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人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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【秘】 暗殺屋 レヴィア → どこにも行けない ヴェルデ

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こんばんは!ちょっと返信が遅くなります!
さしあたり、殺害時は差し支えなければ片目を小型拳銃で撃ち抜く予定なので、
死体描写にお使いいただければと思います!
(-3) arenda 2022/08/17(Wed) 21:07:49

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 銀の弾丸 リカルド

少年は笑っていない。
けれど、悲しんでもいない。
翠の瞳はいつも通りの温度であなたを見る。

「おれもよくわかんないや」
「でも、世界に自分ともう一人しかいなかったとして、」
「相手が泣いてたら、そうじゃなくなればいいなって思わない?」

或いはそれは、泣かれると面倒だ、などという冷めた感情なのかもしれない。
あのヒトがどういう存在なのか、自分でもよくわからない。

「って言っても、おれ、苦しいっていうのもよくわかんないからさ」

それこそもしかしたら、好奇心なのかもしれない。
あのヒトの言った苦しみがどんなものか、ずっとわからないままだから。

「だから、大丈夫だよ」

アルバ・ファミリーは構成員を家族と称してはおれど、少年など末端も末端。
それでも。
ほんの幾人かでも、思い浮かぶ顔はあって。
それは確かな変化であり、あなたの言葉によって気付いたことだった。

(-5) beni 2022/08/17(Wed) 21:10:00

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 銀の弾丸 リカルド

「……お兄さんにとっては、それが苦しいことなんだ」
「同じ景色、見られた?」
(-6) beni 2022/08/17(Wed) 21:10:20

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 暗殺屋 レヴィア

/*
ご連絡ありがとうございます!了解です!
返信はどうぞごゆっくり。
(-8) beni 2022/08/17(Wed) 21:12:58
どこにも行けない ヴェルデは、メモを貼った。
(c2) beni 2022/08/17(Wed) 22:36:35

【墓】 どこにも行けない ヴェルデ

本名:アンジェロ・ヴィットーリ(Angelo Vittori)
死因:片目を撃ち抜かれたことによる脳挫傷、及び失血死

発見場所・遺体の様子:
路地裏にて発見される。外傷は眼窩の銃創のみ。
そばには同様の傷を負った死体がもうひとつ、転がっていた。
そちらはアルバ・ファミリーの構成員のようだ。
(+2) beni 2022/08/17(Wed) 22:37:00

【秘】 暗殺屋 レヴィア → どこにも行けない ヴェルデ

「そうね、殺すしかないわ。」
「諦めが良くて助かるわ。」
「痛くしなくて済むもの。」
 
抵抗されると、綺麗に殺せない。
綺麗に殺せなければ、時間が掛かるし、
その後の処理だって面倒になる。
だからありがたい、と、やはり声に感情は籠らず。
動揺に色の灯らない瞳が貴方を見つめて。
 
「馬鹿ね。」
「着服するに決まってるわ。そんなお願い。」
「遺体と一緒に、その人に届けられるのを
 願った方が、ずっと可能性が高いわ。」

そう言いながら、白のシルクグローブを付けた手で
裸の紙幣を受け取って。
もう遅いけれど、と、それを懐にしまう。

「それだけでよかったかしら。」
 
そうして、かちゃり、と。
貴方の片目に、銃口が向けられる。
改造された小型拳銃。小さくするために殺傷力を
下げられたそれは、普通に撃つだけでは人に
痛みこそ与えれど、死には至らせない。
それが唯一死を齎せるのは。
骨に守られていない場所から、脳に弾丸を打ち込む事。

Buonanotteおやすみなさい

貴方が他に何も要求しないなら。



助けを呼ぶ子猫のような音が、また一つ響いたことだろう。
(-59) arenda 2022/08/17(Wed) 23:02:46

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ

「知らない」

対照的に、少年は眉根を寄せた。

「あんただってゴミみたいなおれを拾ったろうが」
「ばかだから上手くいかないけど、」
「金返すだけじゃなくてもっと何かできたらって、思わないわけじゃない」

少年は確かに、あなたに恩を感じているから。

「それは大切とは違うのかよ」

その唇からこぼれる香りはよく知っている。
あのヒトからも似た香りがしたから。
けれどあのヒトよりも、あなたの方が、余程。

「十年先のあんたが、あんたにとってゴミでも」
「おれにとってゴミかどうかは、おれが決めることだ」

少年は、死にたくないとは思わなかった。
まだ死んではいけないだろうと思うだけ。
けれど、あなたが死にたくないと言うなら。
そんな心配をしなくてよくなれば、と、願うくらいは。

「生きてたってそんなによくはなくても、」
「それでも、死にたくはないんだろ」
(-83) beni 2022/08/18(Thu) 0:38:38

【墓】 どこにも行けない ヴェルデ

【ビアンカの部屋】

少年はその部屋の隅を間借りしていた。
いつもちいさく丸くなって眠る寝床は、出かける前に丁寧に毛布が畳まれる。
その上に、幾らかの絵本が積まれていた。
古びたものがほとんどの中、真新しいものも少し。
一番最近増えたのは、『シンドバッドの冒険』だった。
まだ、ほんの数ページしか読めていない。
これから先、読まれることはもうない。

結局のところ、あなたの言う通りになった。
男は女を置いていく。
少年は戻らない。
少年はどこにも行けない。
(+4) beni 2022/08/18(Thu) 0:50:21

【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ


「死にたくは、ないけど」
「……」

溜息。
はあ、と。細く、長く、絞り出すようにして。

「ああ、もう、いいや。
 あのね、」
「借金は、いつでもいいから」
「さっさと出ていきな」

腰に手を当てて、あなたを見下ろす。
――不機嫌そうな顔を作ろうとして、

すぐに、

しょうがないなと、困ったように笑って。

「…女のお願い。
 ちゃんと聞けるようのが、いい男だよ」
「ヴェルデ。……あなたの質問に、答えられない。
 私、あんたよりもずっと、ずうっとばかだから」
「どう答えたらいいか、わかんないんだ」

↓[1/3]
(-86) gt 2022/08/18(Thu) 0:54:52

【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ



「だからさ、……言わないで。
 それ以上。

 お願い。……」

↓[2/3]
(-87) gt 2022/08/18(Thu) 0:56:08

【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ




「――……あと、串焼きが冷めるから、
 さっさと離して?」

どうやら、お話をそこで終わり、にしたいらしかった。
がん、と。
(-88) gt 2022/08/18(Thu) 0:57:35

【秘】 銀の弾丸 リカルド → どこにも行けない ヴェルデ

「……お前の世界には、自分とその親しかいなかったってことか」

親ですら無いのかもしれないが。
何にせよ、もっと広い世界を知るべきなのだと思った。

大丈夫なわけない。
それは、最早感覚が麻痺しているだけにすぎない。
こんな、迷子になっているような子供を放置できるはずもないではないか。
そんな世の中を変えたいと思ったからこそ、俺はこの世界にいるのだから。

「少なくとも。
 お前が苦しんでいるのは、俺は嫌な気分になる。
 お前の世界は、もっと広いぞ」

広い世界を3人で見たかったという夢。
同じ高さに立ちたいと思った夢。

――そのどちらももう、叶わない。

「そうだな……見たいと、今でも思ってるんだが」

首を横に振った。
夢を叶えるというのは、本当に難しい。
後日貴方まで命を落とすなど、この時は考えてもいなかった。
(-89) eve_1224 2022/08/18(Thu) 1:02:36

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ

/*
こんばんは。夜遅くにすみません。
共鳴者同時に死にましたね……ヴェルデくん……
遅筆と浮上率によりキリがいいところまで進められなくて申し訳ありませんでした。

もしツナ缶様さえよろしければ続きをこのまま秘話でさせて頂きたいな、と考えております。
キャパや死後の扱いこだわりなどもあると思いますので、厳しい場合は断っていただいて構いません。
(-95) rik_kr 2022/08/18(Thu) 2:00:29

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ

/*
お疲れさまです!ご連絡ありがとうございます〜!
窓会話にお付き合いくださり、本当にありがとうございます。
おからだだいじに……。

秘話での続き、ぜひよろしくお願いいたします。
先に落ちたらそのようにお願いしようかと思っていたら、まさかの同時落ちでした。なかよし。
(-96) beni 2022/08/18(Thu) 2:08:14
beni 2022/08/18(Thu) 2:08:45

beni 2022/08/18(Thu) 2:09:41

beni 2022/08/18(Thu) 2:10:55

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ

/*
同時落ちだから寂しくないね! 一緒にビアンカさんを見守るとしましょう……
(-98) rik_kr 2022/08/18(Thu) 2:14:49

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 暗殺屋 レヴィア

痛くされるのは『苦しい』だろうか、と、ついよぎる。
ああ、でも、それはよくないんだったな。
仕事中に殴られたり首を絞められたりしたって、相応に痛みを感じはしてもそれだけで。
だから、たぶん、ここで試す意味もない。
薄い瞼を伏せる。

「届かないよ」

そのヒトは血縁でも何でもなくて。
ただ、部屋の隅を間借りしているだけの。
ただ、借りた金があるだけの。
それでも、少年にとって『家族』に一番近いのは、彼女かもしれなかった。
……尤も、相手は嫌な顔をしそうだけれど。

「……どうせ、死んだらわからないだろうし」
「言うだけ言ったってことで、いいよ」

それだけ。
最後にそう呟いて、少年はもう一度、あなたを見た。
向けられる銃口を見た。

それが最期だった。
痩せた頼りないからだが頽れる。
(-105) beni 2022/08/18(Thu) 9:16:34

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ

不機嫌な顔なら見慣れているあのヒトはいつも怒っていた
それなのに、どうしてそんな顔をするのだろうそんな顔はしなかった

「知らない、ガキだから」

どうしてそんな風に触れるのだろう触れられるのは、殴るときぐらい

「おれは言われないとわかんないし、」
「あんたも言えなかったら、ずっと何もわからない」

(-111) beni 2022/08/18(Thu) 11:15:03
ヴェルデは、あの日、開いた口から——「ッ、この強情女」
(c4) beni 2022/08/18(Thu) 11:15:20

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ

そんな風に悪態をつくのも、初めてのことだ。
ハイヒールに踏み付けられた足が痛む。
それは或いは、姉弟喧嘩にも似ていた。
溜息ひとつ。
お望み通りに手を離し、絵本を拾った。
いつか、あなたが投げて寄越したものだ。
古びたそれは、必要がなくなって手放されたのだろうけれど。
少年にとっては、大切なものだったから。
(-112) beni 2022/08/18(Thu) 11:16:02

【秘】 暗殺屋 レヴィア → どこにも行けない ヴェルデ

女は人を綺麗に殺す。
余計な傷も痛みも与えない。
その方が、後処理が楽だから。

「そう。」
「残念ね。」

帰ってくるのは、やはり温度の無い言葉。
裸の紙幣の行く末がどうなるか、貴方が見届けられる事は無い。
引き金は躊躇いなく引かれた。




「…………。」
「馬鹿ね。」

倒れ伏す体を見下ろして。
その時の言葉と瞳だけが、僅かに温度を滲ませて。
少しだけ目を伏せて。
そうして。

全てを消し去るような後処理をすることも無く、
その場を後にするのだった。
(-117) arenda 2022/08/18(Thu) 12:27:55

【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ

ずっと面倒だったしうざったかった。そんなの

さっさと目の前から消えてほしい。わかるでしょ

「生意気なガキ」

ああ、ガキは嫌い。ばーか。

あなたのついた悪態に、なぜだか、嬉しそうに眼を細めて、
にんまりと笑って。

↓[1/2]
(-124) gt 2022/08/18(Thu) 13:23:18

【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ



「あんたさ、まだそんなの読んでんの?
 一回読んだら、もう終わりじゃないの?」

いわれたとおり手を離したのに。
はい、と──あなたに、手を差し伸べた。

あなたがその手を取れば、ゆらゆらと手を引いて歩き出す。
たよりなく、細く、非力な手で、ゆらゆら、と。

[2/2]
(-125) gt 2022/08/18(Thu) 13:24:57

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 銀の弾丸 リカルド

「そ。おれずっと、クローゼットの中に入れられてたからさ」
「今、こうやって好きに出歩ける方が、ヘンな感じ」

声は変わらず平坦に。本当にただ、不思議そうに。
感覚が麻痺している。
或いは、元より欠如している。
けれど満たされたことがなければ、欠落を認識することはむずかしい。

「……ん。それも、覚えとく」

心配してくれている、のだろう。
それを理解して、それでも、その真心の受け取り方がよく、わからないから。
できるのはいつも、惑うように曖昧に笑うことだけ。
どうやらあなたの夢はまだ、叶わないままであるらしい。
もう永遠に叶うことがないのだとは、その口振りからは窺い知れない。


「そっか、……大人になっても難しいんだな、世界って」

こんな会話の中からも、少年は世界の広さを知り、人間に近付くあなたも少年に苦しみを教えた一人だ
(-145) beni 2022/08/18(Thu) 18:27:47

【墓】 どこにも行けない ヴェルデ

街娼立ちんぼがひとり殺されるぐらい、ごくありふれた出来事だ。

街灯に照らされる石畳を蹴り、夜を歩いて。
自ら暗がりへ手を引いてゆくのだから、どうしたって人目につきにくい。
行き過ぎた嗜虐性に嬲られることも。
或いはクスリを使われ躙られることも。
店に管理されていない分、危険はずっと多くある。
だからこんな風に綺麗な死に方をしたことの方が、きっと、ずっと珍しい。

それでも少年は街路に立つことを選んだし、多少の無茶は厭わなかった。
けれど、結局。苦しみを理解するには欠落が多すぎた。
その苦しみを解するまで、死んではいけないだろうと思っていた。
だから少年は、死にたくないと思ったことはなかった。
それなのに、最期のそのとき、確かに。
――死にたくなかったな、と。
諦観の奥に、喪失の苦しみを抱いた人間になった
(+8) beni 2022/08/18(Thu) 18:44:10

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 暗殺屋 レヴィア

>>+8
などと、そんなものはあなたにとって。
やはり、興味のないことだっただろう。

少年はばかだった。
死ぬまで、ずっと。
(-151) beni 2022/08/18(Thu) 18:45:41

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ

あなたがどうして笑ったのかわからない。
それでも、立てつくような言葉を吐いてなお、そんなに悪い気分ではない。
拾った絵本を小脇に挟み、差し伸べられた手を握る。
少年の痩せた手は節くれ立って、二年前よりずっと、大きくなった。

「一回読んだぐらいじゃわからない」
「ばかだから」

そも、その一度読むという行為自体に時間がかかる。
知らない言葉が出てくれば、調べて理解しないと先へ進んだって意味がわからないままで。
ゆっくりと時間をかけて文字を辿り、何度も読み直して物語をなぞる。
そういうことが、必要なのだ。
ゆら、ゆら。繋いだ手が揺れる。
(-154) beni 2022/08/18(Thu) 19:02:24

【秘】 暗殺屋 レヴィア → どこにも行けない ヴェルデ

夜鷹について詳しくないマフィアなどいない。
路地裏を歩けば死体に行く着くことは、この街では珍しくない。
珍しくないから、女は。
路地裏を仕事の場に選んでいた。
人を殺すことに、何の戸惑いもない女だった。

貴方の事は知らない。名前すらも聞いていない。
貴方が抱えたものの全てを、女は知りえないし。
きっと、興味がない
知りたくない


次の日の夜、女は。
もう居なくなった、貴方の遺体があった場所に。
紫のヒヤシンスを一輪、置いていった。
何処までも無感情で、温度も色もない顔のまま。
女は何を言う事もなく、去っていく。


女はきっと、"お人形さん"だった。
人を象っただけの、心のないブリキの人形。
周りがそう揶揄するように。
(-160) arenda 2022/08/18(Thu) 19:26:57

【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ

「それでいーの。
 あんたには、時間があるんだから」

大きな、けれど小さな手をぎゅう、と包むように握る。
ゆらゆらと揺れる手は、水面で揺れる揺り籠のようだ。
ざわざわとした雑踏が波濤となって、ふたりだけの揺り籠をぐらり、と揺らす。
だから、ビアンカは前を歩く。

打ち寄せる波を、自らの身体でうけるよう。

「ばかは何もしないやつのこと。
 バカはマジでバカだから、何もしないくせに文句ばかり。

 いい、ヴェルデ。
 あんたは、」

■■■■■■■■■■■■■■私みたいなばかになっちゃだめ


――その言葉は、どうにも言いづらくて。もごもごと、不明瞭になってしまった。
(-167) gt 2022/08/18(Thu) 20:06:11

【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ

>>3:=4

スープも飲む、と君が口にすれば、男はまた君の頭を撫ぜた。先程より少し強く、よしよし、それでいい、と言った感じに。

「そうかい」
「よく食べられるようになったね。偉いぞ」

食が細い、とは言え。
口にしよう、と思えるほどには変わってきている。それが、男にとっては嬉しかった。

「おや、辛いのも食べられるの? 大人だねえ。……っと」
「こら。全く」

少し茶化したりしてから、財布に手を伸ばす君を軽く制止。店主に微笑んで目配せをして、悠々と自分の財布を取り出す。

「こういう時は、大人に甘えてればいいの」

先程君を形容した言葉を簡単に剥奪してしまう。
長い指で長財布の中を探って、紙幣を一枚。受け取った店主は後ろを向いて、ソーセージを二つ手に取った。鉄板に乗せればじゅうと音がして、当たりを肉の焼ける香りが包む。
(-211) rik_kr 2022/08/19(Fri) 0:50:52

【秘】 銀の弾丸 リカルド → どこにも行けない ヴェルデ

「それは……虐待というんだぞ」

知ってるか? と問うた顔は眉をハの字に曲げていた。
いつから入れられていたのか知らないが、こんなに感覚が麻痺するほどだということは、きっと物事の善悪がよくわからない内からずっと、ということなんだろう。

こういう話を聞けば、自分はなんて恵まれていたんだろうと思うほどだ。
孤児になったとはいえ、親のことなど知らずに孤児院で幼馴染に出会えていたのだから。

「あぁ、覚えておけ。
 夢はな、叶えるためにあるものだ。
 世の中難しいことだらけだが……お前にも、きっとわかる日はくるさ」

「……さて、と。少年、次に会う時は、新しい本を読んでいてくれ」

そう言うと、煙草の火を消して立ち上がる。
何も言われなければ、軽く手を上げ去っていく。
この時の俺は、貴方が自分よりも早くに亡くなってしまうなどとは毛の先ほども考えてなかったし、
知ることが苦しみを自覚することになっているなどと、思いもしなかったのだが。

きっとそれは、後の祭りだ。
(-218) eve_1224 2022/08/19(Fri) 1:14:14

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ

時間があると思っていた。
根拠もなく。
こんなところでこんな生き方をしていて、それでも、明日が来ることを疑っていなかった。
——或いは、失うことの恐怖を、苦痛を、まだ知らずにいた。


一歩、二歩。
歩幅を広げて、少年はあなたの隣を歩く。
雑踏に紛れてしまいそうな、不明瞭な声を拾う。

「……ビアンカ」

たよりない女の細腕は、あの日、確かに少年を拾い上げた。
生まれたとき天使アンジェロだったはずの子供それは、

碌に使えもしないこの子供を、あなたは何故か放り出さなかった。
恋の魔法まやかし憎悪呪いへ変わると共にゴミへと堕した。

苛つかせることも多かっただろうし、実際、何度も怒られただろう。
世界の歩き方さえ知らされないまま呪いを背負い、生きて、

けれどそれは、理不尽に当たるあのヒトの声とは違って。

「あんただって、たぶん、あんたが思うほどばかじゃない」
「だって、あんたのお陰でおれは生きてる」

少年は歩き方を知った。
まだ、あなたのように堂々とは歩けなくても。
少年は人間になった。
それは、あなたと出会ったからだ。
(-261) beni 2022/08/19(Fri) 12:55:09