの。先生くらい背が高けりゃな。
 でも先生も着こなすって感じじゃあないよ。たまにシワ取りきれてないじゃん」

返事はするけれど、やはり青年はいわゆる優秀な子供ではなかった。手先は器用だが、頭は並だ。
荒事ばかりが運ぶわけではない世界に混ぜ込むための人材を作る施設の中では、評価は良くも悪くも。
身体能力では劣っていても頭の良さで青年を上回って見込まれた人間のほうが、それなりに多かった。
だから、望まれるような一人前の姿は……ちょっとだけ、自信がない。

「……いじわる」

説教じみて耳に痛い言葉から逃れるように、低い位置にある頭は貴方の肩に埋もれた。
肩口というにはもうちょっと内側、胸板につながる辺りのところに、少し固めの髪がうずくまるよう。
子供じみた仕草をするにはもう大人に過ぎる。昔から、怒られるとよくこうしていたのだろう。
いつまでも子供のつもりで居る、わけではない。自分の年齢に相応しい振る舞いを弁えてないわけじゃない。
甘やかされるのを期待しているのが半分。甘えてもいい相手だと思っているのが、半分。
心臓の音と体温を感じて、うまく詰めきれない距離をどうにかしてしまおうとしているのが、ほんの僅か。

「オレも先生といっしょがよかったな。また会いづらくなる……
 先生のお菓子だって最近食べてない気がする。味忘れちゃうよ。なんかない?」

言葉にしてみると思い出したように、ぐうと腹が鳴った。条件反射が早すぎる。
これだけ寄り添っていたくせに現金な目は急にきょろきょろと部屋の中を見回す。
わがまま放題に振る舞うのは、貴方に随分甘やかされて育ってしまったからなんだろう。
同じような季節の、木に成る花に近しいようで違う独特の甘い香りのせいかもしれない。
この時期、一部の観光地や街路樹には、机に今転がされているのと同じアーモンドの花が咲き誇っていた。
花祭りの季節、別にそれを目にするのは珍しいことでもなんでもなかった。
(-32) redhaguki 2022/08/26(Fri) 0:47:38

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー

小さな重さを受け止めつつ、一瞬上がった熱を感じながら深呼吸をした。
鼓動がいつもより早くなりそうで自分でも驚いた、油断すれば――その距離が0になってしまうのも時間の問題だったのだ。
一度過ちでも犯してしまった方が楽なのかと思考が走り、この子供が大人しくなる光景が浮かばない。与えるのは甘くて溶けるような、そんなドルチェだけでいい、そう繰り返してため息をついた。

「雇ってもらえただけありがたく思え。
 そう簡単に選べる立場でもないだろお?
 もっとお前自身がしっかりして、
 雇い先が潰れでもしたら次の仕事を斡旋してやるよ」

子猫のように部屋を見る貴方を暫く眺めていてもよかったが、小腹をすかせ過ぎるのも困り者だ。
懐から出すのは変哲もないキャンディで。
包装を外し、フルーツのフレーバーをした雫を人差し指と親指でつまめば餌を求める口元へと連れていってやった。

「もっと美味しいのは冷蔵庫だ、今はこれで我慢できるか?」

差し出しながら立ち上がり、座って待っていろと視線を他所へと向けた。
こんな四年後の男が見ても甘すぎる態度。今の男が四年後を見ても、触らなくなっただけじゃないかと乾いた笑いを溢す仕草。どうしようもないほど甘くて、他のもので中和するのに一苦労している。
薄く香る白い花も、二つ分の温度もこの家にはあまりに余分すぎる。祭りだからいいか、と納得付けるにもこの街では何度祭りが行われるかなんてわかりきっている頭では、いつまでたっても離れてくれないことを示していた。

貴方にとって我慢できない時間と、男にとって我慢できない時間が違いすぎる。わかっていて押し付けた関係、いつ殺されても仕方ないなと気付いていたのはこの頃からだっただろうか。
(-39) toumi_ 2022/08/26(Fri) 11:55:14

【秘】 愚者 フィオレロ → デッド・ベッド ヴェネリオ

「犬扱いしているのを相手に真面目に考えるのやめません?
 ……冗談ですよ。この件は冗談じゃなかったですけどね」

冗談じゃなかったけれど。死んだ時点でなしと彼が口にした時点でもうそれ以上を口にすることはない。求めていたのは事実であっても、その最低条件を満たせないまま強引に口説く程のふてぶてしさは、生前には形成しきれず。

「人の真剣な願いをそうぽいぽい押し付けようとするのはどうかと思いますが、叶える為に一応手伝ってやろう……という善意は感じたのでそこはいいです。

 コルヴォにはそれは求めてませんでしたよ。……俺より酷い状況のやつに何かを求めるには、俺は少し不要なものを知りすぎましたから」

リカルドさんもまさかこんなところで縁組の話が出てるなんて思いもしないだろうなあ、と死者はぼんやり空を仰ぎ見た。

「あと、テンゴさんは……っ、
わっわっ、……?」


隙だらけの油断野郎はそんな事された経験もないからそういう行動と言う気配にも気づかず、一瞬で終わった一瞬の夢の中の夢のような時間に、暫し何が起こったのだとばかりに適当な子供たちAは呆けるばかりで。

「……あー、喜ばせるの、下手ですねヴェネリオさん」

乱されて更に崩れた髪を撫でつけるように指で直しながら、喜ばないという意味じゃない。愛に飢えている相手にやっていたとしたなら、それは意味が大きく変わるというのを嫌でも理解していた。

「ほらー。やっぱり罪な男だ。俺じゃなければ別の未練を生ませてましたよ。でも俺は俺なんで、……誰の役にも立てないままでしたが。そのお言葉に甘えて最後以外の殆どの未練は、今ので切っちゃうことにしてやります」

随分えらそうな言い方。不躾気味ではあったもののこんな言い方は滅多にしなかったのだが、髪を直そうとしている腕が顔を隠す意図を考えれば察しはつくだろう。今更だから、逆に見せたくないのだってある。

「じゃ、引き留めてすみませんでした。余り貴方を拘束しているとどこからせっつかれるかわかったもんじゃないので。お元気で」
(-40) poru 2022/08/26(Fri) 14:34:10

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

相手がどう感じているかだなんて知らぬままだ。手の届かないものと思っているから。
だから天上に向かって手を伸ばしている、何度も。幾度となくそれを繰り返してきた。
これだってその延長線で、響いているとは思わなかったから空振りし続けているつもりなのだけど。

「わかった、わかった。ちゃんとやる。別にやる気が無いわけじゃないってば。
 ……待つ!」

やりとりだけならそれこそどうしようもなく大人と子供だ。
片付けの出来ない子供が急かされるみたいなやりとりの末に、差し出されたキャンディに視線が寄る。
唇に触れる透き通った甘味を、口づけるみたいに受け入れてから。
ばく!
と指ごとかじった。
実際にかじり取れたのは当然飴玉だけだ。してやったり、悪戯の成功した子供みたいに笑って見送る。
多少こうやって上回らせてみせてやれば、案外落ち着いて待ってみたりもできないわけじゃないのだ。
手持ち無沙汰に、伸ばした足を揺らしながら相手が帰ってくるのを待つ。

「まだ全然寒いけどもうちょっとで春が来るんだなあってわかるから、花祭り好きなんだよね。
 母さん達からもちょうどこの時期に花が届くから……
 あ、そうだ。もう一個報告あんだよね」

まだ、ガラスランプのシェードに細かな罅が入る前。内側の灯りがむき出しになって壊れる前。
いつだかの青年は、今の男よりもずっと素直で、明るくて。寂しそうな翳りなんてのもなかった。
他の誰かに傷つけられる前に貴方を殺さなければならない、なんて追い詰められたりも、しない。

キッチンの方に向かう背に、張った声を投げかけつつ思い出したように声をあげる。
言ってみてから、なんだかにやにやと。けれども仔細な話は相手が戻るまで待とう。
(-51) redhaguki 2022/08/27(Sat) 0:05:31

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 愚者 フィオレロ

「変なやつといい仲になるのがうまいなあ……違和感を感じたのがその辺りだったんだよ。
たらい回しにするつもりはなかったぞ、斡旋というんだ」

愛の形に趣味がありすぎた、普通を求めるのなら、なんて。そんなことを説教連ねたって仕方ない。

「喜ばせるのが上手かったら、少なくとも部下をこんなめに合わせることにはならなかったんだ。頭がいたくなる説教だ」

死なせることもなかった。
共に並んで好きなことができて。
未練を残させることもなかった。

これは身勝手な、贖罪。

「おう。
 ……まあ俺を"待っている"やつなんて何処にも居ないがな」

大切なものを守りたくて。
手を伸ばされても掴めない場所に全て置いてきた。
だから今だって、また一つ手離す。

「フィオレロ」

それでも俺たちが遺したものは確かな形になるだろう。
生きている兄弟の手によって。

もうAmo迷子にla miaなんなよfamiglia
 お前は生涯ノッテ家族だったんだからな」

ごきげんよう、手をあげながら何処へともなく男は足を向けた。
(-66) toumi_ 2022/08/27(Sat) 15:17:01

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー

噛まれた指をわざとらしく痛そうに振って立ち上がった。
冷蔵庫に入っていたのは男の得意料理。あえて教えてもいないが主食であり娯楽のひとつであるのは既に知られてもおかしくはない。

もっとも仕事ですら分け与えているのは20年来の友人と直属の部下ぐらいであり、プライベートでの付き合いなんて当の昔に潰してる上に、今では足を揺らして座っている子供ぐらいとしか面と向かって話さないのをきっと彼は知らない。
電話で今では何でもすむ、聞かれてもいい内容だけを話すのは厄介だが少しでも接点を作らないことが他人に疑われない秘訣だ。

伝えてやる機会なんて早々ないだろう、関係はないと言うにはあまりに冷たいがこれから離れ離れになっておかしくないのだ。向こうもファミリーからノッテの悪態をどれほど吹き込まれるかわかったもんじゃない。

「ブラーヴォ、ソニー。
 相変わらず花が好きだなお前は、祭りならどこでも花が見れるだろ……まあ暖かくなってくるこの時期は嫌いじゃねえけどよ」

食べかけのタルトタタンを取り出し調理台の上に乗せ、一人分を綺麗に切り取れば残りの半人前は全部自分用に。
食事代わりにもしている甘味は、林檎の蕩けた甘味が凝縮されたような琥珀色をしていて作りなれているのがよくわかる。

「なんだ、まだ何かあったのか?
 思い付かないな……教えてくれ」

表情からしていい報告なのだろうか。
お互いの機嫌や回りの視線を気にしなくていい最後の時間かもしれない、そう思っていた男は努めて気さくに。普段通りと、名残惜しさを含めて再び隣へと向かう。

銀のフォークを並べる頃にはその顔を覗き込もうとした仕草を抑えて、時間をかけて挽かれた珈琲へと手を伸ばしていた。
(-77) toumi_ 2022/08/27(Sat) 21:21:28

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

どれくらい会えなくなって、どれくらい態度が変わって。
少しずつ変質していく互いの距離がどんなものになるかなんて、想像もしていない。
足を揺らして相手が帰るのを待ち望む仕草は、なんだかんだと今と変わらないことを期待している。

「好きだよ。散る花でもオレにとってはひとつひとつが思い出。
 思い出せる記憶はなくても、それそのものが大切なんだから」

季節ごとに贈られる花は青年にとっては両親の思い出だった。
その時はそう思っていた。

一人息子を手放し、便りも少ない薄情にも思えるそれを、青年は大事に受け取っていた。
親というものの存在する人々に囲まれた環境ならまた受け取り方は違ったかもしれない。
皆にとってその思い出なんてない孤児院の中だからこそ、大切だと思えたのだ。
本当はとうにそこには、見たこともない二人の男女の意思は消え去っていたとしても。

焼き菓子の、まだふんわり鼻先をくすぐる甘く香ばしい匂いに頬を緩める。
煙草の匂いに、甘い匂いに、珈琲の匂い。いつからかいつだってそれを求めていたのかもしれない。
不良少年の口先から香るシガリロの煙が何を内包しているか、貴方は気付いていただろうか。

「一応さ。一人前になるわけだしさオレも。タトゥーパーラーでちょっと一筆入れてもらったんだよね。
 ……見る?」

報告そのものは別段変なものでもないし、多少やんちゃではあるもののありふれた話だ。
行儀や品性は悪くはあるものの、年若い人間としてはそうした証を欲しがるものなのかもしれない。
それとして、なんだかにやにやといたずらの一つでも考えているように笑っていて。
貴方が見る、とも見ない、とも返事をしたかどうか、
ベルトに手を掛け、ボトムの内掛け釦とホックを外すと指を引っ掛けてぐっと大幅にずらす。

腰骨の外側右、下着を履いたら隠れてしまいそうなところに。
白で花房を塗った花の意匠が彫られているのを見せつける。
ちょうど部屋に転がされている、祭りの主役とおんなじアーモンドの花だ。
見えているのはタトゥーだけ。他に余計なものは見えてやしない、が。
(-90) redhaguki 2022/08/28(Sun) 2:37:02

【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 天使の子供 ソニー

「なっ、お前」

花を与えることなんてしなければ。そんなこと、渡してやった花束をいちいち見せに来るその姿ですべてお釣りが帰ってきた。

お前ってやつはと頭を抱えてこずいたこの気持ちは
思惑通りとうとう永遠に知られないままになる。

親にもなれない、友にもなれない、恋人にもなれない、こんな中途半端な男の気持ちなんて伝わない方が幸せだと思い込んでいた。結ばれもしない、共に過ごすこともできない仲なんてすぐにその傷は癒えてしまうと信じつつも、苦い甘さを残し続けた。


「いいか、ソニー」

俺はお前の親でも何でもないし、
教鞭を振るう教師でもない。
それでもお前のことを心配している、ただの  


「……
似合ってる。

 
だからもう見せるな。
大人は頭が固いんだ」

落ち着かない、甘い香りがいつのまにかひとつの印象しか与えなくなる頃には、脳が誰かを訴えることをやめない。
とっくにこれ以上上回ることのないお前への心が、態度が。

「歳を食っても変われない俺なんて気にせず。
 バレないように、黙って好きなことしていろ」

怒気と呆れを含んだような声色は出せていたか。
視線をそらして見つめた先には白い花が置かれていて。
逃げ道がすくないその空間で人差し指を口許に当てて考え込む仕草をする。噛み跡がついておらずとも、そこにはすでにあなたを感じていた。

可愛げもない、素直でもない態度で吸い込むのはアーモンドの香り。そうして甘味で満たされた腹をどうしてやろうかとため息をついた。
(-129) toumi_ 2022/08/29(Mon) 4:50:50

【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ

呆れを頭に受けていっときは唇を尖らせて不満を訴え、すぐに得意げな顔でしてやったりと笑う。
ほんのわずか、小さく鼓膜をくすぐる声を耳聡く聞き入れはするくせに、深くは考えない。
誉められたように捉えられなくもない叱咤だけを都合よく受け取ったなら、目を輝かせた。
深く透き通ったジェイドの色は幼い頃から翳りもせずに変わらない色をしている。
何も変わらずにあったなら幸せな終わりがあったか、なんて。想像こそすれど不確定なものでしかない。

「はぁ〜い、へへ……
 食べよ、もう厳しいこと言いっこなし! 先生のタルトタタンが一番美味しいんだよなあ」

食事を作るのは環境だ。いつだって貴方が傍に居たからにこそ、舌の上の甘味は幸福になった。
食い気が勝って人並みよりも若干食べ汚かった振る舞いは、いつしか完璧なものになってしまって。
貴方と貴方が仕掛けたものの思惑通りに、振る舞いと作用は完璧な刃へと育っていった。
貴方はそれを、喜ばしく思ってくれる?

2月、花祭りの名残のある日和。窓の外には白い小花があちらこちらに散って見える。
いつかの日。遠く過ぎ去った春の日。

ソファの隣に寄せた体温は触れ合わずとも暖かく、降り注ぐ視線はわざと突き放すものもなかった。
輝かしい未来を暗示するものでなくたって、青年は幸福だった。指に触れる温度が変わるまで。

8月の夜気が責め立てるような熱を肌身に迫らせる。
明かり取りの窓から差し込む月の光が、左手の薬指に嵌ったジェイド幸福アーモンド希望と<kanaとをきらきらと輝かせた。
あの安置室で共に、なんて身勝手な真似をしなかったのは、貴方が最後に見る己の顔が綺麗なままであるように。
己が最後に見る貴方の姿を己の血で汚してしまうことのないように。
誓われない指輪を揃いに嵌めていくくせに、慾するほどに共に傍に在ろうとするわけでもない。
奪うほどに己に正直だったなら、最後の瞬間くらいは一緒にいられたのかもしれない。

一滴、半滴でさえも、貴方の存在は天使の子供を救っただろう。
告げられることのなかった秘蹟は、遠く希望を繋ぐように口の中だけで唱えられた。
(-130) redhaguki 2022/08/29(Mon) 10:06:26

【秘】 愚者 フィオレロ → デッド・ベッド ヴェネリオ

「そうですね。でも、それ以外の大切なものも沢山貰いましたから。確かに喜ばせる事が下手ですけど、救うのは上手でしたよ。
 俺が、そうでしたから」

こうは言っても、半分も伝わりやしないのだろう。
どうしてあの花を贈ったのか。
貴方に何の幸福を見出していたのか。
それを直接語ったことは、ついぞないまま。

貴方は、あの花を見ただけで理解したのかもしれませんが。
救われたと、こうして言葉にできたのだから、もうそれで構わない。

「……地図でも書いてもらった気分ですね。
 大丈夫です。そこだけは最後まで守り抜きましたから。
 そうしてお墨付きをもらえたなら、もう迷いはしません」

例え記憶が失われて、別の家族を知っても。
その人格が別になるほどに、この男の"家族"はノッテだけだった。

「さようなら、カランコエを贈った幸福を教えてくれた 貴方。
 もう、この鐘の音も──」

ずっと聞こえていた。
死後、この不安定な空間でずっと聞こえていた過去の象徴の音が。
生前、貴方がその印象を変えてくれたように、死後でもそれは変わらない。

だから、もう少しだけ待ちたい人を待てる気がする。
この後、終ぞ役に立てなかったと思っていたことすらも、
言葉を交わした少女によって教えられた男は、二度と迷子にならないまま。

どんな結果であれ、その日あの人が死ぬを待ち続ける事となった。
(-135) poru 2022/08/29(Mon) 18:29:54